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第九章 突然の…(1)

翌日は雨。


−今日はレインタイヤだなあ…−


朝から雨が降っていてスポーツ走行をキャンセルしたい気持ちでいっぱいだ。


…監督が許さないけど。


天気予報では明日、明後日は晴れ。


今日の雨は本当に恨めしい。


けれど、そんな事は言ってられない。


「そー」


監督の賢司が声を掛ける。


「しっかりと感触を確かめてこい」


総一は頷いた。


そしてマシンに乗る。


ゆっくりとピットロードに出ていった。


前を走っているのは池田 隆道。


隆道の後ろにピッタリと付いた。


雨は相変わらず降り続いているけれど、やがて総一にはそれが気にならなくなっていた。


いや、雨だけではない。


マシンの音も振動も。


ただ、走る事、だけに集中していた。




「やけに攻めているな」


ピットでは賢司が顎に指を当てて何やら考えていた。


雨の日に総一がポジティブな走行を見せた事はほとんどなかった。


その横で至は


−そーちゃん、転倒だけはするなよ!!−


祈る気持ちで見つめている。


「あ!!」


ホームストレートに入る直前のコーナーで総一が隆道を抜いた。


至は心臓が口から飛び出そうなくらい、驚いている。


「そーちゃん…」


そして更に顔が青くなる。


ギリギリの状態でグリップさせている。


−そーちゃん、今日は雨ですよ?−


思わず言いたくなるくらい、限界までマシンを押し倒していた。


後ろの隆道が徐々に離されていく。


どよめきがあちこちから上がり始めていた。


「そーって…」


チラッ、と賢司は至を見つめる。


「こんなに雨の日、強かったっけ?」


そう言いたくなるのもわかる。


ドライコンディションでは速いライダーに足元が及ばなくてもウェットではどのライダーも抑え気味に走る為、そこを頑張ればそれなりのタイムが出せる、というライダーもいる事は確かだ。


けれど総一はそんなタイプじゃない。


ウェットは勘弁して欲しい。


出来る限りドライで走りたい。




なのに。


攻めてる。




いつの間にか視界から隆道が消えていた。


−上手く抜けたのはピットに入る為か−


総一の頭は冷静だった。


隆道はピットに入っていた。


雨だから程々に切り上げても良い。


どうせ明日からは晴れ。


今日のセッティングで走れる訳でもない。


でも、今日は何故かそれを出来なかった。




「そーちゃん、どうしたの?」


ピットに戻ってきた総一に至は声を掛ける。


「…さあ、何だろうね?」


総一も首を傾げる。


結局、スポーツ走行は時間枠いっぱいまで走行していた。


普段なら途中で切り上げているのに。


総一自身、何故かわからなかった。




いつもと違うのはその夜。


真由に電話を入れた。




…出ない。


みんなと出掛けたのかな?


それとも疲れて寝てしまったのか。




それにしても今までなかった事だから一抹の不安が総一の胸に残った。

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