第六章 困った人達(1)
なかなか更新出来なくてすみませんm(__)m
しばらくはこういうペース(二日〜三日)での更新になりそうです。
青い空。
白い雲。
屋上から見るこの景色はいつ見ても変わらない。
「あれえ?珍しい」
懐かしい声…
私は振り返る。
「真由ちゃんが先にここにいるって…」
柔らかい髪の毛、相変わらず。
微笑むその顔は…
「真由ちゃん、泣いてるの?」
そっと私の髪の毛を撫でる。
そう、君の隣に並んで歩くのに恥ずかしくないように毎日、手入れをしている。
「相変わらず、サラサラだね〜!!」
何度も何度も撫でる髪。
この感触が大好きだった。
「自分もサラサラなクセに!!」
私もその柔らかい髪に触れる。
カラーリングしている訳じゃないのに、少し茶色い髪が更に柔らかそうに見える。
「真由ちゃん」
彼はそっと手を差し延べた。
私も伸ばしかけて…
「ムカつく!!」
突然聞こえた声と私と彼を引き裂く手。
「なんでこんな子がいいのかしら?」
どこかで聞いた台詞。
私は屋上から突き落とされた。
「真由ちゃん!!」
彼は私の腕を掴んで引き上げる。
その代わり、彼は…
落ちる!!
「拓海くん!!」
一瞬だけ微笑むとそのまま…
「拓海くん!!行かないでよぅ!!」
「真由!!」
真由はパッと目を開けた。
目の前は青い空でもなく、天井。
「大丈夫か?」
総一は真由を抱きしめる。
「…ご、ゴメン」
真由は涙を止めようと思っても止められない。
これで何度目だろう、拓海の夢を見て泣いて起きるのは。
その度に総一は抱きしめてくれる。
それがどれほど、罪深く感じるか。
でも言えない、総一には。
「そーちゃん、ゴメン…」
泣きながら謝ると総一はいつも首を横に振る。
「謝る必要なんてないよ…」
体を起こした真由を優しく抱きしめる。
今だに拓海という幻影に苦しむ真由。
それを解放出来ない自分。
真由に気付かれないように総一はため息をついた。
1週間に2、3回。
こういう事が起こる。
最初、一緒に住みはじめた時は毎日だった。
悪夢から目覚めて1時間、延々と泣く時もあったけど、最近は数分で終わるようになった。
やがて腕の中にいる真由がおとなしくなった。
−泣き止んだな−
そう思った瞬間に真由は顔を上げて総一を見つめる。
目には涙がまだ浮かんでいる。
「真由」
総一は様子を伺うように真由の顔を覗き込む。
「今日、どこかでランチでもしようか?」
真由は今まで泣いていて罰が悪い。
少し恥ずかしそうにしながらも頷いた。
出掛ける、といっても常に節約生活なので近所の大型ショッピングモールだ。
手を繋いで歩く二人は仲の良い夫婦。
その夫婦の前に現れたのは…
真由は今朝の悪夢を思い出して立ち止まる。
総一は突然止まった真由を見つめて不思議そうな顔をした。
約1年前。
真由を階段から突き落とした人物、高槻 美咲。
「あら…平野さん?」
彼女は真由と総一の顔を交互に見て、嘲笑うような様子を見せていた。
「…同級生?」
総一は明らかに不快な顔をしている真由に聞くと引き攣りながら頷く真由。
美咲は真由のお腹を見て更に意地悪く笑う。
「もう新しい彼氏?しかも子供まで…?」
−本当に、嫌な奴−
真由は黙っていた。
−こんな人は相手にしちゃ、いけない−
何度も自分に言い聞かせる。