表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

SF作家のアキバ事件簿209 ヲタクの拳

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第209話「ヲタクの拳」。さて、今回は時価50億円の美術品"ヲタクの拳"が盗まれて、現場に美術館長の血塗れの死体が…


捜査線上に浮かぶ、ヤタラとセクシーな保険調査員、引退した伝説の美術品泥棒。そして、元カノ達をヤキモキさせる恋の駆け引きの行方は…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 ヲタクの拳

赤外線センサーが張り巡らされた美術館の特別室。強化ガラスの中にはサイリウムを鷲掴みにした手。


"ヲタクの拳"


時価50億円の彫像だ。もっとも、この時価は芸術性よりも埋め込まれたダイヤの総額に比例してるがw


「緩い現場だ」


心の中で呟く。素早くパネルを開けて配線を切断、或いはバイパスさせ超小型の電子機器を噛ませる。

オシロスコープの波長に合わせる。次の瞬間、全ての赤外線センサーが消えグリーンのランプが明滅。


「では、拝見させてもらおうか」


男はフロアに降り立ち、ガラスケースに近づく。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


眼下の街の灯が関東平野の形に広がる。お馴染み"秋葉原ヒルズ"最上階から見下ろす関東の夜景だ。


「ドラン・プール様、秋葉原近代美術館(MaMA)への御支援に感謝します。来シーズンも素晴らしい企画を考えております。スポンサー募集については、ヘイジ・ユウド館長からご説明を差し上げますわ」


ペントハウスでは、寄付金集めの豪華なパーティが開かれている。笑顔を振りまくMaMAの企画部長。


「館長は?」

「さっきから探してルンです」

「もっと探して!早く!」


小声で部下を叱り飛ばしてから、再び満面の笑みを振りまき、世界の大富豪達に笑顔で大見得を切る。


「ヘイジは、直ぐに参ります」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「不味いわ!館長は何処?」


ヘッドセットのマイクに叫ぶアサヲ・カメグ。彼女は造形アーティスト。だが昼はMaMAでバイト中だ。


「何処にもいない!今からトイレを見て来る!」

「急いで!部長がブチ切れそう」

「わかってる」


足早に企画展会場を駆け抜けるカメグ。カクテルパーティの開催中は無人のハズだが、おや?人影が…


「誰?…ああっ!」


地底戦車"マグマ大使ライザー"のオブジェのドリルの先に…MaMA館長の死体が串刺しになってる!


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


文章の神が降臨。スゴい勢いで筆が進む僕。


「テリィ様」

「ミユリさん。今、主人公に御成街道高架橋から身投げさせてるトコロだ。ちょっと待ってくれ!」

「少しは手を休めた方が…」


御屋敷(メイドバー)のカウンター席で僕は執筆中。メイド長のミユリさんがカウンターの中からPC画面を覗き込む。


「…"旅するロック詩人"山田省吾さんの命も少しは永らえるのでは?」

「手遅れだ。もう死んじゃったょ。何の用?」

「金曜の夜、御屋敷で"ガラスの森"の稽古をスルのです。メイドミュージカルのメンバーを全員呼んで」


ミユリさんは、ミュージカルカンパニーの主宰だ。


「警告をどうも。避難しとくよ」

「違います。そうじゃなくて、この稽古は見ておいた方がテリィ様の執筆の参考になると思って。だから、テリィ様には御帰宅していて欲しいのです」

「え。リアル目的は何?」


チョロっと舌を出すミユリさん。可愛い。


「テリィ様目当てのキャストが少なからず…」

「僕のSFファンの面倒を見てくれてありがと。でも、前回の失敗から何も学んでないのか?そーゆーのはヤメとくょ」

「でも、その積み重ねが"化学女忍者隊ガッチャパースン"のベストセラーにつながったのではナイですか?」


おっしゃるとおり。


「でも、もうそーゆーのはヤメよう。僕が御成街道高架橋から身投げしたくなって来た」

「ココ何ヶ月か、テリィ様はSF執筆と事件捜査しかなさってません。タマには女性ファンに囲まれてフェロモン浴でもなさっては?元レースクイーンもいますよ」

「え。元RQ?」


痛いトコロを突いて来るが、スマホに救われる。


「ラギィか?またスーパーヒロインが殺されたのか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


歪んで見える液晶画面の数々に僕の顔が映ってる。他にも大小様々な"僕"が前後左右から睨んでる。


作品タイトルは"液晶の森"だ。


「カメラ写りのチェック?ソレとも液晶に囲まれた幸せな為替トレーダー気分の練習?」

「いや。この作品の意味を考えてた。テクノロジー発展の象徴か、それとも過剰なナルシシズム?」

「単に液晶TVが余ってただけでしょ?別に意味なんてナイわ。コレは芸術だから」


僕に声をかけるのはラギィ。万世橋警察署の敏腕警部だ。僕は彼女が"新橋鮫"と呼ばれてた頃から知ってる。


「実存主義だな。達観してる。大学で芸術理論を学んだか?ソレとも、永平寺で坐禅を組んで悟ったとか?」

「いいえ。私の芸術体験と言えば、絵のモデルをしたぐらいょ」

「え。ま、まさかヌード?」


グラビアポーズをとるラギィ…の向こうで地底戦車のドリルに串刺しになっている背広姿の美術館長w


「被害者はMaMA館長のベイジ・ユウド」

「殺害の時刻は?」

「最後に生きてる彼を見たのは、MaMA企画部長のマーナ・ラムジ。22時頃、彼と会ってます。そして、22時21分には遺体で発見された。この僅かな時間の間で彼は殺されました」


先行しているヲタッキーズのエアリから話を聞く。因みに彼女はメイド服だ。ココはアキバだからね。


「ソレもパーティの真っ最中に?」

「大胆な犯行だわ」

「きっと、彼は何かを目撃したンだろう」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「造形アート"ヲタクの拳"は、秋葉原を支配スル"物欲主義"という名の大量消費文化への強烈なアンチテーゼとなっています」


企画部長の熱弁。パトスを感じる。


「そのアートの価値は?」

「時価50億円。散りばめたダイヤだけで49億円。全てオーナーからの借り物です。館長が安全保証して借りています。しかし…」


溜め息つく企画部長。尋ねるラギィ。


「カメラがあるからセキュリティはしっかりしてた。警報システムもあったのになぜ作動しなかったの?」

「侵入者があれば、アラートが出るハズだった。今、警備チームが原因を調べているトコロです」

「では、パーティの出席者リストと監視カメラの映像をいただけますか?」

「わかりました」


うなずく企画部長。ラギィが追加オーダー。


「あと遺体の発見者と話がしたいわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


遺体の発見者は若きクリエーターだ。


「信じられない。人生最悪の日だわ!」

「ヘイジ館長さんとは親しかった?」

「私は、MaMAのスタッフです。館長は、とても優しい人で私のような駆け出しクリエーターの後押しもしてくれていました」


彼女も黒のパーティドレス。


「貴女も作品創作を?」

「YES。MaMAはあくまでバイトです。実は、ギャラの代わりに私の作品も展示させてもらってる」

「ヘイジ館長に家族はいた?」


小首を傾げるクリエーター。


「お母さんが青森にいると聞いたわ」

「なぜヘイジさんはパーティ会場を離れたの?」

「"ヲタクの拳"を心配してたから。今宵はパーティで人も大勢来てるし」


核心をつくラギィ。


「つまり盗難を心配してたのね?」

「YES。"ヲタクの拳"が搬入されてから、ずっとよ。監視カメラの映像を2週間前の展示初日まで遡って見てたわ」

「搬入日まで遡って?」


うなずくクリエーター。


「心配し過ぎだとは思ってたけど…彼は、何かを知っていたのね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「時価50億円のお宝の無事を、ヘイジは確認しに来たんだ」

「そしたら、泥棒がいたのね?」

「YES。あの辺りでヘイジは泥棒と鉢合わせ」

「2人はもみ合いになり、ヘイジは串刺し」


ラギィと妄想スル僕。さすがは元カノ。彼女とは波長が合う。ミユリさんとホドではナイけれど。


「宝石泥棒が殺人犯になる瞬間だ」

「となると、犯人はパーティの出席者ね」

「ソレは違うと思うわ。出席者は、セキュリティチェックを2箇所で受けている。犯人は恐らく通気口から入って警報システムを解除した」


誰?ミニの肩出し黒ワンピ。金髪美女の登場だ。


「あの…貴女は?」

「セルシ・ナケイ。MaMAの保険調査員よ」

「保険調査員?昭和なパンチラ番組の生き残り?よく五反田でロケしてたな…」

「あのね。どなたか存じませんが、通風口から入ったとしたのなら、ヒルズを出る時は?"ヲタクの拳"片手に再び通風口から出たの?あり得ないわ」


保険調査員への反応は、僕とラギィで正反対だw


「ソレは搬入口ね。警備員は、入る人のチェックは厳しいけど、出て行く人のチェックはゲロ甘い。ましてや、今宵はケータリングのバンがたくさん来てたから誰もがフリーパス。業者に紛れて搬入口からマンマと逃げた」

「鋭いな」

「待って!証拠はアルの?」


またまた正反対の反応だw


「なくても正しいってわかる。私はプロよ。良かったら捜査を手伝いましょうか?」

「良くないわ。貴女、どーして首を突っ込むの?」

「作品を回収すれば、盗品回収で1%の謝礼をもらえる。私は"拳"を回収、みなさんは犯人を逮捕。ウィンウィンでしょ?」

「実に良い提案だ」

「no thank you」


反応も正反対w


「言ってみただけ。それじゃ失礼スルわ」


肩出し黒ワンピはモンローウォークで歩き去る。


「ラギィ!断るなんてもったいないよ。彼女は良いモノを持ってる…変な意味じゃなくて」

「捜査の邪魔になるだけよ」

「でも、もし彼女の妄想が当たってたら?」


スマホを抜くラギィ。


「ヲタッキーズ。搬入口にバンで出入りしてたケータリング業者を片っ端から洗って」


スマホを切って、僕を睨む。


「素直にそうすれば良いンだ」


口をすぼめるラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に捜査本部が立ち上がる。


「ヘイジは、なぜか"ヲタクの拳"の盗難を心配してた。そして、作品がマジで無事かを確認しに来て殺された」

「実際その通りナンだけど、監視カメラの映像では違うの。"ヲタクの拳"は映ったママで盗まれていない。カメラが細工されてて同じ画像をループ再生してた。指紋はどこにもなくて…でも、整髪用のジェルを採取したって鑑識が言ってたわ」

「ヘアジェル?どこで?」


ラギィは即答。


「通気口だって」

「通気口って…セルシの妄想がドンピシャリだ」

「マグレ当たりでしょ?」


ラギィはムキになる。可愛い。ソコヘヲタッキーズのマリレが飛び込んで来る。彼女もメイド服だ。


「搬入口の線がビンゴょ!」

「何?」

「ケータリング業者の車と同じ色なのに社名がない車があった。いつもと違うから係が覚えてた」


続いてエアリが駆け込んで来る。


「ドライバーの特徴はわかる?」

「今、調べてるわ。ソレと…」

「ラギィ警部!」


本部のモニター画面にSATOのゲイツ司令官の顔が大写しになる。とても上機嫌だ。嫌な予感がスル。


「ラギィ。何やらかしたの?」

「お黙り、ヲタッキーズ」

「楽しみ」


ラギィをヒヤかすヲタッキーズ。画面の中のゲイツはSATOのマグカップを手渡してる…セルシに?!


僕は飲んでたコーヒーを噴くw


「ラギィ警部。セルシ・ナケイさんは、良く知ってるわね?」

「どうも。ラギィ警部」

「いつの間に?」


瞬時に仏頂面になるラギィ。


「セルシさんは、とても魅力的な申し出をしてくれたの。ホント魅力的な内容よ」

「もう聞きました」

「プロポーザルを受けるコトにしたわ」


本日最長の溜め息をつくラギィ。


「ゲイツ司令官…」

「セルシさんには専門知識がアル。貴女達の捜査顧問としては持って来いね」

「司令官。私はいつものチームの方が…」


アッサリ遮られる。


「ムーンライトセレナーダーはともかく、テリィたんサンには何の知識もなく頭は空っぽ。警部は断然セルシを頼るべきよ。因みに、警察との合同捜査における捜査指揮権はSATOにあるコトをお忘れなく」

「よろしくね、ラギィ警部」

「貴女、民間人なのにナゼSATO司令部に…」


ゲイツの背後でウィンクするセルシ。唇の端、数㎜で微笑みを返しながら、右手で応えるラギィ。


第2章 放蕩娘の朝帰り


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開いた"リアルの裂け目"由来の全事象に対応するための防衛組織だ。

僕がCEOでミユリさんが率いるヲタッキーズはスーパーヒロイン集団でSATO傘下の民間軍事会社(PMC)だ。


マウントとったセルシが万世橋(アキバポリス)に乗り込んで来る。ワザとか黒の肩出しワンピのママだ。


「貴女の度胸だけは認めるわ」

「フリーの保険調査員ナンてコンなモンょ。ところで、私の妄想は正しかったでしょ?私は結果を出す。コレはお互いの利益になる同盟関係よ」

「そうだね!」


心からそう思っただけだがラギィに睨まれる。


「来て。捜査状況を説明するわ」


モニターに会場の見取り図を出すラギィ。


「犯人はカメラ2台をすり抜け、搬入口から青のバンに乗って逃げた。今、わかってるのはそんなトコロょ…テリィたん!」


ラギィが恐ろしい形相で睨んでる。いや。その、説明の最中もセルシが僕の方をチラ見するモノで。


「へイジが観てた。2週間前の映像は?犯行現場の下見に来てたのカモ。犯人が写ってる可能性がアルわ」

「問題がアル。映像データを保存したフラッシュドライブは2本あって、ヘイジはその1本を見てた。でも、もう1本が何処を探しても見当たらない。犯人が持ち去ったのカモ」

「じゃどーするの?」


ごもっともなセルシの質問。


「盗難美術品の密売人リストがアル。今、ソレを調べてるトコロょ。殺人が絡んでるから、犯人はダイヤだけを売る可能性がアル」

「でも、警察のリストはザッと見たけどもう古いわ」

「他に方法があるの?」


ムッとするラギィ。エアリが飛び込んで来る。


「ねぇこんなモノ、見つけたわ」


黒ワンピのセルシに目が釘付けになる。まぁそーゆーエアリもメイド服なのだが。アキバ的な風景だ。


「エアリ、彼女はセルシ。MaMAの保険調査員。僕達の新しい仲間だ」


またまたラギィが睨む。微笑むセルシ。


「そ、そーなの?ミユリ姉様に言っとくわ…とにかく!コレが警報システムの配線に取り付けられてた。INIと言って警報信号を遮断し、コンピューターに届くのをシャットアウトする…」


エアリは、証拠品用ビニール袋入りのを超小型電子デバイスを見せる。自分の手に取って見るセルシ。


「信号遮断メカ。特注品ね。コレ、どこかで見たコトあるわ」

「どこで?」

「2022年の絵画泥棒に関する記事。ブリュッセルでの絵画盗難に関する記事ょ。これは絵画窃盗の常習犯ファコの商売道具だわ。今回の犯人がわかった。ファコょ」


ファコ?


「誰ソレ?姓はナイの?」

「誰も知らない。捕まったコトがナイから正体はわからない。スゴ腕の泥棒だけど、もう引退したって聞いてた。でも、50億円のお宝のために復帰したのカモね。界隈で少し情報を集めて来るわ」

「行きましょう」


一緒に立ち上がるラギィ。


「いえ。貴女は来ないで」

「勘違いしてるようだけど、これは私の事件よ。貴女は単なる相談役なの」

「あのね。誰も警部には話なんかしない。だから私に任せて」


音もなく立ち上がる僕。


「テリィたん。何処に行くの?」

「ホラ、僕も警部じゃないし。だから…」

「あっそ。行けば」


ラギィは御機嫌斜めだ。顔を見合わせるヲタッキーズ。やれやれって感じで苦笑い。ラギィの指示が飛ぶ。


「ヲタッキーズ!ファコについて調べるわょ」

「ROG(でもどーやって?)」

「インターポールに問い合わせて!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「昼は犯罪と戦って、夜は執筆なんて素敵ね」

「君のドレス姿も素敵さ…ココに情報提供者が来るの?」

「あら。貴方って、単なるイケメンじゃないのね。鋭いわ」


悪の巣窟ホテル"レコル・アクシヲム"のメインバー。バーカウンターに陣取る僕達に男がすり寄る。


「セルシ。ずっと会えないから嫌われたのかと思ってたぜ」

「あ。ビヒル?忙しかったの」

「お隣の国民的SF作家さんとか?」


最近は街でもよく声をかけられる。有名人は辛い。


「よく本人と間違えられるけど、人違いだ」

「ねぇ後にしてもらえる?最近だけど、ダイヤ密売の噂はない?」

「いつ頃?」

「昨夜。もう売りに出てるカモ」

「盗品か?」

「ご名答」


うっかり身内気取りで口を挟み、胡散臭がられるw


「知らねぇな」


すると、セルシは胸の谷間から万札を取り出して、電光石火の早業で黒い革ジャンの男に握らせる。


「…あ。急に思い出した。実は、この前ある男と会ったのさ。数日前の事でヤタラと用心深い奴だった。何でも大量のダイヤが埋め込まれてる美術品の密売について話してたな」

「ふーん」

「手の彫刻とか何とか言ってたぜ」


興味なさげに明後日の方を向くセルシ。


「どーやら人違いだわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部にインターポールから資料が届く。


「セルシの言った通り、ファコは悪党みたいね。奴が盗んだとされる美術品は数知れず、09年にルノアール、19年にはモネ。いつもINIを使ってるわ」

「でも、殺人は犯してナイわね」

「今回が初めてだわ。50億円のお宝に目がくらんだんだわ」


レポートを読むエアリ。


「でも、ファコは自分が欲しいモノを盗んでるワケじゃない。常に依頼人がいるの。依頼人の指示があり、初めてファコは盗む。まぁスゴ腕の闇バイターみたいなモンね。ゴルゴ的なビジネスモデル」

「OK。ファコが見つからないのなら、奴の依頼人を探しましょう」

「依頼人なら知ってるわ。マヒュ・モック。私のバカTO(トップヲタク)よ」


捜査本部に踏み込むゴールドの鎖じゃらじゃらのデーハーなヲバさんメイド。一同は呆気にとられる。


「"ヲタクの拳"の所有権は私と私のTOにアル。今回は美術館に貸してたの」

「でも、半分所有権がある御主人様がナゼ"拳"を盗むの(ってか貴女ホントにメイド?)」

「モチロン、私への腹いせだわ」


何だソレ?


「もともと半分はTOのモノでしょ?貴女は推し変されたのょね?」

「遺憾ながら。でも、表向きはまだ推しとTOょ。"秋葉原ヒルズ"の区分所有でモメてルンだけど、彼はさらにひどいリクエストをして来た」


IDがスマホに送信されて来る。チラ見したら"blood type BLUE"だ。慌てて対テレパス用のヘッドギアを装着。横に"SF作家"と大画きしてアル奴だ。


「"拳"の所有権ですか?」

「YES。あのね。私は、ただ美術館で多くの(パンピー)に見て欲しいだけなの」

「でも、TOは反対?」


大きくうなずくメイド。


「離婚弁護士を交え、前回会った時に彼は大声で叫んだの。どんな手を使ってでも"拳"は取り戻すと」

「でも、だからと言って泥棒を雇ったり人殺しをスルとは限らナイでしょ」

「いいえ。絶対に間違いないわ。彼は、以前にも盗もうとしたコトがアル」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室。


「モックさん。2週間前、MaMAに"ヲタクの拳"を輸送中、あるイベントが発生しましたね?2人のスーパーヒロインが"拳"を強奪しようとした」

「ソレは単なる業者の手違いだったと聞いている」

「確かに立件はされませんでした。でも、2人には犯罪歴がアリ、今回も闇バイトに応募して襲撃した疑いがアル」


肩をスボめ天を仰ぐモック氏。


「私には関係ない話だ。2人と会ったコトもナイ」

「しかし、貴方の離婚弁護士は、この2人に何度も連絡をしています」

「ファコはどこ?」


いきなり切り込むラギィ。


「え。誰?」

「貴方が2人のスーパーヒロインの次に雇った、もっと腕の良い美術品泥棒ですよ。でも、マズいコトに、奴はMaMA館長のヘイジを殺してしまった。つまり、貴方は共謀罪に問われるコトになったの」

「冗談じゃない!コレは全部、推しの差し金だな?」


怒りたつモック氏。


「良いですか?モックさん、ファコの居場所を言わないと、離婚ドコロではなくなりますよ」

「ファコなど知らないし"拳"を盗んでもいない。もともと、私は拳なんか欲しくもない。ただ欲しがってると推しに思わせたかっただけだ」

「どーゆーコト?」

「甲府の葡萄園を諦めさせる作戦さ。"拳"を諦める代わりに甲府の葡萄園をもらう。しかし、仮に盗まれたとなれば、事態は"分水嶺"を越える。全部あの整形メイドが持っていってしまうのだ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のギャレーに全員集合だ。


「保険調査員のセルシさん。貴女は、モック氏の言い分を信じる?」

「依頼人は、あの旦那じゃないわ。ラギィ警部」

「だったら誰?」


早速ラギィとセルシの舌戦が始まる。出番だ。


「犯人はMaMA館長のヘイジだ」

「被害者の?死んでるけど」

「彼にそっくりな男がダイヤについて調べていたらしい…セルシの情報だと」


すると、したり顔で妄想を語り始めるセルシ。彼女とは波長が合う。ミユリさんとホドではナイけど。


「じゃヘイジがファコを雇ったのね?」

「ところが、ファコは欲が出て…」

「ヘイジを殺害?早速ファコにつながる情報を探しましょう。先ずヘイジの経済状況からね。コッチは定石通りだから警察でやって。私は別の筋を探ってみるわ」


またまたお出かけモードのセルシ。


「また悪の巣窟か?僕も連れてけ」

「今回は電話スルだけだから、アシスタントは無用ょ。でも、後で連絡スルわ」

「待ってるょダーリン」


僕とセルシの妄想ハレーションに、史上最大の渋面を作るラギィ。

ハンドバックを手に、颯爽とモンローウォークで出掛けるセルシ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「保険調査員ですか?」

「そうなんだょミユリさん。しかも、かなりセクシーな人ナンだ。次のSF作品のモデルにしたい」

「まぁ随分と御執心のようですね」


カウンターの中でミユリさんは溜め息。


「とにかく、彼女はスゴいんだ」

「どんな人なの?」

「彼女はね…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「協調性ゼロ。自信過剰で知ったかぶりの思い切り嫌な女よ!」


精神科医の前で断言するラギィ。ラギィは狙撃され生死を彷徨った後でセラピーを受けさせられてるw


「でも、優秀なんだろう?」

「テリィたんはカッテルわ」

「それが不満なのか?」


言い淀むラギィ。


「…当然でしょ」

「どうして?」

「だって本来テリィたんは…」


自分で言葉にしようとして気づくラギィ。


「なんだ?」

「私の相棒。本来私のチームのハズなのに、今のテリィたんは、彼女にゾッコン。ソレじゃ困るの」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「僕はゾッコンじゃない。単にセルシの言動に興味がアルだけだ」

「で。どうなさるの?」


ミユリさんの突っ込みw


「何が?」

「ラギィは狙撃されてから人間不信。今は、誰とも付き合う気がナイそうです。ソコに泥棒猫のように現れた賢くて魅力的な女子。テリィ様はどうされるおつもり?」

「ソレが…」


今度は僕が溜め息だ。


「いろいろ複雑でさ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「何が複雑なんだ?」


精神科医は、穏やかな口調…しかし容赦ナイ。


「本心はどう何だ?ラギィ。君は、何を恐れてルンだ?テリィたんが君を待たないコト?君がテリィたんを待つコト?」


考え込むラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のエレベーター。僕が乗ると、既にラギィがコーヒー片手に乗っている。何となく気まずい。


「ヲハヨー」

「あら。セルシと一緒じゃなかったの?」

「今朝は上司とミーティングだってさ」

「…とゆーコトは、朝は一緒だったのね?」


邪推の天才ラギィ。


「違うょメールが来たンだ。僕が彼女と泊まったと思ってるのか?」

「だって、彼女に相当気に入られていたから」

「そーかな?」


うなずくラギィ。


「じゃラギィは、僕に彼女と付き合えと?」

「好きにすれば」

「ラギィ!宝石泥棒が使ったバンが東秋葉原に乗り捨てられてた!」


マリレが飛び込んで来る。


「指紋は?」

「完璧に拭き取られてた。プロの犯行ょ。だけど、鑑識が整髪用のジェルを採取した。メーカーを特定出来そう」

「ヘイジを調べたら、母親の介護に、この1年でかなりの金額を使ってる。経済状況は最悪」


エアリからも報告。メイド達は働いてるw


「だから"拳"を盗もうと思ったのかな」

「警報システムに関してノートパソコンに怪しいメールのやりとりを発見。相手は追跡不能だったけど」

「ファコかな?」


うなずくエアリ。


「2人は事件の前日に会ってるわ」

「何処で会ったか、店がわかれば大きな前進ね」

「その日ヘイジがMaMAを出たのは、正午から14時の間だけょ」


メイド同士で妄想ハレーション。


「ヘイジの通話記録ならココにアル。午前11時6分。ヒカナって店にかけてるわ」

「予約したんだな。きっと2人分だ」

「ヘイジとファコね?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


創作サラメシ"ヒカナ"。東南アジアンなウェイトレスは興味津々って感じで"捜査協力"してくれる。


「ヘイジさんなら3日前、店に来たわ」

「連れはいた?」

「YES。2人で来店して、かなり話し込んでた。ねぇねぇ誰が犯人なの?」


うるさげに遮るラギィ。


「連れがどんな人だったか覚えてる?」

「背が高くてハンサム。ブロンドの綺麗な女性よ」

「相手は女性だったの?」


のけ反る僕達。


「そうよ。30代の美人」

「ちょっと待って。もしかしてこの人?」

「YES」


僕のスマホ画像を指差す東南アジアン。


「間違いナイわ。彼女よ」

「彼女が犯人なのね」

「逮捕ょ!」


スマホ画像は…僕とセシィのツーショットw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。ホワイトボードの前。


「ラギィ!保険会社に話を聞いた。セルシの前職は何だと思う?」

「八百屋の看板娘?」

「ブブー。泥棒だった」


泥棒って職業なのか?マリレが補足。


「いいえ。疑いがアルだけ」

「2017年から2027年にまで、数々の美術品を盗んだと思われる。でも、いずれも証拠はナイ」

「ソレが何で保険会社に勤めるコトになったの?」


ごもっともなラギィの疑問。


「5年ほど前に、今までの罪滅ぼしがしたいと言い出して、警備システムの不備とか指摘してる」

同盟を結ぶって提案したワケね?」

「一貫してるな」


鋭い指摘だがラギィは瞬殺w


「でも、結局は泥棒に戻ったってワケね?」

「今回は殺人犯でもアル」

「自分が犯人なら、出口を知ってて当然だわ。捜査を撹乱スルために私達に近づいた?」


出るのは溜め息ばかり。


「まんまと騙されたわ」

「貴女だけじゃない」

「秋葉原の全員がダマされたのょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のモニターの中でゲイツ司令官が吠える。


「セルシが犯人?」

「残念ながら、事実のようです。状況からスルと間違いありません」

「彼女を捕まえて。今すぐ!」


脳内で喝采を叫ぶラギィ。


「まだ状況証拠のみですが」

「だったら、サッサと尻尾をつかんで。全てが公になって笑いモノにされるのはゴメンよ」

「ROG」


スクリーンは消える。露骨に喜ぶラギィ。


「セルシは何処?」

「ホテルだ。誘われてる」

「何ですって?!」


目をヒン剥くラギィ。


「いや、飲みにだょ」

「どうやら秋葉原から逃げる気はなさそうね」

「全くだ」


全力で同意スル僕。


「とにかく!私達が気がついたと知られない内に彼女のシッポをつかむのょ」

「どうやって?」

「簡単ょ」


第3章 あのキスだけは信じて


悪の巣窟ホテル"レコル・アクシヲム"。ロビーのソファに座ってラギィとの会話を反芻している僕。


「テリィたんは、彼女とデートをスルの。ホテルのレストランへ連れてって存分に楽しませて」

「レストランでか?!」

「食事でょバカ。その隙に私達は彼女の部屋に侵入スルわ」

「俺は何をすれば良いんだ?自白を迫るか?」

「いいえ。楽しい会話で引き止めてくれればソレで良いわ。私達が部屋を調べている間、部屋に戻らせないで。会話で彼女を1時間引き止められる?」


ムリ。理性を失いそうだ。ピンクのオレンジのカクテルドレス。胸の谷間ヤタラ強調。ミニのワンピ。


立ち上がる僕。


「綺麗…だな」

「ありがとう。ホントは、私からデートに誘うつもりだった」

「君から?」


コレはデザート待たズに部屋直行パターンだ!


「私、欲しいと思ったモノは、絶対に手に入れるタイプなの」

「知ってる」

「私は、テリィたんが好きなコトを隠せなかったし、テリィたんも私のコトが気になってると感じてた。でしょ?」


どーやら、お互い隠しゴトは苦手な性格らしい。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


同時刻。コンシェルジュがマスターキーでドアを開ける。セルシの部屋に雪崩れ込むラギィとメイド達。


「何もナイわ」

「ソッチはどう?」

「テリィたんが大喜びしそう」


ドレッサーの引き出しを開けて、色とりどりのパンティを見下ろすエアリ。マリレはブラジャー。


「ラギィ。何としてでも彼女を捕まえたい?」

「え。何を言ってるの?私は、単に犯罪者を捕まえたいだけょ仕事だから」

「そうなの?他にも理由がありそうだけど」


クスクス笑うメイド達。


「黙って探して!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕も頑張ってる。


「どうして…保険調査員になろうと思ったの?まさか子供の頃からの夢?お父さんが見てた昭和なパンチラ番組の影響とか」

「いいえ。最近転職したの」

「ほぉ。以前は何をしてたの?」

「美術品泥棒ょ」


シャンパンを噴く僕。何食わぬ顔でフォアグラをパクつくセルシ。肉食女子ってセクシーだ。卵だけど。


「マジで?」

「うーん私自身は美術品回収業って思ってるけど。でも、警察はそうは思ってナイし」

「ソレはどう違うのかな」


脂ぎった唇を舐めながら、皿の上のグリーンピースをフォークで追い回すセルシ。


「古くはナチス、今はIT長者達が多くの美術品を略奪して来た。ソレが回り回って美術館にアル。私はソレを正当な所有者に返すだけ」

「立派な推しゴトだな」

「初仕事は、ナチスが祖父から奪ったレンブラントの絵だったわ」


グリーンピースを仕留めた彼女は、今度は真っ赤なニンジンを追い回す。しかし、ニンジンは手強い。


「君は、まるで美術品の世界の女版インディ・ジョーンズだ。帽子とムチなしのね」

「あら。ムチならアルわょ。ナイのはテンガロンハットだけ。買って」

「中央通りのノンキ・ホーテで売ってたな」


楽しそうに微笑むセルシ。あぁコレで巨乳ならな。


「なんだか…暑くなってきたね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「あら?何でムチがアルの?SM?」


セルシの部屋。ビニール手袋した手でムチをつまむラギィ。今のトコロ、手がかりはナイ。

ウォークインクローゼットに入るとフロアにノート型PCだ。変なトコロで仕事してるなw


「見つけたわ…セルシと売人達のメールょ。地下でダイヤを売りさばこうとしてる」

「ラギィ。コッチも見つけたわ。彼女の商売道具のフルセット。ピッキングツールと…INI」

「OK。ズラかるわょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


デザートメニューをパタンと閉じるセルシ。


「素敵な提案がアルの。ねぇデザートはパスして、私の部屋で1杯飲まない?」

「え。いっぱい?な、何で急に?だって、ココのイチゴのショートケーキは絶品らしいぞ。何しろスゴい新鮮で…」

「だったらルームサービスで頼みましょ?クリームたっぷりで。さぁ!」


立ち上がるセルシ。フロアの注目が集まる。慌てて立ち上がる僕。素早くスマホでメールを打つ。


"GET OUT"


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


数分後。僕達は腕を絡ませ"レコル・アクシヲム"のムダにゴージャスな廊下を歩いてる。


「来て。"スターライトスイート"って言うのょ」


僕の方を向き、バックステップで踊るように歩くセルシ。その背後でドアのノブが回り出て来るのは…


「あん…」


振り向きかけたセルシをグイと引き止め、壁に押し付け、いきなりキス。ウットリ目を閉じるセルシ。


今の内に逃げろ、ラギィ!ところが…


「ちょっと待った!ソコまでょ!」

「え。…ラギィ?何してるの?」

「セルシ・ナケイ。窃盗および殺人罪で逮捕ょ!」


セルシの刺すような視線。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部に連行されるセルシ。


「え。彼女は犯人じゃナイ?テリィたん、何を言ってくれちゃってるの?」

「頼むょラギィ。彼女は、自ら自分は泥棒だと僕に吐露した。正直な、竹を割ったような性格の人ナンだ」

「真実を織り混ぜて信頼させる手ね」


疑り深いラギィ。


「とても、そうとは思えない」

「のぼせちゃって」

「なぁキスしただけじゃないか。ソレもラギィ達が証拠を探す時間を稼ぐためだ」

「そうね。お陰サマで証拠を見つけたわ」


取調室の前の廊下でラギィと痴話喧嘩なう。


「彼女にも説明のチャンスを上げてくれ」

「絶対ダメ。取調べにテリィたんは同席しないで」「待ってくれよ」


僕を真正面から見据える。


「テリィたん。悪いけど、今の会話とホテルでの行動で私は確信したわ。テリィたんはアラサー彼女のエロ仕掛けに籠絡された。ミユリ姉様にも報告スル」


いや。ミユリさんに逝うのだけは勘弁。


「僕はただ…」


目の前で取調室のドアが閉まる。仕方なくマジックミラー越しに取調室が見える隣室に入るとメイド達がいる。


「仲間に入れてくれ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室の中は1対1だ。


「ココまで手の混んだ芝居をスルとは感心しちゃうわ。見事ね。保険会社に心を入れ替えたと思わせておいて、実は獲物を物色してたのね?」

「あら。何のコトかしら」

「貴女は、ヘイジを利用して"ヲタクの拳"を強奪、用済みになると殺害し、証拠を消すために警察に潜入した」


肩も露わなドレス姿のセルシ。彼女は机に肘をついて斜めに座っている。


「貴女ったら、テリィも顔負けの妄想作家ね」


ワケ知り顔のメイド達に小突かれる僕。


「呼び捨て?ミユリ姉様を差し置いて随分と親しげね」

「レストランでのイチャつきも犯罪モノだったわ」

「見てないだろ?全部ラギィの指示だし」

「キスしろって言われたの?」


いや。逝われてナイw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室は、女の戦場と化してる。


「セルシ。事件の前日、貴女がMaMAのヘイジ館長と会ってたのは知っているの」

「えぇ会ったわ。彼は警備の心配をしてた」

「心配してた?貴女達はグルなんでしょ?」


セルシは呆れた顔だ。


「グルって何?私は彼が演技してたのに気づかなかったのょ?」

「なら、なぜヘイズと会ったコトを隠してたの?」

「彼の魂胆を見抜けズ、強盗行為を防げなかったのがプロとして恥ずかしかったからよ」


マジックミラーのコチラ側で僕達は舌を巻く。


「自分を正当化スル演技がウマいな」

「本音で言ってるのカモ」

「ヤタラ落ち着いてるし…マジで無実カモ」


或いはイカれた女か。まぁどっちも得意だが←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室はヒートアップ。


「貴女がMaMAに侵入した時のピッキング用具一式も押収したから」

「私は、保険会社の回収人ょ?保険会社はね、どんな手段で回収したかは問わないの」

「つまり、今も現役の泥棒だって自白したワケ?」


ムッとするセルシ。ドレスが台無しだ。


「私は回収人。泥棒じゃないわ」

「じゃ秋葉原の地下でダイヤを売り歩くのも回収人のお仕事なの?」

「アレは、ファコの買い手が誰かを探ってただけ。ねぇ?私が調べたトコロ"新橋鮫"と呼ばれ烏森界隈で恐れられてた貴女は、論理的で鋭い直感を持っている。その直感で貴女は私が無実だと気づいてる。でも、ソレを認めない。無視する理由は何?」


鋭い。内心恐れるラギィ。


「貴女の仕事が回収なら私の仕事は事件の解決ょ」

「だったら、個人的な感情を捨てて、サッサと私のアリバイを聞けば?その方が捜査は進展スル。連絡を受けた時、私は上司と打ち合わせをしてた。調べてみたら?」

「…無実なら、なぜ私達に隠しゴトをしたの?」


私、負け始めてる…焦るラギィ。


「経験上、警察には良い思い出がナイし、仕事柄、私は警戒心が強いの。でも、今回はいつもの仕事と違うわ。今後は隠しゴトはしない」

「どうでも良い。もう貴女と組む気はないわ」

「あら」


ファイルを閉じるラギィ。微笑むセルシ。


「私がファコの情報を持っているとしても?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


直ちに取調室から応接室へ移動。私物タブレットの画像を示す黒のミニワンピドレスのママのセルシ。


「コレは、2週間前の監視カメラの映像ょ」

「フラッシュドライブを盗んだの?」

「セルシ。コレじゃ信用を落とすだけだぞ」

「テリィ。あのキスだけは信じて」


はい。


「コレは素人が見てもわからない。アソコにいる男は下見をしてるわ」

「どうしてわかる?」

「私はプロょ」

「ソレじゃコレが…」


断言するセルシ。


「ファコょ」

「何で今まで黙ってたの?」

「機会がなくて」

「お忙しかったモノね…でも、本名もワカラナイしコレしか情報がナイのに、どうすれば良いの?神田リバー水上空港の運輸保安局(TSA)に写真を送るぐらいしか出来ナイわ」


ソコへマリレが飛び込んで来る。


「ファコが泊まってるホテルがわかったわ!通気口で採取した整髪料は"神田エンペラー"がメーカーに特注して作らせたモノだった」

「じゃ決まりね。ホテルに踏み込んで彼を捕まえましょう」

「OK。コンシェルジュに写真を見せて間違いなければ突入ょ」

「ROG!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」


ホテルのドアをマスターキーで解錠、短機関銃を構えた特殊部隊が飛び込むと中は真っ暗だ。寝てる?


「アキバP.D.!手を挙げて!」


短機関銃を突きつけられ、寝ぼけ眼で手を挙げるパジャマ姿のモッサリした中年男子。ラギィが挨拶。


「こんばんわ、ファコ」


第4章 名前なら売るほどアルわ


「ファコなんて奴は知らん。俺はウリム・ホルトだ」

「パスポートには、そう描いてアルわね。2週間前に神田リバー水上空港から入国。10年前、ビルバオでピサロの作品が消えた。15年前のエルグレコの時はベルリンにいた」

「だが、俺は関係ナイ」

「惚けナイで。2週間前にMaMAで下見をしていた映像がある。コレ、貴方ょね?」


タブレットに画像を流す。ガラスケースに収まった"ヲタクの拳"を遠巻きにして見ているファコ。


「確かに。旅行に行った先で、ご当地美術館を巡るのが趣味だが…美術館めぐりは罪じゃないだろ?」

「モチロン違うわ。でも、ソコの美術品を盗んだら、ソレは罪。コレも見て。MaMAで見つかったモノょ。ビルバオとベルリンにもあった。警報システムの信号を遮断するメカだ」


証拠品用のビニール袋に入ったINIを示す僕。今回はガジェット担当だなw


「そうか。俺は生まれて初めて見たよ」

「あのね。貴方が宿泊してるホテルは、特注の整髪料を置いてるの。その部屋ジェルがMaMAの通気口から検出された」

「余談だが、ジェルってのは男らしくないな」


僕の鋭い指摘に変な顔をするラギィ。


「ホテルの宿泊客は何百人といるし、ソレに、このデバイスにも指紋はついてなかったハズだ。となると、おまわりさん達は一体俺を何の容疑で逮捕しようとしてルンだ?」


言い淀むラギィ。畳み掛けるファコ。


「そのファコとやらは、マジで犯人なのか?彼は、少なくとも人殺しではないハズだ。何か誤解をしてルンじゃないか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室の苦戦ぶりをマジックミラー越しに見ながらセルシは、傍にいるエアリに話しかける。


「彼、何か言いたそうね」

「え。そーなの?」

「私は無実と言おうとしてるのカモ」

「どの容疑者もそーょ?」


ソコへマリレが帰って来る。


「ホテル"神田エンペラー"で収穫はあった?」

「ダメ。道具も"ヲタクの拳"もなかったわ。コッチはどんな感じ?」

「彼は、何かを知ってるけど話せズにいる。きっと話せば彼に不利になルンだわ…私が話してみる」


慌てるヲタッキーズ。


「冗談でしょ?貴女は警官じゃないし」

「私は彼の同業者。私にならきっと話すわ」

「…ラギィに話してみる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「おやおや。怖いおまわりさんの次は優しいおまわりさんの登場だ。セオリー通りだな」


とか逝いつつも華麗な赤の胸出しドレスで椅子に腰掛けているセルシを見て、顔をほころばすファコ。


「こんにちわ、ファコ。私は刑事じゃナイわ」

「じゃ何だ?」

「名前なら売るほどアルわ。チューリヒではガスト。スペインではパテラ。フランスではスタン。貴方が知ってそうな名前で言うとジカル」


すると、ファコは急に身を乗り出す。


「2017年のプラド美術館。アレは君の仕業か?」

「うん。バレた?」

「音センサー対策は?」

「ウクライナ人に無効化装置を作らせた。貴方がボストンで使ったのと同じ奴よ」

「しかし、プラドからは、どうやって作品を持ち出した?」

「ソレは簡単。警備員が私に見惚れてる間に、絵の裏にあった警報器のワイヤーを切断した。後は、閉館後に車で乗り付けて無事回収したわ」


心から感心した様子のファコ。セルシと同じソファに座り込み、熱心に語り出す。警察署内ナンだが。


「大したモンだ。でも、ココにいるってコトは、警察に捕まったんだな?」

「いいえ、引退したの。死人を出す前に手を引こうと考えたワケょ」

「俺は…誰も殺してない」

「でも、現場にいたでしょ?何やってたの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


マジックミラー越しの隣室。


「ラギィ。取り調べ、上手く逝ってるな」

「あとキスすればイチコロね」

「あのな」


マグカップからコーヒーを1口飲むラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「詰まるトコロ、俺は"拳"を盗めとは言われてない。俺のタスクは、警備システムの穴を見つけてテストするコトだった。夜22時前に侵入して警報システムを解除して撤収スル。報酬として前金で200万円もらってる」

「誰の依頼?」

「連絡は第三者を介してる。その方がお互いに安全だからな」

「でも、貴方はハメられた。警報システムの解除に利用されただけよ」


うなだれるファコ。


「どうやらそのようだ」

「貴方。現場で何を見たの?」

「実は…最初は何も。仕事は楽勝だった。だが、搬入口まで行く途中で気づいた。警報システムは解除してあるし50億円のヲ宝はすぐソコだ」


腕を組むセルシ。


「盗みに戻ったの?」

「50億円だからな。だが、展示室に戻ると女がいたから、咄嗟に身を隠した」

「どんな女だった?」

「チラッと見ただけだが、黒の盛装だったな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地が良くて常連が沈殿。経営を圧迫中。


で、今宵は僕がメイド長に粘着w


「とにかく!彼にはウソをつく理由が無いンだょミユリさん」

「でも、テリィ様。基本的に彼は泥棒なのでしょ?怪しい理由なら山ほどアルのでは?」

「ところが、この件は違う。黙ってても彼は釈放される。ソレを敢えてセルシに語ってルンだ」


ナゼか僕は力説してる。微笑むミユリさん。


「前金で200万円か。金欠のヘイジには、とても払えない額だな」

「でも、テリィ様。ダイヤ密売のヲ話は?」

「心配で調べただけさ。きっと犯人は、ファコが見たって言う女子だな。"拳"を盗む現場を見られてヘイジを殺したンだ」


うん。実に合理的な妄想だ。相手がミユリさんとは波長が合う。履き慣れた靴は足にピッタリって奴?


僕とミユリさんの妄想ハレーションは続く。


「どんな女子だったのでしょう?」

「黒ワンピだって。でも、当夜のカクテルパーティの出席者は200人以上。で、恐らく女子の半分は黒を着てる。セルシもね…さらに、その黒ワンピ女は搬入口からは出ていない。"拳"をどうやって持ち出したのかな」

「…テリィ様。現場を見に行きません?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ミユリさんはスーパーヒロイン"ムーンライトセレナーダー"に変身。ヘソ出しセパレートのメイド服だ。


立哨の警官が無条件で現場に入れてくれる。


「ヘイジが警報システムを解除スルのを待って、彼女はマンマと"拳"を手に入れます。ところが、ソコへ心配性のヘイジ館長がやって来て鉢合わせ。顔を見られた彼女は、やむなくヘイジ館長を殺害」

「人を殺したとなると、急いで現場から逃げる必要がアルぞ、ミユリさん」

「しかし、彼女は50億円の"ヲタクの拳"を持っています。パーティ会場に持ち込めば人に見られるし、黒ワンピで搬入口に行けば、ウルトラ目立ってしまいます」


セルシとは、妄想がココでSTOPだ。


「パーティ会場も搬入口もどちらもダメ?2つの出口が両方ダメなら、どうやって"拳"を持ち出したのだろう」

「…テリィ様。恐らく持ち出してナイのカモ」

「え。何だって?」


ミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダーは、振り向きザマに必殺技"雷キネシス"を撃つ。紫の光線が飛び"液晶の森"を直撃して破砕w


MaMA中に警報が鳴り響く!


「ミユリさん、何てコトを」

「何してるの?あ、ムーンライトセレナーダー」

「テリィ様。"拳"はパーティから持ち出されていません。ズッとココにあったのです」


四散した"液晶の森"の破片の中から"拳"を拾い上げるムーンライトセレナーダー。警報を聞いて駆け付けたMaMAの企画部長は呆気に取られる。


「ちょっと…結局"拳"はココにあった?盗まれてなかったのね?ありがとう、ムーンライトセレナーダー!」

「見事大当たりだね、ミユリさん。妄想通りだ」

「ありがとうございます、テリィ様」


長い黒髪をなびかせ微笑むムーンライトセレナーダー。まるで昭和なシャンプーのモデルみたいさ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


芸術家のタマゴ、アサヲ・カメグを現場に召喚。


「私に何か御用ですか?…ああっ!私の"液晶の森"が木っ端微塵に!誰がやったの?でも、破片の飛び散り方とか芸術的だわ…」

「アサヲさん、ムーンライトセレナーダーです。ごめんなさいね。"液晶の森"の中に"ヲタクの拳"が隠されていたの」

「とりあえず作品タイトルは"お釈迦"に変更だ」


ナイスなジョークに場が…全く和まないw


「彼女は"拳"を"液晶の森"に隠し、何食わぬ顔でパーティに戻った」

「彼女?」

「"ヲタクの拳"を盗み、殺人を犯したのは黒ワンピの女子だった。確か君は、パーティ当夜は黒ワンピだったょな?」


若きクリエーターの悲痛な叫び。


「あの夜はみんな黒を着てたわ。私ナンか今だって下着も黒ょホラ!」


ホントだw


「でも、その作品が"拳"の隠し場所になってると知ってる人間は1人しかいない。見事な計画だ。でも、MaMA館長のヘイジに見られてしまったのは想定外だったな」

「私じゃない!誓うわ」

「ところで、貴女は女の武器を使って"液晶の森"を企画展に展示してたのでしょ?」


キメつけるラギィ。


「女の武器ナンか使ってなひ!私は貴女と同じ貧乳ょ。他の作品と同様に理事会で選ばれた!」

「そして、企画展が終われば"拳"と一緒に君の下に戻って来る。50億円の盗品と一緒にね」

「いいえ。戻って来ないわ。だって"液晶の森"は売約済みだモノ」


え。ウソでしょ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


モック氏の推し、ウリム・モックがパーツ通り地下にあるSATO司令部に招聘される。

彼女は"blood type BLUE"。弱いテレパスだ。僕は対サイキック用のギアを装着w


因みに彼女はメイド服だ。だってココは(以下略)


「彼女の作品を気に入ったから買った。そうしてはならない理由でも?…しかし、ムーンライトセレナーダーってホントにメイド服なのね。ツーショOK?」

「困ります…彼女の作品"液晶の森"の中に"拳"が隠されていました」

「マジ?」


全く動じる様子はナイ。


「YES。そして、隠したのは貴女です。今、2つの選択肢があります。ヘイジ殺害と"拳"窃盗の共謀。どちらにスルかをよく考えて。刑期が大分変わるわ。30年ぐらい違うかしら」

「ムーンライトセレナーダー。私が館長を殺したと言うの?」

「今、万世橋(アキバポリス)が貴女の経済状況を調べてる。貴女は、警報システムを解除スルために、引退した美術品強盗"ファコ"を200万円で雇った。その証拠が出た後だと、たとえ貴女が全てを自白しても司法取引はモチロン、何の減刑材料にもならないわ」


絶句するウリム・モック。押し殺した声で呟く。


「い、いったい何の話かしら」

「"拳"には貴女の指紋がついてたわ」

「当然よ。私のモノなんだから」


僕がトドメを刺す。


「血のついた指紋だった。そして、その血はヘイズ館長のモノだった」

「もう終わりです。言い逃れは出来ないわ」

「…仕方ナイでしょ?だって、TOに奪われそうだったンだモノ。私は守ろうとしただけ。そうしたら、ヘイジが突然現れて…"拳"を持っているのを見られてしまった。他にどうしろって言うのよ!」


ムーンライトセレナーダーは"心の結界"を解く。


「皮肉な話ね。貴女のTOは、マジで"拳"を欲しがってたワケではナイのょ」


絶句するメイド。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


解散が決まり、後片付けが始まった捜査本部。ラギィとセリィが井戸端会議。スッカリ打ち解けてるw


「セリィ。彼女に不利な証言をしたいとTOが申し出たわ」

「そ。で、警部ドノ。"拳"はいつ保険会社に引き渡されるのかしら?」

「証拠品だから、事件が完全に終わるまで、も少し待って」


セリィは手を差し伸べる。


「ラギィ。貴女の協力には感謝してるわ」

「そ。じゃ私にも報奨金を分けてくれる?」

「ソレはダメ。だって、ムーンライトセレナーダーに半分持っていかれそうナンだモノ」


当然だ。だって、事件を解決したのは…


「まぁ私が思うに、全員にとって良い結果になったと思うわ。ソレと貴女とテリィたんがデートした後で…」

「ラギィ。アレは囮捜査だから」

「…彼は、貴女が無実だと信じてた。決して疑わズに信じていたのょ」


伏し目がちに話すラギィ。キョトンとするセリィ。


「なぜソンなコトを言うの?」

「貴女がテリィたんのコトを誤解してたら嫌だなと思って。もっとテリィたんを知るべきだと思ったの。あ、ありがとう」

「あれ?どうかした?」


僕がパーコレーターで淹れたコーヒーの入った紙コップを2つ持って現れたのは、このタイミングだ。


「ううん。ナンでもナイ。じゃ私は書類を整理をしてくるわ」

「そ。じゃ私もホテル(レコル・アクシヲム)に戻るわ」

「え。せっかくパーコレーターで淹れたのに」


セリィから紙コップを返される。


「ホントは…貴方をアクシヲムに誘いたかったけどヤメとくわ。私、人のモノは盗らナイ主義だから」


僕の頬にキスして去るセリィ。黒のカマーベストにストライプのタイトスカート。モンローウォークで去る。


「あら?デートじゃなかったの?」

「いいや。何で?」

「うーん珍しいなと思って」


顔を出したラギィに、僕は両肩をスボめてみせる。


「金欠ナンだ。MaMAから"液晶の森"の弁償金を請求されてる。会社(PMC)はスカンピンさ」


請求書を見せる。大口を開けて驚くラギィ。


「な?事件を解決したんだから、少しは大目に見て欲しいよ」

「じゃせめてアキバP.D.からマチガイダ・サンドウィッチズのヒートアップドッグでも奢らせて」

「乗った!チリソースは多めで」


マチガイダのチリは最凶ナンだ。


「ねぇねぇ亡くなったMaMAのヘイジ・ユウド館長って、銭形平次の子孫だったらしいわ」

「え。何?そのルパン的なヲチは」

「だってホラ。私は警部だから」


本部のエレベーターに乗り込む。


「てっきり Hey Jude の方かと思ったょ」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"保険調査員"をテーマに、美人調査員の出現に元カノ達が一斉にヤキモキするという、現実世界では絶対あり得ないヲタクの王道ハーレム物語を描いてみました。

保険調査員については、子供の頃に背伸びして視聴してた"プレイガール"の影響で"セクシーなモノ"との刷り込みがありましたが、その妄想は洋の東西を問わないようで安心した次第です笑。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、やっと秋めいてきたのに、ヤタラ半袖Tシャツ姿のインバウンドが目立つ秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ