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もしかして俺って、もつれた状態? ~現実と異世界に別れた場合、上手くリンクできるのかな?~  作者: イニシ原
第3章 

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第3章 第一話 世界が絡まり始めた第十話:鏡合わせの指先が引き起こした入れ替わりの罠と、かまぼこ目から零れ落ちた真実の涙

「ねぇ、これって本当にゲームなんだよね? リク?」


 さっきまで、不安そうな――

 美月は困惑していた顔で、俺を覗き込んでいる。

 

 ……無理もない。


  美月から見た、画面内のキャラ”ミヅキ”が美月の隣にいる俺を指している。

  そして、意味ありげな話をしているものだから、見間違うのも当たり前だ。

 

  ……でも。

 

「安心してよ! 美月」


 俺はなんとか落ち着きを取り戻して、隣の美月にしっかりと向き直った。

 彼女の目を見つめて言い切る。


「俺の考えだと――これは普通のゲームじゃないね」


「ふーん、そうなんだぁ……」


 美月は一瞬、安心出来たようだった。


「うん」


「じゃあ、これはなんなのよ!? リクももう一人いるし、なんだか怖い白い女の子とどこか一緒に行っちゃうの!?」


 美月の声が一段高くなる。

 モニターの中のミヅキを指差しながら、怒ったり混乱したり、もう大変な騒ぎだ。


「あの子、私と同じ発音の名前なの? 面白いわ」


 美月のことを指差しミヅキも、可愛くケラケラ笑う。


 その時だ。二人の指先から、陽炎のような”何か”が立ち上っているのが見えた。

 ……空間が、歪んでいる?

  集中して目を凝らす。

 モニターの表面が水面のように波打ち、境界線が溶け出していた。


「――危ないっ!」


 モニターが爆発する、あの嫌な予感が脳裏をよぎる。

 俺は反射的に、”彼女たち”を、抱きかかえ伏せていた。


「きゃあ!」

 彼女たちも突然のことで悲鳴をあげた。


 二人の短い悲鳴が重なる。

 俺は固く目を閉じ、衝撃に備えた。


 ――だが。

 数秒待っても、爆発音も、破片が飛び散る音も聞こえてこない。


「……あれ?」


 恐る恐る顔を上げると、モニターは無傷のまま、静かに光り続けている。


「よかった」


 安堵が胸を撫で下ろす。

 でも、これからは俺だけじゃなくて、”彼女たち”にもモニターの異変には注意してもらわないといけないな……。


 そんなことを考えていた時、背筋に一筋の戦慄が走った。


 だが、どう考えればいいんだろう?

 今まで起きた出来事が、俺の常識を軽々と飛び越えすぎていたせいだろうか。

 俺は、もう驚くことさえできなくなっているようだった。


 むしろ、喉の奥からおかしな笑いが込み上げてくる。


 ……まあ、いいよね。

 二人が入れ替わっていてもさ。


 そう思った瞬間、現実がようやく形を持って見えてきた。


 俺のすぐ隣には――

 美月の姿をしたミヅキが、当たり前のように座っている。

 距離が近い。

 近すぎる。


 彼女は俺の反応なんて気にも留めない。

 にこにこと笑いながら、至近距離で俺の匂いを嗅いでいた。


 一方で――。


 ゲームの異世界。

 そこに立っている、ミヅキの姿をした美月。

 魂が抜けたみたいに、ただ突っ立っているだけだった。


 目は開いているのに、何も見えていない。

 声をかけられても、きっと反応しないだろう。


「あはっ。リクと一緒だと楽しいわ」


 美月の姿をしたミヅキが、楽しそうに言う。

 まるで、前からここにいたみたいに。


「このモニターっていう中に、こんな世界があったのね。ちょっと、外に出てきてもいいかしら」


 そう言って、彼女は立ち上がり、部屋のドアを指差した。

 その瞳は、子供みたいに輝いていて――

 今にも、この世界の向こうへ踏み出しそうだった。


「……っ!」


 その瞬間。

 頭の奥に、冷たい水が落ちた。

 遅れていた思考が、一気に戻ってくる。


「そんなことやめて!」


 今まで放心状態だった、ミヅキが大声を出した。

 話は、ずっと聞いていたのだろう。

 美月を引き留めるように、声を張り上げる。


「私の体で、勝手なことをされたら困るわ。それにこれってどうやったのよ!? もしかして私……これからずっと、こんなゲームの世界で生きて行かないといけないの? ねえ、リク……」


 今にも、ミヅキのかまぼこ目から、涙が零れ落ちそうだった。


 それを見ている美月は、答えを出さないまま、静かに考えていた。

 沈黙が、さらなる不安を煽った。


 その空気を、俺が遮った。


「待って。そんなことより、二人が入れ替わってしまった方が大変だよ。それを直さなきゃ、世界がどんどん絡まって……取り返しがつかなくなる」


 元に戻したい。

 とにかく、美月とミヅキを。


 思い当たるのは、お互いが指を差し合った、あの瞬間だけだった。

 理屈はわからない。

 けれど、もう一度同じことをすれば、あるいは元に戻るかもしれない。


 だが、俺には躊躇いがあった。

 もし、指を差し合って……さらに事態が悪化したら?

 次は誰と誰が入れ替わるのか、あるいは、二人の存在そのものが消えてしまうんじゃないか。


 一度ありえないことが起きてしまった今、崖っぷちを歩くような恐ろしさが伴っていた。


 ……その時、俺の横に立つ美月が、いつもの気軽さのように言った。


「もう、仕方ないわね。少しこっちで遊んだら、向こうに帰ってあげるわ」


「え……?」


 耳を疑った。

 美月の言っていることの意味が、すぐには理解できなかった。


「それって……美月が、やろうと思えばいつでも入れ替えられる、ってことだよな?」


「もちろん。そのつもりで言ったのよ」


 彼女は、驚く俺の顔を不思議そうに見つめ返した。

 まるで「そんな当たり前のこともわからないの?」とでも言いたげな、澄ました顔。


 不思議なものだ。

 あれほど焦っていた俺の心に、いつの間にか小さな安心が芽生え始めていた。

 理由なんてわからないが、彼女に任せておけば、案外うまくいくんじゃないか……

 なんて。


 でも、その時だ。

 ミヅキの姿をした美月が、まだ泣きそうな声で絶叫した。


「リクぅ……っ! 信じちゃダメよ! そいつは子供でもないし、人間でもない!」


 突き刺さるような警告。

 彼女は、震える指で”俺の隣にいる存在”を指さした。


「人の血を吸う、吸血鬼なんだから……っ!」


「…………え?」

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