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二十国記  作者: 天姫実
1/1

一 滅ぼされた帝国

 帝都は燃えていた。

 後継者争いにより340年続いた大光帝国は大いに乱れ、各地の有力者が群雄となり帝国からの独立を宣言していった。そして、帝国は帝都と杞州を支配するだけの弱小政権となった。


 大光帝国は帝都を中心として、北方にある東夏州、代州、杞州、韓州の4州と西方にある会州、秦州、雍州、漢州の4州と南方にある黄州、九江州、閩州の3州、そして東方の遼州、北山州、南山州、密州の4州で構成されている。そして、各州は帝都から派遣された州博が州の運営を行っていたが、その州博がそれぞれ独立し、一人残らず皇帝または王を自称し、他の国と覇を競っていた。


 そんな中、大光帝国は各州の反乱に対応するために、唯一支配下にある杞州に重税を課したことで、杞州の人々の反感を買い、杞州博の張世は大光帝国に対して、十万の杞州兵を率いて進軍を開始した。この時の張世軍は士気も高く、後継者争いで力を失った帝国軍を瞬く間に殲滅した。特に左翼を任された将軍李范が大光帝国の第18代皇帝陳成を捕らえるという大功を立てた。


 降兵の処理をしている張世様のもとに私は足を運んだ。


「張世様、これからどうなさいますか?」

「それはこれからの軍議で決めることとする」


 帝都は押さえたが、これからが肝心だ。今更皇帝をかばう者はいないだろうが、皇帝を殺せば、各地の雄が我々を危険だと判断して、侵攻してくるだろう。


「皆ご苦労だった。皆の働きにより杞州を大光帝国の支配から解放することが出来た。心より感謝する」


 感謝を述べた張世様は席に座り、深刻な表情をして口を開いた。


「我々の今後の対応について意見があれば言ってくれ」


 皆それを聞かれることは分かっていたのだろう。考える様子もなく将軍の徐漢殿が発言した。


「どの道他の群雄との戦いは避けられないでしょう。ですので、大光帝国の皇帝を処刑した上で、新たな帝国を築き、他の群雄より優位に立つべきです」


 私も含めて誰一人として否定しなかった。一つの大きな秩序が無くなった時に一番にすべき事は新たな秩序を創り、そのもとで一つにまとめることだ。皆それを理解している。そして、そのまとめ役は張世様がするべき事だ。


「でしたら、その国の皇帝は張世様にお願いします」


 と言うと、皆同意してくれた。


 翌日、皇帝一族全員と帝国の重臣を帝都で公開処刑した。

 そして、張世様は大杞帝国の建国を宣言し、皇帝の座に就かれた。


 張世様は今回の戦で武功をあげた私を含めた四人の将軍を諸侯として封じた。私は帝都の南方にある地域を得た。また、張世様は各地の群雄に対して、帰順を求める文書を送られていた。大杞帝国は大光帝国の主要都市二カ所を押さえているので、兵力は全土で一番多い。その兵力をもって他の群雄を滅ぼす事は出来るが、その前に帰順する気があるのかを一応確認するらしい。寛大なお方だ。


 張世様は我々を呼びだした。


「すべての国に帰順を勧める使者を送ったが、どこの国も帰順する気はないようだ。よって、これからは全ての国を滅ぼすことにする。いつどこの国が攻めてくるか分からない。いつでも迎え撃てるように準備せよ」


 と、張世様は初めて軍事に関する命令を我々に出されたのだった。


「御意」


 大光帝国を滅ぼし、残る敵国は14国。






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