第八十二話 ~ 新たな学園生活の始まり ~
第八十二話 ~ 新たな学園生活の始まり ~ 序章
この世界には、あり得ない物が存在する。
その代表格が"魔石"である。
この世界の"錬金術"の集大成ともいえる魔石の錬金術の技は失われて久しい
唯一、"大賢者"のみがその技を継承するとされている
しかし、古の錬金術師が成しえた魔法工房の"魔石柱"のような超絶技法はその限りではない
この世界この時代にもごく少数だが"錬金術師"を志す者はいる
その多くは研究者……つまり導師として王立アカデミ-のような教育機関に在籍する
当然、ガリア王立アカデミ-にも錬金術に取り憑かれた者がいる
彼女の名は"アレット・ヴィオネ"、27歳……王立アカデミ-に3人しかいな女性導師の1人である
ルシィのような研究一筋のオタク系とは全くの正反対で、身嗜みには気を使っており自分でアレンジした導師服を着用している。
身長は165センチほどのスレンダー・ボディで長い銀髪が特徴である。
全体的に若く20代前後に見える。
性格は真面目で自分の意思を曲げる事は無い芯の強さがある。
とりたてて美人ではないが、大企業の秘書のタイプで仕事のできる女のような印象があるお姉さんである。
(実年齢はかなりいっているのでこの世界でもお姉さんと呼ぶのが一般的なマナーである)
……当然、独身である。
実家が古参王国騎士の良家の娘で両親が決めた"交わりの儀"の相手が嫌で家を飛び出してこの王立アカデミ-の導師となり、現在に至るのである。
しかし、そんな彼女も27歳と言う現実には抗えない……そろそろ、年貢の納め時と観念している今日この頃である。
(百戦錬磨の武将でさえ……と言うアレである)
第八十二話 ~ 新たな学園生活の始まり ~
ここは、王立アカデミ-の野外訓練場……我々の世界で言えば運動場である
訓練用の防具に身を固め模擬の剣を持った特別級の生徒が整列している、その中の一番端にはマノンの姿も見える
その前に教官の王国騎士が二人立っているのが見える
その横には、監視役のアレット導師の姿も見える
王立アカデミ-の特別推薦生は徴兵制度免除という特典が与えられていた為に軍事教練を受ける機会がない。
それを補うために特別推薦生は課外授業として軍事教練をここ王立アカデミ-の野外訓練場で軍から派遣された教官より受けるのである。
今期から王立アカデミ-の制度が変更され徴兵制度免除という特典が廃止されたので本来はもう必要ないのではあるが教練時間を大幅に短縮して課外授業として軍事教練は存続する事となったのである
軍事教練は存続の訳は、他の生徒より長く在籍するためにそれなりな準備は必要であるという理由からであった。
「はぁ~」
自分の前に居並ぶ特別級の生徒を見て王国騎士の"ヴァレール"がため息を吐く
「どいつもこいつも、ひ弱いのばかり……」
上からの命令とはいえ、やる気の無いボンボンの特別推薦生の教練には心底嫌気がさしていたのである。
「これも任務です……ヴァレール殿」
お付の若い騎士が窘める
「分かっとるわい」
ヴァレールは不機嫌そうに言うと特別級の生徒に向かって大声で今日の訓練内容と目的を述べる
マノンは、そんなヴァレールの姿を見ているとゴリマッチョな体型と言い、何故かシラクニアのラッセルとイメージが重なる
「それでは軽く手合わせといこう」
ヴァレールが端から順番に剣の手合わせを始める
ヴァレールは片手で次々と生徒を軽くあしらっていく、そして、最後にマノンの順番が回って来る。
"どうしよう……順番が来ちゃったよ"
ずっと、爺を呼びだしているが全く返事がないのだ
この手の事になると、勝手に出てくるはずなのだが……
どうした事か今回は全く気配すら感じられない
「次ッ!」
ヴァレールが私を呼ぶ声が聞こえる
"仕方がない……自分で何とかこの場を凌ぐしかない"
そう自分に言い聞かせると剣を構える
「次、マノン・ルロワ、行きます」
ヴァレールに掛け声をかける
"マノン……女なのか……"
"女とて手加減はせぬ"
"……が、こいつは幾分か他の奴よりはマシそうだ"
剣を構えるマノンを見てヴァレールは直感する
「ウリャーーーッ!!!」
物凄い掛け声と共にヴァレールがマノンに斬りかかる
「なんとっ!」
次の瞬間、ヴァレールはマノンの 剣捌きに驚嘆する
自分が打ち込んだ剣の平地を軽く叩くき太刀筋を逸らしその隙に懐に飛び込まれたのだ
直ぐ真横からマノンが同払いを打ち込む
「うぉぉぉーーーっ!」
全身の力をふり絞りマノンが打ち込んだ同払いを何とか受け止めるが、マノンは直ぐに身を屈め剣を滑らせると今度は逆袈裟を打ち込む
「うぐっ!!」
ふら付きながらも何とかかわせたが前を見るとマノンの姿がない
「何処へ行きおったっ!」
辺りを見回した時に背後に気配を感じる
「うっ後ろかっ! いつの間に」
振り返ると既にマノンの剣先は自分の喉元にあった
マノンの視線に全身から冷汗が出るのが分かる
「うっう……まっ参った」
ヴァレールはそう言うと剣から手を離した
辺りは静まり返っていた。
今の立ち合いを見ていた全員が呆然として立ち尽くしている
「すげえ……」
誰かのひと声に皆が一斉に我を取り戻すと思わず拍手をする
喝采を浴びるマノンをヴァレールは呆然と見ている
"何者だ、こいつ……"
"今の身のこなし、 剣捌き、尋常でない"
"それに、最後のあの視線……"
"間違いない、実戦を知る者の視線だ……"
ヴァレールはマノンが実戦経験者の強者であることを確信するのである
ヴァレールはマノンの元にゆっくりと歩いていく
「マノン君と言ったね」
「騎士になる気はあるかね」
ヴァレールの言葉と目から本気である事が分かる
「いいえ、今は考えてはおりません」
マノンが答える
「そうか……」
「気が向けば、いつでも私を訪ねてくるがよい」
「今日はこれまで、各員解散っ!!」
そう言うとヴァレールは上機嫌に笑いながら去っていく
お供の若い騎士が私に軽く挨拶をすると足早にヴァレールの後を追いかけて行った
今のマノンを見て、歓喜に打ち震える者がいた
監視役のアレット導師である。
表向きは平静を保っていたが、心の内では歓喜の雄叫びを上げていた
"来たっ! 来たっ!! 来たっぁぁぁー!!! "
"私にもようやく春が来たわっ!!!"
そう、アレットはマノンに一目惚れしてしまったのである
それに、マノンはアレットの"交わる"相手としての条件を完璧に満たしているのである。
第八十二話 ~ 新たな学園生活の始まり ~ 終わり




