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〔ライト〕な短編シリーズ

ウカル様の必勝えんぴつ

作者: ウナム立早


『正しいものを一つ選べ』


 問1から問20まではこの形式のようだ。選択肢は1から5まで、5種類ある。


 選択式ではあるものの、内容はかなり難しい。だが、私にとってそれは問題ではない。学業成就の神であるウカル様の御神木からこしらえた、この必勝えんぴつがある限り。


 えんぴつを持ち、祈りを込めた。そして、机の上にサッと転がす。


 三、と刻まれた面を上にして、えんぴつは止まった。私は解答用紙に3と記入する。ウカル様が選んだ解答だ、迷いなどない。


 この調子で、全国有数の名門と言われている大門高校の入学試験を、満点で通過する。これは、我々が代々守り続けていたウカル様の御利益を世間に知らしめるための、ほんの手始めだ。




 問20を経て、試験問題はパターンを変えてきた。


『図1の人物の名前を答えよ』


 この程度なら過去問でも経験済み。ペンケースから、別のえんぴつを数本取り出す。


 ア行からワ行までの文字が、それぞれのえんぴつに刻まれている。6面のうち1面は何もなく、これは別の行のえんぴつを使えという意味なのだ。これを繰り返していけば、いずれ意味の通る文字になる。


 答えは……は、ら、た、か、し。どうだ!




 順調に解答を進めていき、いよいよ最終問題となった。満点は、もはや目の前だ。


『現代の環境問題について考えていることを、1000字程度で述べよ』


 なんだとおおおお!?


 1000字の記述式だって……、こんな設問形式、過去問には一度もなかったぞ!


「試験終了まで、残り5分です」


 試験官の声が、私の焦りを容赦なく加速させる。


 5分だって!? くそ! 祈りを込めるのに時間をかけ過ぎたか!? もう迷っている時間は無い。ク……ククク、わかった、見せてやろう、ウカル様の力を!


 ペンケースのえんぴつと、服や体のあちこちに忍ばせていたスペアのえんぴつまで、全て取り出した。その数、1000本。


 とくと御照覧あれ!


 机の上に大量のえんぴつが舞う。やがて止まった物から順番に、刻まれている文字を目で追った。


 げんだいのかんきょうにおいて……。


 す、素晴らしい! ちゃんと文章になってる! さすがです、ウカル様――。




「医務室の子はどうしている?」

「未だにウカルサマ、ウカルサマとうわごとを言ってますが、体に異常は無いようです。しばらくすれば回復するでしょう」

「そうか、試験の重圧に耐えられなかったのかもしれんな」

「そのようです。ところで校長、このえんぴつは……不正行為カンニングにあたるのでしょうか」



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんておバカな主人公でしょう(笑) そして落語の様なきれいなオチ。 素敵な作品です。
[良い点] 同じネタが複数ある中でのお話でしたが、そういうネタの話が読者が飽きているはずというのを逆手にとったような「文章題」への適応が見事でした。 そして、オチ。保健室と、不正審査。 [一言] まあ…
[一言]  とりあえず千本の鉛筆のくだりで爆笑しました。んな、馬鹿な!面白かったです。ありがとうございました。
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