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22.

「そういうわけで、好きでこの格好をしているわけではないのです!!

そこのところを間違えないでいただきたい!!」


現在、馬車の中です。

図書館からの帰り道、私とルーが並んで座り、向かい側にシュリーさんが座っています。

その馬車の中では、図書館からずっとシュリーさんの熱弁が繰り広げられていました。

とりあえず、今まで聞いてきた中で残っている内容は、「変装が不本意だ」ということだけでした。

だって、2、3言話しては「好きでこの格好をしているわけではない」を挿んでくるのですから、話の内容よりもそっちが気になって気になって…。

このままでは、屋敷に帰るまでこの調子でしょうか?


「リーザ、何か聞きたいことはありますか?」


ルーがそう話しかけてきてくれたので、私は気になって聞けなかったことをやっと口に出来ました。


「…あのー。シュリーさんは本名なのですか…?」


しっかり聞いておかなければ、名前を呼ぶときに不便ですからね!!


「いいえ、違いますよ。赤髪赤目の変装名がシュリーなのです。」

「そうなのですか?では、その髪と瞳はオリジナルではないということでしょうか?」

「そうですよ。これは、任務の際に魔法で定着させている色なのです。」

「魔法…ですか?」

「ええ。あまり詳しくないのですが、そういう魔法があるそうで、私たちは重宝しております。」

「リーザは魔法が好きですからね。気に、なりますか?」

「はい、とても!!」


これは、もしかして将来役に立つものではないでしょうか?

私の髪と瞳の色が変われば、たとえ手配されたとしても逃げおおせる気がしますよ!!

私は意気込んで頷いていました。


「その体も魔法で変化しているのですか?女の人ではないのですよね?」

「いいえ。体は私のオリジナルです。」

「え、でも…?」


ボンキュッボンでナイスバディなお姉さまにしか見えないのですが…?

私の視線を受けて、シュリーさんは答えてくれました。


「コルセットをして胸には詰め物をしております。スカートはパニエがありますから、首回りさえ隠しておけば、そうそう気付かれません。」


…そうか、男の人は喉仏がありますからね。

体を変化する魔法もあるのかと期待したのですが、そうそう簡単には見つかりませんよね。残念。


「私も話だけは聞いたことがあるのですが、髪や目の色を変化させる魔法は、どうも王宮魔導士長に口伝で伝えられるものらしいです。」

「秘伝ということですか?一子相伝のような…?」

「そうですね。まあ、教える相手は子供ではないですけれどね。」

「…ということは、王宮魔導士長にならなければ教えてもらえないということ、でしょうか?」


折角そういう魔法があることがわかったのに。まさかの、口伝とは…。

書物だとしたらこっそり借りることも出来たかもしれないのに…。

口伝ということは、それをほいほい教えてくれるわけにはいかないでしょうし、穏便に済ませるには、私が王宮魔導士長になるしかないのでしょうか…。


「私も王宮魔導士長になれますか?」


この世界では、トップが女性というのはあまり良い顔をされないのですよねー。

そんな気持ちを込めて聞いてみました。


「リーザは私の婚約者なのですから、無理ですね。私と過ごす時間が減ってしまいます。」


ルーはあっさりそう言って、私の手を取って指先にチュッと唇を当ててきます。

シュリーさんの前とかお構いなしですか、そうですか。


「…私の傍にいてください。」


思ったより真摯な声で、ルーが呟きました。

あれ?いつもと違う?と違和感を感じたのもつかの間、あっさりシュリーさんの言葉で霧散しました。


「女性の王宮魔導士長も居られたと思いますよ。」


ルーとヒロインが結婚すれば、私はお役御免ですから、将来そこを目指しても良いかもしれません!

膝の上に乗せた本をギュッと握って、私は決意を新たにしました。





ガタガタと進んでいた馬車が止まりました。

馬車の窓から外を見ると、屋敷の前に止まったようです。

御者台に座っていた騎士様が、馬車の扉を開けてくれました。


「さあ、到着しましたよ、リーザ。では、シュリー。後は任せましたよ。」


ルーが私の手を取ったまま、器用に扉を開けてくれた騎士様に本を渡しています。

どうやら馬車の外まで騎士様が運んでくれるようです。


「ルー、今日はありがとうございました。あ、あの、手を離してください。

本が…」


本を受け取るつもりだったのですが、ルーは私の手を取ったまま進んで行きます。

器用に日傘を開いて私の上に差してくれるおまけつきです。


「シュリーが居たから、せっかく2人きりの予定だったのに、あまり話すこともできませんでしたからね。リーザを補充させてください。」


とても良い笑顔で言い切ってくれました。

これは、気が済むまで離れてくれそうにありません。

いつの間にか取られていた手は、繋がれているし…。


そうして、ふと気付きました。


シュリーさんの名前…聞いてない。

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