15.助かりました?
バタバタバタ…と誰かが駆けてくる足音が聞こえてきました。
どうやら私の悲鳴は、部屋の外の大人たちに聞こえたようです。
ガシャガシャいう音は、近衛の鎧の音でしょうか…?
「お、おい!!どうした!?」
「意識があるか確認しろ!」
「大事な仕事中に何という体たらくだ!」
「おい、お前たち!いつまでそうしているつもりだ!!」
「さっさと目を開けないか!!」
ドンドン!
部屋の外が騒がしくなったと思ったら、ドアをノックされました。
あまりにも大きな音で、びっくりしたのですが、先ほどの悲鳴と、ドアのノック音でルーも目が覚めたようです。
…男はいつの間にかいなくなっていました。
「失礼致します。」
「…何だ、騒がしいな。何かあったのか…?」
「ハッ。先ほど、悲鳴が聞こえたため、慌てて駆け付けたところ、部屋の前で警備に当たっていた者たちが倒れておりまして…。」
「悲鳴…?」
「わ、私が上げました!」
「リーザが…?何かあったのですか?」
「お嬢様。火事と聞こえましたが、火はどちらに?」
「火事ではありません。ですが、ただの悲鳴より、火事と言った方が人は集まると聞いたものですから。」
「なぜ悲鳴を上げられたのか、教えていただきたいのですが?」
「…誰かが部屋に居たのです。…光る…多分、短剣のようなものを持っていました。」
「まさか!!お嬢様、ここは王宮ですよ?結界が張ってあります。
誰も侵入できません。まして、この部屋は何重にも警備されています。
…何か怖い夢でもご覧になられたのではないですか?」
…そうか…。子供だから信じてくれないのか。
「では、なぜこの部屋の前に居た方々は倒れていたのでしょうか?」
「それは…。きっと、気が緩んでいて、うっかり眠ってしまったのでしょう。大切な仕事中にけしからんことです。改めて教育しなおさなければなりませんな。」
「それはきっと違います。彼らは、恐らく何かで意識を奪われたのではないでしょうか?」
「お嬢様、お言葉ですが…」
「そうでなければ、2人とも同時に意識を失うはずがありません!それとも、貴方がたは、そのような…気が緩んでいるような人に警備を任せているのですか!?」
「そんなことはありません、我々も彼らもきちんと訓練を受けて」
「では、そのような方々がなぜ2人とも意識を奪われていたのですか?と申し上げているのです!」
「それは…」
「2人とも、落ち着いて。近衛第2隊隊長、今すぐ王宮魔導士を呼んできてください。」
近衛第2隊隊長だったのか…。しまった、プライド高かったりしないだろうか…?
こんな小娘に文句言われて…大人な対応をしてくれることを祈りましょう。
「今晩は、お嬢さん!またお会いしましたね。」
「コイツの言うことは無視して結構です。」
近衛第2隊隊長が部屋から出て行ったのと入れ違いに、鎧を来た騎士様2人が入って来ました。
何これ、デジャヴ!
先日、王宮でルーの場所に案内してくれたチャラ男と真面目さんですよ。
「何だ、貴方たちも当番だったのですか?」
「はい、そうです。王太子殿下。」
「俺はケニーで、こっちの真面目がサインスです。」
「ずいぶん、リーザと仲良くなったのですね?」
「えー?それほどでもありませんよー。ね、お嬢さん。」
「煩い、黙れ。失礼致しました、王太子殿下。後でキツク言っておきますので。」
「ええ。よろしくお願いしますね。」
私は触らぬ神になんとやら…で、とりあえず掛布団を確認することにしました。
今持ってみると、意外と子供の片手では重たくて、よくもまあ、持ち上げられたものです。
そして、何気なく掛布団の表面を見ていると、一部が裂けているのが目に目に入りました。
まさか、あの短剣で…?
今頃になって、やっと体に震えが走りました。
歯は煩いくらいカチカチと音を立て、体全体の震えは抑えられず、目の前の景色が滲みます。
「!?リーザ、大丈夫ですか?」
「お嬢さん、どうしたの?」
「大丈夫ですか?」
震えが止まらない私を、ルーがブランケットで包んでくれました。
そして、
「何があったのか、私に教えてください。」
そう言ってくれたのですよ。
ルーなら、あの隊長のように頭越しに非難しないだろうと判断した私は、昨日の様子を話すことにしました。
ただし、ルーには私のチート能力のことは内緒にしてあるので、そこは気を付けなければいけなかったけれど。