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2。気付きました[修正&追加版]

遡ること1週間前。その日、私は5歳のご挨拶ということで、初めて王宮に行くことになっていました。

王宮に行くために、両親は張り切って私に新しいドレスを用意してくれました。

初王宮ですものね!そりゃあ、張り切りますよね!


ドレスは、私の瞳の色に合わせた水色で、5歳児に合わせて可愛らしい仕上がりになっていました。

くるっと回ると、たくさんのドレープ部分が風を含んでふわりと広がります。

それが楽しくてくるくる回り、目が回ったのはご愛嬌。


両親とお兄様が親馬鹿、兄馬鹿を発揮して笑顔で、可愛い、可愛い…と褒めてくれたので、わたしの顔もにっこにこでしょう!せめて、ニヤリではないことを祈ります。

いつもは後ろに流している髪も、可愛らしく編み込んでもらいました。

マリーが化粧道具を持ってきましたが、さすがに化粧は遠慮しましたよ。

マリーが渋っていましたが、化粧をする5歳児なんて…嫌だわー。



さて、とうとう準備が出来たので、お父様と一緒に馬車に乗って、いざ王宮へ!

お母様とお兄様はお留守番のようです。

あまり家から出たことのない私としては、王宮までの道のりも、ちょっとした旅気分です。

馬車の窓から飽きることなく外を見ておりましたとも!!

そんな私に苦笑しながら、お父様が王宮での決まり事を教えてくれました。

お父様には王宮での決まり事、お母様には挨拶の仕方…挨拶の練習もしたいのに、覚えることが多すぎて失敗しないか心配になって来ちゃったなー。


私の家である侯爵家から王宮までは、馬車で約15分ほどの距離なので、あっという間に小旅行は終了。

「あっという間」なのか、「もう」なのか…。なんだか不安で気持ち悪くなってきましたよ…。

今から国王様にご挨拶とか、マジか…。心配ですが、何とかなる…でしょう…!

なんたって5歳児ですからね!愛想さえ振りまいておけば何とかなる…よね?

勢い!勢い!!と、意気込んだのは良かったのですが、タイミングが悪く、国王様は緊急の案件に取り掛かっているとか…。


しばらく時間がかかるということなので、先に王太子様にご挨拶となりました。

こうなったら、やってやりますよ!どうなったって知るものかっ!





「さぁ、リーザ。王太子様にご挨拶なさい」


お父様の言葉に前を見据えます。

目の前には、無駄にキラキラしている子供。

この国の王太子、ルーファス・ライアンベール様ですよー。


「初めてお目に掛かります。リーゼロッテ・アルフバルドと申します。

王太子様におかれましては、ご機嫌麗しく」


ドレスのスカート部分をチョンと摘んで、軽く会釈。

練習した甲斐もあって噛まずに言えました!やったよ、私!

嬉しさのあまり、顔が緩んでしまったのは仕方ないですよね。


「ルーファス・ライアンベールです。どうぞよろしく」

「こちらこそ、よろしくお願い致しますわ」


良い子のご挨拶を交わしていると、ふと、目の前の子供にどこか懐かしさを覚えた。

変だなー?王太子様には、今日初めて会ったはずだし、懐かしいなんて感じるはずはないと思うのだけれども…?

改めて目の前の王太子様を観察する。


サラサラの漆黒の髪は綺麗に整えられ、前髪から覗く瞳は純度の高い翡翠のような鮮やかな緑色。

すっと通った鼻に、ちょっと薄めの唇は孤を描いて、声変わりしていない声はボーイソプラノ。

そして、この国で王族しか着ることの許されない紫の礼服。

どこからどう見ても、将来有望なイケメンですよ。


……

………


そうだ!あの人をもう少し幼くした感じだ!あの人の弟…かな?


…いや、この国で王太子様って呼ばれるのは、将来の国王様のはず。今の国王様の息子はこの人しかいないはずだもの。

だから、私の知っているあの人と兄弟のはずはない。


…というか、あの人って誰だろう?

私は、この世界に生まれてまだ5年しか経ってない。

確か王太子様も私と同じ年だってお父様から聞いた気がする。


どこかで、この人にそっくりな別人を見たのだろうか?

いやいやいや、こんなイケメンにそっくりさんなんているわけないじゃん!

ということは、このイケメンが将来大人になった姿を知っているということ…


『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』


うっかり叫びそうになって、慌てて口を両手で押さえる。

目の前の王太子様は、不審そうな顔をしているけれど、そんなことに構っている暇なんてない!


私 は 今 い っ ぱ い い っ ぱ い だ !


そうだ!そうだよ!思い出した!!

私は、ここじゃない世界に生きていたことがある。日本という科学が発達した世界の中の島国だった。

そこでOLをしていた私は、29歳の時に交通事故で死んだ…と思う。

記憶がそこでぷっつり切れているから…。

その世界の私を前世と呼ぶのなら、前世の私はオタクだった。

仕事で稼いだお金は、すべてゲームや漫画、アニメやフィギュアに変わり、仕事のない日は家に引き籠る生活。

雑食な私は、乙女ゲームにも手を出していた。

その時にハマっていたのは「月の光は花園に降り注ぐ」。略して月花。

その乙女ゲーのスチル…イラストなのだが、そこにこの王太子の成長した姿があったのだ。

今が5歳だから、11年後の16歳だったはず。

魔力を持つ子供たちに魔力の使い方を教える学校がゲームの世界の舞台だった。

そこで、主人公が今のように挨拶するのだ。


・ルーファス・ライアンベール。

ライアンベール王国の王太子で、使える魔力の属性は全7種中5種。

にこやかに毒を吐く、腹黒ドS王太子。そのドSっぷりは、攻略対象中第1位のお墨付き。(公式発表)

貴族の娘たちとの婚約話に嫌気がさして、好きではないけれど、家格の高いリーゼロッテを婚約者にすることで、面倒事から回避。

そして、主人公と出会って本当の恋を知り、主人公を苛めていたリーゼロッテを排除。

王国の脅威は消えた!やったね!!


……となる。そして、今の私、リーゼロッテなんですがー。


・リーゼロッテ・アルフバルド。

幼い頃に一目惚れしたルーファスの婚約者に立候補し、決定してからも家格と財力と容姿と性格の悪さで他のご令嬢たちを圧倒するけれど、ルーファスが本気で主人公を好きになってしまい、取られるくらいなら…と、嫉妬で主人公を苛め抜くアルフバルド侯爵家の悪役令嬢。

結局、どのルートでも、主人公を苛めていたことがルーファスにバレ、国外追放か処刑エンドになって、リーゼロッテがいなくなった後、攻略対象と主人公がハッピーエンドを迎えるという、リーゼロッテには全く優しくない世界…。



確かに、死ぬ前に次に生まれることがあるなら、車の走っていない世界がいいなあ…なんてちょっと思ったかもしれない!

でも、まさか乙女ゲーに参加したいなんて言ったつもりはなかったよ!!

誰か嘘だと言ってくれええええええええええええええええええっ!!


そこまで思い出した私は、脳のキャパシティをうっかり振り切ったらしく、そのまま目の前が真っ暗になった。

そして、気絶した私は、お父様に抱きかかえられて屋敷に連れ帰られた…らしい。

らしい、というのは、気が付いてからお父様に聞いた話だから。

そして、うっかり開いた前世の記憶は、5歳児の脳と体には耐えられなかったのか、私は熱を出して数日間寝込んだ。


国王様への挨拶は……………次回、王宮に行ったときになりそうです。

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