プロローグ
何でぇええええ!?
物陰に隠れながら私は、心の中で絶叫した。
呆然とした私が見守る先。王宮の中庭にある、綺麗な形に剪定された木々の間から見えるのは、寄り添う男女。
女性の方は、先ごろ異世界より招かれた神子姫。
髪は柔らかなシフォンベージュのミディアムボブ。ぱっちり二重の大きな目に、小ぶりな鼻と、うるツヤなピンクの唇。幼さの残る顔立ちとはアンバランスな、大きな胸。
男性だったら全力で守りたくなるような、華やかな美少女。ぶっちゃけ私の好みだ。ぜひともお友達になって、近くで見守りたくなる可愛さだけれど……今は、そんな風に思えない。
男性の方は、黒を基調とした騎士服に身を包んだ、近衛騎士団長。
クセが強く堅そうな黒髪に、鋭い眼光を放つ黒い瞳。雄々しい美貌は、三十を超えて衰えるどころか、魅力を増している。
女性とは頭一つ分以上の差がある長身と、鍛え上げられた逞しい体躯。
今日も恰好良過ぎて目が潰れそうになる……なんてウットリしている場合でも無い!
王子に貴族に護衛騎士、魔導師、神官、暗殺者。
結婚相手の選択肢は溢れる程にあり、選り取り見取り状態。逆ハーレムも夢では無い筈の彼女が、何故よりにもよって、私の最愛の方と抱き合っているの!?
一体何処で私は選択肢を間違えたのか、誰か教えて下さい……。
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