表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

7夜


 ジュンの家に着き、ZⅡを押しながら、家の隣にあるボロボロのトタン屋根の小屋へ入れた。


 外の電信柱に付いた電灯がチカチカと光り、羽虫が飛び回る。


 せっかくの喧嘩を邪魔された2人の苛立ちは治まらずにいた。その中でもジュンの苛立ちは増すばかり。


  ジュンの家の縁側で、復刻版カセットデッキから、父親の選曲C.C.R(Creedence Clearwater Revival, )の『Proud Mary』が微かに流れていた。


 気持ちを落ち着かせようとタバコに火を着けてしゃがむ。


 ジュンが小屋の前の灯りを点けて、『火の用心』と書かれた赤いバケツを置いた。


 すると家の中から爺ちゃんが出て来て、落花生を片手で3粒ほど握り、それをカラカラいわせながら「お〜うっせえ!ま〜だ野郎等やんらぁ単車ばうんながらがして!」とドギツい方言をかます。


 【ジュンの爺ちゃん・木島サトシ78歳】

 米や野菜などの農業を一家で営む、爺ちゃんと婆ちゃん、父と母、ジュンの5人家族。


 ジュンがつられて「ねぇでくれよ爺ちゃん!方言キヅイって!」と方言が移る。


 それを見てイツキが「あっははは!今どき『スピード出す』事を『うんならがす』とか言わねぇよ爺ちゃん!あっははは!」と腹を抱えて笑う。


 ジュンは少し恥ずかしそうににしていたが、苛立ちは治まっていた。


 爺ちゃんが「オラあ、はだげさ行っでっがらよ!ながへえれ!菓子でもえ!」とイツキに言う。


 イツキも「ありがとう爺ちゃん、()い付けてくれ行ってうよ、もう歳なんだがらよ」と少しつられる。


 爺ちゃんは笑いながら「何(あ〜に)!人ば馬鹿バガにして!」と言って、サンダルをザッザ!ザッザ!と鳴らして出ていった。


 爺ちゃんが畑に着くと、畑の真ん中に炎がユラユラと見え隠れしていた。これは大事だと血相を変えて急いで家に戻り、ジュンの父親と一緒にダダダダ!と走って出ていった。


 ジュンとイツキは我関せずで座ったまま、タケルの退院祝いに何をあげるか会話を続けていた。


  曲が変わり、復刻版カセットデッキからERIC CLAPTONの『COCAINE』が流れ出す。


 しばらくすると、畑から父親と爺ちゃんが帰って来る、爺ちゃんは大きな声でぶつくさと文句を言いドタバタと家に入った。ジュンの父親が眉間にシワを寄せながら一輪車に黒い塊を乗せて運んで来た。


 【ジュンの父親・木島シゲオ38歳】

 農業を営む、復刻版ZⅡ(750RS)の本来の持ち主。


 その一輪車には土だらけの銀色の塊、シゲオが疲れた様子で小屋の前にそれを置いて「ふぅー」と息を吐く、ジュンとイツキに「オメエら邪魔だよ」と言って、ジュンとイツキは渋々道を譲り、シゲオは一輪車を小屋の中に入れた。


 気になったので2人はそれを覗き込む。


 イツキが「おっちゃん、コレ何?」と言うと、シゲオは「ん?わかんねぇ、畑に穴開けて転がってたんだが。警察に届けるしかねぇか…どうすっかな畑…キャベツが半分くらいダメになっちまったよ」とボヤきながら家の中に入って行った。


 イツキとジュンはその塊の土を手でパッパッと払い確認する、まだ熱くて火傷しそうになったが、そこには『VA−−−−−・H−−TER』と文字が何箇所か消えて書かれている。


 ジュンが「なんだこりゃ」と言うと、イツキは「ん〜…人工衛星の残骸だろ、アルファベット書いてあるし。それより明日だ」とタケルの退院の迎えに行こうと提案する。


  曲が変わり、復刻版カセットデッキからStevie Wonderの『Sir Duke』が流れる。


 すると「じゃあ、こうしよう」という話になった。


 次の日の夕方、病院から顔中包帯をグルグル巻きのタケルが出てくる。


 病院の前には笑顔のイツキとジュンが居た。


 それを見たタケルは「イツキ!ジュン!来てくれたんだね、ありがとう」と驚いて喜んだ。


 そしてイツキとジュンが「じゃじゃ~ん」と二手に分かれると、そこにはサトミの姿が。


 タケルが「サトミちゃん!?な、なんで!?」と飛び跳ねて古典的な驚き方をすると、サトミは「あれれ?私が居たら邪魔だった?ミイラ男さん」と言い、タケルが慌てて「ち、違うよ!嬉しいよ!あいや、その…ありがとう、サトミちゃん」と包帯越しに笑顔を見せた。


 ジュンが「タケル!渡すもんあるだろ?ほら」と自分の分のプリクラをタケルに手渡した。


 タケルはプリクラを2度も無くして困っていたのだが、2度とも友達から譲り受けて、心底嬉しく思って、思わず包帯を濡らした。


 タケルはようやくサトミとプリクラを交換することが出来た、プリクラを交換するのも一苦労、そんなお話。


読んで頂き感謝です( *・ω・)

そんなあなたの今日の運勢は大吉です( *・ω・)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ