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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第八話 ~ 葬儀の日に ~  

第八話 ~ 葬儀の日に ~



  ~ 序章 ~


 薄曇りの空の下に"カーンカーン"と村の教会の鐘が定刻外に鳴り響く、鐘の音色は全く変わらないが村の状況は変わってしまった。

 王都より使者が訪れてより2日が経ち今日は戦死した者達の村での合同葬儀の日なのだ、と言っても亡骸は無い空の棺に戦死した者の名が刻まれたいるだけだ。


 村の戦死者は4人で私の兄のエリク、クロエの兄のジョエル、そして私は良く知らないが村の石工職人の子でジル・アレフ、焼き物職人"(ワインの壷屋)"の子でアベル・カルヴェと言う人物だった。

 4つの空の棺には王都から送られたガリア王国の紋章の三つ又の鉾がデザインされている立派なタペストリが棺の上に被せられている。


 すすり泣く参列者の前で王国教会から派遣された神官が別れの言葉を言い終えると空の棺が穴に入れられ、それぞれの身内の手により土がかけられる。

 この葬儀の更に2日後には徴用された村人が村を後にすることとなる、各家庭より19歳から30歳までの男子1名、但し現在徴兵に出ている者がいる家庭、既に戦死した者がいる家庭と女子しかいない家庭は除外された、村全体で51名が徴用されることになる。

 勤務地は前線ではなく後方での支援活動との事で戦闘に出る事はないとの事であるが、実際にどうなるかはわからない……。


 私は葬列の前列でただ呆然としているだけだった、不思議と涙は思ったほども出なかった私の横では母とイネスが泣いている、父は無表情で土を棺にかけている。


 自分でも恐ろしいぐらいに冷静だった……兄が亡くなったという実感が全く無い。


 棺の中が空で亡骸が無いという事もあるだろうが、既に9日も早くこの事を知っていて覚悟はしていたからだろう。



  ~ 葬儀の日に ~



 葬儀が終わると、皆が帰って行く中で私は一人で教会の前にいた、偶然にクロエと目が会った、クロエの涙に濡れた目の瞳に私は一瞬ドキッとする……なぜなら、その瞳の奥に憎悪を感じ取ったからだった。


 私は自らの意思で命を懸けてまでゲルマニアの指揮官を助けたことに罪悪感を感じる……。

 そうすると、爺の声が聞こえてくる。


 「お前さん、今の娘の目が怖いのか……」

 「自分のした事が過ちだったと後悔しておるのか……」

 「……それはな、お前さんの心の迷いの表れじゃ」

 「人の行いに絶対に正しい選択などありはしない、あるのはその選択による結果のみ」

 「お前さんが後々に後悔したとしても仕方の無い事、時間は戻せない"もしも……"は無いのじゃ」

 「儂はお前さんの行った選択は人として正しかったと考えておる」

そう言うと爺は何も言わず気配を完全に消した……私を一人にしてくれたのだろう


 そんな私に声をかけてくる者がいる……レナだった、私を見るレナの目には慈愛に満ちた瞳があった、私の心は何かに救われたような気持になる。

"女神って本当にいるんだな……"

 流石に、恥ずかしい言葉は口にはしなかったが目からは涙が溢れだす

 レナは両手で私の頭を抱えるように自分の胸に抱き寄せた、柔らかな胸の感触が私を包み込む……私は小さな声を出して泣いてしまった

 レナは何も言わずに私を抱きしめている……そして私は気付いた、人を救う本当の意味での行いは何かと言う事を、私は生涯この事を忘れる事はしないと心に深く刻み込んだ


 そうしていると、レナが私に優しく語りかける

 「マノン……もう……いいかな……」

 そのレナの困ったような言葉は私の心を現実にを引き戻してくれた、私がレナの胸から顔を上げるとレナの服の胸の部分は私の涙と涎で大変な事になっていた、それに気付いた私は


 「ゴメン……レナの服を……」

私が謝ろうとするとレナは私の口に手を当てて言葉を遮った


 「いいのよ……これぐらい」

レナは笑って許してくれた、二人で教会を後にして帰路につくと急に雨が降り出す、レナが空を見上げると


 「とうとう降ってきたわね……朝から雲行きが怪しかったから」

 「でも、葬儀が終わるまでもってよかったわ」

 「私の家、すぐそこだから雨宿りしていけば」

 レナの言葉に私は頷くと二人で走り出すが雨は本降りとなりレナの家に着いた頃には二人ともずぶ濡れになっていた、家に入るとレナは奥の居間に私を連れて行ってくれた。

 「ちょっと待ってね、暖炉に薪を入れるから」

 レナは火箸で暖炉の灰を取るとオレンジ色の炭火が顔をのぞかせる、燃えやすそうな薪を数本載せると暖炉の横に置かれている火吹き筒で息を吹きかけると薪は燻りやがて燃え始めた

 私はそんなレナを見ながら、手慣れたものだなと感心していると濡れた服が豊満な体に密着して何だかレナが妖艶に見えてくる……


 火を起こし終えたレナは私の方をみると

「このままだと風邪ひいちゃうわね」

「タオルと着替え持ってくるから待ってて」

そう言い残すと居間の奥の方へ行ってしまった、私は暖炉の傍で火にあたっている


 すると、レナが大きなタオルを持ってきてくれた、私にタオルを手渡すと

 「ごめんねこのタオルで我慢してね、私のやお母さんのはサイズが合わないから」

 そう言うとタオルを渡してくれた、私はタオルで頭と顔を拭くと濡れた服を脱ぐ下着も濡れているので全部脱いで裸になり体をタオルで拭いていると、レナが隣にいる事に気付く何も気にせずに平然と裸になっている私をレナはボォ~っと見ているのでレナに話しかける。


     ( この世界では男女共に裸に対する羞恥心は非常に低い、同性なら尚更である。)


 「何なの……」

すると、レナはハッとして


 「その……マノンって……結構、大胆なのね」

 「ちょっと驚いちゃった……」

 レナは少し頬を赤らめて言うので何だか私も恥ずかしくなってきたので、慌ててタオルを体に巻き付けると私はレナに

 

 「レナもこっちに来て脱ぎなよ、暖炉の傍だと暖かいよ」

そう言って私はレナの手を引いて自分の傍に引き寄せた、レナは少し慌てているようだったので

 「昔はよく近所の川で水浴びしたよね……」

私の言葉にレナも頷くと少し恥ずかしそうに服を脱ごうとするが何だか躊躇っているようだったので私はレナの服を捲り上げるように脱がせようとする。


 「ひっ!」

 服を捲り上げられてレナは小さな悲鳴を上げる、濡れた下着は薄っすらと透けている。

 私はレナの意外な反応に少し驚く、昔は水浴びの時に面倒くさがり屋の私はよくレナに服を捲り上げられて、ひん剥かれ丸裸にされて川に放り込まれていたのだから……

 慌てて捲り上げられた服を戻すと顔を赤くしてレナはそのまま二階に上がってしまった、何だか悪いことをしてしまったと後悔しているとレナが着替えて降りてきたので私はさっきの事を謝ろうとすると


 「レナ……さっきはゴメン……調子に」

 と謝ろうするとレナはニッコリと私を見て微笑んだ、それを見て私が安心したとたんにレナは私が体に巻いているタオルの端を掴むと思いっきり引っ張った。

 私は、昔の時代劇ドラマの町娘の如くクルクルと回ると裸のまま床にへたり込んだ。

 

 「へっ?」

 レナの突然の行動に何が起きたのか少しばかりの時間を要した、びっくりしてレナの方をみるとレナは意地悪そうな顔をして私を見ている……その視線は私の無い胸に向けられていた、思わず私は胸を隠すと

 「どうせ小さいですよっ! 」

私は卑屈そうに言うとレナは再びニッコリと笑った

 「ひいっ!」

 レナの表情に私は思わず悲鳴を上げる、するとレナはタオルを私に渡してくれた、私はタオルを慌てて体に巻きつける、それを見ていたレナは私に


 「ごめんね……ちょっとやり過ぎちゃったかな」

 「でも、マノンも酷いわよ、いきなり服を脱がせるなんて……凄く恥ずかしかったんだから」

 そう言うとレナは暖炉に追加の薪を入れる、火の勢いが増すと濡れた私の服と下着を暖炉の横に干してくれる、私にはどうしてレナが恥ずかしかったのかよく分からないので理由をレナ問う


 「いったい何が恥ずかしかったの……別に隠す必要なんてないのに」

 「私みたいに……その……ひっ貧乳じゃないし」

自分で言ってて悲しくなってくる、そうするとレナは少し躊躇うように


 「マノンが胸の事で悩んでいるのと同じ様に私も……その……悩みはあるのよ……」

レナは凄く言い難そうに言うので私はその悩み事が気になるが、それを問う前に


 「はいっ! もうこの話はお終いっ! 」

とレナがこの話題を無理矢理に終わらせてしまった、この話題は蒸し返さない方が自分の身のためだと私の本能が訴えかけていたので以後この件には触れないでおこうと決心した。


 会話が途切れるとパチパチという暖炉の薪が燃える音とザーザーと言う外の雨音だけがしている。

 当分雨は止みそうにない、私の横にはレナがいて暖炉の火をジッ見ているその横顔が炎のオレンジ色に染まっている……少しの間、二人で暖炉の燃え盛る炎を見ている……。

 何故か暖炉の炎を見ていると心が落ち着いてくる、同じ炎でも戦場の炎とは全く違った効果があるものだなと思いつつ、傍で同じように暖炉の炎を見つめているレナに


「お父さんとお母さんは……」

私はレナに問いかける


 「今日は用事があって帰りが遅いのよ……」

レナが思いつめたように言うと少し考えるような素振りを見せた後に私の方を見て話し出す

 「実はね……私、女学校を卒業したら"交わる(結婚)"予定だったのよ」

 「親が勝手に決めた相手なんだけどね……」

 「この前、マノンがパンを買いに来てくれた日に親同士で"交わりの儀"を交わしたの」

 「でもね……その人、戦死しちゃったのよ……だから……」


あの日、レナの様子が少し変だったのはそのせいだったんだと思った。

 それに、レナは1人っ子だから......そういう事か。


そのまま、レナは淡々と事情を話し続ける

 「相手の人が死んじゃっても私……何も感じない、悲しくもないし涙も出ない」

 「寧ろホッとしている自分が恐ろしい……私、変なのかな……」

段々と泣きそうな声になりながらレナが私に問いかけてくる


 「レナは変じゃないよ……親が勝手に決めた相手なんでしょう」

 「それに、完全に子作りのためだけじゃない」

 「私だってレナと同じだと思う……」

 私はそれらしいことを言っているが内心は激しく動揺していた。

 レナが"交わる"事になっていたなんて……何だか嫌だ……何なんだろうこの気持ちは。 


 二人とも無言のまま時間が過ぎて行く、暖炉の薪が燃える音と雨の音だけが聞こえてくる、何故かとても落ち着いた時間が流れて行く、ふとレナの方を見るとレナも私を見ていた。

 少し潤んだレナの瞳が凄く澄んでいて吸い込まれそうな感覚に襲われる、下着を着ていないので首元の隙間から豊満な胸の谷間が覗いている。

 私はレナに魅入られてしまったかのように自分の顔をレナの顔に近付けて行くとレナはそっと目を閉じる。

 何なんだ、この感じは段々と鼓動が速くなってくるのが分かる……息苦しくて呼吸も早くなる。

 その時"パン!"と大きな音を立てて薪が爆ぜる、私とレナは驚いて飛び上がるが二人とも勢い余っておでこをぶつけてそのまま倒れ込んでしまった。


 ああっ柔らかい……この感触は……私は再びレナの胸の谷間に顔を埋めていた、今度は下着を着けていないので胸の膨らみが直に感触が伝わってくる……私が言い表せないような幸福感を感じていると


 「あっあの……マノン……もういい……」

 レナの恥ずかしそうな声に気付き慌てて顔を上げると顔が真っ赤になったレナと目が会う、焦った私は慌ててレナから離れようとし後ろに尻餅をついてしまう、そのはずみでタオルが外れてしまう。

 丁度、レナの目の前で大股広げた格好"(М字開脚とも言う)"である……偶然にレナの視線が私の股間に遇ってしまう。

 引き攣ったレナの顔が私の目に映る、流石の私も慌てて股間を手で隠すと恥かしさの余りレナの方を見れないでいるとレナが


 「だっ大丈夫! マノンは立派な女の子だよっ!!」

 そう言ってガッツポーズをする、私を慰めているつもりなのだろうが意味不明な言動にレナも相当に混乱しているらしい事が私にもわかった。

 私はタオル手にを取ると再び体に巻きつけた……既に全てを見られて今更隠す必要などない事は分かっているのだが……


 レナはそそくさと立ち上がると暖炉の横に干してあった私の服を手にする

「マノン、 もう乾いているわよ」

そう言って服を手渡してくれる、私はタオルを外すとコソコソと服を着ていると、カーンカーンと五時の教会の鐘の音が聞こえてくる、いつの間にか雨も上がっているようだ。


 「レナ、もう帰るよ」

 「今日は本当にありがとう、何だか気が楽になったよ」

私はそう言うと、レナの見送られて家路についた、私を見送った後に居間に戻ったレナはある事に気が付く

 「マノン……下着、忘れてる」

暖炉の横にはパンツと格付け最高ランクサイズのブラがちょこんと椅子の背もたれに掛かっていたのだった。


 私は、ノーパン・ノーブラで家に帰り食事を終え体を洗いそのまま全く気が付ず寝てしまい次の朝には忘れ去っているのであった。

 そして次の日、レナによって綺麗に洗濯され折り畳まれた私の下着は紙の袋に入れられてプレゼントのように私の元へと戻り初めてその事に気が付くのであった。


 レナが頬を赤らめながら手渡してくれた紙袋を完全にプレゼントだと思い込み心躍らせながら包みを解き、その中身の正体を知った時の恥かしさがどれぐらいであったは言うまでもない。



 

   第八話 ~ 葬儀の日に ~  終わり

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