表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
66/394

第六十六話 ~ シラクニア長期出張 終章 ~

第六十六話 ~ シラクニア長期出張 終章 ~ 


        ~ 序章 ~


 マノンのシラクニアでの巣篭り生活が九週目を迎えようとする時、ガリア王国ではシルビィの"交わりの儀"の前儀式である"儀の礼"の式典準備が進められていた。


 イベリア王国の第三王子の"アーロン・カデーナ"を迎え入れるための式典の準備である。

 この式典をもってイベリア王国の第三王子の"アーロン・カデーナ"は正式にガリア王国の国王"アーロン・ド・ガリア"となる。


 養子に出る形式となるために、大陸王家の慣わしに従い"アーロン"はその身一つでガリア王家に入るのである。

 マリー・アントワネットがフランス王家に嫁入りした時と同じである。


 儀式の全てがガリア王国で行われる事となりイベリア王国からの参列者は一人ももなく、儀式とその準備も費用も全てガリア王国が負担することなっている。


 着々と進められていく式典の準備を眺めながらシルビィは物思いに(ふけ)っていた。

 後三日で私は"アーロン・ド・ガリア"のと"儀の礼"が執り行われ、その二日後に行われる"交わりの儀"をもって正式に"アーロン"の正室となる。

 

 もうすぐ"アーロン"も王都ガリアンに到着する、会ったことも無い相手と"交わり"その子を宿すこととなるのである。


 そんなシルビィの姿を目の当たりにしているアーネットはもはや我慢の限界に達していた。

 "あの甲斐性無しの大賢者はいったい何処で何してんのよ"

 心の中でマノンへの怒りを募らせているのであった……そしてついに独断でアーネットは強硬手段に出る。


 マノンが以前に本能的に恐れていたアーネットの特殊能力の行使である。

 じつは、アーネットには不完全ながら予知・予測能力があるのである。

 言い換えれば、弱いながら魔力を持っているという事である。


 アーネットがシルビィの傍に居るのはその能力を以ってガリア王家唯一の後継者シルビィの危機を未然に回避することが本当の責務なのである。


 以前にサン・リベ-ルでマノンにシルビィとの仲を問いただしたり、国王にマノンに対するシルビィの気持ちを伝え招待状を出すように仕向けたのも全てこの事を予知したからであった。


 そして、アーネットは今度はマノンの行動を事を予知しようと決意したのであった。

 アーネットにとっては予知・予測能力の発動には余り気乗りのしない事をしなければならない。

 それは、自らを通常とは異なった意識状態、つまり自らをトランス状態にしなければならないのである。


 アーネットがトランス状態に陥る手段それは……自分自身に苦痛を与える事である。

 修行僧が荒行を何度も行い自らを苦痛に追い込むことによって得られる"悟り"と同じである。


 だがアーネットがやることは修行僧がやるような荒行ではない。

 アーネットは悶絶・昇天することによって予知・予測能力の発動が発動するのである。

 これも言い方を変えれば快楽の極致に至りイク時に予知・予測能力が発動するのである。

 あまり人には言えないこの恥ずかしい手段はシルビィを思いやるアーネットにとっては大したことではなかった。


 かといって別に誰かと"交わる"訳でもない、アーネットは擽られ悶絶することにより快楽の極致に至る事が出来るのである。

 この事を知るのは、ごく一部の者達だけである。

 シルビィもこの事は知らない……と言うか、アーネットが変態じみたこの能力発動を必死になって隠しているのである。

 (余談だが、後に爺の指圧グリグリでも同じ効果が得られることが判明する)


 かくして、アーネットはマノンの行動を予知することに成功するのであった。





    第六十六話 ~ シラクニア長期出張 終章 ~ 



 ルメラからなんとか光の剣を守りきった爺は部屋に逃げ込むとドアに鍵を掛けた

 

 「マノンっ! 開けろよ」

ルメラがドアを軽くたたき外で何か言っている

暫くするとルメラは諦めたらしくドアの外は静かになった。


 「はぁ~」

爺は一息つくと

 「済まぬが、少し休ませてくれ」

疲れ切ったように言うと私と入れ替わり気配を消した。


 私は、ストーブの火を大きくしハーブティーを入れると残っていたクッキーをかじりながらハーブティーを口にする。


 コンコンとドアを叩く音がする。

 私は吃驚してハーブティーを詰まらせ咽せ返る……恐る恐るドアの方に目をやる


 「私です、ユーリアです」

 「私一人です、ルメラ様はおりません」

 ドアの外にルメラはいないようだった、私は鍵を外し用心深くドアを開けると本当にユーリアしかいなかった。


 私はユーリアを部屋に招き入れるとハーブティーとクッキーを用意する

 「残り物のクッキーだけど」

ユーリアはお礼を言うとハーブティーをすすりながら私の方を見る


 「先ほどは大変でしたね」

 「ルメラ様……まだ、マノンの光の剣の事、諦めてませんよ」

 「魔剣を頂いただけでも凄い事なのにあの方は欲張りです」

そう言うとユーリアは私をジッと見つめる


 「ユーリア……何か言いたいことがありそうだけど」

黙って私を見つめるユーリアに何か異変を感じた私は問いかける


 「あっあの……出来れば………」

ユーリアの顔が真っ赤になっていく


 「どうしたの顔が赤いよ……熱でもあるの?」

私は心配になってユーリアの額に手を当てる

 「熱はなさそうだけど……」

私は心配そうにユーリアを見つめる


「はぁはぁ」

何だかユーリアは息苦しそうに見える。

「あの、先ほどの長巻の練習で汗を掻きましたもので……」

「お風呂に入りたいと思いまして」

ユーリアは緊張したように言う


 「ああ、いいよ」

 「だったら、鉱薬の薬湯の方が良いね」

私は薬湯の種類を聞く


 「あっ、いえっ、ハーブの薬湯でお願いします」

ユーリアはそう言うと落ち着かない様子で部屋の中を見回す


 「これからお風呂を用意すると、二時間近くかかるけどいいかな」

 「ボイラーに火を入れたらお昼にするけど一緒にどうかな」

私が昼食に誘うとユーリアは大きく頷くと


 「わっ私は着替えを取りに戻りますので」

そう言うと何処かぎこちない様子で部屋を出て行った。


 今日、一日はルメラ達はマノンの部屋には来ない、そう言う事になっているのだ。

 理由は言うまでも無い……2人の邪魔をしないためである。

 当然、マノンはそんな事など全く知らないのである。


 ユーリアが戻ってくると2人で昼食を食べる。

 窓の外を見ると嵐は静まっているようだ……爺の声が聞こえてくる

 "もうよさそうじゃな……今出れば日の沈む前に旧都キーマに着ける"

爺の声を聞きながら私は少し物思いに耽る


 風呂が沸いたのでハーブの薬湯を入れユーリアに用意が出来たことを伝えるとユーリアはそそくさと部屋を出て行った。

 ユーリアに「一緒にどうですか、お背中ぐらいは流しますよ」と誘われたが用があるからと言って断った。


 本当は、これからここを出るからであって湯冷めすることを考えての事である。


 私は魔装服に着替えリュックを背負う、テーブルの上にお世話になった人たちへの置手紙を並べると部屋を後にした。


 その頃、ユーリアは風呂場で体の隅々まで念入りに洗ってたのだが、それは無駄になってしまう事になる。


 ユーリアがマノンの部屋に戻った時には既にマノンは都市スクラの外にいたのであった。


 マノンがテーブルの上に並べた置手紙を見つけたユーリアは急いでルメラ達に知らせる。


 置手紙を握りしめて慌てて外に出るがマノンの姿はもはや何処にも無い……号泣するルメラの声が虚しく凍り付いた大地に響く。

 ユーリアは"初鰹"を食いそびれた江戸っ子のような気分で、ただ呆然としている。


 アイラとエルナは、ただ涙を堪えている……

 

 余りに突然のマノンの帰還を知り、置手紙を呼んだラッセルもアスラクも何も言わなかった。


 後にマノンの部屋で、うず高く積まれた素焼きの小皿を見たアスラクは

 「流石の大賢者様でも、これは……」と言うと小さな声で笑うのだった。


 因みに、うず高く積まれた素焼きの小皿の一つに自分の孫娘の物があろうとはアスラクは知る由も無かった。


 こうして、マノンのシラクニアでの生活は終わりを迎えることとなる。




   第六十六話 ~ シラクニア長期出張 終章 ~ 終わり


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ