16.探索
15.で誤記がありました。修正させていただきました。教えてくださった方々、ありがとうございました。
今後もよろしくお願いします。
ひとまず、リビングに移動してソファに座り、私の話を最後まで聞いてくれたルーは、一緒に聞いていたケニーとサインスに小声で何かを話していました。
話し終わると2人が部屋を出て行き、しばらくして、近衛第2隊隊長が王宮魔導士を連れてやって来ました。
ルーは、その王宮魔導士さんに、王宮の結界について異常がなかったか訊ねてくれています。
その間に私の体の震えはなんとか治まってくれました。
「今朝から今まで、王宮の結界に異常はなかったですか?」
「ええ、ありません。」
「長時間でなくても構いません。短時間でも一瞬でも…何かありませんでしたか?」
「いいえ、何もありませんでした。」
「何か些細なことでも…気になることもありませんでしたか?」
「ええ、特には…。」
「誰かが急に王宮にやって来られたとか…」
「ええ、と…正門から入られた人数と正門から帰られた人数、王宮に泊まられた人数は一致しております。」
「…そうですか。」
何も収穫がなくて、私はガッカリしてしまいました。
ですが、王宮魔導士が結界に異常がないと言っている以上、これ以上のことは聞けそうにありませんね。
しかし、近衛第2隊隊長サンの『ほらやはり何もないじゃないか。この小娘の見間違いか、夢でも見たんだろうよ。まったく迷惑な小娘め。』な視線は腹が立ちます。
子供だから分からないとでも思っているのでしょうか?
子供の方がこういう時敏感に気配を判断するものですのに!!
「…あ、そういえば」
これは関係ないと思いますが…そう前置きして、王宮魔導士さんはこう付け加えてくれました。
「本日の王宮は、少し闇の属性が高かったです。」
闇…。あの部屋に急に現れた男は闇属性を持っているということ…?
確か、光と闇の属性を持つ人の割合って、他の属性を持つ人の割合より少なかったはず。しかも、王宮に登録されていない人ってことになるの…かな?
子供か、若しくは魔法を学ばなかったか、王宮に上がらないまま大人になった人…ということ?
…まあ、今は夜ですから闇属性が高くてもおかしくはないのですが。
うっかり考え込んでしまった私には、王宮魔導士さんのその言葉は聞こえませんでした。
「さて、それでは寝室に移動しましょうか?」
そう言って、ルーは私の手を当然のように握ってきます。
私はブランケットを落とさないように押えながら、先ほどまでいた寝室に足を進めました。
「これなのですが…」
そう言って、ルーが示すのは、先ほど確認した掛布団。
そこには鋭利な刃物で切り裂かれたかのような傷が残っています。
「どう思いますか?」
「これは…」
「刃物で切り裂いたように見えますが…?」
「あ、ちなみに私とリーザは刃物など持っていませんよ。寝間着にそのようなものは隠せませんからね。」
「ということは」
―第三者がこの部屋に居たことになる―
そう近衛第2隊長サンも王宮魔導士さんも気付いてくれたようです。
「少し確認させていただいてもよろしいですか?」
王宮魔導士さんが掛布団の傷をじっと見つめます。
そして、
「この裂け目に薄らとですが、闇属性の波動が感じられます。…しかし、この波動は確認してみないと誰のものかわかりません。」
そう王宮魔導士さんが言った後に、
「大変申し訳ありませんでした!!」
近衛第2隊隊長サンの大きな声が響き渡り、一瞬ビクリと体が跳ねました。
「我々が警備していたにも関わらず、このような失態を犯してしまうとは言い訳のしようもありません。
私は、失礼ながらお嬢様が見間違えたか、夢のことだと判断してしまいました。
近衛第2隊隊長として恥ずかしい限りです。
恐らく賊は、廊下から王太子殿下のお部屋に入る入り口は通らず、どこか別の場所から侵入したのではないかと考えられます。しかし、このお部屋には人が通れるような窓はありません。物理的には無理であるため、魔法だと推測されます。
この度の汚名を返上するため、我々近衛が必ず賊を捕らえてみせます!!」
鼻息荒くそれだけ言うと、私とルーに一礼して部屋を飛び出していこうとする。
「あ、少し待ってください。貴方も聞いてください。」
そう言って、近衛第2隊長さんと、王宮魔導士さんに向かってルーが声を掛けました。
「あまり大事にはしないでください。今現在、この王宮に居るのは私の家族とリーザの家族だけでしょう。他の貴族は何も知らせないように、悟らせないように気を付けてください。」
「了解致しました!」
もう一度礼をして、今度こそ近衛第2隊長さんは部屋を出て行きました。
呆気に取られた私に、ルーが苦笑して、「悪い人ではないのですよ。」と言ってくれます。
「我々王宮魔導士も再度結界に異変がないか確認して参ります。」
近衛第2隊隊長サンに感化されたのか、王宮魔導士さんもそう言ってルーに一礼して部屋を出て行きました。
…い、意外と皆サン熱血なんですね…。
私は先ほどまでの認識を改める必要がありそうです。