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CHAPTER17『賭場に燃ゆる赤猫の影』

はぁ〜……やっぱこの人、空気読めない天才っすわ。

怒鳴って、突っかかって、勝手に暴れて……もう完全に賭場荒らしじゃないっすか、ドロガンさん!?

敵の目がギラッギラなんですけど!

ドロガンさんのせいで戦争始まりますよ〜!?




暴れ始めたドロガンの勢いは、もう誰にも止められない。


「どりゃああああぁッ!!」


雄叫びとともに、屈強な獣人たちを次々と弾き飛ばしていく。



転がる賽子サイコロ、宙を舞う銭箱、飛び散る酒と菓子、そして札束――



まるで嵐のような破壊に、場の空気が凍りつく。



メイベルが舌打ちしながら叫ぶ。

「チッ、あのイノシシ!完全に頭に血ぃ登ってやがる!」



ミロはわずかに眉をひそめ、穏やかな声でたしなめた。

「ドロガンさん、あまり騒ぐと……宿の方に迷惑がかかりますよ」



一方、この場のボスであろうヘビ獣人はまったく動じず、片手を上げて落ち着いた声を発した。

「おい、ゴズ。さっさと止めろ」



灰色のクマ獣人――ゴズと呼ばれた男は、あくびまじりに返事をする。

「んあ〜? ……あぁ、わかった」


ゴズがのっそりと立ち上がった。巨体がミシリと床を鳴らす。


挿絵(By みてみん)


ドロガンがなおも突進し、周囲をなぎ倒す。



しかし――



「……どいてろ」

静かに言ったゴズの両腕が、ドロガンの突進を真正面から受け止めた。


ガシィッ!!



爆音のような衝撃音が鳴り響く。



そのまま、ドロガンの動きが……止まった。


「くっそう! このクマ公、どけェ!」


グ……グ……グ……グ……ッ!



ドロガンの目が見開かれる。

(……クッ、動かねえ……!)



ヘビ獣人がギラついた目をメイベルに向ける。

「……テメェら、俺たちを赤猫組のもんとわかってて、喧嘩売ってきてんのか……?」



その声に、メイベルが首をぐるりと回し、肩を鳴らした。

「……赤猫組? なんか聞いたことあんな……まぁいいか。こうなったら俺も暴れっか……!」



……なんで!?ちょっと待ってくれメイベルさん!?

ここであんたまで暴れ出したら、ほんとに収拾つかなくなるから!!



メイベルは両手を広げて確認するように指を動かし、舌打ちする。

「……チッ、武器は置いてきちまったか。仕方ねえ……久々に、生爪で切り裂いてやるか……!」



……うおおい、凶暴なこと言い出したーーっ!!常識人のミロさん!何とか言ってあげてください〜!!



ミロは相変わらず穏やかな顔で、そっと両手を胸の前に出すと、静かに口を開いた。

「暴力はいけませんよ……血が飛ぶと掃除が大変ですからね」



――うん、たぶん方向性としては惜しいけど違う!!

ミロさんの指摘、さっきから微妙にズレてるんですけど……




ヘビ獣人は鋭い目を細め、低く一言だけ吐き捨てた。

「……やれ!」


ヘビ獣人の号令を合図に、五人の獣人が、一斉にこちらへ突っ込んできた。



「フン、かかってこいよ!」

メイベルが構えながら呟く。



唸る拳、ドスの斬撃を華麗にかわし、彼女は研ぎ澄まされた爪で次々と斬り裂いていく。



シャンッ! シャンッ! シャンッ! シャンッ!


「ぐわあ〜っ!」


「クソっ、すばしっこい奴め!」


致命傷には至らないが、鮮血があたりに飛び散る。



「へっ、格好だけの見掛け倒しか?」

メイベルが鼻で笑った、その時だった。


背後から忍び寄っていた狼獣人が、刀を振りかぶる!



「メイベルさん! 危ないっ!」


──体が勝手に動いた。俺は狼獣人に全力でタックルをかます!



ドンッ!



……が、倒れない。



「チッ、ガキが!」

狼獣人が俺の胸ぐらを片手でつかみ、もう片方の腕で刀を振りかぶる。



「チャロ!」

メイベルの叫びが飛ぶ。



「ガキだろうが、容赦はせんぞ……!」



……やばい! これ、本気のやつだ!


その刹那、横合いから現れたサメ魚人がメイベルに立ちはだかる。

「通さねえぜ、へへへ……!」



──いや〜!早まったことした〜!……でも、最後の晩餐はよかったかも……って、いや〜!死にたくない〜っ!!




その時、俺の危険を察知したミロは、宿屋の天井から吊るされたランタンに飛びついた。


両足を地から離し、ぶら下がったまま――

「チャロ君には指一本触れさせませんよっ!」


ミロは紐を引きちぎり、そのまま勢いをつけてランタンを狼獣人めがけて投げつけた!



ガシャンッ!!



ガラスと火の粉が飛び散り、狼獣人が思わず後退する。


「ぐあっ、目が……!」



──助かった〜〜〜〜っ! ミロさんありがとうっ!!

ていうか、ミロさん意外とアクロバティックなのね!?



「今だ、チャロ!」

メイベルが叫ぶ!



「どりゃああああぁ!!ヤブイヌ魂だ〜っ!!」

俺は渾身の力をこめて、拳を振り抜いた。


狙うは――狼獣人の股間!



……ぼすっ!!


鈍い音とともに、狼獣人の顔が引きつった。

「……ぐ、むう……っ!」


ガクン、と膝をつき、そのまま前のめりに倒れ込む。



その巨体が床に沈むのを確認し、俺はその場にへたり込んだ。

「……た、倒した……?」



サメ魚人は後ろで響いた鈍い音に目を見開き慌てて振り返った。

「なっ……!? ボンズ! やられたのか!?」


その隙を逃さず、メイベルが唇を吊り上げた。

「……隙だらけだぜ」


一気に踏み込み、股間目掛けて思いっきり蹴り上げる。



ドスッ!



サメ魚人は喉を詰まらせるような悲鳴を上げ、泡を吹いて仰向けに倒れ込んだ。




「……情けねえなぁ、テメェら!」

そう吐き捨てると、ヘビ獣人はようやく立ち上がった。


「ゴズ! 早く終わらせろ!」



「グッ、わかってるが……この野郎、馬鹿力だぜ……!」

ゴズは額に汗をにじませながら応じる。




口元を引きつらせながらも、ヘビ獣人はすっと目を細めた。

「……遊びは終わりだ」



その声には、先ほどまでの余裕が消え、じわりと殺気が滲んでいた。


額には血管が浮き、顔面の鱗がピクピクと揺れる。

「……こんな女子供に盆を荒らされたとあっちゃあ、示しがつかねぇからな」



ヘビ獣人はその巨体に似合わぬ速さで、まるで霧のように姿をかき消した。


俺は思わず声を張り上げる。

「!?……消えた〜!?」




その刹那――



メイベルの背後に、すうっと、冷たい影が立ち上がる。



ヘビ獣人の低く唸るような声が囁いた。

「……死ねっ!」



鋭く伸びた牙が、メイベルの喉元へ一直線に迫る――!




空気が凍りついた――その時だった




「やめんかいっ!!」

怒気をはらんだ、低くドスの利いた一喝が響き渡る。



ヘビ獣人の牙は、メイベルの喉元寸前でピタリと止まり、

獣の瞳が、声の主を睨みつけた。



その凍りついたような横顔が、ゆっくりと声の方へと向く。

「……組長オヤジ!」



賭場の帳場奥から、ゆったりと現れた影。

頬に深い傷跡を持ち、一本筋の通った厳つい風格。



ベンガル獣人の組長が、一歩前へと足を踏み出した。


挿絵(By みてみん)


鋭く光る双眼が、灰色熊獣人と蛇獣人を順に睨みつける。


「テメェら……一般市民シロウトさん相手に、何やっとんじゃい!!

ズール、テメェ若頭だろうが!!」

その声は低く、だが、雷のように響き渡った。



賭場の空気が、一瞬で張りつめる。



ミロも、メイベルも、思わずその声に息を呑む。



ズールと呼ばれたヘビ獣人が歯を食いしばりながら反論する。

「……いや、コイツら、賭場荒らしなんだよ」



ズールの言葉に、ベンガル獣人の組長が眉をひそめた。

ゆっくりとこちらへ顔を向け、ギロリと睨みつけてくる。

「……賭場荒らしだぁ?」




……うわ、目だけで人が黙るタイプのやつだ。

声にドスが効いてるとかそんなレベルじゃない。

場数で磨かれた貫禄が桁違いだ。

立ってるだけで、誰よりも強いってわかる。


ちらっと横を見ると、ドロガンさんと灰色熊さんがまだ力比べしたまま、ピクリとも動かねぇ。

なんだあの静止画みたいな絵面。まさか息止め勝負にでもなったのか?


……いやいや、そんなことより、この場の緊張感よ。

年季の入った貫禄、空気の圧、そしてこの沈黙――

もう無理。俺の心臓が先に悲鳴上げそうだ。

――このあと何が起きるのか?


できれば俺、串団子でも食いながら見学してたいっす……。

甘味と修羅場のコントラストでもうお腹いっぱいですよ♪



《リトルリバー》より感謝を込めて!

お読みいただきありがとうございます。


面白かったら、ギルドの活動資金(=★評価&ブクマ)をいただけると嬉しいです!


【作者Xはこちら】

https://x.com/00aomiray00?s=21

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