英雄と称賛した者たちへ
初めての作品でとても緊張しますがぜひ最後まで読んでいってくださると嬉しいです!!!初めての作品なので温かい目で見守っていただけると嬉しいです。それでは!いってらっしゃ~い!!!
「おらっ!!!!!」
ドンッッッ
「よっしゃー!!!また50点〜!」
龍之介という名前の細身の少年が力強い声で言った
「はぁ〜〜〜お前強すぎだろ…」
あらたと言う名前の小太りな少年が細身の少年を睨みながら言った
「はい5万あざ〜す!」
「お前走りも俺に負けてるし何でも負けてんじゃねぇかよ笑」
「うるせぇ!俺が50m6秒でおまえが5.8なだけだろ?少ししか違わねぇよ!」
「そうかいそうかい笑」
「はぁはぁ………」
ザッザッザッ
すると細身の少年が札束をパタパタと扇ぎながら私のもとへ向かってきた。
「はい。オッサン。今日の分な」
「はい……ありがとうございます………」
「ぁ゙!?聞こえねぇよ!!!もっと大きな声で言ってくんねぇかなぁ?」
「どうも!ありがとうございました!!!」
「おうおう。いいねぇ〜これくらい言ってもらわなきゃ割に合わねぇよな。なんせホワイトな仕事なんだからな。」
そう。私はホワイトな仕事をしている。高校生が私に石を投げポイントの高い体に当てるとそのポイントが貰える。合計のポイントが多かった者が金を相手に払う。そして私はその勝った者から一万円を貰うことができる。正直これだけで日給一万円貰うことが出来るなんてどの仕事よりもホワイトだった
「さて…家に帰るかぁババアめんどくせぇし」
「そうだな…じゃぁなオッサン!またよろしく!」
私は礼を言いそこから立ち去ろうとした次の瞬間だった
「まて、、、!」
私の前に小学生ぐらいの小柄な男の子が立った
「あ?」
「お前ら、、、!弱いものいじめはだめだぞ!」
「おいおい。なんだこのガキ。ヒーローごっこはよそでやってな。」
「おい!何逃げようとしてんだ、、、!!かかって、、こいよ!!」
「おいおい!まさかこのガキ喧嘩するつもりか!?俺たちは高校生だぞ?ガキが舐めてんじゃねぇぞ!」
「うるさい、、!どうせお前らは口だけなんだ!かかってこいよ!デブとヒョロガリ!!!」
「あ?てめぇ今何つった!!!」
「何度でも言ってやるよ!かかってこい!このクソデブヒョロガリコンビが!!!」
「ぶっ殺してやる!!!」
ドンッッッ
小学生が私の足元に倒れ込んだ。だがわたしは何もすることができず後退りしてしまった…
「おいおい!こいつ一発で倒れやがったぜ!」
「弱い癖になにイキってんだよ!」
「まだまだ………!」
「ははっ!一発で倒れた奴が何いってんだよ。それなら賭けようぜ。俺はお前があと一発で倒れるに五万だ!」
「ぼ、僕は"ずっと"倒れないに一億だ!!!」
「笑わせんなよ?クソガキが!!!」
ドンッッッバチンッ
人を殺めるぐらいの力と殴った回数は十分足りていた。だがそれでも小学生は立っていた
「なんだよ…こいつ、、、!」
「はぁはぁ………言っただろ、、、?ずっと立ってるって!」
「おい。龍之介!もう行こう。このままじゃ怒られちまう」
「クソガキが。覚えてろ!」
そう言い細身の少年と小太りの少年は走って逃げていった
「はぁはぁ………大丈夫ですか、、、?」
「あ、うん……ありがとうね」
「いえいえ。良いんです。困ってる人が居たら助ける。それが人間ですから、、、」
私は正直この子の命はそう長くないと思った。なぜなら、自分を犠牲にしてまで他者を助ける。そういう"善人"は早死にしてしまうのだ
「ねぇねぇおじさん…僕ね冤罪を無くす警察官になりたいんだ」
「冤罪を無くす警察官…?」
「うん。そう。それで僕は"英雄"になって皆を助けるんだ!」
私は自然と涙がこぼれ落ちてきた。まだ幼いのに自分の命は顧みず他者の命を救おうとするその勇気に。それと比べ私はろくな仕事も就かずに街をぶらぶらしている。正直言うととても虚しくなった
「おじさん…なんでないてんの?」
ぎゅっ
「ごめん……助けてあげられなくて。おじさん…なにもしてあげられなかった…君は、、君は助けてくれたのに僕は、、、僕は、、、」
自分の情けなさに腹が立った。こんなに小さい子供に助けてもらったのにも関わらず助けることはおろか後退りしてしまった。
「いいよ。別に。おじさんも頑張ってたじゃん。良く耐えたよ。おじさんはすごいよ!」
「そうか、、、そんなに褒められたの何年ぶりだろうな…」
「ん?何か言った?」
「いいや。何でもない」
「ねね!おじさん!実は僕警察官になれるか分かんないんだ…僕のお家お父さんいないからお金もないんだよね。だから別の仕事に就かなくちゃいけないの。だからおじさん。おじさんも冤罪事件を解決する"英雄"になってよ!」
「分かった!絶対になる。なってみせるよ…!」
20年後…
「今週のTOPニュースです。藪 圭一朗容疑者が殺人容疑の疑いで逮捕されました。容疑者は容疑を否定しておりー
そのニュースを聞いたとき俺に電流が走った。冤罪事件を次々と解決し市民からは「英雄」と呼ばれていたあの男が人を殺め警察に捕まってしまったからだ。
「藪さん。どうしちまったんだろうな」
「逮捕される前は英雄呼ばわりされてたのにな」
「あの…犯行に使われたものは何だったんですか?」
「あ?そんなの下っ端のお前に教えれるわけねぇだろ!事件の詳細は下っ端には教えない。これは警察官の常識だ」
「はい…そうでしたね……」
「...まぁそれはそうと優斗。面会ぐらいには行ってきたらどうだ。お前一番お世話になってたろ」
いつも鬼のように厳しい課長にそんな事を言われるのは初めてで少しビックリした。
「そう…ですね。僕も冤罪事件から救って貰った内の一人ですしね」
俺は自分の車の鍵を開け留置所に向かった。
「すいません。予約してた本田なんですけど。あ。はい。そうです。藪圭一朗の面会です。」
俺は電話で予約していたのでスムーズに通り5分も待つとすぐに呼ばれ案内役から面会室まで案内された
ギィィィィィィ
古臭いドアの開く音が聞こえた。そこから出てきたのはあの"英雄"と呼ばれていた者とは思えない程むさくるしい姿の男だった。
「お久しぶりです…藪さん。俺目黒区の警察署に務めてる本田優斗といいます、覚えてくれてます?あの節はお世話になりました。あなたが僕の無実を証明してくれたから今も生きていられます。本当にありがとうございました」
「・・・……」
藪さんの顔は笑ってもいないし怒ってもいなかった。まさに無表情で生気を全く感じられなかった。
「あの、、、俺藪さんが逮捕されたって聞いてビックリして…それで、その。何か助けにならないかなと思って……」
「・・・言いたいことはそれだけか」
藪さんはとても低く人間が出せる低音の域をはるかに超えている声を出した。
「いや、、、わかりました…勿体ぶらずに言います」
俺は息を吸ってなるべく外に聞こえないような小さな声で言った
「俺と一緒にここから脱獄しませんか?」
「ぁ゙…………?」
藪さんはドスの聞いた声で何を言っているんだというような顔をこちらに向けてきた。
「……俺は無駄なことはしない。そんな事をしたって無駄だ。警察に捕まる」
「何言ってるんですか!藪さんは数多の冤罪事件を解決してきた天才警官じゃないですか!」
「・・・おい…そこの警官。何してんだ。コイツ止めろよ」
藪さんは話を聞いている監視役の警察官にそう言った。
「・・・あぁ!藪さんそこの監視役の警察官がいるからそんな事を言ってるんですね!」
「大丈夫です。その警官は買収済みですから」
俺がそう言うと監視役の警官はグットをした。
「………なんでそこまでして俺を助ける」
「決まってるでしょ。あなたに助けられたからです」
「………………」
「それに、あなたアリバイがあるんですよね?」
「なんだ…下っ端のお前にまで情報回ってるのか」
「はい。それよりどうするんですか?早くしないと怪しまれますよ」
藪さんは少し迷うような仕草を見せたが遂に決まったような顔をして俺に言った
「ダメだ」
「どうしてですか!」
「そんな事をしたら罪が重くなるだけだ。そして脱獄をしたら罪を認めたことになる。俺はやっていないんだ」
「藪さん…本当にそれでいいんですか?あなたがここでいくら無実を主張したってどうせ無実と言うことは証明されません!それならば脱獄して真犯人を捕まえましょうよ!」
「俺はしない。それだけだ」
そう言うと藪さんは立ち上がっりドアノブに手をかけた
「娘さんは信じてますよ!!!」
「あなたが無実だってことを。あなたがまた冤罪事件を解決してくれるってことも。娘さんはあなたを信じてます。それでもあなたはここに残り生涯を過ごすんですか?娘さんと会わずに死ぬんですか?」
「…………」
「藪さん!娘さんを笑わせましょうよ」
藪さんは少し迷った顔をしてこう言った
「どうすればいい」
「本当にその手段で脱獄出来るのか?」
「えぇ…これで確実に脱獄出来ます」
「そうか。俺は準備OKだ」
「それでは行きますよ……!」
バンッッッッッッッ
「くッッッッッ…………」
まずは監視役の持っている銃をあなたに上げるよう指示しています。なのでそこから銃を奪い監視役の警官を撃ってください。あ。殺しちゃだめですよ。足です。足を狙ってください
「こちら優斗!目黒区にある留置所で藪圭一郎が銃を発砲した!至急応援を頼みます!」
その後に俺が怪しまれないように警察に通報します。その後は今から言う住所に向かってください。住処を用意しています
「はぁはぁはぁ………」
俺はどれくらい走っただろう。50の身体でこんなに走ったのは初めてだった。そして買収された警官から貰った携帯で指定された住所を調べそこに向かった。
「おぉ……かなり古臭いな」
指定された住所へ向かうとかなり古びた家があった。そして俺は古びたソファに座り疲れた体を休めた。体がふわ~となり眠気が襲ってきた。そして俺は睡魔に勝てずそのまま寝てしまった。
「あぁ……ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「大丈夫…俺が…俺が…」
「だめよ!あなたはー」
「誰だ!!!!!」
「はぁっ!!!」
俺は悪夢のせいで飛び起きてしまった。起きると汗がびちゃびちゃだ。冷や汗でもかいたのだろうか。外は真っ暗で何も見えなかった
ガタンッッッ
本棚ら辺から何か物が落ちる音がした。そしてこの気配は人間だった。
「誰だ!!!」
この家には明かりもないのでどこに居るのかも分からず音に頼るしか無かった。
「俺は拳銃を持っている!お前は裸だろ!さっさとでてきやがれ!さもないと乱射するぞ!」
するとカチッッッというライト音と共に細身の男が見えた。
「ばぁー………なんて。藪さんユーモアないっすね」
「あ…??お前は誰だ。答えろ」
俺は怪訝そうな顔をして銃を向けながら言った
「え……はぁ?・・・あいつ仕事しろよ…優斗から話し聞いてないっすか?俺優斗の仲間です。すなわち貴方の味方ですよ」
「それだけではまだ信じられん。お前の名前を教えろ」
「秋元俊介です」
「そうか…何か信用できる物はあるか」
「え〜〜あ!優斗との写真ならありますよ!」
そう言い俊介は俺に写真を見せてきた。
「どうやら…本当のようだな……」
「そうですよ!だから銃を降ろしてください」
細身の男は両手を挙げながら俺に言った。
「・・・何か優斗から聞いてるか?この後のこと」
「はい…この後はー」
ウーーーーーーーー
「え…この音って」
「お前通報しやがったのか!!!」
「違います!!本当に俺じゃないです!!携帯にも通話履歴もないですし!」
「なら誰が!!!」
「警察だ!!!手を挙げろ」
小太りの男がピストルを向けて入ってきた
「ははっ…やべぇな」
バンバンバンッッッ
「あの森で落ち合いましょう!!!」
そう言い俊介は窓から逃げた
「どんな運動神経してんだよ…」
「ジジイ。"あの頃"の思い晴らしてやるよ!」
「あの頃……?」
バンバンバンッッッ!
周りには今隠れている天井くらいのデカい本棚とテレビくらいしかなく遮蔽物が少かった
「窓から逃げるには丸腰になる…一か八かだ」
ダッダッダッ
バンバンバンバンバンバンッッッ
「くそ!逃げられた!こちら俊太。至急応援を頼む!」
「はぁはぁはぁはぁ…」
俺は森に逃げ込み木の後ろに隠れていた。
「ここまでくれば安心だろう…少し休憩を取って俊介に会いに行かなければな」
ザッザッザッ
すると近くから落ち葉を踏むような音がした
誰かきてる………
俺は息を殺し少しでも息が聞こえないように口元を思いっきり塞いだ
ザッザッザッ
来るな…来るな…来るな来るな来るな!!!
ザッ
俺の近くで足音が止まった
「ぜぇ…ぜぇ…」
「良く逃げ切りましたね」
「・・・なんだよ…お前か。びっくりさせやがって」
落ち葉を踏んでこちらに近づいてきてたのは俊介だった
「もう少しで警察の応援が来ます。正直ここは使い物になりません。また別のところを探しましょう」
「探すって言ったってどうやって」
「ここは田舎ですよ?空き家の一軒ぐらいあるでしょう」
「それもそうだな」
俺等は暗い中空き家を探しまくったが一軒もなかった
「はぁ…結局ありませんでしたね」
「・・・そうだな。なら野宿するしかないか」
「はー!?俺今から藪さんと野宿するの?なんでこんなおじさんと…」
「聞こえてんだよ」
「あ。すいません…」
「お母さんは悪くない。悪いのはこいつだ」
「待って!!!」
「お金ならあります!」
「僕の名前ですか?僕の名前は、、、」
「藪さーん。起きてください!もう朝っすよ。早く聞き込みに行かないと黒幕逃げちゃいますよ?あ。でも藪さん顔全世界に晒されてるから聞き込みはできないのか…うーんどうしようかな」
「考える必要はなくなった…」
俺は重い腰を上げ眠い目を擦りながら言った
「なんでですか?」
「犯人の場所が分かった」
「おい。そろそろ拉致しねぇか?あのクソジジイ」
「まだダメだ。そう焦るな」
「焦るなって…もう時間は少ししか残されてないんだぞ!?それなのになんでおまえはこんな呑気なんだよ!」
「うるさいな…少し黙ってくれ。証拠を探してる」
「はぁ…そうですか」
藪 圭一朗。今に見てろ。俺が。いや。俺等でおまえを
殺してやる
「ここが犯人の家?というアパートですか?」
「あぁ…きっとな」
「ふーん……でもなんでそう思うんですか?」
「ここは俺の家だったんだ。そこで奴らは何故か分からんが俺に対して強い恨みを持っている。奴らは俺の事を嵌めようとして今頃俺の家で証拠を作っているところだろう」
「なるほど…でもどうやって入るんですか?」
「これだよ」
ピンポーン
「は!?ちょ藪さん!?なにしてんすか!」
「これはテレビドアホンだ。俺がインターホンを押すと相手に顔が見えるようになっている。つまりここで裏口から逃げたり、でてこない場合は確定だ」
「たしかに…車もありますし不在ってことには出来そうにないですね」
「待ってください。それなら俺裏口に周ったほうがよくないですか?」
「いやダメだ…男+複数人+若者だった場合俺が詰む。喧嘩をしても勝てないだろう。だから保険としてここにいてくれ」
「わかりました…!」
「さぁ…どうくる……」
ドンッッッ
「俊介。裏口だ!!!」
「はい!!!」
俊介はそう言い裏口に周った。そこで俺は俊介に付いていくように裏口に行き空いている裏口から俺の家に入った。するとどこか懐かしい匂いがして思い出が脳を通り過ぎていった
「あぁ…ダメだな。早く探さないと」
するとテレビが勝手につき映像が流れた
「ニュースです。藻場市父親殺害事件の犯人とされて逮捕された本田優斗容疑者が今朝藪圭一朗巡査によって無罪が証明されました。圭一朗巡査は偶然事件場の近くにおりその事件を偶然目撃したということです。ネットでは圭一朗巡査を"英雄"と称賛する声が多く集まっています。」
「これは俺が初めて無罪を勝ち取った時のニュース…10年前のニュースがなぜ今テレビから流れているんだ…?」
「藪さん…!」
俊介が帰ってきたので俺は急いでテレビを消した。
「どうだった…?」
「すいません…逃げられました。足が速くて到底追いつけそうになくて…」
「まぁ良い。気にするな」
「ありがとうございます。それでそっちは?」
「こっちもなんにもなかった。証拠も持っていかれたんだろうな」
「そうですか…取り敢えず南の方に逃げたんでそっち行きましょう!まだいるかもしれませんし」
「そうだな。」
「こんな山奥に逃げたのか?」
「えぇ…山奥に入っていくのを見ました。ですがどうします?かなり広いし…ここ全部探してたら真っ暗になりますよ」
「頑張って暗くなる前に見つけよう」
「はい……」
ザッザッザッ
落ち葉を踏みつける音が森の中で響いている
「なんか夜の森って怖いっすよね」
「そうだな」
俺等は雑談を挟みつつ森を進んでいった。だが人が居た痕跡もなく諦めムードが漂っていた
「はぁぁぁぁぁ……こんなに歩いていないってことは多分もう帰りましたよ。もう暗くなってくるし諦めませんか?お腹もすきましたし」
「後少しだけ進んでみよう。何かあるかもしれん」
「あーも!」
ザッ
「今何か音がしなかったか!後ろから」
「え…?音ですか?何も聞こえなかったっすけど」
ザザザザザザ
「落ち葉の音…こっちだ!」
ザッザッザッザッザッザッ
「いたぞ!!!」
音が聞こえたほうに向かうと必死に逃げている2人組が見えた
「俊介!追いかけてくれ!」
「任せてくださいっ!」
そう言い俊介は必死に犯人を追いかけてくれた。俺も必死にその後を追った
「藪さん!!!捕まえました!」
少し遠くから俊介の大きな声が聞こえた。
(ようやくだ…ようやく俺のことを騙そうとした奴を知れる!)
俺が俊介の元へ追いつくとそこには手を組まれている犯人らしき人物の姿があった。だが顔はうつむいていて分からなかった
「こいつですよ!こいつが藪さんを陥れたゴミ野郎です!」
スーーーーーーーーーーーー
視界が…見えなく………
バタンッッッッ
「あぁ……」
目が覚めるとそこは倉庫のような広い建物の中だった。周りには工場の道具などが置いてあった。そして俺は無造作に寝転ばされていた。
「ようやく目が覚めたか」
すると遠くから俺の元へ近づいてくるフードを被った1人の男が見えた。
「お前なのか。これをしたのは」
「お久しぶりですね。藪圭一朗さん。」
「なぜ俺の名前を知っている。」
「なんでって…有名じゃないですか。あんなに"英雄"と持て囃されてたんですから」
「誰なんだ…お前はいったい誰なんだ!!!」
「俺ですか?俺の名前はー」
10年前
「お前はダメダメだなぁ!ほんとに」
「はい…申し訳ありませんでした」
毎日のように怒られ頭を下げる日々。警察になれたもののまだ巡査レベルにすら達していない。
だがその日の帰り道俺は人生が大きく変わる大きな転機が訪れた
「くそっ…なんなんだよあのクソ上司は!教え方が下手なんだよクソが」
バンッ
「今の音…」
少し遠くの倉庫からなにかを撃つような音が聞こえた。そして俺はその元へと急いで向かった。そこにつくと扉はすでに空いていた。そして倉庫の中に入った。
「なっ!」
そしてそこには泣いている女と絶望している男がいた。その隣には男のような死体があった
「あぁ……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ごめんなさい。本当にごめんなさい………」
「お母さんは悪くない。悪いのはこいつだ。そう。この男が…」
俺は気づくと録音ボタンを押していた。
「で、でも…どうしよう。わ、わたし捕まっちゃうのかな…いやだ。そんなのいやだよぉぉぉ」
女は情けない声で泣き出した
「お母さん…」
「ごめんね…こんな母親で。犯罪者の息子は嫌でしょ…?もう私とは縁を切ってここから逃げて…」
「大丈夫。俺が…俺が捕まってくるよ」
「え…?」
「お母さんは俺をここまで育ててくれたんだ…それなのにまだ1個も恩返しが出来てなかった。ここで果たすべきだよ」
「だめよ…そんなことはだめ!あなたはこれからの人生があるんだから!お母さんはもうこの先短いし。いいのよ」
「そんなの嫌だ!僕はお母さんには笑顔のままいてほしい。もうこれ以上お母さんを苦しめたくない…」
「本当にごめんね……」
「これはいいネタをGETしたぞ……」
トンッ
「誰だ!!!」
「まずい…!」
「待て!!!!!」
帰ろうとした瞬間歩く音が響いてしまった。
「まって!まって!!!」
後ろから懇願の声が聞こえてくるのを無視して俺は走った。
「はぁはぁ……待ってください!!お金ならありますから!!!」
ピタッ
「はぁはぁ……お金ならあります…いくらですか。いくら渡せば黙っててくれますか!!!」
後ろから大きい声が聞こえる。
「1000万だ。1000万なら黙っててやる」
「はい…わかりました。明日支払います!なのでどうかこれは黙っててください!勿論警察には私が自首します。だから…だからどうか!お願いします…」
「お前名前は?」
「え…?」
「名前はなんというと聞いてんだ」
「僕ですか?僕の名前は、、、」
「"本田優斗"です」
「本田優斗…?なんで……なんでお前が…?お前は俺を脱出させてくれたじゃねぇか!」
「今までのは作戦だったんだよ。新しい事件を作りお前が犯人である証拠を偽造しお前を逮捕させる。そこで脱獄をさせ俊介と出会う。ハプニングが起こりながらもここに到着する。俺等の完璧なシナリオだったんだよ」
「は…?それなら、俊介は!俊介も……まさか!!」
「あぁ…そのまさかだ。あいつは俊介という名前じゃない。あいつの本当の名前は」
「秋元 "龍之介"だ」
「何故だ……何故お前らは恩を仇で返す!!俺はお前らを無罪にしてやっただろ!?」
「…無罪だぁ?どの口が言ってんだよ!俺はあんたがずっと嫌いだった!俺はあんたにちゃんとお金を振り込んだ!そうすれば見逃してくれると言ったから……それなのに…それなのにお前はぁ!俺の母を売った。自分の位が上がるために!ネットから称賛されるために!!!クズだよ…クスだよお前は!この世で1番最低なゴミ野郎だ!!!そんなゴミ野郎を潰すために俺は警察にもなったんだ」
「……………」
「ねぇ。教えてくださいよ。僕が守った頃のあなたはどこに行ったんですか?僕があなたに夢を託したの間違いだったのでしょうか?教えてよ…教えてくださいよ!!!」
「しようがなかったんだ…一度お前を売ったら俺を下に見てた奴らが急に敬語になったり俺という存在を評価してくれたんだ…その時は気持ちくて気持ちくてさぁ!それにネットでも俺を英雄英雄ってわっしょいしてくれるんだぜ?その光景をみたらもう辞められなくてよぉ…もう15人ぐらい自作自演して冤罪事件ということにして片付けたよ」
「ぶさけるな…!ふざけるな!!!人の人生を棒に振って!何が英雄だ!!!お前は英雄なんかじゃない!立派な犯罪者だ!!!」
「違う!俺は英雄なんだ!俺が無罪にしていったら日本の犯罪件数はぐんと減った!何でも解決する刑事が現れたと言われていたからだ!!!それなのにお前は俺を犯罪者と呼んだ。ぶさけるな!俺は!俺は英雄なんだ!!!」
「らしいですよ。これを見ている視聴者さん」
「は…?」
「残念ながらここはLIVE配信されて世界に発信されている。お前はもう終わりだ」
「しかも警察も呼んでいる。もうすぐ到着するだろう」
「ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるな!!!ここで終わるわけには行かねぇ!」
俺は倉庫の出口めがけて走った
バンッッッッッ
「あぁぁぁぁ…!」
「こうやってお前は警官の足を撃ったこと覚えてるか?実はあれ"あらた"なんだよ」
「はぁはぁはぁ…!」
俺は撃たれた足で這いつくばいながら出口へ向かった
「もう諦めろ。お前は社会的にも死に物理的にも死ぬんだ。嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!!!」
「醜い…これが英雄と呼ばれていた男の最期か」
ウーーーーーーーー
「おい!!!そのピストルをよこせ!どうか…どうか俺を殺してくれ!!!捕まって一生牢屋か死刑なら自分で死んだほうがマシだ!!頼む…!一生のお願いだ…」
圭一朗は顔がくしゃくしゃになるほど泣き喚いた
「午前1時58分。現行犯で逮捕する」
カチッッッ
「いやだ……いやだぁぁぁぁ!!!俺を…俺を殺してくれぇ!!!」
「優斗…」
「龍之介…悪いな。こんな危険な作戦に参加させちまって。あらたも途中で辞退したんだからお前もしても良かったのに…」
「良いんだ。俺もあいつからハメられたしな。あいつは俺らのことを盾にして自分を成り上がらせたクソ野郎だ。にしてもこの配信滅茶苦茶良かったぞ!Xでも急上昇だよ!」
「そうだな…」
「にしてもお前は本当にすごいよ。まじで"ずっと"倒れなかったんだもん」
「だろ?だから早く5万よこせよ?」
「死んだらなー笑」
「死んだらあげれねぇじゃねぇか…」
「ははっ…それもそうだな」
「・・・よし……逝くか!」
お母さん。俺はこのやり方で良かったでしょうか。もしかしたら怒るかもしれない。もしかしたら泣かれるかもしれない。でも俺はこれしか出来ませんでした。たしかに藪が悪いと言ったらそれまでなのかもしれません。それでも藪に夢を託した僕。藪をおもちゃにした龍之介…あらた…みんなにも責任はあると思います。あの時俺が助けなければ…あの時藪をおもちゃにしなければ……俺らだけではなくほかの方も被害にあいました。僕らはこれくらいでしか罪を償えません。待っててね今から逝きます。
バンッッッッッ
1年後
「今日のTOPニュースです。冤罪事件の容疑者。藪圭一朗容疑者の裁判が昨日行われました。圭一朗容疑者は黙秘を続け最後に手紙を読み始めました。こちらです」
英雄と称賛した者たちへ
拝啓 暖かい季節になって来ました。暑かったのが嘘のように今は凍えるほど冷たいですね。私は元気ですがそちらはどうでしょう。あぁ…これは失礼。私の"親''の皆様。でしたね。え?俺を生んだ覚えは無いって?なに言ってるんですか。私はあなた達から生まれたんですよ。
何も状況を知らないのに周りが言ってるからって「英雄」「英雄」「英雄」「英雄」あなた達は私を評価した。そうして私は引くに引けない状況になってしまいました。あなた達が褒めてくるのが気持ちよくて気持ちよくて…ほんとうにあの感覚は最高でした。
さて!今では誹謗中傷で芸能人の方やインフルエンサーの方などが自殺しているのに自分の言葉に責任を持たない皆さん!!!勘違いしないでください。あなた方が褒めてくれたから私は生まれました。あなた方発言1個1個が私を生んだのです。
たかが1個ではありません。重要な1個なんです。この大事な1個が重なり合って私という人間は出来たのですから。
ネットが原因で犯罪者になったらあなた方も同罪なんです。だってあなた方がそうしたんですから。
さて。もう僕の人生は終わりです。きっと終身刑か死刑になるでしょう。でも大丈夫です。僕という人間が一人死んでもまた新たな標的が出てきますから。またあなた方は"親"になるんです。
たかが1個ではない。大事な1個なんだと言うことを肝に銘じておいてください。
これが俺藪 圭一朗の人生だ。これが"英雄"と呼ばれていた男の最期だ。どうだ?俺は本当に"英雄"だったか…?''英雄"というのは二枚舌で語れるようなそんな簡単な称号なんだ。言葉一つ一つになんて意味はない。ただのテンションで言っているだけだ。そう深く悩む必要はない。リアルでもネットでも暴言や傷つく言葉を言われてもどうせ中身なんてないんだ。これを肝に銘じておけ。
それでは逝ってきます
最後まで読んでいただき本当に本当にありがとうございました!ネットの怖さ、一人一人の発言の重みをテーマに作りたかったので最後に手紙という形で取らせていただきました!本当に最後まで読んでいただきありがとうございました!次回作はちょっと。というかかなり下ネタの"特級ちんこ"を書こうと思っています!これは昔から保存していたので面白いと思います!是非こちらも読んでみてください。それでは〜!