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『行く先々で問題を起こす“煙の魔女”とパーティーを組んだんだけど、私の胃は限界かもしれない』  作者: 夏カボチャ 悠元
家族の形、いるべき場所といたい場所

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49、アシミーの覚悟

 ゆっくりとした物音に混ざる素早く大きな物音にアシミーはすべての触腕髪を大きく広げ、両手に【水弾】を作り出していく。


 アシミー:なんなのよ……それにさっきの冒険者って、多分だけど、冒険者ギルドで見たことあるような気がするし……


「余計なこと考えてたらダメね……」


 ガサガサ……ザザザザザ……


 間近に迫る音にアシミーの頬を汗が伝う。

 暗闇に支配された森の中でアシミーは自身の瞳に魔力を集中させる。


 蜘蛛ダコの亜人であるアシミーは、覚悟を決めたように額から複数の目が開眼すると複眼へと変化させていく。


 アシミー:本当にこれをやると疲れるし、数日戻せないのよね……ただ、今はネルもいないしなぁ……


 四方八方から次第に迫る音に集中していく。

 そうして、アシミーの前に音の主が姿を現すとその姿にアシミーは自身の目を複眼にしたことを多少後悔した。


「こんな不気味なモンスターは初めて見るわね……植物ゾンビっていうのかしら……」


 十数体の首なし兵が姿を現すと、アシミーは悩まずに攻撃を開始する。


 両手に集めていた【水弾】を正面に目掛けて撃ち放つと、即座に触腕髪から鋼糸をムチのように振るい木々諸共、首なし兵を切断していく。


 盾を前に出しながら、鎧を纏った首なし兵が剣を振り上げ斬りかかる。

 しかし、アシミーは剣を鋼糸でしっかりとガードすると首なし兵の手を絡め取るように全身へと鋼糸を操作する。


 鋼糸により、鎧ごと切断された首なし兵が地面に転がると、アシミーは無数の鋼糸を縦横無尽に動かし、周囲は一気に無数の肉塊が転がっていく。


「鎧くらいで、防げると思ったら大間違いよ! 元Bランクの実力を教えてあげるわ!」


 そう口にしたアシミーは、再度、驚愕する。

 先程、切断したはずの首なし兵の体から無数のつるうごめき出し、切断したはずの体を引き寄せては連結していく。


「はあ! そんなの反則じゃない!」


 だが、同時に復元されない首なし兵の姿もあり、アシミーは必死に状況を整理しようと頭を働かせていた。


 アシミー:やっぱり、弱点があるはずだわ、アシミー考えなさい! あの動かない奴らは、どのタイミングの攻撃だった。


 険しい表情を浮かべるアシミーの背後以外の全方向から、首なし兵が一斉に剣、槍といった武器を手に突進する。


 鋼糸だけで防ぎ切れない攻撃にアシミーは両手を前に伸ばすと【水の盾(ウォーターシールド)】を展開する。


 向かってくる首なし兵が水の障壁に阻まれる中、そのうちの一体が、勢いのままに水の障壁へと突撃する。


 慌てたアシミーだったが、次の瞬間に首なし兵が力無く、その場に倒れ込む。


「なに、どういうことよ」


 そんな呟きの先で、首なし兵の頭部部分から、膨れ上がった種が体から外に弾き出される。


 種は最初こそ、芽をつるのように動かしていたが、やがて動きを止めて砕けていく。


 一連の流れを目の当たりにしたアシミーは一目散に駆け出していた。

 方角は、テントを張った湖であり、アシミーは悩まずにテントとは反対側の位置に向かう。


 アシミー:お願いだから、間に合って!


 アシミーの背後からは、無数の足音が付いてきており、更に馬の声はしないが、蹄の音が聞こえてくる。


 後ろを確認することも出来ない状況の中、湖がアシミーの視界に入っていく。


 しかし、背後から一気に疾走する蹄の音が距離を詰め、風を斬り裂くような音がアシミーの背中すれすれに放たれる。


 回避ではなく、空振りだった。アシミーがあと数センチ身長が高ければ、頭部から背中に僅かながらにダメージを刻まれたことだろう。


 ただ、アシミーは湖に到着すると同時に水面に向けて大きく飛び、水中へと潜っていく。


 アシミーの行動に、首なし兵達はその場に停止すると、弓を手にした首なし兵達は一斉に矢を放つ準備を開始する。


 アシミー:水中の敵も逃がさないってことみたいね……咄嗟に反対側に逃げて正解だわ……あのままテント側に行ってたら、グラードまで続く村や町がやばかったわね……


「ただ、水中にいる私を殺そうなんてナメてるわね……水性亜人の力をたっぷり教えてあげる!」


 アシミーは水中で、両手を広げていき、水の流れを両手に感じさせると人差し指で円を描いていく。


 水中で【水操作アクアオペレイト】を発動させると、次にアシミーは無数の【水弾】を天高く発射する。


 【水弾】に気づいた首なし兵達は、一斉に矢を放つが、水弾を貫通した矢が勢いを失うばかりで、消えることはない。


 それでも止まらない矢の雨に対して、アシミーは不敵に笑っていた。


 水面は穏やかなまま、その下では無数の波が発生しており、落下した矢は文字通り無力化されていく。


 矢が次第に勢いを無くしていくと同時に、アシミーは無数の【水弾】を空中で回転させると【アクアショット】を発動させる。


 回転しながら、放たれる【アクアショット】は空中で解除されることで散らばり、大粒の雨と同じような大地に落下する。


 矢が完全に止むとアシミーは水面に顔を出して、首なし兵達の様子を確認する。


 逃げるように走る姿もあれば、盾を空に向けて防ごうとするもの、既に動けないものと、複数の動きがアシミーの目からも確認することができた。


 アシミーは追い討ちを掛けるように、盾を持った首なし兵の真っ正面から【水弾】を放っていく。


 【水弾】が直撃した首なし兵が引き飛び、木々にぶつかると動かなくなり、種が体から吐き出される。


「やっぱり……これなら、数がいても問題ないわね!」


 アシミーが叫ぶと同時だった。


 3メートルを超える長槍がアシミー目掛けて放たれる。


 咄嗟に回避したアシミーの脇腹ギリギリを長槍が通り抜け、衣服を掠めていく。


 すぐに水中に身を隠したアシミーの鼓動は凄まじく早く脈動していた。


 アシミー:なによ……どこから投げてきたってのよ。周囲には視線を向けてたし、つまり私の視える範囲外ってわけ? 悔しいけど、限界だわ……ネルとアイシャに合流しないと……


 撤退を決めたアシミーが湖の中を移動しようとした瞬間、水面に何かが叩きつけられるような振動を感じた。


 無数の着水が水を振動させると、アシミーは水面側から見えた光景に驚きを顕わにする。


 首なし兵が次々に水面に叩きつけられ、最後の足掻きと言わんばかりに斧やハンマーなどを水中へと投げ込んでいく。


 勢いはないが、水中に広がる無数の刃物が落下し、更に力を失った首なし兵も障害物として沈んでくる。


 必死に回避しながらアシミーは水中を移動するが、そんなアシミーの頭上からは位置がわかっているかのように長槍が落下していく。


「なんなのよ! なんで、水中なのに、私の位置がわかるのよ」


 絶望的な状況で、アシミーの目前に次々と刃物が降り注ぐ。


 必死に回避するアシミーの片足に鋭い痛みが走った瞬間、真っ赤な鮮血が湖に広がる。


 それを標的にしたように更に激しい投擲が開始され、アシミーの行く手は瞬く間に刃物の海へと変化する。


「湖なのに……刃物の海なんて、皮肉過ぎるわね……ネル、アイシャ……ごめん、私ってば、ここまでみたいだわ……」


 アシミーの呟きが水中の泡になると同時に複数の長槍が水中へと投げ放たれていく。


 水面側が振動した瞬間、アシミーは覚悟を決めたように両手に魔力を込めていく。


「散るなら、派手にいかないと……私はネルの、ネル・ニルガルの唯一の親友なんだから……」

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