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21.

長い期間が明いてすみませんでした。やっと書きました。

少しでも楽しんでいただけたらと思います。

ルーを取りあえず傍から離して身軽になった私は、高い本棚と向かい合っていた。

この図書館も、蔵書の数は結構多く、本棚はどれも天井までつながっており、その一番上まで本がぎっしりと詰まっています。

もちろん、背の低い子供でも本が取れるように梯子がかかっていますが、専門書はそうもいきません。

分厚くて子供の片手では持ち上げられないため、梯子に上れても降りられないからです。

そのために司書さんとは別に図書館に居るスタッフさんの手を借りる必要があるのです。


私はキョロキョロとあたりを見回して、いつもの人を発見しました。


「ジーニアさん!」

「アルフバルドさん。今日もいらしたのですか?」

「はい!今日もお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ええ、もちろんですよ。今日はどれですか?」

「こっちですわ。」


「あの、左から3冊目をお願い致します。」

「わかりました。」


そう言って、ジーニアさんは梯子を上って目当ての本を降ろしてくれました。


「これですか?」

「はい、これです。ありがとうございました。」

「いいえ。では、いつものように、終わったら呼んでください。」

「わかりましたわ。」


ジーニアさんは親切です。降ろした本をそのまま手渡さず、机の上に置いてくれます。また、終わったらそのままにしておいても良いと言ってくれるのです。

軽い本なら片付けられますが、今日の本の厚さは私の手のひらと同じくらいです。

しかも、古いのか、紙があまり上等ではありません。

そのため、新しい本よりも重いのです。

私はちらりと後ろを振り返りました。

ルーは結局あの彼女と一緒に、机に向かい合って座ったようです。

額を突き合わせてコソコソと話をしているように見えました。

一応、王太子殿下なので護衛が居ますが、周囲の人を怯えさせないようにこっそりしているため、ルーの姿をチラチラ見ているお嬢様方もおられます。


ルーは私と反対方向を向いているため、振り返った私からは赤毛の彼女の伏せた顔が見えるだけです。

話が終わる前にこちらも調べ物をしなければ!

私は気持ちを新たに本に向き合いました。


紙が悪いため、所々文字が掠れたり破れたりしていますが、概ね現在の魔法と同じ内容が綴られていました。

私が知りたいものではなく、一般的に普及している誰でも使えるもの…。

やはり閲覧禁止になっている、過去の全属性の魔法を使えた人たちが記したノートを見せてもらいたい。

例え、載っていなくてもこの大量の蔵書を調べるよりは遙かに確率が高い気がします。

しかし、閲覧禁止は国王陛下と王宮魔導士長の許可がなければ見ることができません。

今の私にはどちらにも閲覧させてほしい理由を説明できません。

まさか、そのうち殺されるけれど、殺されたくないから読みたいのですとも言えませんしね…。

そうして何の気なしに本の文字を撫ぜていると、ひっかき傷のような感触が伝わってきました。

紙が悪いからかとも思いましたが、意図的に何かが描かれている…


………わけではないようですね。

ですが、いくつかの文字に読むだけではわからないひっかかりが感じられます。

私は著者を確認しました。

しかし、「寄贈」となっているだけで、誰が書いたかはわかりません。

私は本の最初から再び文章を今度は目と指を使って確認しながら、読み始めました。


「まず始めに光と闇が生まれた。次に水と火が生まれ、風が出来た。」


水と火が生まれ、風が出来た…。私はハッとして、ジーニアさんに本を借りたいと伝えました。

ジーニアさんは、本を持ってくださり、カウンターまで運んでくださいました。

館長が奥から出て来て、図書館の本に必ず付けてあるマークに手をかざします。

すると、本と借りる人の契約がなされ、本を貸し出してくれるのです。

何か特別な理由がない限り、期限を守らないと本は図書館に戻り、本と契約した人は図書館に二度と入れなくなるため、期限はきちんと守らなければなりません。

今回は2週間の期限となりました。


「あの、館長。この本のことなのですが…」

「どうかされましたか?アルフバルド様。」

「この本の著者はわかりますか?」

「ふむ。寄贈と書かれてはおりますが、誰の著書かはわかりませんね。しばらくお待ちください。」


そう言って、奥に戻った館長は冊子を手に戻って来ました。


「確認したところ、私が館長になる前からあるようです。

誰が持ってきたかは記録にありませんし、遡ることは無理そうです。」

「そうですか。ありがとうございました。」


私は残念な気持ちになりながらも、早く屋敷に戻って試してみたいことがあったため、さっさと帰ることにしました。

ルーはルーの馬車で帰るでしょうから、辻馬車でも拾いますかね?

そう決めて、私はルーの元へ帰る挨拶をしに向かいました。


赤髪の彼女との話は深刻なようです。眉間にしわを寄せているルーなんて初めて見ました。

でも、引き下がるわけにはいきません!!


「…ルー?」

「!!な、なんでしょう、リーザ」

「あの、私帰りますね。ルーはお姉さまとごゆっくりなさってください。それでは。」

「え…?」


ルーがわかっていないうちにぺこりと頭を下げてさっさと踵を返します。

ジーニアさんが本を渡してくれました。両手で持っても意外と重たい。

…ですが、辻馬車までなら何とか…。


「ちょ、ちょっと待ってください、リーザ!」


後ろからルーの声が聞こえますが、私はそれどころではありません。

振り返ることすら出来ないのですから。

本を地面に置くわけにはいきません。かといってこのまま無視して進むわけにもいきません。

どうしたら…と、途方に暮れたそのとき、手の中にあった本が誰かに奪われました。

ハッとしてその方向を向くと、そこには、赤髪の彼女が!!


「え…?あの…?」

「ほらほら、王太子殿下。早くしてください。じゃないと、お嬢様が日焼けしてしまいますよ!」

「ええ。貴方に言われなくてもわかっていますよ、シュリー。」


そう言って、ルーは日傘を差してくれましたが、彼女は日の下です。


「ちょ、ちょっと、ルー!!私ではなくて、お姉さまに…」

「いいえ、少しくらい焼けた方が良いのですよ。全く。」

「…ルーは小麦肌の女性の方が好きなのですか?」

「…………え?」

「ぷっ、あははははははははは!!お嬢様、天然ですか!!」

「え?」


いきなり横から大声の大爆笑が聞こえてきましたが、私は何かおかしなことでも言ったのでしょうか?


「リーザ、彼は女性ではありませんよ。」

「え?えーっと、では女装趣味の方…ですか?」

「まあ、そんなところです。変態なので近づかないようにしてくださ…」

「ちょ、ちょっと酷すぎませんか、王太子殿下!!俺だって好き好んでこんな格好しているわけじゃないんですからね!?

お嬢様も勘違いしないように!これは仕事の一環なのですから!

……………………………あ。」

「仕事?」

「シュリー…。減俸」

「そ、そんなああああああああああああああ…。」

「あ、本は落とさないでくださいね。」

「お嬢様、酷い。」


な、泣きまねされても困るのですが…。


「ほらさっさと馬車に運んでください。こうなったら、リーザにも聞いてもらわねばいけないですからね。」

「え、いえ。別に私は聞かなくても…」

「いずれ私と結婚するのですから、今から知っておいてもらった方が良いのですよ。」


ひいいいいいいいいいいいい!!怖い笑顔再登場ですよ!!


ね?


なんて可愛く言ってもダメです。笑顔が怖いです。

私、これ以上深みに嵌りたくないのですけれど!!


私の心の叫びは誰にも聞かれることのないまま黙殺されました。

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