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第三章 短い同棲生活(8)

「ただいま」


まだ春先だというのに汗だくで帰ってきた総一。


相当走ってきたのがわかる。


息が切れていた。


「おかえり」


真由はタオルを総一の頭から掛けた。


そして汗だくの顔を拭く。


「ありがとう」


総一は優しく微笑むとそのまま真由を抱き寄せ、唇にキスをした。


真由はその行動に驚いたけれど総一に身を任せる。


何度も交わすキス。


何度も何度も交わす度に濃厚になってゆく。


ようやく総一が唇を離すと今にもその場に崩れそうな真由がいた。


総一はしっかりと真由の腰を手で支えていた。


真由は肩で大きく呼吸をしている。


「お風呂入ってくるから…

ちょっと待ってて」


真由の耳元で囁いた総一はそっと手を離した。


真由はしばらく呆然としながらその場に立ち尽くしていた。


やがて浴室から聞こえるシャワーの流れる音にハッ、と我に返り、真由はベッドに向かった。


ベッドに脱力状態で寝転ぶ真由。


そっと額に手を当てた。少し汗ばんでいる。


キスだけで興奮が頂点に立った気がした。




沙織さんがそーちゃんに未練たっぷりなのがわかる気がする…


甘い雰囲気に溶かされそうだった。


真由は唇にそっと指を当てる。


まださっきの余韻が残っていた。



総一が浴室から出て寝室を見ると真由はベッドでぐったり横になっているのが見えた。




最初からやり過ぎたかな…




多分真由はそんなに経験がないはず…というか拓海としか今までしていないはず。


総一はというと今までそれなりには彼女がいたのでその分経験はある。


ただのキスだけでこれじゃあ…先は大変かも。


総一は静かにベッドに入った。




真由の肩がぴくり、と動いた。


起きてるな…


総一は真由を後ろから抱きしめる。


更に真由はビクッ、と全身が動いた。


「真由、起きてるんだろ?」


そう耳元で囁くと総一はそのまま耳たぶにキスをした。


真由は緊張がピークに達している。



「…そーちゃん」


真由の掠れるような甘い声に総一のスイッチが入った。


真由の体を上に向かせるとまだ幼い、あどけない真由の顔を見つめた。


大きな目が総一を捕らえる。


「…真由、愛してる」


初めて聞いた総一の告白に胸が締め付けられる。


「そーちゃん…私も」


真由のその言葉を待っていたかのように総一は真由の唇にキスをした。


昼間の軽いキスなど比ではない。


家に帰ってきた時よりも更にハードに。


真由の中ではクラクラしすぎてベッドで寝ていなければ倒れていたに違いない。


真由は頭がクラクラしながらもうっすらと目を開けた。


総一の鍛えられた体のラインが目に入る。


細い体なのに、筋肉が綺麗に付いていて、真由を軽々抱き上げるのもわかる気がする。


やがて総一の唇は真由の首筋に移り、手はパジャマ代わりのフリースのジップに掛かる。


ゆっくりとそれが下ろされると真由の白い肌が浮かび上がった。


柔らかいその肌に総一の手が触れる。



真由は拓海を失って、もう二度と人を好きになれないかもしれない、と思っていた部分もある。


総一に触れられて最初は戸惑いもあったけど、その戸惑いは総一が少しずつ取り除いてくれた。


温かい…


肌と肌を触れ合わせる感触がたまらなく愛しい。





「そーちゃん…」


しばらくお互いの肌に触れ合いながら段々溺れていく感覚に見舞われていた。


その声に総一は顔を上げる。


泣きそうになっている真由を見て手を止める。


「どうした?」


様子のおかしい真由を見つめる総一。


「そーちゃん、ゴメン!!」


真由は立ち上がると口を押さえてトイレに向かった。






ムードも何もあったものじゃない。


真由はまだまだ悪阻の真っ最中で、気分が悪くなったのだ。


「真由、大丈夫?」


総一も慌ててその後を追った。

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