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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第八十九話 ~  新たな学園生活(女難)の始まり ⑧ ~ 

第八十九話 ~  新たな学園生活(女難)の始まり ⑧ ~  序章 



 ルシィの部屋に上半身裸のレナがいる

 レナの乳房をルシィが触っている

 少し恥ずかしそうに頬を赤くするレナにルシィが何か言っている


 

 「右の乳房に腫瘍があるわ……」

 「この前より大きくなってる……」

 「間違いないわね……」

 「悪性の腫瘍(癌)……だわ……」

ルシィの表情に悲壮感が漂っていく


 「そう……ですか……」

 「後どれぐらい生きれますか」

レナは取り乱すことも無く平然とルシィに尋ねる



 一ヶ月前にレナの乳房の腫瘍が発見されたのは偶然だった

 王立アカデミ-の医学の触診実習で偶然に発見されたのだった


 この世界の人類は先史文明の魔術による人体強化により生命体として優れた耐性を持っている

 魔力と寿命を犠牲にした代償として外部からの病原菌の侵入などがない限り重病になる事はまずない

 当然、癌や糖尿病などと言った遺伝性の病になることは皆無であるのだが……例外もあるのだ


 小さな腫瘍が発見されることはよくある事なのだが優れた自己回復機能によりその殆どが直ぐに消えてしまうのである


 当初、レナの乳房に腫瘍が発見された時もルシィは楽観視しており消えると思っていたのだったが……

 ルシィの予想に反してレナの乳房の腫瘍は消えるどころか少しづつ確実に大きくなっていた

 そして、遂に危険とされるサイズにまで大きくなってしまったのである


 「そうね……正確には分からない……」

 「早ければ半年……」

 「長くても一年程かしら」

ルシィは小さな声でレナの質問に答える


 「これ以上、大きくならないかもしれないし」

 「消えて無くなるかもしれないわ……」

ルシィはレナにまだ希望がある事を伝えようとする


 「マノンには……絶対に言わないで下さい」

 「他の人にも黙っててください……」

レナはそう言うと服を着る

 「ありがとうございました……」

レナは力のない声でルシィにお礼を言うと部屋を出て行った


 ルシィはそんなレナをただ見送る事しかできなかった……


 マノンはそんな事など全く知らずにアレット導師と共に魔法工房へと旅立とうとしているのだった





第八十九話 ~  新たな学園生活(女難)の始まり ⑧ ~  




 ここは、広場の塔の上である

 私はアレット導師に日曜日の午前10時に来るように伝えている

 

 私が塔の上に上がると大きなカバンを手にしたアレットが既に来ていた


 「いつ来たのですか……」

 「それにしても……随分と大きなカバンですね」

私が問いかけると


 「つい、さっきよ」

アレットが答える……(当然、嘘である)

本当は、一時間以上前に来ていたのである

 「それに、女にはいろいろと必要な物があるのよっ!」

不機嫌そうにアレットが言うので私はそれ以上は問わなかった

これぐらいの荷物なら、転移に支障はなさそうである


 「お待たせして申し訳ありません」

 「それでは、魔法工房へご案内しますね」

私がそう言うとアレットは首を傾げる


 「魔法工房……ここから……?」

私は不思議そうな顔をしているアレットの傍に行く


 「しっかり摑まってくださいね」

アレットは私の腕を掴んだ

 「もっとしっかりと掴まって」

私はそう言うとアレットを引き寄せると抱きかかえるようにする


 「あっ!」

アレットは小さな声を出すとマノンに抱きつくようにしがみついた

"クンクン、マノン君っていい匂いがする……"

どさくさ紛れにマノンの抱きついて匂いまでチェックする抜け目のないアレットであった


 「それじゃ行きますね」

マノンはそう言うと転移魔法を発動する


 眩しい光が周りを包む……眩しさのあまりにアレットは目を閉じる


 光が収まるとアレットはゆっくりと目を開ける

 目の前に立派な宮殿の如き建築物がそそりたっていた


 「これが……魔法工房……なの」

アレットはマノンに抱き着いたまま呆然と魔法工房を見上げている


 「あの~アレット導師……離れてくれません」

 「このままでは動けません……」

私が困ったように言う


 「あっああ、ごめんなさいっ!」

アレットは慌てて私から離れる


 

 魔法工房の前に立つと扉がひとりでに開く

「扉が……」 

アレットは少し気味悪そうだ


 2人が絨毯に乗ると滑るように動き出す

 「ひぃ!」

アレットは小さな悲鳴を上げると私にしがみつく

 「マっ! マノン君! 絨毯がっ!」

アレットは音も無く滑るように動く絨毯に怯えている


 「大丈夫ですよ……」

私はアレットの手を握りしめる


 「マノン君……」

アレットは落ち着きを取り戻す

"いいわぁ~、何だか幸せな気分……"

アレットは心の中で呟く


 「着きましたよ」

私がそう言うとアレットはハッとして辺りを見回している


 「ここは……」

目の前の扉を見て言う


 「図書室ですよ」

 「ここへ荷物を置いてください」

私は絨毯から降りると図書室の扉を開く


 「うわぁ! 凄っごっ!」

アレットは図書室の本の多さに吃驚している


 図書室に荷物を置くと実験室へと向かう

 実験室へ入るとアレットは見たことも無いような機器に目を奪われている

「これ、何なの……」

アレットはずらりと並んだ機器に興味津々のようだ


 「全て魔術関連の魔道具ですよ」

 「魔石の錬成もここで行います」

私の説明を聞いたアレットの目が輝く


 「ここで、魔石の錬成を……」

アレットの言葉には何か湧き上がるような高揚感が感じられる


 

 私はこれから行う魔石の錬成の事を手短に話す

 「言葉で説明するより、一度見てもらう方が良いと思います」

 「魔石と言ってもいろんな種類があります」

 「今回、錬成するのは一般的に"賢者の石"と呼ばれるものです」

私の話をアレットは食い入るように聞いている


 私は爺が残してくれた錬成陣の前に立つと以前に爺と一緒にやった魔石の錬成の感覚を思い出しながら体の中の魔力を錬成陣に流し込む


 魔力が流れ込みだすと錬成陣が薄っすらと青白く輝きだす


 その様子にアレットは目を見開いたまま呆然とした表情で見ている


 錬成陣に流し込まれた蓄積された魔力は徐々に錬成陣の中央へと集約され青白いく輝くく小さな点になり、次の瞬間に物凄い光と共に消えてなくなる

 錬成陣の中央には小豆ほどの透明感のある青い魔石が出来上がっていた


 "ふぅ~、ぶっつけ本番でやった割にはうまく出来たな……"

上手く出来るか不安だった私は心の中で一安心した

 "それにしても疲れるな、魔力を根こそぎ持って行かれたようだ"

魔石の錬成は私が思っているよりも遥かに魔力を消費するものだという事を思い知らされた


 私は重い足取りで錬成陣の真ん中にゆっくりと歩いていくと出来上がった魔石を手に取る


 手にした魔石を鑑定する……

"魔力の集約率は70%程か……爺には遠く及ばないな……"

私は心の中で呟く……

 魔力量ではマノンの方が爺よりも上なのだが経験と技術の差は大きいのである


私は呆然と立ち尽くすアレットの方に歩いていくと魔石を差し出す


 「どうぞ……」

私が差し出した魔石をアレットが震える手で恐る恐る手にする


 「凄い……凄いですっ!」

 「本物の魔石を手にするのは初めてです」

アレットは感激のあまり目に涙を滲ませる


 「これは、記念にアレット導師に差し上げます」

私がそう言うとアレットはポカンと口を開けたまま体が固まる


 「えっえええーーーっ!」

 「ほっ本当ですかっ!!」

 「後で返せって言っても返しませんよっ!!!」

驚いたアレットは魔石を握りしめると私に念押しする


 「そんなこと言いませんよ……」

私が少し呆れたかのように言うと


 「ごめんなさい……吃驚したのと、嬉しくて……つい……」

アレットは突然のサプライズに混乱しているようだった


 「このままでは何ですから……」

 「アレット導師、その魔石を貸して貰えませんか」

私の言葉にアレットが私に魔石を差し出す


 アレットから魔石を手渡されると私はポケットから帝国マルク銀貨を1枚取り出す……

 そして、錬成術を発動する……私の掌の銀貨が銀の指輪へと変わっていく


 「アレット導師の銀色の髪にはこれがいいですよね」

 「どうぞ……アレット導師……」

私が青い魔石が嵌められた銀の指輪をアレットに差し出す


 「えっ……私に……」

突然の事にオロオロしながらも左手の薬指を差し出す


 「えっえええ……?」

私はアレットが左手の薬指を差し出した事に焦る


 私の動きが固まったまま数十秒が過ぎる……


 そう……行き過ぎたマノンの好意はアレットの誤解を招いたのである


 "これは……マズい……"

マノンの脳裏に過去の記憶がリアルに再生される

 "このままだと、あの時の二の舞いだ……"

死熱病の時のサン・リベ-ルの宿屋での出来事の再来である

 "どうする……"

私が必死で回避策を模索しているとアレットは差し出した自分の左手の薬指をスッと指輪に突っ込んだ

 "あれっ……"

私が呆けているとアレットは嬉しそうに指輪を見ている


 「マノン君に貰っちゃった!」

アレットは嬉しそうに言うと私の方を見てニヤリと笑った


 "やられたっ!"

 "これでは、まるで私が求愛したみたいじゃないの……"

私は心の中でそう叫ぶが、表面では笑顔でそんなアレットを見ているのだった


 

 そして、更に運はアレットに味方した……

 魔力を使い過ぎて王都までアレットと転移する事が出来ないのだ


 このまま、この魔法工房でアレットと二人きり一夜を過ごすことになってしまったのである……




第八十九話 ~  新たな学園生活(女難)の始まり ⑧ ~  終わり


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