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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第七十九話 ~ 2人だけの世界  終章  ~


第七十九話 ~ 2人だけの世界  終章  ~  




 アネットは私達の行動を知っていたかのように塔の天辺で待ち構えていた

 "アネットの奴……アレを使ったな"

 私はアネットが予知・予測能力を使ったのだと直感した


「アネット……どうしてここがわかったのですか」

シルビィは驚きを隠せない

「以前からもそうでしたが……もしかして……あなた」

シルビィが何かに感付いたように言うとアネットが私の方を睨む


 焦った私が首を横に振るとアネットは疑いの眼差しを向けるので、私はもう一度首を横に大きく振ると納得したようだった


「アネット、あなた……占い師の素質があるのですね」

シルビィの的外れの指摘に私とアネットはコケそうになったが、内心はホッとするのであった。


 私が認識阻害の術を発動するとアネットは私とシルビィを見失う

「あれっ……シルビィ様っ!」

いきなり視界から私とシルビィ消えてしまったのでアネットは焦っている


「ここよ、アネット」

シルビィがアネットに声を掛けるが全く見えていないようだ


 「えっ……どこですか……?」

声は間近に聞こえるのに姿が見えないのでアネットは混乱している


 「ここよっ! 」

そう言うとシルビィがアネットの手を掴む


 「ひぃ!」

何かに手を掴まれてアネットは小さな悲鳴を出す

 「シルビィ様なのですか……このまま私に付いてきていただけますか」

アネットはそう言うと塔の階段を降りて大通りに出ると以前に行った事のある大きな屋敷へと入っていく


 「お帰りなさいませ、お嬢様……」

以前と同じ上品な老齢の執事らしき人物か出迎えてくれる

やはり、アネットは良家のお嬢様なのだと確信する


 以前と同じ部屋に入ると執事が扉を閉める、私は認識阻害の術を解除する

 いきなり目の前に現れた私とシルビィに驚いている

 「えっえっええっ……」

 状況を私が説明するが今一つと納得していないように見える


 「お久しぶりね、アネット元気にしておりましたか」

 シルビィがアネットに話しかける


 「はいっ! シルビィ様、元気にしておりました」

嬉しそうに大きな声で答える


 「じつは、アネットにお聞きしたいことがありまして」

シルビィがアネットに尋ねる


 「はい、シルビィがお聞きになりたいことは見当はついております」

そう言うとアネットは私とシルビィが教会から姿を消してから今までにあったことを話してくれた



 「……そうですか、アーロン様はお国に戻られたのですね」

 「ご無事であれば良いのですが……」

シルビィが心配そうに言うと

 「父上は大賢者様を罪には問わぬと申しているのですね」

シルビィが安心したようにアネットに確認を取る


 「はい、間違いございません」

 「その旨を御触書にして広場の高札に掲示してございます」

 「ご心配であれば、直接その目でご確認いただけます」

アネットの言葉に嘘はなさそうである


 「大賢者様、お聞きの通りでございます」

シルビィが嬉しそうに私に言う


 "しかし、このままでは収まりが悪いの……"

爺の声が聞こえてくる

 "後々のためにも一芝居打っておくのも一興……"

爺が意味ありげな事を言うので


 "何かあるの……"

私は爺に問い返す


 "丁度良い具合に明日は休息日の礼拝があるはずじゃ……"

私には、爺が何か良からぬことを企んでいるのがわかる


 "変な事しないでよっ!!! "

私は嫌な予感がするので爺に釘をさすが……


 "一度、魔法工房に戻って明日出直すとするかの"

爺はそう言うと私に魔法工房へ戻るように言う

爺が暴走しないかと不安に思いながらも私は爺の言う通りに魔法工房へ戻る事にする


 「ありがとう……アネット、助かったわ」

私が爺と念話をしている間にシルビィはアネットとの話を終えたようだ


 「一度、魔法工房に戻ろうか」

私がシルビィに提案すると


 「……そうですね……」

 「大賢者様がそうおっしやゃるのであれば、私はそれに従います」

シルビィがそう言うとアネットは私の方をジッと見ている


 「心配しなくていいよ、明日にはシルビィと一緒に戻ってくるから」

アネットは私の話を半信半疑で聞いているようだ


 「シルビィ様がそれでいいというならば私は何も言いません」

 「がっ! シルビィ様にもしもしことがあったら」

 「一生、付きまとってやりますからね」

私はアネットの目を見て本気だと悟った、あの能力で付きまとわれたら(たま)ったものではない……私の背筋に悪寒が走る


 私とシルビィはアネットにお礼を言うと再び認識阻害の術を発動する魔法工房へと帰るのであった。



 魔法工房へ帰ってくるとシルビィはホッとしたように見える

 「これでもう、逃げ隠れしなくて済みますね」

その言葉には安堵感があるように聞こえる


 簡単な食事を取るとシルビィは再び本を読み始めた

「随分と熱心だね」

私の問いかけに


 「明日にはここを去らねばなりません」

 「それまでに全て読んで頭に入れておきたいのです」

シルビィの言葉を聞いたのか、爺の声が聞こえてくる


 "原本をやるわけにはいかぬが……"

 "すまぬが、暫く変わってもらえんかの"

爺はそう言うと私と入れ替わるとシルビィの読んでいる本をテーブルの上に置き右手に当てる


 爺は魔法を発動する……光の粒が少しずつ集まってくると徐々に本の形になっていく

"同じものを錬成した、シルビィちゃんに渡してやるがよい"

そう言うと爺の気配がスッと消えた


「これ、記念にあげるよ」

私は爺に言われた通りに本をシルビィに手渡した


「一生大事にします」

そう言うとシルビィは本を大事そうに抱きしめた



 夕食を食べ、温泉に入るとシルビィはいつものように私の膝の上に座る

「今日で終わりですね」

そう言うとシルビィは私に身をゆだねるように抱き付く、何故か私も最近になってこうされると心が落ち着くようになった気がする。


 温泉を上がると、休憩室の同じベッドに潜り込む。


 静まり返った休憩室……

 隣のシルビィの温もりが微かに伝わってくる、暫くするとシルビィが私の方に身を寄せてくる

 何故か寝付きが悪い……

 

 「大賢者様……いえ、マノン……まだ、起きておられますか」

 「一つだけ、お願いがあります……」

シルビィが私に囁くように言う


 「うん、起きてるよ」

私も囁くように言う


 すると突然、シルビィが私に後ろから抱き付いてくる

 「お願い……思い出を下さい」

私の耳元で絞り出すような声でシルビィが言う


 シルビィの思い出が何を意味しているのか、鈍い私にも察しがついた

 「……」

 こんな状況に陥るといつもの私なら焦ってパニックになってしまうのだが何故か私の心は落ち着いていた

 「本当にいいの……」

自分でも信じられないほどに落ち着いている


 「はい……」

シルビィが私に返事をする


 それからの先の事は自分でもよく覚えていない。

  マノン・ルロワ、初めての体験であった……。


 目が覚めると裸のシルビィが寝ている

 まだ頭がぼんやりとしている……昨日の夜の事の記憶が断片的に残っている

 "あれは……夢だったのかな"

 私は現実と夢の区別がつかないほどに昨日の夜の事の実感がなかった


 ベッドから出ると寝間着を着る

 熟睡しているシルビィに毛布を掛け部屋を出ると温泉へと向かう

 温泉に入っていると徐々に記憶が蘇ってくる……


 シルビィの喘ぎ声、悶える姿、そして手に残ったシルビィの体の感触……

 段々と自分のやったことが段々と恥ずかしくなってくる

 "ヤっちゃったんだ……"

 

 (ようや)く、自分がシルビィと交わってしまったという実感がしてくる


「ここに居られましたか」

私は、背後からのシルビィの声にビクッとする

振り返ると、シルビィが裸のまま後ろに立っていた


 シルビィも温泉に入ってくる……しかし、いつものように私の膝の上に座ろうとはしない

 気まずい雰囲気で時間だけがゆっくりと流れていく


 「あっあの……」

 シルビィは目を下に伏せたままで体をモジモジさせている

 「昨日の夜は……その……」

 シルビィは昨日の事を言おうとするが言い出せないでいる


 再び沈黙の時間が訪れる


 「夢ではないのですよね」

シルビィが呟くように言う


 「はい……私もシルビィと同じです」

私がぎこちなく答える


 「そうですよね……」

シルビィはそう言うといつものように私の膝の上に乗ってくると身をゆだねるようにして抱き付いてくる

 「……暫く……このままでいさせて下さい」


 シルビィと肌を触れ合うと気持ちが落ち着いてくる、シルビィから以前にも増して甘い香りがしてくるような気がする


 温泉から上がると私はあの恥ずかしい格好をする、シルビィは儀式の時に着ていたドレスを身に纏う。

 魔法工房の魔力で脱ぎ捨てられていたにも関わらず奇麗な状態を保っていた


 違うのはシルビィの手には空色のドレスと爺の錬成した本の入った小さな鞄を持っている事ぐらいだった。


 私はシルビィをお姫様抱っこすると二人して教会の祭壇に転移する。

 祭壇の上に突然現れた私達に参列者たちは呆然としている

 私は大声で宣言する


 「我、呪いを解くものなり」

 「されど、事あらば容赦なし」

 「王女はお返し申す」

爺の指導も全くないのに何故か勝手に体も動けば言葉も出るのだった


 "シルビィ……お別れだね"

 "でも、必ずまた会いに行くからね"

シルビィの耳元で囁く


 "はいっ! いつまでもお待ちしております"

笑みを浮かべてシルビィは私に返事をした


 私はシルビィをそっと下すと魔法工房へと転移するのであった。


 ここに、私とシルビィの短い二人だけの世界は終わりを迎え、同時に大賢者によるルビィ王女の誘拐事件も終わるのであった。



  第七十九話 ~ 2人だけの世界  終章  ~  終わり


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