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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第六十四話 ~ シラクニア長期出張 ⑧ ~

第六十四話 ~ シラクニア長期出張 ⑧ ~ 序章



 マノンが王立アカデミ-から姿を消して既に二ヶ月近くが過ぎようとしていた。

 

 その頃にはマノンは"大賢者の弟子"であると王立アカデミ-の生徒は誰もがそう思っており、導師の間でもそう考える者は多かった。


 不思議な事にマノンが大賢者であるとは誰も考えもしなかった。


 その理由は、教会の絵画や広場の銅像の大賢者の姿が初老の男性であるためで殆どの者が大賢者は初老の男性という固定観念があるからである。


 まさか、大賢者が16歳の青年だとは夢にも思わなかったからである。


 マノンが言っていた"恥ずかしい銅像"はマノンの正体を隠す道具としてそれなりに役に立っていたのである。


 また、幸いなことに王立アカデミ-には長期欠席のペナルティは無く、マノンは最終課程を既に終えており卒業確定となっていた。


 ただ、マノンの特別推薦生への編入については導師間でも意見が分かれている。


 理由は簡単で"大賢者の弟子"ともあろう者が今更、王立アカデミ-の生徒などする必要はない。

 正式に導師として迎え入れるべきであるとする意見。


そして、もう一つは"大賢者の弟子"か否か確実に確認が取れるまでは生徒とすべきである、と言う意見である。


 本当のところは、マノンの薬学に対する知識に関しては、既に導師と同等かそれ以上とバロー導師が認め導師会に報告しているので生徒でいる必要はないと導師の殆どがそう思っている。


 が……多くの導師にとってはマノンが"大賢者の弟子"か否と言う所が胆なのである。

 王立アカデミ-における"大賢者の弟子"という称号は王立アカデミ-内での最高位を意味するからである。


 マノンがシラクニアで巣篭っている間にマノンを取り巻く周囲の環境は大きく変化しているのである。



 当然、マノン本人は知る由もない。





  第六十四話 ~ シラクニア長期出張 ⑧ ~ 




 最近、外を出歩いていると多くの人から声を掛けられる事が多くなった。

 皆、私にお礼を言いたいらしく……

 "〇〇の命を救ってくれてありがとう"とか"ストーブのお陰で生活が良くなりました"とかが多い。


 私としては皆の役に立てて素直に嬉しいと思っている。

 しかし、いつまでもここに留まるわけにはいかない……


 そして近頃、試合申し込みの木の板に混じって素焼きの小皿が多い日には十枚以上も伏せた形で置かれいる事が多くなった。

 小皿の内側には木の板と同じように名前と住所が書かれている。


 私はこの素焼きの小皿の事をルメラ達に尋ねると急に皆、不機嫌になる。


 「……マノン……その小皿……恋文なんです……」

アイラが言い難そうに言うと


 「マノンは女子に人気がありますからね……」

エルナが100枚以上もある小皿を見て言う


 「このっ! 女ったらしの最低野郎ーっ!!」

ルメラが不機嫌そうに言う


 「仕方がありませんわ」

ユーリアが諦めたような口調で言う


 そんな、4人に気を使いながら私は小皿の事を尋ねる

 「シラクニアの恋文って凄くシンプルなんだね」

 「あの……これ、どうしたらいいのかな」

私は4人の顔色を(うかが)いながら問う


 「はぁ~」

 私の質問に4人揃って大きなため息を吐く


 「あの……言い難い事なのですが……その……」

 「この、小皿の恋文は……何と言いますか」

 ユーリアが困ったようにしていると


 「あ~もう、じれってぇー」

ルメラが話の途中に割り込んでくる

 「この小皿はなっ、後腐れ無しの"一発券"なんだよ!」

 「よーするにだな、ワンナイトラブのお誘いってやつだよっ!!」

ルメラがそう言うと他の3人が恥ずかしそうに横を向く


 「へっ?」

私は事情が良くわからなくて目をパチパチさせていると爺の声が聞こえてくる

 「お前さん、一夜限りの"交わり"のお誘いじゃよ」

爺言っている事で私にもその意味が分かっている


 「えっえっえー!」

 「いくら何でも……それは……」

私が焦っているとユーリアが真面目な表情で私の方を見る


 「あの、マノン、これにはシラクニアの事情があります」

そう言うとユーリアはシラクニアが置かれている、ある事情を話し出した。

 

 シラクニアは、近年の度重なるゲルマニア帝国との戦争で多くの戦死者を出している。

 その大部分が適齢期の若い男性なのである、要するにシラクニアは深刻な男不足なのである。


 太平洋戦争直後の日本でも同じような事が起きている。

 当時は"男一人に女トラック一杯"と言われたほどである。 


 今のシラクニアでは気に入った男性がいれば、女性から積極的に"交わり"子供を授かる事がこの国では当たり前になっているのである。

 だから、アイラとエルナのように異父姉妹がいるのである。


 ユーリアは一通りの事情を話すと私を見つめる。

 「じっ! 実は私もマノンの子供が欲しいと思っておりますっ!」

 「わっ私はっ! マノンの事が……その……」

 ユーリアは息を切らしながら顔を真っ赤にして言う、他の3人は呆気に取られている


 「えっえっえー!」

ユーリアの発言に吃驚(びっくり)して声を上げてしまう私に他の三人はというと……。


 「そうでしょうね……私もそうですし」

アイラがやや諦めたような口調で言う


 「私だってそうですよ」

エルナも同調して言う


 「おっお前たち……」

ルメラは少し焦っているような口調だが、"当然か"と言うような表情である。


 四人の会話に私の頭の中が真っ白になっている。

 そんな中で更に恐ろしい事態になっていくのである……


 静まり返った部屋の中でエルナが口を開く

「仕方がありませんね、それでは順番という事で」

 エルナが恐ろしい事を口にする


 「私は別に3人一緒でもいいわよ」

アイラが更に恐ろしい事を口にする


 「私は……3人一緒と言うのはちょっと……」

ユーリアが恥ずかしそうに言う


 ユーリアの様子を見ていたエルナは

「それでは、(くじ)で順番を決めましょうか」

私には想像もつかないよう提案をするとアイラとユーリアは何のためらいもなくそれに同意する。

「で……ルメラ様はどうします」

エルナはあたふたしいてるルメラに問う


「あっ……それは……その……」

「おっ俺の分も頼む……」

ルメラは真っ赤な顔をすると小さな声で言った


 元ガリア女子の私の常識を遥かに超えるシラクニア女子の会話に呆然としていた私の意識が徐々にはっきりとしてくる。

 「ちょっと待ってよっ! こんな事っ! ありえないでょうっ!!!」

私は焦って言うと


 「そうですか?」

エルナがそう言うと他の3人も"何が?"と言うような表情でこちらを見ると

 「そうか……マノンは知らないですよね」

エルナが何か思い立ったように言うと事情を話し出す。


 シラクニアでは一人の男性に複数の女性からお誘いがあった場合には同意のもとで公平性を保つために"交わる"順番を籤で決めるそうである。


 "交わる"順番に関しては男性の同意を得る必要は無いそうであり、申し込まれた男性はよほどの事情がない限り断れないというのがシラクニアの掟だそうである。


 逆に、男性側から"交わり"を申し込んでも女性側が気に入らなければ断る事が出来るそうである

 その理由は、出産育児の殆どを女性側が行うために意に添わない相手の子供を出産し育てることを良しとしないためである。


 因みに、小皿が素焼きなのは"私は処女です"という事を意味するそうである。

 "処女でない場合は?"などと言う質問をするほどの余裕は私にはなかった。



 呆気に取られている私にエルナが質問をしてくる

「マノンは経験がお有りですか?」

「ここの4人にはそういった経験はありません」

エルナの質問に私の思考は停止する


「えっ……私……ないよそんなのっ!」

私が慌てて言うと4人の顔が不吉な笑みが浮かぶ

私の背中に悪寒が走る……そんな私を見て4人が顔を見合わせると


「これは何としてでも一番籤を引かないと」

アイラが小さな声で言うと4人の目線に火花が散る様子がわかる


 私が慌てていると爺の声が聞こえてくる

「試合の方はわしが何とかするから夜の方はお前さんに任せる」

「言っておくが自分の腰は自分で押せぬからな」

「それでは、健闘を祈る……」

そう言うと爺は完全に気配を消した


 「ちょっと待ってよーー」

私は念話で必死で叫ぶが爺は答えなかった


 ガリア王国では"交わりの儀"がシルビィが本人の意思とは関係なく進んで行っているのと同じようにシラクニアではマノンの貞操が本人の意思とは関係なくコンビニの景品の如く籤引きで決められようとしていた。




 マノンがシラクニアに来て9週目に入っているのだった。

 


 

   第六十四話 ~ シラクニア長期出張 ⑧ ~ 終わり


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