第九十五話 ~ 大賢者の思い出 ~
とうとう、私の周りの人も新型コロナに感染してしまいました。
私は濃厚接触者ではないとされましたが、その人とは会話などをしていたのでかかりつけ病院に抗原検査に行ったのですが検査キットがないと言われ断れてしまいました。
電話で問い合わせてもどこの病院にも検査キットがないと言われ断られ続け、何とか隣町の病院で抗原検査を受けることができました。
結果は陰性で安心したのですが、医師にこの検査キットの精度は80%なので必ずしも感染していないと言う保証は無いと言われました。
家族に感染させていないか不安な日々で小説を書く時間もありませんでした。
皆様もくれぐれもご用心を……
まぁ、言い方を変えれば感染していれば10日の隔離でのんびりと小説を書くことができたのかもしれませんが……なんて事は全然、考えてもいなければおもってもいませんよっ!
第九十五話 ~ 大賢者の思い出 ~ 序章
マノンの思い付きで成仏し損ねただけではなく、その魂をオウムに入れられてしまった爺……
マノンの部屋でペットとして飼われることになってしまった……
鳥籠に入れられてはいるが鍵はかけられておらず、自由に外に出ることができる
"もう、朝か……"
オウムの中の爺が目を覚ます
"……腹が減ったの……"
爺は280年ぶりに空腹という感覚を味わっていた
"さて……あ奴は……まだ、寝てるか……"
ベッドに大股をおっぴろげて寝ているマノンを鳥籠の中から見下ろす
爺は鳥籠から飛び立つとマノンの横へと舞い降りる
"おいっ! 起きろ!"
"腹が減ったぞっ! 何か食わせろっ!!"
爺は、念話でマノンに何度も呼びかけるが全く起きる気配がない
"仕方がないの……"
爺は諦めたかのように呟くとマノンの股間に鋭いくちばしを突き立てた
「ふげぇ!!!」
死にそうな悲鳴と共にマノンは飛び起きる
「あっがっがっ、あああっ!!」
股間を抑えてベッドの上に蹲るマノン……
「いきなり、何てことするんだよっ!」
マノンは真っ青な顔で股間を押さえて身悶えしながら爺に抗議する
「腹が減った何か食わせろ」
爺の声がオウムから聞こえてくる
「わかったよ……」
「食堂で何かもらってくるよ」
マノンはそう言うとまだ痛む股間を押さえながら服を着替えて部屋を出て行った
"280年ぶりの食事じゃな……"
爺は少し楽しみにしているのであった
暫くするとマノンがトレイの上にパンとスープに乾燥肉にサラダを添えて持ってきてくれた
「280年ぶりの食事にしては……」
「随分と質素じゃな……」
爺は少し不満そうに言う
「文句言うなら食べなくていいよ」
「私が代わりに食べるから……」
不満そうな爺の代わりに私が食べようとする
「待て待てっ!」
爺の声がするとオウムが飛んできてトレイの上に乗る
「ありがたく頂くとする」
そう言うとオウムはスープを飲む
「ぶっへっ!」
「不味っ! なんじゃこりゃ!!」
「とても食えたもんじゃないぞっ!!」
爺の死にそうな声がオウムから聞こえてくる
「えっ……」
「そんなはずないよ」
私はそう言うとスープを口にする
「美味しいよ」
爺にそう言うと
「もしかして……」
私はある事を思いつくと、ハンガーに掛けてあった服のポケットから紙袋を取り出す
「これならどうかな」
オウムを買ったときに一緒に貰ったオウムのえさをトレイの上に出した
「……これを食うのか……」
爺は少し躊躇っているが空腹には勝てない……恐る恐る餌を啄むと
「美味いっ!」
そう叫ぶ爺の声が聞こえてくるとオウムは一心不乱に餌を啄み始める
「あ~美味かった……」
「……にしても……なんか……虚しいの……」
爺の悲しそうな声が気の毒に思えるマノンであった
第九十五話 ~ 大賢者の思い出 ~
アレットはマノンに貰った魔石の指輪をジッと見ていた
興味本位でこの魔石の価値を知ってしまい取扱いに困っているのだ……
本当は、ずっと指に嵌めたままにしたいのだが、万が一にでも紛失するようなことにでもなったらと考えると、怖くてできないのである
「どうしよう……」
青く輝く魔石を見つめてアレットは大きなため息を吐いた
「マノン君は、何か用があるみたいでアカデミーにいないし……」
「それに、私には何も言わずにルシィ導師にだけってのは……」
「納得できないのよね……」
「それにルシィ導師は間違いなくマノン君の事、知ってるわよね……」
アレットはルシィがマノンの正体を知っているのだと確信するのであった
「でも……どういう関係なの……」
「すっごく、気になるんですけど……」
ルシィとマノンがどういう関係なのか気になって仕方のないアレットであった
その数日後、アレットはマノンとの関係を問い質すために何度もルシィに接触を謀るが勘の良いルシィはそれを上手く回避し続けるのであった
そうこうしているうちにマノンはアカデミーに戻ってくるのであった……
それよりもアレットが驚いたのはルシィの豹変ぶりだった
「なにアレっ! 別人じゃないのっ!!」
「まさか……」
アレットは、文章にすれば18禁になってしまうようなことを想像する
「これは……マズい……真相を確かめねば……」
本人にも分からないような得体のしれない危機感を抱いたアレットは逃げ上手なルシィではなくちょろいマノン本人に照準を合わせるのであった
「例の約束もあるし……」
アレットは心の中でニヤリと笑った
かくして、マノンはあっさりと"トロペの温泉"へアレットを連れて行くことになるのであった
ここはルシィの部屋……いつもの如くレナとルシィとオマケのエレ-ヌの前に正座している私……
「仕方がないわね、行ってらしゃいよ」
「アレット導師はマノンが大賢者だったこと知っているし……」
「温泉に行くだけなら問題ないわよ」
レナは何事もないように言う
レナの言葉にルシィとエレ-ヌは驚きの表情を隠せないでいる
「そうですね……温泉に行くだけなら」
ルシィがそう言うとエレ-ヌも何か言おうとしたが……
"……"
何かい言おうとしたが言わなかった……下手な事を言えば、またレナとルシィに手籠めにされると感じたからであった
因みに、エレ-ヌが言おうとしていたことは……
"温泉に浸かって、美味いもの食って、海に沈む夕日を見ながら……"
"そして、その後は……"
……であった
もしも、いつものように気軽に言っていれば、確実にレナとルシィに手籠めにされていたであろう
……そう、医学的に人体の的確な急所(感じる所)を突いてくるレナの攻めはエレ-ヌもいけない世界に引っ張り込まれそうになるほどに強烈なのである
そして今、私はアレットと一緒にトロペの温泉へと向かって海沿いの道を歩いている
ほんの2ケ月ほど前にシルビィと歩いたことを思い出す……
シルビィ……元気かな……今頃何してるんだろう……
そんなことを考えながら、同じ景色、同じ道を別の人(女)と歩いている……
自分がとんでもない女誑し(色魔)のように思えてくる……
日の光が暖かくなり以前に比べて人も多くなっているのがわかる
アレットは海を見るのは久しぶりのようで綺麗な銀髪を潮風に靡かせながら気持ちよさそうに歩いてる
因みに、オウムの爺は温泉に行っても入れないから付いてこなかった……
何か、やりたいことがあるらしく魔法工房に残っている
それにしても……アレットの荷物が以前に比べて異様に少ないのが妙に気になる……手提げ鞄一つである
そんな事を考えながら歩いているとトロペの温泉が見えてくる
私は案内所で予約を取ろうとするが……満室で予約が取れなかった
「困りましたね……」
「泊りは無理ですね」
少し安心したように私が言うとアレットはニヤリと笑う
「大丈夫よ」
アレットはそう言うと案内所の係員に手紙のようなものを見せるとアレットに鍵を手渡した
「えっ……」
驚いている私を尻目にアレットは平然と宿に向かって歩き出す
「どういうことですかっ!」
アレットは状況がわからずに慌てる私を見ると
「この時期は直ぐに予約が埋まるから」
「予め予約を入れておいたのよっ!」
「この前のささやかなお礼よっ!!」
アレットはそう言うと片目を閉じてにっこりと笑った
「この人……ホントに抜け目ないな……」
マノンは感心すると同時に得体の知れぬ恐怖を感じるのであった
アレットが予約してくれた宿は、以前にシルビィと泊った宿の隣の宿だった
宿のドアを開けると……そこには大きな荷物が置かれていた
「これ……何でしょうか……」
不安そうにアレットに尋ねる私……
「も・ち・ろ・ん、私の荷物よ」
「いろいろと女には必要なのよっ!」
「予め、送ってもらてたのよっ!!」
アレットはそう言うと大きな荷物を引きずるように部屋の片隅へと持っていく
すると、コンコンとドアをノックする音がする……アレットが返事をするとドアが開き係員が豪華な海鮮料理の昼食を運んでくれる
「すっげぇ……」
「これも、手配済みか……」
アレットの余りの手際の良さに私は呆然としているだけであった
「さぁっ! 食べましょうっ!!」
アレットはそう言うと大きなワインの壺をドンとテーブルの真ん中に置いた
「やっぱりこれがないとね……」
「マノン君も飲むでしょう」
「ここの海鮮料理にはこのワインが合うのよっ!!!」
私が返事をするまでもなく備え付けのコップになみなみとワインを注ぐ
「さぁさぁ、食べて食べて、飲んで飲んで」
そう言うとアレットは私のお皿に料理を取り分けてくれる
アレットに勧められるままに料理を口にする
「うっ美味いっ!」
食いしん坊の私にとってこの料理とワインの組み合わせは最高だった
私はそんなアレットの見事なチョイスに感動しつつも恐怖と警戒心を抱いていたが……
次第にアレットも私も、いい具合に酔いが回り会話が弾むようになる
初めは魔石や錬成術と言った話題から温泉やワインの話と話題が移り……
「そうそうっ! そうなのよっ!!」
「うちの父ってゴリマッチョばっかり私にあてがうのよっ!」
「男は筋肉だっ! て思ってんのよっ!」
「そんなのっ! 私の趣味じゃないって言ってんのにっ!!」
そして、今はアレットの愚痴を聞いているマノンであったが……何となくアレットが自分の姉のような気がしてくる
一通り愚痴を言った後にアレットは眠ってしまった
私はアレットを抱え上げるとベッドにそっと寝かせる……
"マノン君……魔石……ありがとう……"
"一生……大事にするから……"
アレットは、朦朧とした意識の中で呟くようにマノンにお礼を言うのであった
私は、火照った体を覚ますために宿の外に出る……心地よい潮風が頬をなでる
打ち寄せる波の音、海鳥の鳴き声……前と少しも変わっていなかった……
"いい所だな……今度は、レナやルシィ……みんなと一緒に……"
等と一人で黄昏ていると……"ビチャ"っと頭の天辺に海鳥の糞の直撃を受けるマノンであった
"……まぁ……ウンが付くから良いか……"
プラス思考のマノンであったが……流石にこのままではまずい……
"温泉にでも入るか……"
そう呟くと服を脱ぎ捨て頭の天辺の海鳥の糞を洗い流すと温泉に入る
「ふぅ~、やっぱり温泉はいいねぇ~」
少し温めのお湯はいつまでも浸かっていられるぐらいの温度である
「うっううーーーっ」
私は両手を上げて大きな伸びをする
余りの心地よさに睡魔が襲ってくる……ウトウトしながらどのくらい時間、温泉に入っていたのか分からなくなってきたころに
「ずるいよ……マノン君」
「一人だけ温泉に入るなんて」
不意に聞こえてきたアレットの声に目を覚ます
「アレット……導師……」
「起きたんですか……」
寝ぼけ眼を擦りながら声のした方に振り向くとアレットは既に裸になっていた
"随分と手際がいいな~"
等と、寝ぼけた脳が考えているとアレットは私のすぐ横に来る
「酔い覚ましには、丁度いい頃合いだわっ」
アレットはそう言うと私と同じように両手を上げて大きな伸びをした後で大きな欠伸をする
「凄く、いい気分……」
「なんだか……マノン君が弟のように思えてくる」
「不思議よね……」
呟くように言うアレットの言葉に嘘やお世辞は全く感じられなかった
「奇遇ですね……私もアレット導師の事がお姉さんのように感じることがあります」
私はそう言うとアレットを見て少し微笑む
「そう……お姉さんか……」
「それも悪くないかもね……」
アレットはそう言うとそっと私に寄りかかる
「でもね……」
アレットが何か言おうとすると"ビチャ"とアレットの頭の天辺に海鳥の糞が落ちる
「うげっ! なんてことすんのよっ!!」
「いい所だったのにっ!!」
「とっ捕まえて、焼き鳥にして食ってやっるわよっ!!」
アレットは立ち上がると握りこぶしを振り上げて怒っているが、私にはそんなアレットの姿が無性に良い意味で愛おしく思えるのであった
「ホントにもうっ!!」
海鳥に文句を言い終えたアレットは私の目の前に自分の下半身がある事に気が付くと頬を赤らめながらゆっくりと股間を隠して湯につかる
「……」
「今の……無かったことにしてね……」
アレットはそう言うとそそくさと温泉を出ていくのてあった
日も傾き始め、水平線が朱に染まるころに夕食が運ばれてくる
夕食も豪華なものだった
当然、アレットの用意してくれたものである
「こんなに良くしてもらって、申し訳ないです」
「少しは私も費用を出したいのですが」
私の申し出にアレットは黙って手で×をすると
「王都からここまでの交通費に比べたら」
「私がマノン君に差額を払わないといけないぐらいなのよ」
「それに、往復にかかる時間もね」
アレットはそう言うとコップにワインを注ぐ
「そんな事は、スパッと忘れて食って飲んで楽しみましょう」
そう言うとアレットはワインを一気飲みする
「あまり飲み過ぎないようにして下さいよ」
私の言葉にアレットは少し不機嫌そうな表情になる
「そんな事を気にしていたら楽しめないでしょう」
「マノン君もそう思わない」
アレットの言葉に私も思わず頷いてしまう
「そうでしょ」
私はアレットの言葉に共感するのだった
夜遅くまで二人で食って飲んで語り合う……何も考えずに好きな事を話題にして語り合う
私とアレットの関係はそう言うのが良いのだろうとお互いが思いつつもアレットの心境は複雑だった
アレットは"今の関係が最も良い"心の中で呟きながらもどうしても知りたいことがある
……それは、ルシィとマノンの関係である……
こんな事、"聞いてもいいのかな"と思いながらも、ふと会話が途切れた時に
「マノン君とルシィ導師ってどういう関係なの?」
つい心の言葉を口にしてしまうアレットに他意は無いことを悟った私は素直に今までの出来事を話す
「そうなの……」
「そういう関係なのね……」
アレットは何故か嬉しそうな表情で言うと私の方を見る
「マノン君って"童貞"なの」
ストレートなアレットの質問に私の酔いが一気に醒めていく
「ふう~ん……」
アレットは意地悪そうに言うと、私の表情を見ただけで全てを悟ったようである
「そうなんだぁ……」
「どんな人(女)」
アレットの質問に私は恥ずかしくて顔が真っ赤になっていくのが自分でも分かる
「まぁ、いいか」
そう言うとアレットは再びワインを飲む
「……」
黙り込んでいる私を見てアレットは少し意地悪そうに微笑みながら見ている
"やっぱり、年上の人(女の人)には敵わないな"マノンはつくづく実感するのであった
アレットはそんなマノンを今まで以上に愛おしく思えるのであった
食事を終えると酔い覚ましに二人で宿の外に出て潮風に当たる……
真っ暗な空に星が輝いている、静けさの中に波の音だけが聞こえてくる
「温泉にでも入る」
アレットの言葉に私は頷く
ランプに火を灯すとぼんやりと辺りが照らされる、二人で深夜の温泉に入る
「はぁ~」
二人してほぼ同時にこの声が出る、顔を見合わせて微笑む
「いいわね、こんなの」
アレットがポツリと言う
「今、凄くいい気分」
そう言うとアレット私に寄り添うようにもたれかかる
静かな時間……そんな時に隣の宿から歌が聞こえてくる
「ぶっ! ハハハハハ」
少しすると、二人して笑ってしまう、その歌がとんでもない音痴なのである
「下手くそだね……」
私の言葉にアレットは笑いながら
「そうね……」
アレットも笑って答える……そして……
「これが、私の気持ちよ……」
そう言うと私にそっと口づけをした
「アレット導師……」
少し慌てる私にアレットは微笑む
「勘違いしないでね、私はマノン君が愛おしい」
「でも、男女の関係になるのは怖いの……」
「不思議ね、ここに来るまではその気満々だったんだけどね」
アレットは少し開き直ったような口調で私に言う
「今の関係もいいかなって思ってきちゃったのよね」
「自分でもよく分からないのよね」
「でも、今がすごく楽しい……それだけは分かる」
「マノン君がその気になったら……」
「そっその……ぃっいつでもどこでもOKよっ!!!」
そう言うとアレットはスクッと立ち上がり足早に温泉を出ていくのであった
一人温泉に残されたマノンは頬を赤らめて呆然としているのであった
"いつでもどこでもOKって……"
マノンは何か勘違いをしているのであった……
そして、このまま何事もなく夜は更けていくのであった……
第九十五話 ~ 大賢者の思い出 ~ 終わり




