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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第六十一話 ~シラクニア長期出張 ➄ ~

  第六十一話 ~シラクニア長期出張 ➄ ~ 序章



 人は故郷を離れ暫くすると"ホームシック"というものにかかる事がある。

 筆者もフランスにいた時に二週間ほどしてから"ホームシック"というものなった経験がある。


 マノンも本人が気付かぬうちにこの "ホームシック"というものになっていたのである。


 ルメラたちとお風呂に入った時に、3人の仕草を無意識のうちレナの仕草と重ねてしまうのがその前兆であるが、鈍いマノンはその事に全く気付いてはいない。

 女心にも鈍いがこんな事にも鈍いのである、今はそれが救いにもなっている。


 傍目には、すっかりシラクニアの生活に馴染んでいるように見えるがマノンは生まれも育ちも南国ガリアである。

 極寒のシラクニアの生活は少なからずマノンの体と心にある程度の障害を及ぼしているのだが……これも本人は全く気が付いていない。


 既にマノンがシラクニアに来て7週目に入っていた。




   第六十一話 ~シラクニア長期出張 ➄ ~ 


 

 最近、私の部屋の入り口に小さな木の板が何枚も置かれている事がある。

 木の板には名前と住所が書かれている。

 何か分らぬうちに100枚以上も溜まってしまった。


 ルメラとアイラ、エルナの3人はよく私の部屋に遊びに来るようになっていた。

 マノンはお茶しに来るのだけだと思っているのだが、3人にとってはそれだけではないのであるが鈍感なマノンが気付くはずもない。


 アスラクは自宅の風呂場が完成してからはあまり来なくなったが、時より薬湯用の薬草を分けてもらいに来る。

 アスラクは以前に比べ元気になり、よく話すようになったような気がする。


 今日も私はルメラたち3人と仲良く午後のお茶を楽しんでいる。


 私は、意味不明の木の板の事をルメラに話す。


 「木の板って……」

ルメラが意味ありそうに私の方を見る


私はまとめて置いていた木の板の束を戸棚から出してくるとルメラの前に置く

 「あ~これ……試合の申し込み状だよ」

ルメラが木の板の束から1枚を取り出すと

 「ユーリア・ハルヴァリ……」

書かれている名前を読み上げると

 「ユーリアってシラクニアでも屈指の女騎士じゃねーか」

ルメラは少し驚いたようだった。


 「この木の板って試合の申し込み状だったんだ」

 「どうすればいいの……これ……」

私は困ったようにルメラに問うと


 「別に何もしなくていいよ」

 「気が向いたら適当に選んで相手すればいい」

 「向こうもそう思っているから」

ルメラは木の板をテーブルの上に置くと

 「マノンは本当にモテるよな」

皮肉っぽい口調で意味ありげにニヤリと笑った


 私が木の板を片付けようとすると久しぶりに爺の声が聞こえてくる

 「お前さんっ! さっきの木の板の話じゃが……」

 「ワシは試合がしたい……」

 「もう退屈で死にそうじゃ……」

爺の死にそうなぐらい退屈そうな声に私も共感する


 「このユーリア・ハルヴァリって人と試合するにはどうすればいいの」

私の隣でハーブティーをすすっているルメラに聞く


 「木の板の裏側に場所と時間を書いてだな」

 「書かれている住所の部屋の前に置くか直接本人に手渡すかだ」

ルメラはクッキーをかじりながら

 「そのユーリア・ハルヴァリってのはかなりの凄腕だぜ」

そう言うとルメラは木の板を手に取る

 「ペン借りるぜ」

ルメラはペンを取ると

 「明日の午前10時、王族区画の3‐B貯蔵庫跡にて」

 「これでいいか、帰り道だから俺が持って行ってやるよ」

ルメラは木の板をポケットにしまい込んだ


 「明日の午前10時、王族区画の貯蔵庫跡……だね」

私はルメラに確認をとると爺の嬉しそうな声が聞こえてくる

 「ユーリア・ハルヴァリ、シラクニアでも屈指の女騎士か」

 「楽しみじゃの……」


 私が爺と念話をしているとアイラとエルナがこちらを見ている

 「あの~私達もご一緒してよろしいでょうか」

アイラとエルナが私に問いかける


 「いいよ、ルメラはどうするの」

私がルメラに問いかける

 

 「行くに決まってんじゃねーか」

ルメラに問うまでも無かった


 「ところで話は替わるけど、皆、酢漬けの葉野菜はちゃんと食べてる」

私の問いかけに一瞬3人の動きが固まる


 「食べてないんだね」

私が疑惑の眼差しで3人を見る


 「ごめんなさい、食べていません」

3人は素直に食べていない事を認める


 「だと思ったよ……」

そんな事だろうと思って例のスープを作っていたのだ


 「これ、試食してくれる」

私は昨日作って寝かせてあったスープの入った鍋をストーブの上にのせる


 「あ~昨日の赤いスープか」

ルメラは嫌そうな顔をして言うと

 「なんのスープなんだよ……あれ」

ルメラは凄く嫌そうな顔をしている


 「葉野菜を煮込んだ特製スープだよ」

私はルメラに向かって微笑むと


 「うぇ」

ルメラは更に嫌そうな顔をするがその横から


  「頂きます」

アイラとエルナが決死の表情で私に言う


 とりあえずアイラとエルナの分を皿に入れると焼いたライ麦パンを添えて出す


 出されたスープの色に2人は驚いている

 「姉さん……赤いね……」

エルナがスープの色に驚いている


 「ええ、真っ赤だね……」

アイラの言葉からは漠然とした不安を感じる


 「騙されたと思って食べてごらん」

私が微笑みながら2人をジッと見つめると


 「ぅぅぅぅ」

2人は小さな声を出すとお互いに顔を見合わせ頷く……。

スプーンに少しだけスープを掬うと震える手で口に運ぶと目を閉じて口に入れる

 「えっ……美味しいですよコレ」

 アイラが驚いたように言うと


 「見た目は最悪ですが、本当に美味しいです」

エルナも驚いたように言う、それを見ていたルメラが


 「本当かっ!」

2人に慌てた様子で問いかける


 「本当です、見た目は最悪ですけど」

エルナが答えるとルメラは私の方を見る


 「ルメラも食べる」

私が問うとルメラは大きく頷く


 3人仲良くスープとライ麦パンを食べている様子を私はぼんやりと眺めていた。


 褒められているのか貶されているのかよく分からないが3人とも口にあったようだ。 

 御代わりをするぐらいにこのスープが気に入ってくれたらしく鍋が空っぽになってしまった。


 暖かい部屋でお腹もいっぱいになり、3人とも眠くなってきたようでテーブルの上にうつ伏せになったまま眠っているようだ

 私も何だか眠くなってきた、窓の外を見ると薄暗くなってきている。

 

 こんな所で眠ってしまうと風邪をひいてしまうので3人を起こそうとするが全く起きる気配がない。


 仕方がないので一人づつベッドにお姫様抱っこで寝かせていく、少し狭いが3人とも気持ちよさそうに寝息を立てている。


 私は再び寝袋を引っ張り出すと寝袋に潜り込むとそのまま眠りについた。

 こういう事態を予想していた私は、以前、ルメラが寝込んでしまった時に使った物より大きめで二人ぐらいなら入れる大きさのものを用意していた。


 「大賢者様……大賢者様……」

誰かが夢の中で私を呼ぶ、ぼんやりと人影が目に映る

 「そこに入ってもいいでしょうか」

夢の中で誰かが私に問いかける


 「んんんっ? いいよ……狭いけど」

寝ぼけている私はそう言うと寝袋の片隅に誰かが入ってくる


 「暖かい……です」

恥ずかしそうな声が耳元でする


 「そうだね……」

私はそう答える、人肌の温もりは心地よい……

私はそのまま深い眠りについてしまった。


 

 「おいっ! マノンっ! 起きろっ!!」

心地よい温もりと夢の中で惰眠を貪っていた私を誰かが現実世界へと呼び戻す


 「はへぇ」

寝ぼけ眼で辺りを見回すとルメラとアイラが枕元に立っている

 「んんんっ?」

何気なく横を見るとエルナの胸が目の前にある、しかも、胸元がはだけけて胸が丸出しの状態だった

 「えっ……」

段々と意識が戻ってくる


 「マノン……どういうことだよ」

ルメラは不機嫌そうに言うと


 「あっ……おはようございます」

目を覚ましたエルナが私に朝挨拶をすると上半身が裸なのに気付く

 「あれ?」

 「ああ、昨晩はどうも」

エルナが私に意味ありげな事を言う


 「エルナ……どういう事なのか説明してくれる」

アイラがエルナに詰め寄ると


 「昨夜は、大賢者様にお世話になりました」

 「とても気持ち良かったです」

オッパイ丸出しの状態で寝ぼけ眼のエルナがそう言うと


 「アハハハ……」

ルメラとアイラは笑い出す


 当然、その後で私とエルナは2人の執拗な尋問に会うのであった。


  

 エルナの説明によると……。

 寝相の悪いルメラにベッドを追い出されたエルナは寒くなって私の寝袋に潜り込んでそのまま眠り込んでしまった。

 狭い寝袋の中で動いているうちに上着のボタンが外れてあのような姿になってしまっただけという事である。


  

 が……。

 「大賢者様は本当は女性の胸が大好きなんでね」

 「寝袋の中て私の胸に顔をうずめてましたから」

 「それに……その……揉まれまして……」

 「あの……吸い付かれまして……」

 「恥ずかしながら、私はあのような経験は初めてなもので……」

 「どうしてよいのか分からず……そのまま……」

 「……眠ってしまったようです……」

 後でこっそりとエルナが頬を赤らめて私に話してくれた。

 そう言われれば何だか、掌に柔らかな感触が残っている。

 ぼんやりと何かを吸っていたような記憶がある。


 「この事はご内密に……」

私はエルナに手を合わせて頼み込むと

 

 「私と大賢者様だけの秘密ですね」

エルナそう言うとにっこりと笑った。


 つくづく自分は爺の言う通りの"オッパイ星人"だと思うマノンであった。



第六十一話 ~シラクニア長期出張 ➄ ~ 終わり


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