入学
「凄いです! ここがシュフリダールが通っているグリエル学園なのですね!」
巨大な噴水を囲うように大小様々な学習棟が建ち並び、棟の周りは美しい草花が生い茂る。
グリエルの指定服に袖を通し、正門玄関を潜ったミコットはクルクルとその場で踊るように回る。
元々は山であった場所を整地し作られた広大な敷地を誇るグリエル本拠地。その表向きは学園として機能しており、研究施設、訓練施設などは一部の人間しか入れない地下へ併設されている。そしてグリエル学園などという半ばお遊びのような仮の姿を取り繕う理由にも訳はある。人材の発掘、だ。この学園は6歳から18歳までの女性の入学を許可しており少等部から高等部までの一貫校となっている。大半の生徒は何も知らず卒業していくが、学園生活の中でその適正を見染められた者は……「選別」されるのだ。
私は血に塗れた自分の手を幼少の頃過ごした校舎と重ねながら少し昔を思い出す。
(……いや、大丈夫、大丈夫だ。ミコットはもう15歳。選別の対象の大半は10歳以下、貴族の娘として人生を歩んで来たミコットが今更選別対象になるなど……あり得ない)
「どうしたの〜? ダールちゃん? 早く学園を案内してよぅ」
待ちきれないとばかりに私の手をグイグイと引っ張る彼女の手は私とは違い清らかであった。
「すぐ案内するよ……ミコット」
私はミコットに引っ張られるように学園の中央部へと歩きだす。
この学園の内情を知っているはずのラングドアーム家当主であるミコットの父親が何故、彼女の入学を許可したのか、そして組織上層部はこの事を知っているのか、その真意は不明だ。だが何があっても彼女は守ってみせよう、それが私に与えられた任務なのだから。