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『好きに生きるから楽しいのさぁ』☆アウトローズ☆問題児たちに常識を  作者: 夏カボチャ 悠元


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4、気づけば膝の上にアシミー

 ネルとアシミーは、互いに顔を合わせる形になっていた。


 ネル:突然、ボクちゃんが魔物を燃やしちゃったから、きっとアシミーちゃんてば、びっくりで混乱してるのよね。ボクちゃんとしたことが反省だなぁ。


 その場の状況を冷静に考えるように首を傾げるネル。それに対して、アシミーは、深刻な表情を露わにしてから、深いため息を吐いた。


 アシミー「本当に、本当に! なんなのよぅ……おかしいでしょ、“キラービーナ”の討伐推奨ランクは単体でCランクだけど、5匹でBランク推奨になる魔物なのよ……」


 アシミー:普通はこうならないのよ。普通はCランク冒険者なら4人で2匹、Bランク冒険者でも1人で2匹くらいが妥当なのよ……だから、無傷なんてありえないのよ。


 頭を抱えたアシミーは、怯えながら自分の口を慌てて押さえると、ネルに恐る恐る、視線を向ける。

 視線を向けられたネルは、どうして、アシミーが口を押さえているかが分からないと言った具合に、首を傾げながらも口を開いた。


 ネル「まぁ、気にしたらダメさぁ、ボクちゃんからしたら、虫がランクCなんて話の方が信じられないからねぇ」


 ネル:今、アシミーちゃんとちゃんと会話できてるんだよねぇ、ボクちゃんは心から思うんだ、幸せはこうやって生まれるんだって……ボクちゃんにも、理解できたんだからさぁ。


 アシミー:なんで、嬉しそうな表情になるの……おかしいのが、まるで私みたいな顔をするの、本当にやめてよ、分からなくなりそうなのよ。


 そうして、僅かな静寂が流れていく、その空気に耐えられないと言わんばかりに動き出したのは、アシミーの方だった。


 軽く肺に酸素を送り込み、ゆっくり吐き出した後に、ネルへの問い掛けを口にする。


 アシミーが求めたのは、丸呑みにした『魔玉【水性亜人操作】』についての説明であり、それを聞いたネルは何を思ったのか、口角を吊り上げて、この日一番の笑みを浮かべる。


 ネル:少しだけでも、アシミーちゃんとボクちゃんは分かり合えたんだねぇ〜。

 だって、ボクちゃんに興味を持ってくれたんだもんねぇ……嬉しいよぅボクちゃんは、アシミーちゃんになんでも説明してあげるさぁ。


 ネル「まずは、ボクちゃんがどうやって、魔玉を丸呑みにしたかの、種明かしからだねぇ」


 互いの位置を確認するような仕草で、ネルはアシミーに見えるように大きく口を開いていく。


 ネル「見ての通り、口の中には何もないだろう。今から使うスキル、【入煙にゅうえん】と【出煙しゅつえん】を見せてあげるねぇ」


 アシミー:見たくない、見たくない! ワケの分からないスキルより、口で説明してよー!


 ネルがスキルを使うと知るとアシミーの表情が次第に青ざめていくが、諦めたように俯向うつむくと、表情を改めて、ネルに視線を向ける。


 アシミー:何を言っても通じないなら、全部受け入れるわよ。どうせ、今の状況なら、助からないのなんて、最初からわかってるんだからさ……


 ネル:アシミーちゃんが真剣にボクちゃんのスキルについて聞きたがってるのが、表情からわかるよ。友達になるって、お互いを知るところからだもんねぇ……頑張らないと!


 アシミー「初めて聞いたスキルだけど、それでどうやって、魔玉を消すのよ?」


 ネル「【入煙にゅうえん】だけどねぇ、このスキルは、のどを通るサイズの物を収納できるスキルなのさぁ」


 アシミー「え、アンタってば、収納系のレアスキルまで使えるわけ!」


 アシミー:聞いてないし、前情報にないスキルばっかりじゃない……バカバケットのやつ、こんな危ないスキル持ちに私をぶつけたわけ、ありえないわよ……


 ネル「反対に【出煙しゅつえん】が取り出すためのスキルだよぅ。すごいでしょう〜」


 ネル:あぁ、アシミーちゃんがびっくりした顔は可愛いなぁ、ボクちゃんの話をこんなに真剣にきいてくれるんだもん。


 アシミー「え、えっと……でも、口に入らない場合はどうするの……」


 アシミー:今は、少しでも、ネルの情報を聞き出して、生存の確率を多少でも上げないと、間違いなく人生が終わる……むしろ、終わり掛けてる気がするわよ。


 ネル「アシミーちゃんは鋭いねぇ? ただ、無理なものは無理だから、そんな時は【煙縄もくなわ】を使って持ち運びをするのさぁ」


 ただ、楽しそうにその場に胡座あぐらをかいて喋るネルに、ぎこちない笑みを浮かべるアシミー、互いの温度差は一目瞭然だが、ネルがそれに気づく様子はない。


 アシミー「そうなのね……アンタって、便利なスキルも多いのね。話を聞いてたら、本当にびっくりよ……」


 ネルを見つめるアシミーちゃんは、会話を終えてから、少し悩むように口を閉じる。

 突然の静けさに、ネルが焦ったように話題をふっていく。その内容は単純な世間話というには、寂しい時間についての内容であり、アシミーは無視することなく、耳を傾けていた。


 語られた内容は、ネルが強力な『職業ジョブ持ち』として、生まれてからの記憶だった。

 優しい母親とダメな父親に育てられ、それでも幸せだった記憶。


 幼い頃に熱を出した際に、飲んだくれの父親が必死に走って、村の薬師を呼んでくれた記憶。


 山賊に村が襲撃されて、家族を失った記憶。


 床の食料庫に投げ込まれ、隙間から父親が母親を庇い共に殺された記憶。


 1人泣きながら、彷徨っていた際に、山で老婆に出会い、魔物や戦い方を学んだ日々の記憶。


 老婆が寿命を迎え、3年間の幸せが終わりを迎えた記憶。


 それから1人で生きて、村を襲撃した山賊を皆殺しにして、たくさん泣いた記憶。



 すべてのネルを語るように、淡々とネルはアシミーからの反応を待つように喋り続けていく。

 ただ、アシミーは一言も言葉を返さずに、ゆっくりと震えるように頷くのみだった。 


 ネル:どうしよう、どうしよう! ボクちゃんだけが話し過ぎたから……アシミーちゃんに話す順番をあげなかったからかなぁ、ボクちゃんだけがずっと喋ってるじゃないかぁ……


 アシミー:ネルの過去って、知らなかったら、絶対にこんなこと思わなかったのにさぁ。

 ずっと1人で生きてきて……優しい人とサヨナラして、また1人で生きてって、怖がってた私がバカみたいじゃないのよ!



 アシミー「決めたわ! アナタ……じゃなくて、煙の魔女=ネル・ニルガル! 私はネルの仲間になる……」


 アシミー:もしかしたら、ネルは私の言葉にバカにされたって感じて、殺されるかもしれない……分からないけど、そうだとしても、このまま死ぬより、私も素直に最後くらい言いたいことを言いたい。


 ネル:聞き間違い……違うよね! 違うよね! 今、ボクちゃんと友達になるって、仲間になるって! ボクちゃんに本当の友達ができたんだ!


 ネル「あはぁ! ボクちゃんとお友達になってくれるんだねぇ、嬉しいよアシミーちゃん!」


 アシミーを前にネルが立ち上がる。素早く伸ばされた両手がアシミーを包み込み、ネルは無邪気に笑った。


 アシミー「だから、抱きつかないで、私は大人なのよ! もうぉぉぉぉ!」


 抱きしめた後、ネルはアシミーを膝の上へと座らせ、採れたての蜂蜜を2人は食べていく。


 アシミー「本当に、頭に蜂蜜を垂らさないでよ? 私の触腕髪《タコ足》が蜂蜜まみれなんて嫌なのよ」


 アシミー:なんで、いきなり、膝の上なのよ。距離感が近過ぎるのよ……しかも、ニヤニヤしてるし、まったく。


 ネル「はいはい〜! 絶対に大丈夫さぁ、ボクちゃんはアシミーちゃんを大切にしたいからねぇ」


 アシミー:本当に……怖がってた私の時間を返して欲しいわ。まったく、なんていうか……子供なんだから!


 アシミー「はぁ……なんか、調子が狂うわね。でも、バケットに“様”をつける生活よりは、ずっとマシなのよ」


 それから、何故、アシミーがバケットの手下にされたのかについて、ネルは不思議そうに問い掛けた。


 アシミーは、静かに俯いてから、消えそうな声で、自身に起きた「最悪」という名の日々を語り始めた。


読んでくださりありがとうございます。


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これからも頑張りますので、よろしくお願いします。


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