表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/66

第二章 総一の決断(4)

気がつけば夜中3時を過ぎていた。


さすがにこの時間、真由を送っていく訳にはいかない。


「明日の朝、送っていくよ。

お風呂、入る?」


総一は何気に言ったが…


真由は怯えたように首を左右に振った。


「そう…」


総一はそのまま自分の下着類をチェストから取り出し、浴室へ向かった。


さすがに仕事を終えたままの体では寝付けない。


シャワーだけでも浴びよう。




…結婚前提で付き合うなら。


当然、セックスも付いてくるよな。




総一はしばらくシャワーを流し続けた。


それを体に当てる。




真由は拓海のモノ…




その意識が強いからとてもじゃないけど…


出来ない。


付き合って、その意識が変わればいいけど。


今は…絶対に無理だ。


しかも真由の…あのビビり様は。


真由も拓海という存在に捕われている。




俺を受け入れてくれるだろうか…




浴室から出ると真由はベッドの縁にもたれ掛かるように座り込んでいた。


ずっと考え込んでいたみたいで総一が目の前に座るまで気がつかなかった。




「あ…」


真由は目を丸くして総一を見つめる。


「ベッドで寝たら?」


総一はクローゼットからシーツを取り出すとベッドの下に敷いた。


「俺はここで寝るから」


真由は慌てて首を横に振って総一が敷いたシーツの上に座ると


「女の子がそれはしなくていいよ」


そう言って真由を軽々抱き上げ、ベッドに寝かせた。


「おやすみ」総一は真由に上布団を掛けるとシーツに寝転んだ。




真由はというと。


自分を軽々抱き上げた総一にドキドキしていた。


細い体なのに…


腕は鍛え上げられていて、太かった。


Tシャツから見えた逞しい腕はロードレースをする為に続けているトレーニングの賜物だろう。


よく、拓海もトレーニングをしていた。


ふと拓海を思い出して真由は枕に顔を埋める。


あっ…


枕から微かに漂うのは総一の香り。




拓海はもういない。


そして自分は…


拓海の兄、のような存在の総一と付き合う事になった。




複雑な環境にいる自分。




真由は急に苦しくなって声を殺して泣いた。







…泣く声が聞こえる。


声を殺していてもわかる。


総一は薄暗い部屋の中、慣れないシーツに横になり、目を開けていた。


付き合う、と決めたのはついさっき。


お互い、好き同士なら今、泣いている真由を抱きしめるのに。


まだ総一にはそこまで出来ない。


してはいけない。


すれば…真由の心は総一に対する不信感で一杯になりそうだから、と思っていた。




真由の啜り泣く声を聞きながら、総一も一点を見つめて声を殺していた。


明日も…いやあと数時間もすればまた仕事が始まるというのに。


眠れそうになかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ