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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第七十六話 ~ 2人だけの世界 ⑧ ~

第七十六話 ~ 2人だけの世界 ⑧ ~  序章



 私とシルビィがトロペに来る一週間ほど前の事……

 トルス騎士団ではセシルとドミニクが飲み比べ対決をしていた。


 当然、賭け勝負である。

 賭けた物は休暇である、ガリア王国の各騎士団の騎士には半年に一度に定期的に特別休暇が与えられる。


 日数は3日であるが故郷に帰るのは短すぎるので各騎士団では互いに休暇を融通し合う事が良くある。

 つまり、誰かに休暇を譲る代わりに次の休暇の時に借りを返してもらうのである。

 本来は休暇の貸し借りは出来ないのであるが、各騎士団長が大目に見てくれているのである。


 最長で8日間の休暇が取れるために余程の遠方でない限り帰省が出来るのである。

(基本的に騎士や兵士は出身地の近辺の部隊に配属されるのが一般的である)

 帰省が出来なくてもチョットした旅行に行く事が出る。


 騎士同士の話し合いで決まる事もあれば、何らかの勝負で決まる場合もある。


 かくして、今回のトルス騎士団の休暇の融通はセシルとドミニクの飲み比べ対決となったわけである。


 賭けられているのは団長エルネストとドミニクとエドモンドの3人と、セシルとレボラとコンティーヌの3人の休暇である。

 団長エルネストは最初から休暇など取る気が無いので"好きにすればよい"と言う感じである。


 人信満々のドミニクであったが酒豪のセシルに呆気なく敗れてしまい、セシルとレボラとコンティーヌの3人は8日間の休暇を手に入れチョットした旅行でここトロペにやって来たというわけである。

(トルスからトロペまで徒歩で2日ほどである)


 因みに、この時点ではトルス騎士団に王都での"大賢者がシルビィ王女を攫った"という情報はまだ届いていない。





  第七十六話 ~ 2人だけの世界 ⑧ ~  




 石垣に身を隠しているとセシル達の話し声が聞こえてくる。


 「凄いわね……あの、太っちょ(ドミニク)に余裕で勝つなんて」

 「最後は、鼻からワイン噴き出してぶっ倒れちゃっうし」

レボラが感心するように言っている


 「でも、何処にあれだけのワインが収まるのか不思議だわ……」

コンティーヌの呆れたように言っている


 「多分、ここに入るのよ」

レボラの声がすると


 「ちょっと……お尻触らないで下さい」

セシルの嫌そうな声が聞こえてくる


 「いいじゃない、減るもんじゃないし」

 「それにしても見事なお尻よね」

レボラの感心するように言うと


 「気お付けなさい、レボラは尻フェチだから」

 コンティーヌが冗談交じりに言う


 「そう言うコンティーヌはオジサン・フェチじゃない」

 「特にエルネスト団長な・ん・て……」

レボラがいやらしそうな口調で言うのが聞こえてくる


 「なっ! 何言ってんのよっ!」

少し焦ったようなコンティーヌの声がする


 「でしょうね……傍で見ていてわかります」

セシルの淡々と言うと


 「そう言う、セシルはマノン君一筋なんでしょう」

話題を逸らそうとするコンティーヌの問いかけに


 「そうですよ、私は身も心もあの方に捧げるつもりですから」

何の躊躇いも無くセシルが言うのが聞こえる


 「で、そのマノン君とはどこまで行ってるの」

レボラが興味津々に問いかける


 「……、彼、王都にいるんです」

 「王立アカデミ-に行ってるんです」

少し寂しそうなセシルの声がする


 「へぇー、学問も出来るんだ」

 「剣の腕も凄いし……容姿も良いし」

 「……彼、絶対にモテるわよ」

レボラがセシルを揶揄(からか)うように言う


 「だと思います……それでもいいんです」

 「私はマノンの子供が欲しい……それだけです」

 「父もそれを望んでまいすし」

セシルの爆弾発言に私は焦る


 「はぁ~、いいなぁ~」

レボラの羨むようなため息が聞こえる

 「確かに……マノン君っていいわよね」

レボラの口調が冗談とは思えないように聞こえる


 「まぁ、頑張ってください」

 「マノン君を誘惑できる自信があるのなら」

 「少なくともマノン君は尻フェチでもなければ筋肉フェチでもないと思います」

セシルの言葉にはどこか挑発的に聞こえる


 「セシルも随分と言うようになったわね」

 「入団したての頃の初々しさは何処へ行ったのかしらね」

レボラの声が何処となく寂しそうに聞こえてくる



 そして、徐々に声は遠のいていき聞こえなくなってしまった。

 "はぁ~何とか気付かれずに済んだ"

 "どうして、私の子供が欲しいだなんて……"

 "セシルは私が性転換したことを知らないはずなのに"


 マノンの頭に爺の事が思い浮かぶ

 "まさか……イリュージョン……"

 すると、爺の声が聞こえてくる


 "如何にも、お前さんの予想通りじゃよ"

 "お前さんが意識を失っている間に少しづつイリュージョンを掛けておいたからの"

 そう、爺は先を見越して少しづつマノンを知る者達にマノンは"男"であるとイリュージョンをかけ続けていたのである。

 "何せ、元が男と区別がつかなんだからイリュージョンの効果は絶大じゃった"

爺が自信たっぷりに言う


 "酷っ!!!"

私は何故か無性に腹が立つ

 "どうせ、貧乳・寸胴でしたよっ!"

むくれたように言うと何故か爺はとても嬉しそうだった


 私が爺と念話をしていると

 「マノン……」

後ろで私を呼ぶ声がする、振り返るとシルビィが寝間着のままで立っていた

 

 「どうしたの」

 「まだ、寒いから寝間着のままだと風邪ひいちゃうよ」

私がシルビィに問いかける


 「先ほど外から聞こえました会話の事なのですが」

 「どういうことなのでしょうか」

シルビィの冷淡な声と視線に恐怖を感じる、その姿がレナと重なって見える

 

 「ひぃぃぃ」

思わず小さな悲鳴を上げてしまう


 その後、シルビィの尋問は苛烈を極め全てを話してやっと納得してもらったのであった。



 「それにしても、困ったことになったな」

 「シルビィはともかく、私は誤魔化しようがない……」

私が途方に暮れていると


 「大丈夫ですよ」

 「のんびりと温泉に入っているだけなんですから」

シルビィはそう言うとニッコリと微笑んだ


 「そうだね」

私はシルビィの言葉に安心したが、何故か嫌な予感がするのだった



 そうこうしている内に朝食が運ばれてくる。

 干した魚を焼いたものに貝のスープとパンと海草のサラダが付いていた。


 二人で食事を食べ終えるとシルビィは一冊の本を取り出す


 「それ、何の本なの」

私の問いかけると


 「この本は図書室にあった経済学の本です」

 「内容が凄く興味深い物なので持ってきてしまいました」

 「あっ! すみません、許可も無く勝手に持ち出したりして」

シルビィは慌てて謝る


 「いいよ、読書するのにも最適な環境だからね」

私がシルビィの持っている本を見て言う


 「ありがとうごさいます」

 「それにしても魔法工房の図書室の書籍は凄い物ばかりです」

 「凄く勉強になります」

そう言って感心するシルビィの姿がレナと重なってくる


 "あ~レナに会いたいな"

私はレナの事を気にしていると爺の声が聞こえてくる


 "どうじゃ、少しばかし表に出んかの"

 "姿を眩ます術もある事じゃしの"

爺の呼びかけに


 "王立アカデミ-の入学試験の時の術の事"

 "確か……認識阻害ってのだよね"

私が問いかけると


 "そうじゃよ……今のお前さんなら、あの時より遥かに強力な術を発動できる"

爺の言う通りに術を発動させる。


 「少し出てくるね」

私の呼びかけにシルビィは小さく頷くが本に集中していて全く気付いていない


 私は、宿のドアを開けると表に出る

 少し冷たい潮風が心地良い、波の打ち寄せる音、海鳥の鳴き声、初春の弱いが陽の光りが温かく感じられる。


 ふと、下の波打ち際を見るとセシルらしき女性が一人で歩いていく姿が見える

 当然こちらには気付いていないのだが、咄嗟に身を屈めてしまう

"間違いない、セシルだ"

"何処に行くのだろう"

疑問に思ってセシルの歩いていく方を見ていると波打ち際のすぐ傍から湯気が立ち上っているのが見える


 "温泉?"

興味を持った私はセシルと同じ方向に歩いていくと波打ち際を簡単な石垣で囲っただけの露天温泉があった

"いいなぁ~、この温泉"

 私が感動しているとセシルが服を脱ぎだす、マルティーヌ女子学校にいた時よりも体が引き締まったように見える。

 お尻の大きいのは変わらない……


 セシルは温泉に入ると両手を組んで上にあげると大きな伸びをする

 「うっうっああ~」

 セシルの声が何ともなく気持ちよさそうに聞こえる、私も入りたくなってくるが流石にそれは出来ない。

 それに何だか、覗き見しているようで気が引けるのでその場を後にしようとする


 「マノン……会いたいな……」

セシルの呟くような声が聞こえる

 「王都か……遠いよね……」

 「私にも羽があればいいのに」

すぐ傍の岩に停まっている海鳥を見てため息を吐く


 打ち寄せる波をジッと見ているセシルの目に涙が少し滲んでいる

"セシルちゃん……"

"なんと健気なっ……うっうっ……"

爺のすすり泣く声が聞こえてくる

"これっ! お前さんっ!! ここは一つセシルちゃんのために"

"こんな時こそイリュージョンを発動するのじゃ"

爺の悪い癖が始まる


"ちょっと待ってっ!"

と言う間もなく爺はイリュージョンを発動した

当然、認識阻害の術は解除している


「えっ……嘘……マノン……なの」

目の前にいきなり現れた私にセシルは驚きを隠せない

「……私、本当にヤバいわね……幻覚まで見えるなんて」

セシルは自分が幻覚を見ていると思っている

「幻覚でもいいマノンに会えるのなら」

セシルの目から涙があふれだす


 そんな、セシルを見ていると私の胸の鼓動が高鳴る

「一緒に入っていい」

 私がセシルに尋ねると


「いいに決まってるじゃない」

セシルの言葉に私も服を脱ぎ温泉に入る


「夢なら覚めないで欲しいわ……」

セシルはそう言うと私の傍に近付いてくる

そして、真横にピッタリと寄り添うと私の顔に手を当てる

「嘘みたい……感覚まである」

そう言うと私の肩に手を回すと抱き着くように身を寄せる

「あ~神様……」

セシルの声が震えている

そんな、セシルに私は微笑むように話しかける


「騎士団はどうかな……上手くやってる」

私の問いかけに


「はい、初めは戸惑いましたが」

「今は、慣れて毎日が充実しています」

セシルの幸せそうな表情に私は安心する


「それは、よかった」

私はそう言うとセシルを抱き寄せる

密着したセシルの柔らかい胸から鼓動が伝わってくる。

私は、そっとセシルの頬にキスをする


「マノン……愛してる……」

セシルは小さな声で呟くと目を閉じて眠ったようになる


"お前さん、もういいじゃろう"

"再び認識阻害の術を発動したから、今の内にこの場を立ち去るのじゃ"

 爺の言葉通りにセシルが溺れないようにそっと浅いところまでセシルを引っ張り上げる

 その時にセシルの胸を掴んでしまい、セシルが目を覚ましそうになって焦ったが何とかその場を切り抜けるのであった。


 その後、目を覚ましたセシルは余りにリアルな体験にこれが夢だとはた信じがたいほどであった。


 その後、妙に機嫌の良いセシルにレボラとコンティーヌは少しばかりの恐怖を感じるのであった。


 一方、宿に帰って来たマノンはセシルの胸の柔らかな感覚がいつまでも手に残っているのであった。



   第七十六話 ~ 2人だけの世界 ⑧ ~ 終わり


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