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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第九十一話 ~  新たな学園生活(女難)第一波の終わり  ~

第九十一話 ~  新たな学園生活(女難)第一波の終わり  ~  序章 



 ここは、王都ガリアンを遠く離れた大陸最北端の都市国家シラクニアの首都スクラである


 これから、ルメラとそのお供のユーリア、アイラ、エルナの四人がガリア王国の王立アカデミ-へと旅立とうとしている


 シラクニアから王都ガリアンまでは距離にして約800ゲール(㎞)あり徒歩だと約1ヶ月以上かかる計算である

 馬車などの交通機関を使っても3週間はかかる距離である


 名目上はルメラの留学となっているが、4人の本当の目的はマノンに会いに行くことである

(マノンが王立アカデミ-に帰ると言っていたので居場所を知っている)


 ゲルマニア帝国に留学の許可を取るのに手間取り、当初の計画より出発が遅れマノンがシラクニアを出てから既に2ヶ月近くが過ぎていた



 「姫様、くれぐれもお体を大切にして下され」

 「そなた達も姫様の事をよろしくお願い申す」

アスラクが長旅に出るルメラ達4人に最後の言葉を掛ける


 ルメラの腰には魔剣、ユーリアは肩から長巻を掛け、アイラは筒に入れた魔槍をエルナは両方の腰に短剣をぶら下げている……

 どう見ても、留学と言うよりは武者修行と言った方がいい姿ある


 「一度は通った道だから迷う事もあるまい」

 「大賢者殿によろしくな」

 「行って来いっ!」

そう言うとラッセルがルメラの肩を軽くたたく


 そして、ラッセルはルメラの耳元で囁く

 "大賢者様とよろしくな……"

(こういう場合、シラクニアでは"よろしくな……"とは"交わり"を意味する)


 「ぉっ……おうっ!」

 ルメラは顔を真っ赤にすると威勢の良い返事をして馬車に乗り込む、6人の騎馬兵の護衛が付いたこの馬車はゲルマニア帝国が用意してくれたものである

 ゲルマニア帝国が善意から用意したものではなくシラクニアの王女であるルメラが国外逃亡を謀らないようにするためのものである


 付き添っている護衛も名ばかりで実際はルメラ達4人の見張り役であり、もしも、ルメラ達が逃亡を謀るようであれば捕縛、又は場合によっては殺害も許可されているのである


 自治権を認められているとはいえ、シラクニアはゲルマニア帝国の支配下にある事を如実に物語っている

 更に、皮肉なことにシラクニアの冬の生活を豊かにした豊富な泥炭の存在がシラクニアの価値を高めてしまったのだった


 城壁の上には大勢の市民たちが見送りに出てきている


 こうして、ルメラ達の乗る馬車は春の日差しの中を進みだす……これから、3週間後に王立アカデミ-に到着することとなる



 そして……マノンに再び女難が災いが降りかかる事となる……






  第九十一話 ~  新たな学園生活(女難)第一波の終わり  ~ 





 私とアレットは再び広場の塔へと転移する


 「ありがとうマノン君……」

 「凄く有意義な2日だったわ……」

 「温泉も素晴らしかったし、こんな高価な物まで……」

アレットは左手の薬指に嵌められた指輪を見て言う


 「気にしないでください」

 「そんな大したものでは……」

私は気にしないようにアレットに言う


 「何言ってるのよっ!」

 「魔石ってとんでもなく高価なのよ」

 「この指輪だって……」

アレットは途中で言葉を濁す


 そう言っているアレットにもこの指輪の価値がどのぐらいか正確には分からないのである

 魔石に詳しくともその金銭的な価値には全く興味が無かったからである


 「まっまぁ……とにかく凄く高価な物なのよっ!」

少し焦ったように私に言う

 「それと、あの約束忘れないでよ」

アレットはそう言うと少し意地悪そうな目で私を見つめる


 「……あの約束……?」

私が心当たりの無さそうな顔をしていると


 「ああっ! 忘れてる……」

 「トロペの温泉に連れて行ってくれって言ったでしょう」

少し怒ったようにアレットが言う


 「あっ! たっ確かに……」

完全に忘れていた私は少し焦る

 「分かりました、都合がつけばご連絡します」

私は取り繕うようにアレットに言う


 「私はいつでもOKよっ!」

アレットはそう言うと私の頬に口づけをした

 「それじゃあまたね……」

少し慌てている私を尻目にアレット足早に塔を降りていくのだった

 アレットのOKが何を意味しているのか、その時のマノンは気に留めることも無かった



 それから数日後、魔石の金銭的な価値に興味を持ったアレットは王都にある信頼のおける有名な宝石商に鑑定をしてもらう

 マノンにそれなりのお礼をしたいと考えたからだった


 宝石商の鑑定士が弾き出した魔石の価格にアレットは言葉を失った……

 アレットを予想を大きく上回り、最低でも50万ガリア・フラン(4000万円)の価値があると言われたからであった


この世界の経済感が我々の10分の1であるから我々の価値感にすれば4億円の価値がある事になる


 "無理……マノン君……無理だよ"

とても、お礼程度で済むものではないと思うアレットであった



 

 王立アカデミ-に戻ってきたマノンをルシィが待ち構えていた


 「マノン君……少しお話があります」

そう言うと私の手を掴む


 「どうしたんですか」

ただならぬルシィの気配に私は躊躇う


 「詳しいことは私の部屋でお話します」

どうやら……立ち話では済まないような事なんだと察する


 ルシィの部屋に入ると、そこには誰もいなかった

 "いつもならレナかエレ-ヌがいるはずなのに……"

 昨日の無断外泊の事を問い詰められると思っていた私は何か違和感を感じる


 不信に思った私がルシィの方を見る


 「じつは……レナさんの胸に……」

ルシィは少し躊躇っているかのように口籠る


 「レナの胸がどうかしましたか……」

ルシィの言っている事がなんなのか分からない


 「落ち着いて聞いてね……」

 「レナさんには口止めされているんだけど」

 「レナさんの右の乳房に腫瘍があるの……」

 「1ヶ月ほど前に偶然見つかって、初めは大した事は無いと思っていたのだけど……」

 「徐々に大きくなって……」

 「悪性の腫瘍の可能性があるよ……」

ルシィの言葉に私の頭の中は真っ白になる

 「マノン君……しっかりして」

ルシィの呼び掛ける声が私の耳に届く


 「あっ! 状況はっ!!」

気を取り戻した私がルシィに問いかける


 「今の腫瘍とみられるしこりの大きさは3センチぐらい」

 「良性の腫瘍なら通常は2センチ程度まで止まるか消えてなくなる」

 「レナさんの物は今も大きくなっていっている……」

 「過去の症例だと……」

ルシィの表情に悲壮感がにじみ出る


 「どれくらいですか……」

私の冷静な問いかけに


 「早ければ……半年……」

 「持っても1年ぐらい……」

 「レナさんは若いから進行が速いのよ」

ルシィはそう言うと

 「マノン君……いえ、大賢者様になら……」

 「何とかなるのではないかと思い、レナさんに内緒でお話いたしました」

ルシィの目は悲しさの中にも期待を秘めているように見える


 「レナは……」

私はルシィに問いかける


 「学生寮の自室にいると思います」

ルシィの話を聞き終えると私は真っ直ぐに女子寮のレナの部屋へと急ぐ




 認識阻害の魔術を発動しレナの部屋の前まで来るとそっとドアを開け覗き込む

 覗きのようなマネをしたのは最初にレナの様子がどうなのかを知りたかったからだ


 案の定、レナはベッドに隅に蹲るように座っていた

 レナは昔から何か嫌な事や悲しい事があるとああいうふうになることを私は知っていた


 私はそっと部屋に入ると魔術を解く


 「レナ……」

私が優しく声を掛けるとレナは顔を上げる


 「マノン……悪い子ね……」

 「黙って、女の子の部屋に忍び込むなんて……」

レナの顔は涙に濡れ目は真っ赤に充血していた

 「ルシィ導師から聞いたのね……」

レナの問いかけに私は無言で頷く

 「そう……」

レナは目の涙を服の裾で拭う

 「もうすぐ、お別れだね……」

レナはそう言うと目から大粒の涙でこぼれ出す

 「嫌だよ……死にたくないよ……」

 「ようやくマノンと一つになれたのに……」

そう言ってレナは私に抱き着くと小さな声で泣き出す


 「私に任せてくれる……」

レナの耳元で囁くように言う

 「これから、魔法工房に行こう」

 「魔法の書には医療魔術もあるから」

 「レナの命、私に預けてくれる」

私の言葉にレナは小さく頷いた


 こんな時に爺がいてくれれば、きっと良いアドバイスをしてくれるだろう……

 もう二週間近く爺の気配がない、お願いだからいつものように駄洒落の一つでもいいから話かけて欲しい


 爺の気配を感じられるだけ、それだけでも私は心強くいられる……


 マノンの強い思いは爺に届いていた……しかし、爺にはもうそれに応えるだけの力は残されていなかった。


 "すまぬ……"

爺の短い一言ですらマノンにはもう届かないのであった




 第九十一話 ~  新たな学園生活(女難)第一波の終わり  ~  終わり


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