9夜
次の日の土曜日、午前中の授業を終えたイツキとジュン。
土曜日は授業が3限目までで終了するので学食は休み、イツキとジュンは腹をすかせていた。
必然的に昼食の話となった。
2人は学校の駐輪場でどこへ食べに行こうかと話し合うことに。ジュンが「腹減ったな」と言うと、イツキが「何食う?」と言うので、ジュンは「トンカツ」と答える。
イツキが「トンカツしか食えねぇのがオメエは」と言うので、ジュンが「じゃあ何食う?」と尋ねると、イツキが「カレー」と言うので、ジュンは「カレーしか食えねぇのかテメエは」と笑って答えた。
こうなると行く所は1つしかない。
「「ハートフル行くかあ」」
2人は地元のトンカツ屋の『ハートフル』へ、ジュンが元気よく「おっちゃんカツカレーとポテサラ!2人分ね!」と注文する。
カウンター越しに「はい、お待ち」とカツカレーとポテサラが届いた。
2人がカツカレーを幸せそうに食べていると、そこへサラリーマン風の男が「た、助けてくれ!」と血相変えて飛び込んで来た。
イツキはビックリしてMDウォークマンのスイッチが触れて曲が変わり、モーツァルトの『レクイエム』より『怒りの日』が流れ出す。
ジュンが「おーおー、なにごとだよ」と引いていると、その男は汗だくになりながら「ペコパが襲って来た!連れが刺されて!燃えた!」と焦っている。
ハートフルのおっちゃんは、その男に水を1杯渡して、男は急いでそれを飲み干す。
2人は「ペコパだあ?何言ってんだこのオッサン」と店の外を見てみると、2人は2度見した。
そこには銀で出来た足が8本で円筒型のボディのロボットが、8段の赤いカメラレンズをグルグルと回していた。
前にも見たペコパに似たロボットだ。
その足は血で染まり、アスファルトをガツガツと刺しながら歩いていた。どうやらペコパではなさそうだ。
「「おいおい…マジかよ…」」
そのロボットがこちらに気付いた、カメラレンズが1列になってこちらを見ている、そしてガシャガシャガツガツと、こちらに向かって走り出し、ハートフルのガラス戸を激しく破壊して突っ込んで来た。
2人はカツカレーを持って席を立ち、どうして良いのかわからず、食いながらそれをただ呆然と見ている。ハートフルのおっちゃんが慌てて警察に電話しだした。
目の前でサラリーマンが腰を抜かして這いつくばって「ヒィーー!!」と手足をバタバタさせて進もうといていた。
そしてロボットの目が赤く光り、その尖った足で男の足を刺し、悲痛な叫び声が店内に響き渡る。
ジュンが「おいテメエ!こら!」と、手首が裂けて血を噴き出しメリケンサックを2つ作り、ロボットに殴りかかった。
ジュンが足を踏ん張り、振りかぶって力いっぱい殴りつけた。
ロボットのボディがベコっと凹み、のけぞるようにして倒れた、そして足をウィーンカラカラと機械音を鳴らし上手いこと立ち上がろうとしている。
その隙にハートフルのおっちゃんが究結技で大ハンマーを作って、それをカウンター越しにジュンへ渡し、ジュンが大きく振りかぶってロボットのボディを叩き潰した。
ロボットの外装が変形し、カメラレンズが飛び出てヒビが入り、足をバタバタとさせている。
ジュンは雄叫びを上げながら何度もハンマーを振り下ろす。
するとロボットはプスプスと黒煙を出し、火花をバチバチと散らせたかと思ったら、爆散して破片をそこら中に撒き散らした。
ジュンが「な、何だったんだ…こりゃ」と息を切らせ、イツキはカツカレーを持ったまま呆然として「わからん…」と答えた。
すぐに救急車が来てサラリーマンを病院へ連れて行き、警察が来て事情聴取を始めた。取り調べが終わると、外はすでに暗くなっていた。
2人は見たままを答えて終わったのだが、あのロボットはいったい何なのかと2人は考えていた。
考えてもわかりはしないので、2人は家に帰る事に。イツキはジュンと別れて、気持ちを落ち着かせようと、バッハの管弦楽組曲第3番『アリア』を聴きながら歩いた。
家に帰ると、カオルが家の前で不安そうにキョロキョロしていた、イツキは「また逃げたのか…」と飼い猫のドラパンに呆れていたのだが、カオルがイツキに気付くと慌てたように走って来て、イツキに抱きついた。イツキを抱きしめるその手は震えていた。
カオルのすすり泣くような「さっき警察から電話があって…あ〜良かった無事で…」という言葉で、自分を心配していた事に気付いて、イツキは温かい気持ちになり、同時に心配させてしまった事の感情が混ざり合い、少し困ったように微笑んだ。
カオルが泣きながら「カレー臭い…」と言い、イツキは「もう家入ろうぜ」と笑った。
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そんなあなたの今日の運勢は中吉です( *・ω・)