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5夜


 この近くにあるトンカツ屋の『ハートフル』は、とにかく安くて美味い、学生や漁師、職人さんやサラリーマンなど今を生きる男が多く通う地元のオアシス。


「おっちゃん!カツカレーとポテサラね!3人分!」


 とジュンが勝手にメニューを決めるが、文句を言うヤツはここには居ない、ここはカツカレーとポテサラしか誰も食べない場所である。


 一応他のメニューもあるのだが、誰もその味を知らない不思議なお店。


 ちなみにここはトンカツ屋であってカレー屋ではない。


 すぐにカツカレーが届く、早くて安くて美味いのが魅力。


 イツキは究結技シェムズリンクで先割れスプーンを作り出し、ジュンとタケルがフォークを作り出す。


 サクッと柔らかくすぐに切れるトンカツ、ほのかな酸味と奥ゆかしい香りが漂うカレーがトンカツと白米を融和させる。ほんのりと甘いポテサラが口の中の辛さを中和して食欲が止まらない究極のハーモニー。


 ジュンは店の中にある『週刊少年ステップ』を読みながら、イツキはMDウォークマンで落語の『黄金餅』を聴きながら、タケルは普通に食事を楽しでいる。


 ふと店内の角にあるテレビがニュースをやっていた。店主が「またかぁ、銀で刺されるなんて恐いねぇ」と不安を煽るも誰も聞いてはいない。なぜならば店内に居る客達は皆カツカレーにしか興味が無いからだ。


 もう一度言おう、ここはカレー屋ではない。


 1人480円を払って店を出ると、外の風が気持ちいい、衣服からスパイスの香りがする、必然的な副作用。


 近所の犬が息を切らして吠えてくるが気にしない。3人はカレーの匂いをさせながら帰路に着く、辺りは薄暗くなっていた。


「僕ヤマダタロウ寄ってから帰るから、また明日ね」とルンルンのタケル。


 それを見て「おう!また明日!」と元気に答えるイツキとジュン、2人は「あいつサトミとプリクラ交換すんの楽しみにし過ぎだろ」と楽しげ、人の恋路に興味がある多感な時期である。


 『波崎海水浴場』駐車場


 そこには数多くのバイクが停まり不良共がたむろしていた、その中心に居るのは先程ジュンとイツキにやられた不良2人が正座している、その目の前には…。


 【高校2年生・灰原タツヤ】

 暴走族『悪樓アクル』の頭。銀髪、灰色の特攻服の背中には怪魚の刺繍。茨城県立南工業高校・通称ナミコーの番長。


「んでえ”!?やられて帰って来たってがあ”!?あ”あ”ん!?」と正座している不良2人に凄む。手首が裂けて長パイプを作り出し2人に頭をフルスイングでぶっ叩く。


「ああ?なんだあ!?その目は!?」2人の怯える様子に腹を立て殴り続けるタツヤ、不良Aの頭から血が噴き出し箸となって地面に落ちコロコロと転がる。


 それを見てタツヤが激高、すぐさま他のメンバーが止めにかかる「総長!それ以上やったら死んじまう!」3人がかりでようやく止まるが怒りが治まらず、吠えながら暴れて3人を振りほどく。


 タツヤが何かに気付いた「あ”あ”?…おい!その足についてんのは何だ!?」不良Aの靴の裏にプリクラが貼り付いていた。


 不良Aは問いの意図を読み取れずプリクラの説明をしだす「こ、これはプリクラと言いまして…最近女子高生の間で流行って」不良Aの言葉を遮るように長パイプで殴るタツヤ。


「んなこたあ”!わかってんだよ!!そこに写ってんのあ”誰だあ”!!」


 不良Bがそのプリクラを手に取り、プリクラを見て目を丸くする、そこにはふざけたポーズで写っているイツキ、ジュン、タケルの姿。


「こ、こいつらです!堕天使バアル・ゼブル!間違いありません!木島と進藤です!!」


 それを聞いてニヤリと笑いながら額に血管を浮かばせるタツヤ。


「そうかコイツがあ”…お前らあ”!銚子に行くぞお!!ハエ狩りだあ”!!」


そう言うと、その場の全員が気合いを入れて「おう!」と吠えた。


 タツヤは三段シートに突っ張り風防、絞りハン、ラメの入った青いタンクの復刻版ザリ(GSX400E)に跨り、銚子を目指す。


 悪樓アクルの総数21人、バイクの数17台、銚子大橋を大音量で奏でながら、波崎から銚子に雪崩込む。


 薬局『ヤマダタロウ』から出て来たタケル。サプリを片手にニコニコとしている。


 「明日はサトミちゃんとプリクラ交換して〜…ふふっ」と楽しげ。夜空に流れる流星群を眺めながら道を出て、サプリを2粒手に取り出し口に入れようとした、その時


「ラッキー!!第一村人ハッケエーーーン”!!」タケルの顔面に突然スフォルツァンドの衝撃、タツヤが長パイプを振りかぶってタケルの顔面を力いっぱい殴りつける、グシャっという音と共にタケルが後方へ数mバタバタ転がり白目を剥いて気絶した。


 ヤマダタロウ前の道にブルーベリー味のサプリが無残にも散らばる。


 タツヤはバイクを停めて狂気じみた笑いの中歩み寄り、ブルーベリー味のサプリをガリガリと踏みつける、不吉なアンダンテみ。


 タツヤが馬乗りになり学ランのボタンが弾けタケルの服を剥ぐ。


 タケルは下着のままヤマダタロウの駐車場に投げ捨てられ、ぐったりとして動かない。「キェ〜へッハッハ!!」というタツヤの奇声にも似た笑い声が夜空に響いた。



読んで頂き感謝です( *・ω・)

そんなあなたの今日の運勢は吉です( *・ω・)


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