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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第六十八話 ~ 祭りの日 ~

  第六十八話 ~ 祭りの日 ~  序章 


 イベリア王国の王都コルバトに火の手が上がる……

 「いったいこれはどういう事だっ!」

 「何故、下級貴族共や下民共があのような大量の武具を持っている」

 地響きのような雄叫びに目を覚まし、王宮の自室のバルコニーからこちらに押し寄せてくる大群衆を見た国王のテオドロ・カデーナ三世は真っ青な顔をして叫ぶ。


 遂に、圧政に耐えかねた下級貴族や平民が反乱を起こしたのだ。


押し寄せてくる群衆の圧倒的な数に慌てふためくテオドロ・カデーナ三世……

 「早く、脱出の用意を……」

そう叫びながらテオドロは自室を出ると……そこには、既に誰もいなかった。


 異変を察知した王宮の者は既に王宮から逃亡していたのである。

日頃から、傲慢な態度だった王の事など気に留めるものはただの一人も無く、全て従者に見捨てられたのである。


 今や王宮に残っているのは贅沢な晩餐を開き夜遅くまで遊び惚け吞んだくれ、呑気に昼過ぎまで寝ていたテオドロと第一王子バルドゥイノや第二王子ブルーノの3人ぐらいであった。


 「誰かっ! 誰かおらぬのかっ!」

贅沢な造りの大広間にテオドロの声が虚しく響く……

 そのテオドロの声と群衆の雄叫びに目を覚ました第一王子バルドゥイノや第二王子ブルーノも慌てふためき自室から飛び出してくる。


 「父上っ! これはいったい」

慌てふためくバルドゥイノがテオドロに問う


 「下級貴族共や下民共が謀反を起こしよったのだ」

 「早く逃げねば……」

そう言うと慌てて王宮の秘密の抜け穴へと駆け込むが……時すでに遅し……

抜け道の出口には反乱軍が待ち構えていた。


王宮の抜け道の事など王宮から逃げ出した王を恨む者達の口から漏洩していたのである。


 捕まった3人の運命は言うまでもない。

 その後、逃亡を計った王族や上級貴族は次々と捕らえられ極刑に処せられた。


 ここに、イベリア王国カデーナ王朝は終焉を迎える。

 生き残った王族はアーロンただ一人だけであった。

 皮肉にもテオドロが国民に人気のあるアーロンを国外に厄介払いしたのがアーロンを救う結果となったのである。


 イベリア王国での民衆の反乱、そしてカデーナ王朝の滅亡が王都ガリアンに伝わるのは3日後の事である。


 そして後日、イベリア王国の新政権より正式にガリア王国へアーロンの身柄引き渡しが要求されることになる。




  第六十八話 ~ 祭りの日 ~  



 聖・パトリック教会の鐘が鳴り響く。

 今日はシルビィ王女とアーロン王子の"儀の礼"の当日である。

 (イベリア王国で反乱が起こるのは、この次の日である)


 王宮から聖・パトリック教会へと通じる大通りには多くの完全装備の兵士が警備に就いている。

 馬車のパレードを見ようと大勢の民衆が大通り沿いに集まっている。


 王都ガリアンがお祭り気分に浸っている。

 そんな目出度(めでた)い時に1人だけ自室で苦悩しているマノンの姿があった。


 "どうしよう……レナに相談する事もできない"

 "かと言って、ルシィやエレ-ヌに相談しても……"

私が苦悩していると爺の声が聞こえてくる


 "昨日は、あれから直ぐに爆睡してしまったからの"

 "まぁ、出たとこ勝負、なるようにしかならんじゃろう"

爺が呆れたように言う……

 そう、昨日、私は悩みながらもベッドに入って5分もしないまま爆睡してしまったようなのだ。


 "このまま、悩んでいても仕方があるまい"

 "ここは、アネットちゃんのためにもわしが一肌脱ぐしかないようじゃな"

 "全てわしに任せるがよい……"

そう言うと爺は私と入れ替わる


 何だか最近の爺は妙に活動的になったように感じる。

 そして、この所は上手く窮地を切り抜けているので私は爺の事を信用しているのだった。


 爺は足早に自室を出ると王立アカデミ-の外へ出て広場の塔へと向かう、そこから魔法工房へと転移する。


 魔法工房に着くと魔道具の倉庫へと向かう、王立アカデミ-の制服を脱ぎ捨てると衣装ダンスから何やら魔道具らしき服に着替える。

 私はタンスの鏡に映った服装を見て焦る

 "何なのこの格好はっ!"

吃驚(びっくり)して私が叫ぶ


 「これはな、旧世界の正礼装じゃよ」

 (我々の感覚で言うと"タキシ-ド"ブラック・タイと言う奴である)


 純白のシャツに漆黒のタキシ-ド、シルクハットにマント……

 手には持ち手に獅子の彫刻の付いたステッキ……。

 何故か、腰には奇麗な装飾が施された剣をぶら下げている……


 そして正体を隠す仮面……

 口にバラの花をくわえていないのがせめてもの救いである。


 "いゃぁ~"

私は悲鳴を上げる

 "こんな恥ずかし格好で表を出歩くのは絶対に嫌っ!"

早く爺と入れ替わって何とかしなくては……

爺は焦る私の事など無視して速足で転送ゲ-ト室へと向かう


 "お願いだから止めてぇ~"

私の必死の願いも虚しく転送ゲ-トが作動する。

一瞬の閃光が収まり辺りを見回すと、そこは聖・パトリック教会の祭壇の上だった。


 今まさにアーロンとシルビィの"儀の礼"が執り行われようとしているところだった。

 参列者の視線がこちらに集まる。

 "いゃぁ~見ないでぇー"

私の悲鳴をものともせず爺は静まり返った教会の祭壇上に堂々と立ち口上を述べる


 「この儀、このわしが預かりうける」

突然の事に呆気に取られてた参列者たちが騒めきだす。


 「大賢者様っ!!!」

シルビィは一目で私の正体を一瞬で見抜く

 

 「あれっ……」

完璧だと思っていた変装を一瞬で見破られ爺は焦る

 「なっ……何の事かな……」

追い詰められた政治家のような苦しい答弁をする。


その様子を見た最高司祭クロードの表情に笑みが浮かべるとシルビィに小さな声で(ささや)


 "シルビィ様……さあ……お早く……"

その言葉にシルビィは万遍(まんべん)の笑みを浮かべると純白のドレスを(ひるがえ)し爺の胸に飛び込む


 「ぐへぇ!」

 「ゴホッ! ゴホッ!」

爺はシルビィの全力のボディ・アタックをまともに食らい(むせ)かえる。


 呆気に取られていた国王のレオナールは我に返ると護衛の騎士に(げき)を飛ばす

「何をしておるか、あの狼藉者(ろうぜきもの)を捕らえよっ!」

レオナールの命で数名の護衛の騎士が祭壇に駆け上るが………

爺が右手を軽く振りかざすと騎士は大きな槌で打たれたように吹き飛ばされる。


 その光景に参列者たちは動揺を隠せないでいる、爺のすぐ傍で呆然としているアーロンに爺が話しかける

 「アーロンよお主に悔いはないのか」

爺の言葉と自らの心を見透かすような鋭い爺の眼光にアーロンの心は大きく揺さぶられる


 「私はっ! 私はっ! 」

アーロンが何かを言おうとした時


 「アーロンよ、もうよい……」

爺はアーロンの言葉を遮ると祭壇の前にいる参列者の方を向く

 「この儀、2人のために非ず」

 「我、秘術を以って諸悪の根源を絶たん」

 「悔い改めぬ者に容赦なし」

爺は堂々たる態度を以って大声で参列者に宣言する。


 そして、爺は国王レオナールの方を見る

「王女シルビィ殿は、暫しお預かり申し上げる」


 シルビィをお姫様抱っこすると転送ゲ-トを作動させた。


 眩い閃光と共に爺とシルビィは祭壇の上から消え去っていた。


 後の世に言う"大賢者、王女誘拐事件"である。

 当然、国王のレオナールは緘口令(かんこうれい)を敷いたが無駄だった。


 この劇的な前代未聞の出来事はあっという間に世間に広まり、その事情が知れ渡ると多くの世の女性たちの感動と涙を誘った。


 特に、意にそぐわない"交わりの儀"を強要される上流階級の若者、その中でも女性たちからは熱狂的なまでに支持されその考えを改めるきっかけとなり、やがてはガリア王国の上流階級の"交わりの儀"そのものに劇的な変化を与える事となるのである。



    第六十八話 ~ 祭りの日 ~  終わり


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