表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
70/394

第七十話 ~ 2人だけの世界 ① ~

第七十話 ~ 2人だけの世界 ~ 序章



 "大賢者様、シルビィ王女を誘拐"の噂は王立アカデミ-にも直ぐに伝わった

 それを聞いたレナは、何が何なのか全く分からなかった。


 そんなレナを気遣ったエレ-ヌは、ルシィの部屋で自分の知っている事をレナに話すことするのだった。

 ルシィもまたマノンの行動に疑問を持っていると感じたので丁度良いと思ったからだ


 エレ-ヌは二人に自分のお爺様である最高司祭クロ-ドから聞いた事を話す。

 当然、本来は他言無用の事である。


 マノンが"儀の礼"当日にシルビィ王女を攫ったのは事実である事。

 シルビィ王女がマノンの事を心から慕っていた事

 相手のアーロン王子にも母国に思い人がいた事

 マノンとシルビィ王女の行方は全く分かっていない事

 そして、最後に"大賢者の呪い"を儀式の参列者全員の前で宣言した事


 ……等であった。


 それを聞いたレナとルシィはホッとしたような……そうでないような複雑な表情をした。


  それは、事もあろうに儀式の当日に王女を攫ったマノンは"大罪人"になってしまったという事だった。

 レナもルシィも純粋にマノンの身を案じているのだった。



 このような前代未聞の出来事に多くの人が興味と感心を持つのは当たり前であった。


 シルビィと大賢者の事を知る者達、アネットなどの側近や兵士の口から情報が次々と漏れだし、それから数日後には事の真相が伝わってくるようになってくるのだった。


 事件の真相が知れると多くの人々の感動と涙を誘ったことは言うまでもない。

 多くの人々の共感を得た事、これが後にマノンが王女誘拐の大罪に問われない大きな要因となる。


 それから数日後にはイベリア王国で反乱が起こりカデーナ王朝が消滅した事が伝えられると、アーロンとシルビィの"交わりの儀"は白紙状態となり、その後にイベリア新政権との軋轢を恐れたガリア王国レオナールの判断により完全に解消される事となる。


 ……当然、そんな事は当人たちは全く知らないのである。



 


  第七十話 ~ 2人だけの世界 ~ 



 「マノン……マノン……」

夢の中で誰かが私を呼んでいる。

ゆっくりと目を開けると裸のシルビィが私を呼んでるのに気が付く


 「おはよう……シルビィ」

 「昨日はよく眠れた?」

私の問いかけにシルビィは


 「はいっ! よく眠れました」

 「こんなに良く眠れたのは久しぶりです」

元気な声でシルビィは答えるが、目の下のクマはまだ少し残っているのがわかる。

 「昨晩は大変ご迷惑をおかけいたしました」

 「不覚にも、知らぬ間に眠ってしまいました」

 「私をここまで運んで下さったのですね」

シルビィは少し申し訳なさそうである

 「あの……じつは……」

 「着の身着のままで、ここへ来ましたので着るものが……」

シルビィは恥ずかしそうに胸と股間を隠している


 普段から裸を全く気にしてないようだったが、本当はそうでもないようだ。


 「ごめんね、工房だから寝室とかがないんだよ」

 「ちゃんと作っておかないとダメだね」

 「それじゃ……新しく服を作ろうか」

 私はそう言うと寝袋から身を押し出るとシルビィが恥ずかしそうに視線を逸らすと俯き私の方を指さす


 「げっ!」

生理現象とは言え、股間が大変なことになっていた。

 「ごっごめんっ!」

私は慌てて股間を隠す

 「また変な物、見せちゃったね」

私の脳裏にサン・リベ-ルでの事が蘇ってくると同時にレナに介抱されたことも思い出す


 「……」

暫く、二人の間に気まずい空気が流れる。

"ぶっ! ぶわはははは"

私の脳裏に爺が爆笑する声が響いてくる


"何だよっ! そんなに笑はなくてもいいじゃない"

私は爺の笑い声に腹が立つ

"これから、魔装服を錬成するんじゃろ"

"わしも手伝ってやろう"

爺の好意的な言葉に私は


 "何もしないで"

冷たく冷静な私の返事に爺の笑いが止まる。

私は爺の趣味の悪さを痛いほどわかっている。



 だが、皮肉にもマノンがシルビィを攫った時に着ていた、あの恥ずかしい服は王都ガリアンでは一躍有名になり、流行や奇抜な物が好きな貴族や金持ち達の注文で模倣品が多く作られるようになる。

 式典の参列者の曖昧な記憶を基に作られた、あの恥ずかしい服は当初はデザインもバラバラであったが、徐々に洗練されやがて貴族や上流階級の者達が好んで着用することとなる。



 "そうか……"

 "魔法工房には寝室はないが休憩室ならある"

 "それなりのベッドもあるから二人で使うと良い"

 "後で案内するからの"

爺は残念そうに言うと気配を消した。


 私は魔装服の上着、シルビィは魔装服の純白のシャツを羽織り実験室へと向かう


 「ここは」

シルビィが不思議そうに部屋の中を見まわしている

 「ここで、服を作るのですか……?」

シルビィが疑問に思うのは無理も無い……

糸車も無ければ機織り機も無い、そして布の反物も無いのだから


 不思議そうにしているシルビィをよそに私は魔方陣の中央にある錬成陣の前に立つ……

 自分一人で錬成術を使うのは初めてなのだが、爺が何度も使っているので体感として何となく要領分かる


 私は目を閉じると心の中で錬成したい物のイメージを連想する

 魔方陣が青白く輝きだすと錬成陣の中央に光の粒が集まりだしやがて形を成してゆく……光が消えるとそこには真新しい純白の女子用の下着の上下セットがあった


 私は、それを手に取ると何か欠点がないかを確認するとシルビィに手渡した


 「この感触……広場の時に私に掛けて下さった物と同じ布地ですね」

 そう言うとシルビィは私の方を恥ずかしそうに見る


 「あっ! ごめん……」

私はそう言うとシルビィに背を向けた

シルビィが下着を付けているのが気配でわかる


 「いかがでしょうか」

シルビィの声に私は振り返ると下着姿のシルビィが立っていた

 「サイズはピッタリです」

 「とても肌触りが良く付け心地良いです」

 「広場で頂いた物の事、出入りの被服商が言っていた通りですわ」

シルビィはそう言うとシャツを上から羽織る

 「このシャツも凄く軽いのに暖かい」


 シルビィの話では、爺に掛けて貰った布を見た出入りの被服商が大変興味を持ったそうだ。

 被服商が言うには……

 "丈夫で軽くしかも肌触りが非常に良い"

 "こんな布地を見たことがない是非にでも作り方を教えて欲しい"

と懇願され困ってしまったとの事である。

(タンパク質を主な材料とした絹に近い素材である)


 「シルビィはどんな色が好き」

私がシルビィに尋ねると


 「空の青い色です」

微笑むように私に答える


 私は空の色とシルビィに似合いそうなデザインを連想する。

 出来上がった服は澄んだ薄い青い色のパンツドレスだった

「素敵な色ですね……」

「こんな澄んだ青色の服は今まで見たことがありません」

「きっと、被服商が見たら"どのようにしてこんな色を"って言いますよ」

そう言いながらパンツドレスを身に着ける、よく似合っている。

 「ありがとうございます!」

 「本当に軽くて着心地が良いです……」

 「もう今までの下着も衣服も身に付けられませんわ」

シルビィはとても嬉しそうだった


 私は、着替え用にもう二着の下着と色違いのドレスアップ・スーツを錬成した。

 自分用のは魔道具の倉庫にいっぱいあるので錬成しなかった……というよりも

意外と疲れるものだとわかったからだ。

 (後で知る事だが錬成術の中でも錬金術に近いので大量の魔力を消費するそうだ)


 その後、魔道具の倉庫のタンスの中から適当な魔装服を三着ほど取り出す。

 シルビィは倉庫の横に置かれた大きな姿見用の鏡の前でいろんなポーズをとっている。

 かなり気に入ってくれたようだ、すると突然シルビィの動きが止まり鏡に映った自分の顔をジッと見ている。


 「えっ! これ……」

どうやら、目の下にクマが出来ている事に気が付いたようだ

 「マノン……私の目の下のクマの事、お気付きでした……」

シルビィは恨めしそうに私に問う


 「……まぁ……」

私が言葉を濁すように返事をすると


 「どうして、教えて下さらなかったのですか」

シルビィは少し不機嫌そうだ


 「ごめんね……悪気はなかったんだよ」

私がそう言うとシルビィは小さなため息を吐く


 「もう……」

シルビィは少し不貞腐れたように言う……


 "ぐぅ~"

シルビィのお腹が泣き出す

 「えっ……」

流石に恥ずかしかったようでシルビィは慌ててお腹を押さえると

「ぎっ儀式の前日から、食事が喉を通らなくて、その……」

必死に言い訳をしようとしている


 「ぎゅるるるる~」

今度は私のお腹が悲鳴を上げた

お互いに顔を見合わせると大笑いする


 「工房だから宮廷のような豪華な食事は無理だけど」

 「携帯食ならあるから食べようか」

私がそう言うとシルビィは微笑み小さく頷いた


 図書室のテーブルの上に携帯食を並べるとコヘッルに水を入れてバーナーで湯を沸かす。

 シルビィは物珍しそうにジッと見ている。

金属製の皿とカップに乾燥食を入れお湯を注ぐとシチューと麺が出来上がる。

缶の中には焼きしめたパンが入っている。


「どうぞ……味は保証しないよ」

私がそう言うとシルビィは少し笑う

「これ、美味しいです……」

シチューを口にしたシルビィが言う

「何と申しますか、王宮の料理は見た目は立派ですが……」

「王宮の料理長には申し訳ないのですが、味はこちらの携帯食の方が上です」

シルビィはそう言っているが、美味しく感じられるのはお腹が空いているのが最大の原因だと思う。


2人で仲良く食事を終えると

「今は何日の何時ぐらいなのでしょうね」

「時間の感覚も昼夜の感覚も全く分かりませんので」

シルビィの問いに私は


 「式典から二日が経っている」

 「今頃、王都は大変なことになっているだろうね」

 「気の毒だけど、あと数日は王都には戻れないと思うよ」

私が申し訳なさそうに言う


 「そんなことありませんわ」

 「マノンと二人きりで誰の邪魔も入りませんし」

 「その……なんと申しますか……」

シルビィの顔が真っ赤になっていく


 鈍感なマノンにも何となくシルビィの考えている事がわかってくる

 「そっ……それより、シルビィの目の下のクマを何とかしないとね」

私は話題を逸らそうとする

 「とにかく体を休めて良く睡眠をとる事」

 「随分と疲れがたまっていそうだから」

 「後で温泉に入った後でマッサージするね」

私がそう言うと


 「お気遣いいただきありがとうございます」

そう言うと私に近付いてくると……

 「マノン……」

小さな声で私の名前を呼ぶと私の頬にキスをした

突然の出来事に、私が呆けているとシルビィは意地悪そうに笑い

 「別の方のお気遣いもお願いいたしますね」

少し恥ずかしそうに私の耳元で囁くともう一度キスをする……

 「では、温泉にでも入りましょうか」


 シルビィと二人きりになって分かった事なのだが、気丈に見えていたが本当は何処にでもいるようなごく普通の女性なのだと……

 私より二つ年上のお姉さんなのだが、それを全く感じさせなかった。

 

 その後、温泉に入り……爺の指導の元、凝り固まったシルビィの全身を隈無く指圧マッサージを施すのであった。

 その時のシルビィの様子は想像に易い。


 かくしてシルビィと二人だけの隠遁生活が始まる事となる。



  第七十話 ~ 2人だけの世界 ~ 終わり


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ