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13.ファーストコンタクト

途中から、名前が変わっており、びっくりして修正しました。気付かれた方が居たらすみません。今後は気を付けます。

そして、ブックマーク2200件を超えていました。ありがとうございます。

これからも頑張りますので、お付き合いください。

コツコツ…


眩しい部屋の中に、私とルーは足を踏み入れました。


ちらっと見た感じだと、どうやら、貴族たちは好きな場所に立っていて、貴族同士で挨拶をしたり、扇で口元を隠しながら談笑したりしている様子です。

あの中に、私のお父様とお母様、そしてお兄様もいらっしゃるのでしょうか?

あまりに多すぎて、見つけることを早々に断念したのは内緒です。


私たちが足を踏み入れた瞬間、ザワザワとしていた部屋が一瞬にしてシーンと水を打ったように静かになりました。

注目が一気に集まってきた様で、視線が痛いです。

好奇心を抑えられないものや、微笑ましげに見守るものの中に、刺すようなものがいくつか混じっているのがわかります。

きっとこれが先ほど王妃様もおっしゃられていた、自分の娘や孫娘を王族に嫁がせたい大人たちの視線なのでしょうね。

実際の5歳の少女なら怯えたかもしれませんが、私は歴とした大人なので、こんな視線に負けてやる気など毛頭ありません。

むしろ、顔を覚えておいて、後で仕返ししてやる!と思うばかりです。


ただし、相手を油断させる必要があるので、子供の演技は忘れませんが、ね。


会場は思った以上に広いです。前を向いて歩いているのに、向こうの壁が全く近づいて来ません。こんな広さを用意しなければならないほどなのでしょうか?

ほぼすべての貴族とルーも言っていましたし、改めて考えてみると恐ろしくなってきますね。


向かって右手側には少し高くなった場所があって、そこには国王様と王妃様が座られており、長い階段がインパクトを与えています。

まさか、あの階段を上る必要は…ないですよね?降りるときに転び落ちそうで嫌なのですが…。

左手側にはいくつか丸テーブルが用意されていて、その上には軽食が置かれているようです。どうやら立食スタイルらしいのですが、子供にはあの高さは無理でしょう。

折角王宮に来たのだから、おいしいご飯にありつきたかったのですが、食べられますかね?

マリーとレイラに頼んでみましょうか?いやいやいや、侯爵令嬢がお持ち帰りなんてばれた日には、家の名前に傷がつきますね。うう、残念。


そんな私の庶民感覚など知らないルーは、私が表情を曇らせたことをどう勘違いしたのか、私のルーの腕に絡めている腕をポンポンと叩いて安心させるように笑顔を向けてくれました。

とりあえず、ルーに大丈夫だというように微笑み返しておきましょう。


その仕草が見えたのでしょうか?

再びザワザワとした声が会場に広がります。


そして、やはりといいますか、階段を上るようです。

腕を絡めているので、ドレスは引きずるほど長いタイプじゃなくて本当に良かったと心から思いました。

足元が見えないと、階段を踏み外さないとも限りませんからね。


何とか檀上に上がると、国王様と王妃様の横に椅子が2脚置いてありました。

国王様と王妃様のものよりは劣りますが、それでも豪華な椅子です。

そこにルーと私が座ると、国王様が立ち上がられました。


「皆、良く集まってくれた。

王太子、ルーファスとアルフバルド侯爵令嬢、リーゼロッテがこの度目出度く婚約した。

これからも、我が国のために皆の協力が必要だ。よろしく頼む。」


パチパチと拍手が会場に響く。

上から見るとすごい光景です。圧倒されるくらいたくさんの人が見えました。

この貴族たちの上にルーは立つわけですね。

私は主人公が現れるまでの仮の婚約者ですが、想像しただけですごいプレッシャーです。大変だと思いますが、頑張ってください、主人公!!


「さあ、リーザ。踊りましょう?」

「へ?…え?ああ、はい!」


しまった!ぼんやりしていたから、一瞬何のことかと思ってしまいましたよ!

私たちが踊らないと他の人たちも踊れませんって、イエソン先生に言い含められていたのでした!

私は間抜けな返事をして恥ずかしかったのですが、ルーは気にした様子もなく階段を降りて行きます。

恐らく、私に合わせてくれているのでしょう。いつもより歩幅が小さいです。

相変わらず完璧ですね、ルー!


そして、下に降りて貴族が開けてくれたスペースに私とルーが並んで立ち、構えを取ると、音楽が流れ出しました。

流石王宮!生演奏ですか!一体どこにいたのかと思ったら、会場の上に専用のスペースがあるとのこと。

上なんて気にしていませんでしたが、下から見てもわからない工夫がされているとのことで、今度見せてもらう約束をしました。

まあ、今日が終わればもう会うこともないのですが、ね。

ちょっと、胸が痛い気がしましたが、お腹でも空きましたかね?

そういえば、ドレスを着てから少し軽食を食べたくらいで、その軽食も緊張のあまりいつものようには食べられなかったことを思い出しました。

早く終わって、思いっきりご飯が食べたい。


「…リーザ。」

「はい?」


ルーのダンスは完璧です。リードも上手なので、私はただただ楽しく躍らせてもらっていました。

そんな時に声を潜めて耳元で名前を呼ばれるとは、どこか間違えたかしら…?


「私と踊っている最中に何を考えていたのですか?」

「…え?」

「私のこと以外を考えていましたよね?」

「ええ、と…?」


どうしよう。ルーのこの感じ、答えるまで逃がしてくれない雰囲気です。

段々笑顔が怖くなってきました。


「何を考えていたの?」

「え、と…。…お腹、…お腹空いたなっ…て…」


うわー!バカー!!私の馬鹿ー!!

馬鹿正直に何を恥ずかしいことを答えているんですかね!!

何か無難なことでも答えておけば良かったのに、私の馬鹿ー!!


「…お腹…?」


ほら、ルーもぽかんとした顔してるじゃないですかー!!

呆れられた!絶対、呆れられた!!


「ふ、あははははははっ」

「ふぇ?」


いきなり会場に響き渡ったルーの笑い声に、私も周りの貴族も国王様も王妃様も一瞬何が起こったのかわからなかった。

ダンスをしながら大爆笑なルーは、傍から見たらおかしいと思うのだが、誰も止めない。

私、何かまずいことでもしてしまったのだろうか?というか、何がルーのツボに入ったのかまったくわからないのだけれど。


オロオロしてルーを見ていると、笑いが収まったのか目元に涙を滲ませながら…って、涙まで流しながら笑うってどこまでツボだったの!?

怪訝な顔をしていた私の体が、次の瞬間ふわりと抱き寄せられました。

そして、


「じゃあ、そろそろ何か見繕ってもらいましょう。」


クスクス笑いながら私の肩に顎を乗せて、耳元でルーが言う。

その顔が、いつもの大人びたものではなく年相応の笑顔に見えたので、私も思わず笑顔が浮かびます。


「期待してくれて良いですよ。今日の料理は特別手が込んでいますからね。」

「ええ、ルー。楽しみですわ。」


笑顔で、ダンスの終了を表す礼をして、ルーに手を取られててくてくと階段を上る私たちに、やっと貴族たちの止まっていた時が戻ったようでした。

檀上に上がってクスクス笑っている私たちに、国王様も王妃様も笑顔を向けてくれました。


その後、運ばれてきた軽食をいくつか摘んだ後、また階段を降りて今度は貴族たちに挨拶をすることに。

さて、ここからが勝負!






「これはこれは、王太子殿下。先ほどのダンスは素晴らしかったですな。アルフバルド侯爵令嬢とのご婚約も、おめでとうございます。」

「どうもありがとうございます。これからもよろしくお願い致しますね。」

「よろしくお願いいたしますわ、アンシュートル伯爵」


「ああ、王太子殿下。先ほどは素晴らしいダンスでした。アルフバルド侯爵令嬢とのご婚約も、おめでとうございます。

こちらは、我が娘のリーマイアでございます。さ、リーマイア、王太子殿下にご挨拶なさい。」

「は、はじめまして。リーマイアと申します。」

「初めまして、ハウツェンバー侯爵令嬢。ルーファス・ライアンベールです。こちらは、私の婚約者のアルフバルド侯爵令嬢です。」

「リーゼロッテと申しますわ。よろしくお願い致しますね、ハウツェンバー侯爵。リーマイア様。」

「あ、あの、よろしくお願い致します、りーぜろって様」

「仲良くしてくださいね。」

「あ、あの、もちろんですわ。」


私はこの挨拶で、敵と味方を判断しなければならない。なぜなら、この後、ルーの婚約者を狙う貴族たちによって、何が起こるかわからないのだから。

せめて、敵と判断した貴族には近寄らない等の防衛をしなければならない。

とりあえず、最後のハウツェンバー侯爵は黒。リーマイア様は確かまだ3歳だから、どちらかわからないけれど、多分父親である侯爵が仲良くすることは認めないでしょう。

侯爵に似ず、ふわふわの金茶の髪に、同じ色のくりっとした瞳が可愛らしい女の子。

こういう場でもないと同い年の女の子と出会う場もないから、仲良くなれそうな子を探したいのだけれど、ルーに手を繋がれているままでは、好き勝手に動くことも出来ないわ。

私は、娘や孫娘を連れてきている貴族で、味方になってくれそうな何人かを頭の中に記憶していく。

ここまで顔と名前が一致するのは、イエソン先生のおかげですね。

先生には、もう頭が上がらないというか、足を向けて寝れないというか。


「さて、リーザ。そろそろ時間も遅くなりましたし、私たちはここで下がりましょう。」


ルーに言われたので、私も会場から出て、ルーと一緒に歩く。

恐らく、お父様もお母様もお兄様も、今日は王宮のゲストルームに泊まるとのことなので、ルーが部屋まで私を連れて行ってくれた。


「どうもありがとう、ルー。」

「いえいえ、気にしないでください。それにしても、今日は疲れたでしょう?

ゆっくりお風呂にでも入って、疲れを取ってくださいね。」

「ありがとうございます。」


そう言って部屋に入ると、ルーも一緒に入って来た。


「あれ、ルー?どうかしました?」

「いえいえ、気になさらないでください。私もこの部屋なだけですから。」

「ああ、そうなのです…?え?今何て?」

「正式に婚約したので、これからリーザが王宮に泊まる際は、私と一緒な部屋なのですよ。」

「え?では、お父様とお母様とお兄様は…?」

「別の部屋ですね。」

「こ、困ります!私も家族と一緒の部屋に…」

「さあさあさあ、お嬢様!!お風呂に入ってマッサージ致しましょうね!!」


部屋に居たメイドさんたちが私の言葉を遮って、腕まくりしながら近づいて来た。

そのまま、両腕を取られて背中を押されて、お風呂の場所まで連れて行かれる。


「ちょっ…まっ…待ってえええええええええええええええええっ!」


部屋の中に私の悲鳴が響いた。

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