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第一章 真由の妊娠(6)
真由を一度、家に送っていく。
総一は家に着いたら真由の家族にどう伝えるか考えていた。
真由は性格的に言えないタイプだろう。
ちらっと隣の真由を見ると俯いて震えていた。
まだまだ、子供なんだ。
総一は黙って。
この先の起こりうる事を考えていた。
多分、賢司は『中絶』しろと言うだろう。
自分の孫にあたる子でも。
父親の拓海はもういない。
真由の家に着いて、俺は家のリビングに通された。
真由の母、平野 雅(ひらの みやび)は総一の言葉に愕然とする。
「真由が、妊娠…」
真由の母親もまた、若い。
総一とさほど変わらない感じだ。
「…ここまで関わってしまったので最後まで付き合います。
僕が病院へ連れて行きますんで、家で待ってて頂けませんか?」
親に任せたらいい!!
また、自分の中で声が聞こえた。
いや!!ここまで来たら。
最後の最後まで付き合おう。
総一の中で何かがはじけ飛んだ。
「お待たせしました」
真由はもう二度と着ないだろう制服から私服へ。
きっと部屋でも泣いていたのだろう。
目が真っ赤だった。
多分、もう引き戻ることは出来ない。
この時、総一はある覚悟を決めていた。