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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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 第六十話 ~ シラクニア長期出張 ④ ~

  第六十話 ~ シラクニア長期出張 ④ ~  序章



 シラクニアの厳しい冬の嵐の中を一羽の鳩がゲルマニアの方角へと飛んで行く。

 この地方に住む鳩である、小さい鳥だが嵐の中を飛び続けるだけの持久力があり帰巣本能があるために昔から連絡手段として用いられている。


 シラクニアにはゲルマニアの密偵が何人も忍び込んでいる。

 マキシミリアンより再興を許され自治権を取り戻したとはいえ決してゲルマニアの監視の目が緩んだわけではないのである。


 こうして、シラクニアの状況は刻々とゲルマニア本国に伝えられているのである。

 当然、大賢者の事もかなり正確に伝えられておりマキシミリアンの知るところでもある。


ここは、シラクニアを遠く離れたゲルマニア帝国の帝都ヴァーレにあるゲルマ宮の謁見の間。

 「ほほう、"北国病"を御しおったか」

 「シラクニアの民の生活も随分と良くなったか」

 密偵の報告を受けたマキシミリアンは玉座に座したまま笑いを浮かべる

 「大したものよ、余が5年の歳月をかけてゲルマニアで成したことを、あ奴は6週間で成しおったわ」

 そう言うと小さな声で笑う、それを見ていた重鎮の一人が


 「笑い事ではございませぬ」

 「密偵の報告では大賢者がシラクニアの姫と"交わり"彼の地に留まるやも知れぬとあります」

 「これは、一大事にございまする」

重鎮は危機感をもった様子で言う


 「あ奴が大陸制覇を望むとでも思うてか?」

 「あ奴にそのような邪な気が微塵でもあれば余は生きてはおらぬ」

 「その気であればこの帝都ヴァーレごと消えてなくなっておるわ」

マキシミリアンそう言うと玉座から立ち上がり大賢者に破壊された正門の方に目をやる


 「我が国も北部の民の命を救うてもらった故、あ奴に礼の一つも言うのが筋というもの」

 「……まぁ、用があれば勝手に向こうから推参いたすであろうから、礼はその時で良いか」

 「その時は、正門より丁重に迎い入れよ、これ以上、宮殿を壊されてはたまらぬわ」

珍しくマキシミリアンの困ったかの口調に辺りは小さな笑いに包まれた。





 第六十話 ~ シラクニア長期出張 ④ ~  




 マノンは鍋を覗き込むと

 「こんなものかな……」

 鍋で何かをグツグツと煮ている。


 コンコンコンとドアをノックする音がする

 「あっ来たようだ」

マノンは鍋をストーブから降ろすとテーブルの上に置く

 「入っていいよ」

と答えるとガチャとドアの開く音がする


 「お邪魔します」

と丁寧なアイラとエルナ2人に比べルメラは

 「よっ!」

の一声である……まぁ、ルメラらしくていい。


 「何だ、この匂い」

ルメラが辺りを見回すとテーブルの上の鍋を見つける

 「また、なにか作ってんだな……」

 「何だこれ」

そう言うと鍋のの蓋を取り中を覗き込む

 「スープ……か?」

 「赤いな……」

 ルメラは不思議そうに少しの間は鍋の中身を覗き込んでいたが直ぐに蓋を閉めた


 その間に私は、ドライ・ベリーを入れたスコーンとローズマリーのハーブティーを用意している。

 シラクニアは極寒の地だがベリーとハーブはこの時期でも良いモノが取れる。


 ルメラ、アイラ、エルナ3人は椅子に座ると私の方を見る

 「どうぞ」

 私がそう言うと3人は美味しそうにスコーンを食べハーブティーをすする

 シラクニアの人は熱いのが苦手のようですするようにハーブティーを飲む、普段からあまり熱い物を口にしていなかったからだろう。


 下品な飲み方だが仕方がない、その内に慣れるだろうと思う。

 私も料理は全くダメで苦手だったがここへ来て料理をするようになった。


 あまり大きな声では言えないが"シラクニアの飯があまりにも酷かった"のでやらざるをえなかったというのが本当のところである。


 ティー・タイムを終えてくつろいでいる3人に私は背中を見せてくれるように言う。

 3人は顔を見合わせるとお互いに頷くと服を脱ぎだす。


 私は3人の背中の肌荒れ具合を見る

 「3人とも良くなっているよ」

 「これならお湯に浸かっても大丈夫、沁みたりはしないよ」

私がそう言うと3人は私の方に体を向ける、上半身裸なので胸が丸出しである。


 「服を着たらお風呂に案内するよ」

 「風呂のお湯には薬草か入っていて肌に潤いを与えてくれる」

私はお風呂の説明をしながら立ち上がると風呂の準備をする


 「はぁ~」

後ろで3人の大きなため息が聞こえた。

そのため息が何なのか私は気にすることも無かった。


 私は着替えの入ったカバンを手にするとルメラが私に

 「マノンも入るのか」

私に尋ねてくる


 「そうだよ、これが習慣みたいになっちゃったからね」

 「それに、3人ともお風呂は初めて見たいだし薬湯の説明もしたい」

私がそう言うと3人は顔を見合わせるとニヤリと笑うのだったが私はそれに全く気が付かなかった。


 自慢の洞窟風呂に案内すると3人は初めて見る本格的な風呂に興味津々のようだ


 「入ろうか」

 私はそう言うと服を脱ぎだす、元女子であることもあり私も女子の前で裸になる事を恥ずかしいとは思わない。

 日本の国も江戸時代は混浴が当たり前、ドイツなんかは現在でもサウナは混浴である。


 3人は私が服を脱ぐのボォ~っと見ている。

 裸になった私は股間を隠すこともなく3人の方を見ると

 「早く脱ぎなよ、脱いだ服はそこの籐の籠に入れるといいよ」

私はそう言うとかけ湯をする

 「お風呂に入る前は、湯で簡単に体を洗い流してから入ってね」

そう言いながら私は浴槽に身を沈める

 「はぁ~いい湯」

自然とこの言葉が出て来る、さっきの3人の漏らした"はぁ~"とは全然違うのであった


 私の様子を窺っていたアイラとエルナはそそくさと服を脱ぐと裸になり、言われた通りにかけ湯をすると私の前で浴槽に身を沈める。

 「はぁ~」

と2人同時に声を上げると顔を見合わせクスッと笑った

 「これ、凄くいいです」

アイラが気持ちよさそうに言うとエルナが

 「何だかハーブの香りがしますね」

 お湯を手で掬うようにしながら言う姿に私は何故かレナと一緒に入った工房の温泉の事が頭をよぎる。

 "今度は、のぼせたりしないようにしないと"そう心の中で呟く


 「そういえば……ルメラは」

私が入口の方に目をやると、ルメラは下着姿で何故か躊躇している。

"もしかして、恥ずかしいのか……背中のほかに何か悪いところでもあるのか"と心配になった私はルメラに声を掛ける

 「ルメラ、何処か具合でも悪いのか」

私が心配そうに言うと、私の前で湯に浸かっているアイラとエルサの2人がクスクスと笑い出す。


 「あの~大賢者様、じつはルメラ様は……」

アイラが何か言おうとすると


 「ちょっと待った!!」

ルメラがアイラの言葉を塞ぐ、そして私の方を見ると

 「その……じつはちょっとばかし太っちまってな」

 「……この通りだ」

そう言うとルメラはお腹を見せる、少し見ないうちに立派な贅肉が付いているのだった

 「テメーのせいだぞっ! 美味い物ばっか食わせるからこのありさまだっ!」

私の目には、お腹の贅肉を気にするその姿がレナと重なる。


 「そんなの気にする事ないよこっちに来なよ、一緒に入ろ」

私がそう言うとルメラは安心したように下着を脱ぎ捨てると頭から湯を被り、私のすぐ横に身を沈める


 「ふへぇ~」

と言う気の抜けたようなルメラの声が耳元で聞こえる

 「暖ったけな~」

そう言うとルメラは大きく両手を上げ伸びをする、大きくて形の良い胸がプルンと揺れる

何だかレナと一緒に入っているような錯覚に陥る。


 「どう、気に入ってくれた」

私が3人に感想を尋ねる


 「毎日でも入りたいぐらいです」

アイラが気持ちよさそうに言う、ルメラとエルナの2人もコクリと頷いた。


 「体も温まったし、一足早く失礼するね」

私はそう言うと浴槽から立ち上がり、タオルで体を拭くと服を着る

 「あまり長く入りすぎると"湯あたり"するからほどほどにね」

浴槽で微睡んでいる3人に言うと風呂場を後にした。


 マノンが風呂から上がって暫くすると

 「あっ!」

ルメラが何か思い付いたように声を上げる

 「どうかなさいましたか、ルメラ様!」

ルメラの声に驚いたアイラとエルナが湯から立ちあがる


 「マノン……いなくなってる……」

残念そうなルメラの声に


 「あっ……」

アイラとエルナの2人も呆然とするのだった。


 初めて入る薬湯の気持ち良さとハーブの香りのリラックス効果で淫らな3人の欲望は完全に消し飛んでしまいマノンを誘惑する事を忘れ去っていたのだった。


 かくして、3人の目論見は物の見事に外れるのであった。

 そして、マノンの貞操も守られるのであった。


 しかし、この3人がこれぐらいで諦める訳も無いのである。


  第六十話 ~ シラクニア長期出張 ④ ~  終わり


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