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『行く先々で問題を起こす“煙の魔女”とパーティーを組んだんだけど、私の胃は限界かもしれない』  作者: 夏カボチャ 悠元
危険な魔女と亜人の少女

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13、探し物はどこ?

 ネル:ボクちゃんは、淑女しゅくじょだから、バケット(ゴミ)はちゃんとキレイにしないとねぇ、散らかしたままはダメだもんね〜ふふふ〜ん。


 嫌な汗臭さと排泄物のニオイが広がる屋敷の中をネルは玄関に向かってゆっくりと歩き出していく。


 常人ならば耐えられないような不快な悪臭が広がる屋敷でネルは悩まずに手を動かし続けていた。

 散らばった人間だった“それら”を手早く廊下の端に並べながら笑みを浮かべる。


「ふぅ〜、アシミーちゃんのために頑張りすぎちゃったなぁ。ボクちゃんってば、本当に淑女しゅくじょ過ぎて、自分でもびっくりしちゃうよぅ」


 ネル:軽く遊んじゃったのは反省だけど、ボクちゃんは最高に友達思いだよねぇ。


 一頻ひとしきり、片付けを行ったネルは、次に屋敷の中を散策していた。

 目的の魔玉【水性亜人操作】を見つける為に鍵の掛けられた部屋を次々に調べていく。

 扉を破壊し、室内に入ったネルは視線を泳がせてから、指を1本伸ばしてからニヤリと笑う。


「ボクちゃんは、宝探しも得意なんだよぅ……あはぁ! 【終煙しゅうえんかい】発動さぁ〜」


 魔玉があれば反応するスキル【終煙しゅうえんかい】を使い、室内に魔玉があるかを調べていく。


 ネルは指を伸ばし、室内をぐるっと見渡す。


「う〜ん、この部屋はないかぁ……ハズレだねぇ……まぁ、部屋はいっぱいあるし、次の部屋だねぇ」


 そうして、ネルは次々に鍵付きの部屋を調べながら、同様の行動を繰り返していく。


 次第に鍵付きの部屋が少なくなり、ネルは苛立ちを声に出しながら歩いていた。


「もう! なんで見つからないのさぁ。ボクちゃんは宝探しが得意なはずなのにさぁ! きっと│バケット《アイツ》が性格悪すぎて、見つけられないようにしてるんだねぇ!」


 頭から湯気ではなく、煙を吹き出しながら歩くネル。それでも、ネルの探す魔玉【水性亜人操作】を見つけられずにいた。


 3階から2階へ、最後に1階へと降りるがやはり、スキルに反応はなかった。


 次第にネルの表情が怒りから、不安を感じさせるものに変化する。

 自信に溢れていた口角が下がり、余裕があったはずの瞳は次第に泳ぎ出していく。


「もしも、このまま……魔玉が見つからなかったら……アシミーちゃんにせっかく格好つけたのに、カッコ悪いじゃないかぁぁぁ!」


 ネルは叫び声を上げながら、最後の扉を蹴り破ると室内へと【終煙しゅうえんかい】を発動させる。


「なんで魔玉の反応がないのさぁ! 魔玉があればすぐに分かるのにぃぃぃぃ! やっぱり、バケット《アイツ》が悪い! ボクちゃんに見つけられないなんて許せないじゃないかぁ!」


 苛立ち、室内を歩き回るネルは、ある事実を思い出して声をあげる。


「あ……3階にバケットがいたんだから、やっぱり3階しかないじゃないか!」


 ネルは階段を駆け上がり、3階に到着したと同時に指を伸ばす。スキル【終煙しゅうえんかい】で魔玉の位置を確認するように歩いていく。


 そして、ネルの伸ばした指から煙が僅かに見え始めると、ネルはニヤリと笑みを浮かべた。


「あはぁ、やっぱりボクちゃんは宝探しの天才さんじゃないかぁ。さぁ、ボクちゃんの見つけた素敵な宝物は何処かなぁ〜」


 指先から流れる煙が次第に勢いを増すと、煙が1箇所に向けて魔物の形に変化して動きだしていく。


「やっぱりじゃないかぁ! ボクちゃんがこんなに探してたのにさぁ! はぁ、まぁ……いいや。とりあえず椅子が邪魔だなぁ」


 バケットが座っていた悪趣味に装飾された椅子をネルは、横倒しにすると裏側を覗き込んでいく。


「あはぁ! 見つけたぁ……椅子の下に隠すなんて、ボクちゃんにはお見通しなのさぁ」


 ネル:これでボクちゃんとアシミーちゃんを引き裂く可能性のあるゴミみたいな魔玉は手に入ったなぁ。


 指で魔玉を掴むとネルは、内容を確認するように見つめてから、スキル【終煙しゅうえんかい】により、魔物化した煙を嗾ける。

 すぐに魔物化した煙が魔玉を噛み締め、次第に魔玉にヒビが入り始める。


 魔玉がゆっくりヒビ割れていき、限界を迎えた瞬間、粉々に砕け散る。


 粉塵になった魔玉が開かれた窓から吹き込んだ風により、粉雪のように室内に舞散っていく。


「う〜ん、よし、お外に出て勝利の一服と行こうじゃないかぁ〜」


 屋敷の外へ出たネルは、円を描くように指を動かすと煙の輪を作り出すと、おもむろに煙の輪へと手を伸ばす。


 ネルは【出煙しゅつえん】スキルを発動させる。

 1本の紙煙草を取り出すと、ネルは指先に【火煙かえん】を発動させ、小さな火を作り出すと煙草の先端を焼いて火を付けていく。


 煙草の煙を肺全体に流し込むように一気に吸い込み、勢いよく煙を吐き出す。


 ネル:最高の瞬間だねぇ。ボクちゃんてば、アシミーちゃんと会ってから、ずっと我慢してたんだから、本当に偉いじゃないかぁ〜。


 自身にご褒美を与えるように、再度ネルは煙を流し込む。

 内側に溜まったイライラのすべてを吐き出すように煙を天高く吹き出していく。


「あはぁ……最高の瞬間だねぇ……食事のあと、遊んだあと、何をしても止められない魅惑の香りがたまらないよねぇ……でも、アシミーちゃんと一緒の時間と比べたら、アレなんだよねぇ……」


 すべてを焼き尽くされ、閑散としたバケット邸の庭をネルは見つめていた。

 静かに一服を楽しむネルを静まり返った空気が包み込むように風が吹き、煙草の煙が風に靡く。


 それと同時にネルは、僅かに眉を動かした。


 ネル:あれれ〜? 【煙視もくし】に反応があるじゃないかぁ! 真っ直ぐにボクちゃんを目指して進んで来てるみたいだねぇ……また、ワンちゃんかなぁ? ブタさんかなぁ……


「それとも……新しいおもちゃかなぁ……素敵な素敵で可愛いお人形なら、ボクちゃんが可愛がらないとだよねぇ〜」


 もう1本、煙草を取り出すと静かに火を付ける。


 ネル:愛しの煙草『カプリス・ヒンメル』がボクちゃんを興奮させてくれるのに……新しいオモチャまで……本当に最高じゃないかぁ。


 煙草を咥えたまま、反応が示した方向に視線を向けていく。

 ネルの視線が一点へ向けられ、近づいてくるであろう存在に対して、ネルは早鐘を鳴らすように笑みを作り出す。


 【煙檻煙摩牢もくおりえんまろう】と【煙視もくし】を同時に発動されている歪な状況であり、そんな誰もが違和感を感じるような空気を無視する存在に対して、興奮を顕わにする。


 周囲が煙に包まれた視界の先に揺らめく人影、ネルは完全に対象を捉えると興奮を隠さずに両手を広げる。


 咥えられた煙草を一気に吸い込み、ネルは最初の一歩を踏み出していく。


 ネル:強いのかなぁ……あぁ、たぎってたぎって仕方ないじゃないかぁ、止まれなくなっちゃいそうだよぅ!


 相手との距離が僅かになり、腕一本分の視界が霞む状況になる。


 ネル:あはぁ! さあ、どんな姿でボクちゃんを襲いにきたんだぁぁぁぁい!


 煙の先に迫った影に向かって、ネルの腕が振り抜かれようとした瞬間、影から聞こえてきた声にネルは動きを鈍らせた。


「ネルゥゥゥ! どこなのよぅぅぅ!」


 力いっぱいに響いた叫び声にネルは耳を疑った。

 どこか泣き出しそうな声がバケット邸の森にこだまする。


 ネル:今の声って、え? あれ……なんで……だって、アシミーちゃんは……今は街に帰ってるはずじゃ……


 瞬間的に両手を包むように作り出されていた【煙撃えんげき】の刃が霧散する。


 それと同時にネルの正面から、高速で顔面を貫くように伸ばされた無数の鋼糸が一斉にたばになり、槍のような速度でネルの顔面へと放たれていた。


「うわ! 【入煙にゅうえん】!」


 顔面に放たれた無数の束を収納スキル【入煙にゅうえん】に吸い込ませることで攻撃を回避したネルに、慌てた様子の声が叫ばれる。


「もしかして、ネル! ご、ごめん。目の前に影が見えて慌てちゃって」


 慌てるアシミーに、ネルは訝しげに首を傾げると、違和感を感じたように語り掛けていく。


「アシミーちゃん? ボクちゃんは大丈夫だよ〜ただ、喋り方が違うからびっくりしてるけどねぇ」


「あ、ごめんなさい。ずっと、“なのよ”とかつけてたもんね。普段はそんな語尾はあんまり使わないのよ」


 少し恥ずかしそうに話し出すアシミーの顔を確認するネル。

 理由を聞いたネルは呆気にとられた後に、目をニヤつかせるとアシミーへと抱きつこうとする。 


 だが、アシミーも同様に不思議そうな表情をネルへと向けていた。

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