第八十四話 ~ 新たな学園生活(女難)の始まり ③ ~
第八十四話 ~ 新たな学園生活(女難)の始まり ③ ~ 序章
我々は、一夫一婦制を当然して受け入れている
しかし、 一夫一婦制は婚姻関係が消滅するまで一生涯、男女の一組合せのみを認める社会の制度であり法律上の制度だけにすぎないのである。
当然、地球上の生物でこのような生殖を行うのは人間だけである。
だが世界にはそうではない社会の制度を持つ国がある事はご存じの通りである
さて、ところ変わってこの世界この時代に於いても同じであり、多夫多妻制が社会の制度であり常識とされている
誰が誰と交わろうとも当人同士が了承さえしていれば、社会の制度上なんの問題も無いのだが……現実はそう上手くはいかない
現在、マノンが置かれている状況がそれである
本来、この世界の"交わりの儀"に代表される儀礼関連は当人意同士での意思確認が目的であったのだが、時の権力者たちによって都合の良いように変化していったのである
シルビィとの件でも、今回の件でも本来はこの世界の社会制度上は他の人間が関与したり口を出す事ではないのである
しかし、この世界の人間にも欲という必要であり捨て去る事が出来ない厄介なものがある
その一つが独占欲である、恋愛ではそれが形を変えて"嫉妬"となり今回のようなの事態となるのである
当然、独占欲の大きさは個人によって違っている
レナは独占欲が極め強くその分"嫉妬心"も大きいのである
これは持って生まれた"性"でありどうする事も出来ないのである
それに対して、シルビィやマリレ-ヌはそうではなく、自分の気持ちが満たされれば満足してしまうタイプである
アレットもシルビィやマリレ-ヌと同じ類である。
ルメラ達については言うまでもない。
これは、我々の道徳観念や常識からかけ離れているかもしれないが、この世界の生物に種の存続本能として基本的に備えられたもである。
因みに、ルシィはレナほどではないが独占欲は強い、だが本人に自覚は無い
マノンとアレットの"交わり"についても、レナとルシィさえ"目を瞑れば"エレーヌの言う通りなんの問題ないのであるが……
第八十四話 ~ 新たな学園生活(女難)の始まり ③ ~
私は、またルシィの部屋で姿勢を正し正座をしている
目の前の床にはアレットの"儀礼の書"が置かれている
「困ったわね……」
「これ、押印の入った正式な物よ……」
「きっちりと返事をしないとダメなやつだわ」
エレーヌが"儀礼の書"を見て言う
「まさか……アレット導師が、あのヴィオネ家のご令嬢だとは」
アレットの素性にエレーヌは驚いたようだ
エレーヌの話だとヴィオネ家は王国でも最古級の古参王国騎士の家系なのだが、家督を継ぐはずだった長男がゲルマニア帝国の侵攻の際にヘベレスト要塞で戦死してしまい後継者が無くなってしまったために断絶の危機にあるらしい。
5歳年上の娘が一人いるのだが親の決めた"交わり"の相手がどうしても嫌で家を飛び出してしまった
その家を飛び出してしまった娘がアレット導師だったわけである。
「確かに、マノンはアレット導師の嗜好にビンゴよね」
そう言うとエレーヌは私の方を見る
「アレット導師は年下好みの可愛い子が大好きだから」
「と言うより……美少年好きって言った方が良いかもね」
エレーヌが言うには……
「アレット導師は気付かれていないと思っているみたいだけど……」
「王立アカデミ-の女子は大概の子は知ってると思うわよ」
(知らぬが仏……知らぬは本人ばかりなり、の典型例である)
「まぁ……もういい年だし」
「"そろそろ年貢の納め時"ってもんなんでしょうね」
「でも、勇気と根性には恐れ入るわ……」
エレーヌは感心している
(エレーヌの言っている事は正鵠を射ているのであるが……)
「感心してないで、何か良い手がないの」
レナはそう言うと、腕を組んで一人で納得しているエレーヌの方を見る
「ん~、一発ヤって子供を作る」
「これしかないんじゃないの」
投げ遣りなエレーヌの一言にレナの冷たい眼差しがエレーヌに突き刺さる
「……そうね……」
「ん~ん~ん……」
レナの冷たい眼差しに耐えかねたエレーヌが必死で考えているが何も思いつかないようだ
「あの~、私が直接アレット導師に正直に話して納得してもらうというのは」
私が申し訳なさそうに言う
「分かってないわね……マノン・ルロワ君」
「そうしないための"儀礼の書"なのよね」
「何か已むに已まれぬ事情がない限り、断れないのよ」
エレーヌが私を冷めたような視線で見て言う
「ぶっちゃけた話、向こうさんは子供……」
「つまり跡取りが欲しいだけなのよ」
「レナが目を瞑ってくれれば万事OKっ……」
「ノープログレムなのよねぇ~」
「もう、ヤッちゃてるんだし、1回も2回も同じでしょっ~」
エレーヌの言葉に無言でルシィが後ろからエレーヌを羽交い絞めにすると冷酷な眼差しのレナがエレーヌの前に立つ
(これも、エレーヌの言ってることは正鵠を射ているのである)
"エレーヌさん、それ言っちゃダメでしょう……"
エレーヌの言葉を聞いた私は心の中で呟く
「えっ……どうして、何なの」
焦っているエレーヌの目前にレナが迫る
"あ~あ……さらば、エレーヌ……"
"迷わずに成仏してくれよ……"
私は心の中でエレーヌに別れを告げる
「あっ!ごめんなさいっ! 許してくださいっ!!」
「言い過ぎましたっ!!」
身の危険を感じたエレーヌは必死で謝るが
「ヒィ~、グヘヘヘッ! ゆるじでぇ~っ!!!」
レナはエレーヌの脇腹を擽る
「そんなとこ触っちゃ、あっ! 」
「ダメッ!そこだけは許してっ!!」
あまりにもエレーヌの声が大きいのでルシィが羽交い絞めにしたままで口を塞ぐ
「ふぐっっ……」
「ふぐっ! ふぐっ! ふがっ! 」
エレーヌは呼吸が出来ない上に悶絶しているので酸欠になり既に白目を剥いている
"このままだと、窒息死するかも……マジでヤバいんじゃないか"
私は心配するが、レナの情け容赦ない悶絶地獄攻めにエレーヌは1分程で窒息死する寸前で、無事に昇天するのであった
「うるさくて、耳障りで、役に立たないのは始末しましたから」
「本題に入りましょうか」
まるで強姦にあったような姿で床に転がるエレーヌを尻目にルシィが私の方を見て言う
私は目の前で起きた、エレーヌへのあまりにも容赦のないレナとルシィの対応に背筋が凍り付く
"迂闊な事を言うと、ああなる……"
床に転がったまま白目で僅かに痙攣しているエレーヌを横目に見て自分に言い聞かせる
「マノン君を鍛えてゴリマチョにするというのはどうでしょうか」
「そうすれば、アレット導師は考え直すと思います」
突然、ルシィが恐ろしい事を言う
「……」
レナと私は何も言わずに呆然している
「却下です」
レナはルシィに呟くように言う
「そうですか、なかなかいい案だと思いますが……」
「確かに短期間でのゴリマチョ化は難しいですかね」
ルシィは残念そうにする
「卒業するまで待ってもらうのはどうかな」
私は先送りを提案する
「それは無理ですね」
「マノン君が卒業するまであと二年あります」
「言い難いですが……アレット導師の年齢を考えれば」
「早くやる事はヤっておかないと……」
ルシィが何度も頷きながら現実をしみじみと語る……
私とレナには他人事でないように聞こえるのであった
「私もそう思うわね」
いつの間にか、蘇生したエレーヌが同意する
「いつの間に……」
私とレナは、何事も無かったように会話に参加しているエレーヌに驚く
結局、良い案の無いまま日は暮れて夜になり……
対策会議はお開きとなった
「はぁ~」
宿舎への帰り道にレナは大きなため息を吐く
「ホントは、エレーヌの言う通りなのよね……」
「マノンが誰と"交わろう"とマノンの意思次第……」
「私が口出す事じゃないんだよね」
レナは少し疲れたように言うと私の方を見る
「マノン……もし、私が他の人と"交わる"としたらどう思う」
レナはそう言うと少し意地悪そうに私を見る
「えっ……どうして、そんなこと聞くの」
「もしかして……レナ……」
私はレナの言葉に動揺する
「どう……私の気持ち少しは分かったかな」
レナは意地悪そうに微笑む
「……私、レナが他の人と……嫌だ……」
私は、ハッキリとしない小さな声で言うと
「そう……」
「いつでもいいから、また、魔法工房の図書室へ連れて行ってね」
「本でも読んでると忘れられそうだから」
レナは何かが吹っ切れたようだった
「うんっ! 分かったよ……」
「明日の土曜日に講義が終わったら、行こうか」
私はレナに小さな声で言う
「分かったわ」
レナは呟くように言うと寂しそうに力なく微笑んだ
その会話を聞いていたエレーヌはレナが大人になっていくのを感じるのだった
レナを見ていると、ふとマノンの脳裏にエレーヌの言葉が蘇えってくる
"向こうは子供が欲しいだけなのよね……"
……確か、爺の話だと……私は子供を作る事が出ないはず……
そうだ……アレット導師と父に本当の事を話すべきだ……
自分が"大賢者"であることをも含めて、それが、"儀礼の書"への本当の返答えとなる
マノンは決意を固めるのであった。
第八十四話 ~ 新たな学園生活(女難)の始まり ③ ~




