第五十九話 ~ シラクニア長期出張 ③ ~
第五十九話 ~ シラクニア長期出張 ③ ~ 序章
重度の肌荒れというシラクニアの人々の長年の悩みの一つを解決したマノンの評判はさらに上がる事となる。
知力は勿論、剣の腕も一流、そのうえ容姿も良く若いとくればなおさらである。
結果としてマノンとの"交わり"を望むシラクニア女子が今まで以上に増えたことは言うまでもない。
あちらこちらから入ってくるマノンとの"交わり"を望むシラクニア女子の声は当然ルメラの耳にも入ってくるのであった。
当然、ルメラもそれを望んでいるのだが、どうも上手くきっかけが掴めない。
と言うか、自分の事を女だと思っていないのではないかとさえ思えてくるルメラであった。
第五十九話 ~ シラクニア長期出張 ③ ~
「はぁ~」
大きなため息をするルメラ
「どうかなされましたかルメラ様」
アイラが心配そうに言う
「何でもないよ」
そう言うとルメラは両手を後ろに組むと大きく伸びをする
「大賢者様の事でお悩みのようですね」
アイラはポツリと言うと
「うっ……」
ルメラの動きが止まる
「やっぱり……俺ってアイツにとっちゃ対象外なんだろうな……」
ルメラは少し悲しそうに言うと
「そんな事はないと思いますよ」
「ルメラ様は中身はともかく外見は良いですから」
「それに、私と違って出る所はしっかりと出てますし」
アイラはそう言うとルメラの胸を見る
「でもな~アイツ薬塗る時だって俺の胸なんかに見向きもしなかったぜ」
「わざと下着も脱いだってのによ……」
ルメラは自分の胸を持ち上げるようにする
「そんな事は無いと思いますよ」
「ルメラ様の胸は凄く魅力的だと思います」
アイラがそう言うと隣で聞いていたエルナも同意するように頷いた
「じつは私もエルナも大賢者様の気を引こうとしたのですが……」
「ダメでした……」
「出来れば私とルメラ様、そしてエルナの3人で……その……」
アイラが途中で言うのを止めるとエルナも虚しそうに頷く
「お前たちっ! そっそんな事、考えてたのか」
ルメラは顔を真っ赤にして言う
「別に、いいじゃないですか」
「私もエルナも大賢者様の事はとても素敵な方だと思っております」
「出来ればあの方の子を授かりたいと思ってもおります」
アイラは真面目な表情で言うとエルナも大きく頷いた
「こっ!子っ! 」
ルメラは更に顔を赤くして黙り込んでしまう、そうするとエルナが話し出す
「私は、初めて大賢者様にお会いした時に一瞬で心を奪われました」
「本当にいい人だと感じました」
エルナは頬を赤らめて言うその横からアイラが口を挟む
「エルナは面食いだから大賢者様の顔に惚れちゃたのよね」
「大賢者様ってエルナの好みにビンゴだから」
そう言うとアイラは目を細めてエルナの方を見る
「姉さんの言う事は半分当たってるけど、それだけじゃない」
「"北国病"の時、皆の冷たい視線を浴びながらも必死でラッセル様を救おうとする姿に心を打たれた」
「あの時から、私の心も体もあの人になら捧げても良いと思った」
「その気持ちはあの時よりも今は更に大きくなっている」
恥ずかしそうに話すエルナを横目にアイラがルメラの方を見ると
「ルメラ様も立派な女にございます」
「いづれは"交わり“このシラクニアの世継ぎを作らなくてはなりません」
「であれば、好いた相手と"交わり"たいと言うのが女心であると……」
アイラは顔を真っ赤にしているルメラにそう言うと
「私はあの方が好きです」
「ですから……その……」
真面目ぶっていたアイラの顔が急にだらしなく緩む…その様子を見ていたルメラは
「アイラ、お前……マノンに尻を撫で回されたのがそんなに良かったのか」
ルメラの核心を突く言葉にアイラの目は不自然に泳いでる、そんなアイラの隣でエルナは
「それもあるけど、アイラ姉さんはもうすぐ20歳だから……」
「少し焦っている、何とか10代でっへっ!」
エルナは最後までいう事なくアイラの拳骨が脳天にを直撃する。
エルナは呻き声を上げながらその場に蹲る。
「ふぅ~ん」
ルメラの冷たい視線にアイラはバツが悪そうにしていたが
「そうですよっ!売れ残る前になんとかしたかったんですよっ!」
「それに、あんな上物を放っておいては女が廃ります」
アイラの開き直る姿にルメラはため息を吐くと
「そろそろ、マノンに会いに行くとするか」
そう言うとルメラは着替えの入ったカバンを手にする、アイラもエルナも同じように着替えの入ったカバンを手にしている
今日はお茶の後でマノンからお風呂の入らないかと誘われている。
当然、マノンは3頭の雌オオカミに狙われている事など夢にも思うことなく、薬湯の用意をしているのてあった。
その頃、王立アカデミ-ではマノンの事が噂になっていた。
既に、シラクニアに大賢者様が現れ"北国病"の治療に成功したことはガリア王国にも伝わっていた。
それと同時にマノンの姿が見掛けられなくなった事が王立アカデミ-での"マノン・ルロワ大賢者の弟子"説に現実味を持たせることとなった。
それが逆にマノンが大賢者の弟子である事を既に知っていたマリレ-ヌに安心感を与えることとなる。
その様子を見ていたレナはマリレ-ヌにマノンの正体を明かすことを思い止まることとなる。
マリレ-ヌがマノンの正体を知るのはもう少し後の事となるのである。
そんな一方でシラクニアから伝わってくるマノンの情報に焦りを隠せない者が1人いた……。
そう……シルビィ王女である。
父の代理としてゲルマニア帝国との交渉、戦乱で荒廃したへベレスと周辺の村々の復旧など多忙な毎日を送り、一息ついて久しぶりに王都ガリアンに帰ってきて直ぐにマノンのシラクニアでの情報が伝わってきたのであった。
「大賢者様……私は……」
王宮の私室で1人寂しく呟くシルビィの姿にアネットは
「あの、甲斐性無し野郎めっ!」
アネットは心の中でマノンに殺意さえ覚えるのだった。
アネットがマノンに殺意を覚えるのには訳があった。
世継ぎの問題に業を煮やした国王レオナールはシルビィに無断で友好国であるイベリア王国の第三王子との"交わりの儀"を進めていたのである。
シルビィが知ったのは、王都ガリアンに帰還して直ぐの事であった。
マノンがシラクニアで過ごしている間に刻々と事態は移り変わり進んでいるのである。
第五十九話 ~ シラクニア長期出張 ③ ~ 終わり




