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責任持って好きに生きろ!

 2年F組の特別学習が開始された。


「では、本日の講師であられる蒲生警部補と生谷教祖にご登場いただきます!」


 岳間の呼びかけに廊下で待機していた蒲生と生谷が教室に入ってきた。智奈と美沙は彼等に小さく手を振った。


「ご紹介に預かりました。私、警視庁捜査一課付き別動班長の蒲生恭治と申します」

「私は非公認宗教団体『魂の家族』代表を務めさせていただいています生谷源四郎です」


 蒲生と生谷は生徒達に一礼した。


「ホントに刑事が来た・・・」

「教祖って、マジか・・・・」


 静まり返る生徒達を前に蒲生は一番後ろの左側の席を指した。


「えっ?」

「そ、君です。先程『ホントに刑事が来た』と言いましたね?」

「は、はい」

「因みに出席番号と氏名、もしくはハンドルネームでも構いませんが」


 生徒達が「ハンドルネームって」と失笑した。


「あの、出席番号21番の永田多喜雄です!」

「タキオ君、刑事って言う階級はあると思いますか?」

「か、階級? あの、巡査とか警部とか?」

「そう! 私は警部補です」


 永田を助けるべく岳間がホイッスルを鳴らした。


「はい! 永田さん、時間切れ〜! 因みに刑事とは殺人や窃盗なとの捜査にあたる警察官の事を言います」

「流石は岳間先生、仕切り抜群! はい! 次の質問!」


 美沙は「いや、蒲生ちゃんが勝手に永田にクイズ出してるだけじゃん!」と智奈に耳打ちした。


「はい! 教祖様に質問です!」


 挙手した梅津麻弥を生谷が手のひらで指した。


「どうぞ!」

「神様って、ホントにいるんですか? いるなら何故、戦争が起きるんですか?」

「確信をついた質問ですね。神様や仏様と言った存在は科学的には証明できません」


 智奈は「流石はおやぬし様!」と強く頷いた。


「私は皆さんにこの本をお勧めします」


 生谷は黒板に「18歳までに知っておきたい、世界三大宗教」とチョークで書き、更に実物の本を提示した。


「先程、図書室でこの本を見つけましてサラッと内容を確認しました」

「いつの間に?」


 岳間は生谷が図書室に行っていた事に驚きを隠せなかった。


「神様や仏様を信じる信じないは各個人の自由です。決して他の人間が強要や非難をする事ではないと思います」


 麻弥は黒板を書き写した。


「戦争は色々な要素がこじれておきます。宗教もそのひとつである事は否めません」

「どうして宗教で戦争が起きるんでしょうか? 神様は平和を望んでいないのでしょうか?」

「他の宗教を邪教ととらえ許せないのでしょう」

「多様性って無いんですか?」

「何千年もの根強い信仰心がかえって他の宗教を認めないのでしょう」


 岳間は「これ以上は面倒くさくなるな」とホイッスルを鳴らした。


「はい! 梅津さん、続きは板書の本で。次の質問どうぞ!」


 阿岐が挙手して岳間に発言を促された。


「蒲生警部補さんに質問です。刑事ってヒーロー何ですか?」


 美沙は「うわーっ! おバカ質問出たーっ!」と頭を抱えた。


「刑事はヒーローではありません。正義と法律は違います」


 生徒達がざわつき始めると、蒲生は特撮ヒーロー「銀河刑事ムーア」の変身ポーズをした。


「えっ?」

「このように変身ポーズをしてもハイパースペックテクターすなわち強化服を装着できません!」


 阿岐は「すげぇ!」と目を輝かせた。


「皆さんに知って欲しいのはどんな凶悪犯でも人権があるということです。正義は時に視野を狭くしてしまう事を、頭の片隅に置いてくれると嬉しいです」

「蒲生君の意見に私も賛成です。全てに寛容になるのは難しいと思いますが、色々なものに接して欲しいと思います」


 岳間は「蒲生警部補を君呼びか、流石はおやぬし様だ」と挙手した。


「岳間先生、なんでしょう?」

「おやぬし様、蒲生警部補。教師として生徒達に何を教えたら良いのでしょうか?」


 智奈は「先生もおやもとに沼ったかぁ!」と美沙に耳打ちした。


「責任を持って好きに生きろ! てのはどうです?」

「蒲生君、教師にそんな事を求めてはいかんよ。学校には学校の役割がある。全てを学校に負わせてはいかん」


 岳間はホイッスルを鳴らした。


「宴もたけなわではありますが、ここでお開きとさせていただきます」


 智奈と美沙は「蒲生ちゃん、変な事は言わなかったね」と胸をなで下ろした。


「では、御二人から最後に一言お願いします。まずは蒲生警部補から」

「はい、皆さんさようなら。くれぐれも警察のお世話にならないように学んでください。おやぬし様、どうぞ」

「私から一言、宗教は羅針盤のひとつと思っていただけたらと思います」


 蒲生と生谷は生徒達の拍手に包まれて教室を出て行った。


「これにて2年F組の特別学習を終了します。小砂さんと浅間さん、ちょっと」


 智奈と美沙は岳間と共に廊下に出た。


「何ですか? 先生」

「蒲生警部補とおやぬし様を学校全体の講演に呼びたいんですが」

「えっー?!」

「桑名さんに動画を撮ってもらってたんですが、校長に見せて交渉しようと思ってます」


 智奈は大きく頷き美沙は大きなため息をついた。


「蒲生ちゃんとおやぬし様への交渉、先生がやってくださいね」

「もちろんです、浅間さん。宮川さんとも親しくなれそうですし」


 美沙は「先生、完全に蒲生ちゃんとおやぬし様に沼っちゃたよ!」と智奈に告げると、


「私、交渉とか手伝います!」


智奈は岳間に進言した。


「貴方がたは受験に向けて準備する時期です。ま、大学がすべてとは言いませんが」


 岳間は智奈と美沙を教室に向かわせ、職員室のパソコンで「現役警部補と非公認宗教団体教祖による、ダイバーシティーへの道のり」の企画書を作成するのであった。


〈終〉




 


 

 


 

長らくのご愛読、誠にありがとうございました!


「良寛さんにはなれない」スピンオフ作品、いかがでしたか?


智奈と美沙を中心に、担任の岳間や阿岐などのクラスメートら新キャラクターや、蒲生と生谷、その子らも登場させてストーリーをひねり出しました。


今回は女子高生の普通の高校生活を描きました。特に大きな事件が起きるわけでも、蒲生と生谷を講師とすることにも大きな反対が起きることもなく、智奈と美沙がすごく成長するわけでもない物語。


よかったら、感想とかいただけると嬉しいです。


では、またお会いしましょう!



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