表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/403

転生王女の訪れ。(3)

※長くなったので分けました。二話同時更新なので、一話分抜けないようお気をつけください。

※糖分過多です。あと団長が結構情けないので、イメージを壊したくない方も回避推奨です。

 

「ええっと……確か弟が帰国した報告と、世間話を少し。……あ。後はお祝いの言葉も頂きました」


 考えながら伝える。けれど、私を覗き込むレオンハルト様の表情は晴れない。


「それだけ?」


 それだけかと聞かれると、少し迷う。

 世間話の延長線上とはいえ、私の記憶に残っている言葉がある。でも、それを婚約者に伝えるのは、ちょっとデリカシーがないかなと躊躇した。


「あとは、特に……」


 困りながらもそう返すと、レオンハルト様はスゥッと目を眇めた。

 節くれだった長い指の背が、そっと私の頬を撫でる。


「あんなに、可愛らしいお顔をしていたのに?」


「……ぅえっ……?」


 か、か、かわ、可愛らしいお顔!?


 責めるような声音よりも、告げられた言葉の内容に反応してしまった。


 だって、可愛らしいお顔って、レオンハルト様の主観でそう思ってくれたって事だよね!?

 どんな!? どんな顔をしたら、そんな事思ってもらえるの!?


 狼狽している私はレオンハルト様の目にどう映ったのか、彼の顔に悲壮感が漂う。顰めた眉や、伏せた目、陰りのある表情には、惹きつけられる色香があった。


「アイゲル家のご子息は、小さい頃から貴方を慕っていましたね。まさか、告白でもされましたか」


「!」


 ギクリと体を強張らせたのは、後から考えても悪手だったと思う。

 レオンハルト様の目つきが剣呑なものになった。


「ずっと貴方が好きだったと言われて、嬉しかった? 自分を選んでほしいと請われて、あんなお顔をしたんですか」


「!? い、いえ、そんなこと」


 話がどんどん現実から逸れているのに気付いて慌てた。


 初恋の人だったという言葉は嬉しかったけれど、あくまで思い出話。

 もしゲオルクが、レオンハルト様の言うように現在進行形で告白してくれたのなら、私は迷いなく断った。


 説明したくて口を開いたのと同時に、レオンハルト様の手が私の頬を包み込む。

 間近に迫った漆黒の瞳が、切なげに細められる。


「駄目だ。貴方は誰にも渡さない」


 宣言と共に、唇が深く重なった。

 目を大きく見開いた私の体を、そのまま伸し掛かるように押す。ソファの座面を後頭部と背中に感じて、押し倒された事を知った。


 そこで既に私の頭は容量オーバーで停止しているというのに。

 歯列を割り開き、ぬるりと厚みのある何かが咥内に入り込んできた。恋愛経験ゼロの私にパニックを起こすなという方が無理だ。


「……っ」


 反射的に軽く噛んでしまい、レオンハルト様は痛みに顔を歪める。


 ど、どうしよう。

 レオンハルト様を怪我させちゃった。拒むつもりなんてなかったのに。


「っあ、ごめ、ごめんなさ……」


 蒼褪めながら、震える声で謝罪する。

 嫌われたらどうしようって、そればかりが頭を占めた。


「怪我させて、ごめんなさい。……どうか、嫌わないで」


「……え?」


 一拍置いて、呆けた声が聞こえた。

 恐る恐る顔を上げると、声と同様に呆気に取られた顔が見えた。さっきまでの陰りはなく、悲壮感も綺麗さっぱり払拭されている。


 じっと私を見つめていたレオンハルト様は、少し躊躇する素振りを見せてから口を開く。


「オレに、嫌われたくない?」


「当然です」


 なんで半信半疑みたいな顔で、分かりきった事を聞くんだろう。


 即答すると、困惑が大きくなったようだった。

 首を傾げる私と視線を合わせる。


「庭園で、顔を赤くしていたでしょう。あの時、何を考えていたのかを教えてください」


「……!」


 少し考えて、思い当たった。

 再現するみたいに赤面した私の言葉を、レオンハルト様は黙って待つ。


 恥ずかしくて逃げ出してしまいたかったけれど、無理なのは分かっている。観念した私は、深呼吸を繰り返してから小さな声で答えを返す。


「……ゲオルク様に、可愛いって言われて」


 ぎゅっとレオンハルト様の眉間に皺が寄ったのに気づき、慌てて早口で言葉を続けた。


「レオンハルト様も、私を可愛いって思ってくれた事があるのかなって!」


「は……」


 驚きとも呆れとも取れる、吐息のような声に、羞恥が激しく込み上げる。


 で、ですよね! 何言っちゃってんだコイツってなりますよね!


 真っ赤に染まった顔を隠す為に、両手で覆う。


「あったらいいなって、ただの願望です……」


 消え入りそうな声で呟いた。

 このまま空気に溶けてしまいたいと、現実逃避気味に考えていると、ふいに強く抱き締められる。


「ある」


「え?」


「会う度……いや、会えなくても毎日のように思っている。貴方は誰よりも可愛らしく、綺麗だ」


「ひえ」


「陽光のような髪は揺れる度に輝いて、いつも見惚れている。青空色の瞳は、どんなに高価な貴石よりも美しい。白い手と魚の鱗みたいに小さな爪も好きだ。真っ直ぐな性質と優しさは美徳だし、好奇心旺盛で素直なところは、とても可愛らしいと思う」


「待って、無理無理無理」


 情報量が多すぎて受け止め切れない。

 あと過剰摂取で死ぬ。


 滔々と話すレオンハルト様の口に両手を押し付け、物理的に塞ぐ。

 また嫌がっていると勘違いされたくないけれど、こんな真っ赤な顔で涙目になっているんだから、流石に誤解されないだろう。


 至近距離で目を合わせた彼は、そっと私の手を外す。

 ちゅっと手の甲に唇を落としてから、指と指を絡めて握り込んだ。


「好きだ」


「ふぁっ?」


「好きだ。貴方を愛しています。……どうか、捨てないで」


 囁かれた言葉に、虚を衝かれた。


 す、捨てる?

 一生縁がないだろうと思っていた選択肢が、ぽんと出てきた事に戸惑いを禁じ得ない。


「す、捨てませんけど……」


「そうですよね……。貴方はそういう方だって分かっていたのに」


 訳が分からないまま答えると、レオンハルト様は恥じるように頬を赤らめた。

 落ち込んでいるワンコみたいに萎れた様子の彼は、なんというか……とても可愛い。


 ぐしゃぐしゃと乱暴に自分の髪を掻き混ぜてから、溜息を吐き出す。


「……貴方が、オレ以外の男の前で可愛らしい顔をしていたから、嫉妬したんです」


「!」


「同年代の男の方がいいと気付いて、婚約の話を無かった事にされたらどうしようかと。……本当に情けない」


 忘れてください、と困った顔で笑うレオンハルト様に、どうしようもなく胸がときめく。

 疑われたと怒る気持ちは、微塵もなかった。

 その畏れや怯えは、私にも覚えがある。真剣に恋しているからこそ、不安にもなると知っているから、ただ彼がとても愛しく思えた。


 身を起こそうとするレオンハルト様に手を伸ばし、硬い黒髪に指を埋める。

 そっと頭を撫でると、彼は動きを止めた。


 私の予想外の行動に驚いているレオンハルト様に、目尻と口角が緩む。

 大好き、可愛い、一生傍にいたいと叫ぶ心のまま、目一杯の愛情を込めて、笑いかけた。


「レオンさま、かわいい、だいすき」


「……っ」


 息を呑んだレオンハルト様の顔が、さっきよりも更に赤くなる。

 耳まで真っ赤になった彼は口元を押さえ、視線を逸らす。


「貴方の方が、よっぽど可愛いですよ……」


 力ない呟きも愛しくて。

 私は伸び上がって、彼の頬に口付けた。


 軽くキレたレオンハルト様に、「大切にしたいから、こういうのは止めろ(意訳)」と説教された私が反省したかどうかは、彼のみぞ知る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ぎゃーーーーーーーー\(//∇//)\\(//∇//)\\(//∇//)\\(//∇//)\\(//∇//)\\(//∇//)\\(//∇//)\\(//∇//)\\(//∇//)\\(//∇//)\…
キ,キ,キャアアアアア!悲鳴あげちゃうのにこういうの好きな自分にこまってます!
[一言] あぶァァァァァ…_(┐「﹃゜。)_…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ