4夜
昼休み、イツキはジュンと学食へ。
学食のスピーカーからは奥田民生の『さすらい』が流れ、学生達がワイワイとはしゃぐ。
この学校の学食は種類が豊富で安くて美味しいと有名で、学食目当てで入学するイカれた奴が居るほどだ。
イツキはグリーンカレーを頼む。ジュンが「お前いつもカレーだな」と言いながらトンカツ定食を頼んだ、イツキは「お前いつもトンカツだな」と笑って返した。
昼からの授業は歴史。
歴史の授業は眠い、イツキは机に伏せて窓から空を眺めていた、歴史の佐々木先生はとても眠くなる語り方をする。
「で、新人類である我々ヴァンパイア…あ〜学名ホモ・ヴァンピリウムは旧人類ホモ・サピエンスから進化し…地球温暖化に適応した種であり…え〜…2025年4月14日に日本で初めて発見され、その後世界中に拡散…あ〜宗教戦争を経て…え〜」
カエデがイツキの授業態度を心配そうにチラチラと見ている「い、イツキ君…先生見てるよ…」と忠告してくれたがイツキは意に関せず、ボーッとしている。
佐々木先生が痺れを切らし「では進藤イツキ、ヴァンパイア初の大統領の就任日を答えなさい」とイツキを睨みつける。
イツキはそのままの体勢で「2112年年9月3日就任シェムズ・ヴェンブリッジ、米国」と正解を答えて佐々木先生をさらに困らせる。
佐々木先生は続けて「ぬ〜…!じゃあジェムズ大統領が暗殺されたのは!」と苛立ち。
イツキは空を眺め、アクビをしながら「2112年12月12日保守派に暗殺、3日後の12月15日にジェムズ復活。シェムズ教がキリスト教から派生して成立」さらに苛立つ佐々木先生。
「では!ジェムズ教と」と言いかけるもイツキが被せるように「2114年12月2日 キリスト教との宗教戦争勃発」と答える。
佐々木先生が顔を真っ赤にして「では!その」「2122年5月3日シェムズ教が勝利、旧人類が火星に移住、諸説あり」とまたも被せるイツキ。
佐々木先生はネクタイを噛んで悔しがり、生徒達が「お〜」と感心しているとチャイムが鳴り授業が終わった。
カエデが勇気を振り絞った様子で「イツキ君、ちゃんと授業聞いてたんだね…」と言うので、イツキは振り向いて「まぁ、ここら辺の内容は小学校の時に覚えたから」と眠そうに答えた。
カエデはそれを聞いて「凄いね…!私、歴史苦手で…」と話しかけるも、イツキはスヤスヤと寝てしまう、カエデは残念そうにしていたがイツキの寝顔を眺めて微笑んだ。
午後の授業が終わり、B組のジュンとタケルがやって来た、イツキは眠そうにサプリを3粒口に入れてカリッと噛む。
ジュンは何やら楽しげにしている「クラスの女子が言ってたんだけどさ、プリクラ?っていうのが流行ってるらしい、写真をシールにして貼るんだと、タケルと行こうって話してた所なんだ、イツキも行くだろ?」
イツキは「行くのはいいけどタケルは生徒会あるんじゃねぇの?」と言う。タケルは「今日は委員会無いから大丈夫だよ」と笑顔で答え、ジュンが「じゃあ決定って事で」と自慢げ。
3人で駐輪場へ向かって歩き、イツキとジュンはZⅡ、タケルは淡い水色が可愛いリトルカブに乗った。
タケルが「ここで2人乗りはダメだよ?少し歩こうか」と言うので、3人はバイクを押して外に出て、しばらくあーだこーだと笑いながら歩いた。
しばらく歩くと3人はバイクに乗り、街に出向いて駅の近くにあるデパート『丁字屋』へ、最上階のゲームセンターでプリクラ機を発見する。
「お〜、これだこれ」とプリクラ機の中へ入ってお金を入れると機械が喋りだした、プリクラ初心者の3人はなんだかソワソワしている。
タケルが「究結技でお気に入りを出して撮るのが流行ってるんだって、サトミちゃんが言ってたよ」と笑顔で言う、そういうものなのかと3人でお気に入りを出すことに。
3人の手首が裂けて血が噴き出し、イツキは先割れスプーン、ジュンはメリケンサック、タケルはヨーヨーを作り出した。3人でふざけたポーズをキメる。
《ハイ!チーズっ!》カシャ
互いにふざけたポーズを笑い合い、あーだこーだと言っている。
少し待っていると取り出し口から1枚出て来た、その1枚に6等分のさっきの写真が映っていて、シールになっている。
プリクラに興奮する3人、ジュンが「おー!本当にシールが出て来た!すげぇすげぇ!」と騒ぎ立てる。備え付けのハサミで切り取り、3人で2枚づつ分けた。
しばらく3人であーだこーだーと騒いでいると、手に持った究結技がサラサラと気化して消えていった。
ゲームセンターから屋上へ出て「ちょっと休憩すんべ」とベンチに座り、イツキはサプリをカリッと噛む、ジュンはタバコに火を点け天を仰いて煙を飛ばす、タケルはプリクラを嬉しそうに眺めていた。
ジュンが「良かったなタケル〜、これでサトミと交換出来るじゃん」とニヤついていると、タケルが慌てて「べ!別にそういうわけじゃないって!」と手をバタバタさせて焦っていた。
イツキとジュンが笑っていると、タケルは「違うってばぁ!」と困っている、するとそこへ『ナミコー』の制服を着た不良が2人こちらに気付いて近づいてくる。
『茨城県立南工業高校・通称ナミコー』
その不良達はニヤニヤとして「何やってんだ?僕ちゃん達ぃ〜、僕らも仲間に入れてよ〜」「おっ!プリクラじゃねぇか、俺等も撮りてぇから1人5000円づつカンパしてくれや」と無茶を言う。
3人がシカトを決め込んでいると「おい!聞いてんのかコラ!」と怒鳴り出し、不良Aがタケルのプリクラを奪い取り地面に落として踏みつける。
タケルが「あっ!!」と大きな声を出すなり、イツキとジュンが立ち上がり、その不良Aをぶん殴る。
地面に倒れ込む不良Aにジュンは「何してんだ!おめぇ!」と激高、イツキは「お痛が過ぎるな」と静かに怒る。
不良Aは激痛のあまり立てずにいる、涙ぐみながらイツキとジュンを見上げると、ジュンの長ランが風で煽られ、白い裏地に施された1枚の黒い羽根の刺繍が見え隠れする。
不良Bが「…こいつら」と目を丸くして驚く、不良Bはイツキとジュンを、キッ!と睨みつけ「お、俺達は波崎の悪樓だぞ!悪樓に喧嘩売ろってのか!あん!?」
ジュンとイツキが学ランのボタンを外し上着の片側を大きく開いた、イツキは左側をジュンは右側を開いて不良共に裏地を見せつける。
そこには優雅で神々しい3枚の黒い翼が対となり刺繍され、まるで2人の背中から翼が生えているかのような出で立ち、2人は不良達に向かって言い放つ。
「「俺等は堕天使だ」」
不良Bは「堕天使っ…木島と進藤か…!クソッ!」と慌てて不良Aに肩を貸し、その場を立ち去る。
ジュンが「オメエらの大将に言っとけや!ここいらでシャシャんなってな!」とそいつらに向かって吠えた。
ボロボロになったプリクラを持って落ち込むタケルに、イツキが自分のプリクラを渡した。
「これやるよ、俺こういうの興味ねぇし」と、タケルはプリクラを大事そうに受け取り「ありがとう!イツキ!」と涙ぐみながら笑顔でお礼を言った、イツキもそれを見て微笑む。
帰り道、3人は赤信号で電気屋の前で止まった、ショーケースに飾られた複数の復刻版ブラウン管テレビが連日の事件を報道していた。
《世界各地で変死体が発見され…》《流星群が…》
《続いては先日の殺人事件の…》《大気圏で燃え尽き…》
《解剖の結果、胸部に銀が検出され…》
イツキは気になってボーッ見ていたが、ジュンの「なあ『ハートフル』行こうぜ〜」という言葉に我に返り、地元のソウルフードのある『ハートフル』へ行くことに。
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そんなあなたの今日の運勢は吉です( *・ω・)