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第三章 短い同棲生活(9)

「アハハ〜!!」


店の奥にあるピットで至の声が響いた。


至とは本当に仲が良くて何でも話をする。


毎日、至からはしつこいくらいに真由との仲を聞かれるので昨日の夜の話をすると


「俺もそんな事あったけどなあ。でも、残念だったな」


と笑って総一の肩を叩いた。


至は総一よりも5年早く結婚している。


今では二人の子供にも恵まれて、奥さんとも仲睦まじい。


「でも、それを聞いて安心したよ。

ひょっとして仮面夫婦になるんじゃないかって思ってたからさあ…」


総一は微笑む。


確かにその危険はあったけれど、今後はもうない。


自分の気持ちも真由に向かっているし、真由もまた総一に…


「ただ、あんまり激しすぎて流産した、とかは止めてくれよ?」


「そこまでは…」


総一は頭を掻いた。


しない、とは言い切れなかった。






一方、相変わらず悪阻が酷い真由はほとんど寝ている事が多かった。


そんな中、門真家を訪れたのは真由の母親、雅だった。


「ママ!」


真由は嬉しそうな笑みを浮かべるけれど、顔色が悪い。


「しばらくの食材は買ってきたから…ゆっくりと寝てなさい」


ちょっと開けるね、と断りを入れてから雅は冷蔵庫を開けると食材を入れた。


割ときちんと整理されてあって雅は感心する。


冷蔵庫だけではない。


部屋も小綺麗だった。


そして真由が寝ている寝室を見て驚く。


「総一くんはどこで寝ているの?」


真由が寝ているベッドでは明らかに狭い。


「ここで…一緒に」


「えー?ベッドだけでも買おうか?」


雅はさすがにこれはマズイ、と思う。


結婚する、という事を聞いてから何か家財を買ってあげる、と言ったのだがほとんど揃っているから必要ない、と真由からも総一からも言われた。


けれど、これを見ると…


「そーちゃんがベッドだけは買い替えるって…もう注文したから」



そう聞いて雅は安心した。


結婚の日取りも式場の都合を優先させて、全てを勝手に決めてしまったから、と総一は色々な支援を断っている。


それではあまりにも総一が気の毒だ、とは言ったのだが今、ここで甘えてしまえば後の生活がルーズになってしまう、とは総一。


自分の力で何とかやって行こう、という姿勢に好感が持てた。



それに…


真由の首筋を見て安心した。


「総一くんと上手くいってるのね」


真由は目を大きく見開いて『?』という顔をしている。


雅はフフッ、と笑うと


「外に出る時はハイネックとかを着た方がいいかも」


そう言って首に指を指して片目を閉じた。


真由は慌てて起き上がると洗面台に向かう。


「あ〜!!」


真由の、戸惑ったような叫び声を聞いて雅は肩を震わせて笑っていた。





「そーちゃん、酷いよ〜」


夜中0時を過ぎて、ようやく夕食。


総一の仕事が8時か9時まで、その後、トレーニングをしたりするとこの時間になる。


全日本ロードレースの開幕戦まで1ヶ月を切ったので総一の体作りも追い込みに入っている。


「ゴメン、真由」


総一は手を合わせて真由に謝った。


見える位置にキスマークを付けていただなんて総一本人でさえ、気がつかなかった。


「次からは気をつけるよ」


「もう遅い〜、ママにバレちゃった!!」


真由が頬を膨らませると


「夫婦になるっていうのに、いいじゃない」


悪びれもせず、総一はあっさりと真由に言った。


「…それに」


総一は真由の首筋を見て昨日付けたらしい印を確認すると


「それは真由が俺の大切な人っていう印だよ」


照れもせずにさらっと言ってのけるから真由の方が完熟トマトのように顔を真っ赤にしていた。

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