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第一章 真由の妊娠(4)

「あの…」


ドラッグストアに来るのもたまにしかないから。


総一はどこに何があるのかわからなかった。


少し俯きながら店員に聞く。






「妊娠検査薬、ありますか?」






店員が一瞬、訝しそうに俺を見つめた。


「…妻の体調がおかしいので頼まれたのです」






何で…自分がこんな言い訳をしないといけないのか。


吐き気がした。



出来るだけ早く家に戻る。


真由が起きて混乱するといけない。




でも…


総一の頭にふと浮かんだ。


何故、ここまで真由の為に動いている自分がいるのか。


特別親しい訳じゃない。




けど、しないといけない気がする。


総一は玄関の鍵を開けた。






「起きた?」


家に帰ると真由は目を覚ましていた。


「ここは?」


真由はゆっくりと体を起こすと首を傾げる。


「俺の家。

社長の家から5分くらいのところだけど、真由ちゃんが倒れた時には誰もいなかったからここへ運んだんだ」


総一はそう言ってドラッグストアの袋を開けると検査薬を取り出した。


「これ、使って」


真由の顔が青ざめていくのが総一には判った。


心当たりがあるんだな…。


段々、確信が掴めてくる感覚に総一は襲われていた。


そして大きく深呼吸をして


「立ち入った事を聞くけど」


真剣な目を真由に向けると真由も真剣に総一を見つめ返した。


ピーンと空気が張り詰める。


「生理は来ているの?」


こんな事、女の子に聞きたくない。


けれども!!聞かねばならない。


総一は押しつぶされそうな空気に必死になって耐えていた。


真由は視線を一旦外す。


生理が来ないのは拓海が死んだショックからだと、自分の中では思っていた。


…いや、言い聞かせていた。


真由は大きなため息をついて思い出す。


「確か、前にあったのは…」


あれは確か…


「12月10日前後だった気がします」


更に深く聞かなければならない。


総一は恥ずかしいのと怖いのと複雑な気持ちを抱えながら意を決した。


「その後、あいつとは…?」


こんな個人的な事を…


聞くのは心苦しい。


「12月24日に…」


真由も困惑した目の色をしている。


「避妊、しなかったの?」


総一は本当に…本当に悲しそうな目を真由に向けた。


真由はゆっくりと頷く。




遠い昔の自分ときっとお腹にいるだろう子供とが重なる。


総一は苦しくなって俯いた。

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