第八十五話 ~ 新たな学園生活(女難)の始まり ④ ~
第八十五話 ~ 新たな学園生活(女難)の始まり ④ ~ 序章
この手の返事は早い方が良い……
返事の内容にかかわらず中途半端に時間をかけていると相手にも悪いからだ
私は次の日のアレット導師の講義の終了時に他の生徒の視線など気もにせずにアレット導師に全ての講義の後に正式に返答することを伝える
真っ直ぐな私の目を見たアレット導師は驚くが
"分りました……父にお伝えいたします"そう言い残すと慌てて講義室を出て行った
周りの生徒が騒めきだすがそんな事など気にも留めることなく私も講義室を後にする
アレット導師は早退し実家へ駆け戻ったことをルシィから知らされる
それから、数時間後には以前、教練の時にヴァーレルに付き添っていた若い騎士が返答をもってアカデミ-にやってくる
私にヴァーレルが了承しアレット導師と共に家でお待ちしていると返事を伝える
そして、午後三時に広場まで迎えに来るとの事であった
その日は、最後までレナは姿を見せなかった……何故かその訳が私に分かる気がした
本当は、レナとの魔法工房の図書室へ行く約束は反故にしてしまうことを謝りたかったのだが……
アカデミ-の制服のままでも良いが、魔法工房に戻ると正式な魔装服に着替え光の剣を携える
これが"大賢者の正装"であるからだ、私はアカデミ-の"生徒"ではなく"大賢者"として本当の事を話すために出向くのである
そんな事をすれば私が大賢者である事がバレてしまうことになる。
今までのようにアカデミ-の生徒ととしての日常は失われアカデミ-を去ることになるかもしれない
それでもいい……これ以上、多くの人に迷惑をかけたくない……
そして、これ以上レナを苦しめたくない……
第八十五話 ~ 新たな学園生活(女難)の始まり ④ ~
広場に怪しい格好をした者がいる
私は、少し後悔していた
皆、私を遠巻きに見て見ぬふりをして足早に前を通り過ぎてゆく……
そんなに、変な格好なのかな……
今一度、自分の服装をチェックするが別に変な所はない
全身が茶色尽くしと言うだけである……
そう、マノンは爺と同化し始めている事によりセンスが爺化しているのであるが本人は全くその事に気付いていないのである
少し前のマノンならこんな格好は絶対にしなかったはずである
暫くすると、若い騎士がこちらに近付いてくる
「マノン殿ですか……」
恐る恐る私に尋ねてくる
「はい、そうです」
私が答える
「あの……」
「こちらへ……」
何故か態度がよそよそしい
あまりにも風格のある姿に若い騎士は戸惑ってしまったのである
五分程歩くとヴィオネ家の邸宅に到着する
玄関から居間に入ると壁には多数の武具が飾られているが、お飾りではなく全て使用可能な実用品である事が分かる
正面には家紋の入った旗が飾られている、所々破れ汚れている事が実際に戦場で使われていたことを無言で物語っている
如何にも騎士の家系らしい居間である、その奥の客間に通されると王国式の正装したヴァーレルと薄紅色の社交ドレスを着たアレット導師が待っていた
私は軽く挨拶を交わす
「ようこそ参られた」
ヴァーレルが私に挨拶をすると私の服装を見ると
「やはり、騎士でございましたか」
ニヤリとすると椅子に座るように言う
「急な訪問で申し訳ない」
「先日の返答をいたしたく……」
椅子に座ると私は事の次第を話す……自分が大賢者である事、一般女性とでは極めて子供ができにくい事など……
私の話を聞いた、ヴァーレルとアレットは暫く呆然としていた
「信じられないのも無理はないですよね」
私は懐から"光の剣"を取り出す、ブォンという音と共に光の刃が伸び青白く輝く
「おおっ!これは……」
驚きの余りヴァーレルはテーブルに足を激しく打ち当てる、その衝撃でグラスが床に落ちて割れてしまう
私は、落ちて割れてしまったグラスに錬成術を発動する……割れたグラスは光の粒となり再び集まると割れたはずのグラスは元通りの姿になっていた
「凄いっ……錬成術だわ……」
「初めて本物を見たわ……」
アレットは目の前で初て目にする錬成術に感動しているかのようだ
「これで、信じて頂けるでしょうか」
私がヴァーレルとアレットに問いかける
私の問いかけに二人は呆然としたまま首を縦に振るしかなかった
「先ほど申し上げた通り、私はアレット様と"交わって"もヴィオネ家のお役には立てません」
「これで今回の"儀礼の書"については無かった事にしていただければ」
私はヴァーレルとアレットに"儀礼の書"の無効化を申し入れる
私の申し入れにヴァーレルは首を傾げる
「マノン君……いや、大賢者殿、何か勘違いをなされておりますな」
「このヴィオネ家の跡取りに関しましては……」
「先日、私の親戚の者が家督を継ぐことが決まっております」
「私は、この行き遅れの娘の相手に貴方様が相応しいと思い"儀礼の書"を娘に託したまで……」
「今年で28になる者に子を産ませるなど……」
「命にかかわります……寧ろ、子が出来ぬ方が良いぐらいで……」
「それに、我が家としても娘の相手が"大賢者様"であるなら、尚よしっ!!」
「この儀、受けて貰わなければ困りまする」
ヴァーレルは上機嫌で乗る気満々に話す
「しかし……アレット導師は……」
焦って私はアレットの方を見る……
アレットは頬を赤らめ潤んだ目で私を見ている
鈍いマノンにもアレットの心が容易に理解できるほどである
"あれっ……"
私の背筋がゾクッとすると血の気が引いていくのが分かる
"騙されたっ! エレーヌの事を信じた私が愚かだった"
エレーヌは正真正銘の"大賢者の呪い"を受けてしまうのであった
何とかその場を凌ぎ、逃げ帰るようにヴィオネ家を後にするのであった。
爺と同化しつつもマノンのマノンらしさは、そのままだったのだった
第八十五話 ~ 新たな学園生活(女難)の始まり ④ ~ 終わり




