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いつの間にやら憑依され……  作者: イナカのネズミ
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第五十四話 ~ シラクニア出張 ➈ ~

第五十四話  ~ シラクニア出張 ➈ ~  序章



 私の思い付きの"都市スクラの丸ごと暖房化"は、(王族の居住区画のみだが)以外にも上手く行った。

 私は大型ストーブの設計・製作と設置をするための協力してほしいとルメラに頼みこまれた時はかなり焦ったが、都市住民の献身的な協力で本当に実現する事が出来た。


 ハッキリ言って自分でも驚いている……当然、この事は私と爺だけの秘密である。


 王族の居住区画内の温度は場所より多少のバラつきはあるものの3~4度程上昇し、シラクニアの人々にとっては以前に比べ随分と快適になったらしい。


 南国育ちの私には、それでも肌寒いと感じるのだが……。

 小型ストーブもシラクニアの人々に極めて好評で生産が追い付かなくて困っているとルメラが嘆くほどである。


 しかし、北風吹き荒れる極寒のこの時期に雪に埋もれた湿地帯で燃料の泥炭を大量に掘り起こすのは、さぞや大変だろうと私は思ったのだが……。


 そこは、雪に慣れた人々達だけの事はあり、驚くほどの手際で湿地帯の泥炭を掘り起こし、4日ほどで用意した乾燥用の倉庫は泥炭でいっぱいになっている。

 ここの住人達は本当に大したものだと感心している。



 シラクニアに来た時に、老若男女問わず多くの住民を診た時に分かったことがある。


 ここの住人達は、冬場の低温と乾燥で肌荒れになっている者が多く、そのせいで体中の痒みにな悩まれている者が多いという事。


 じつは私も最近になって背中やお腹などに痒みを覚えることが多くなってきている。

 特に夜遅くに背中が痒くなった時などは本当に困ったものだと思っている。

 私は安らかな眠りを守るためにある事を実行しようと心に誓う……。


 

 

 と言う訳で……私は、今、魔装服に身を包み完全防寒で北風の吹き荒れる都市の外にいる。

 「あった!」

 私は心の中で叫ぶと大きな岩の間に生えている草を袋の中に詰め込む。

 これで、肌荒れに良い薬草は手に入れた。

 

 私が実行しようと心に誓うある事とは……そう……

 それは……浴場の建設である。

 

 この時、シラクニアに来て5週間近くが過ぎようとしていた。





   第五十四話  ~ シラクニア出張 ➈ ~  



 真夜中に私は背中が痒くて目が覚めた。

 最近こんな事が多くなってきている。

 原因は解っている……低温と乾燥による肌荒れである。


 以前、ルメラも同じような事を言っていた。

 やはり、"ここの住人にはアレが絶対に必要だっ!"……私は自信と確信を持って心の中で叫ぶ


 「お前さんに必要なだけじゃろ」

 「わざわざ、風呂なんぞ作らんでも塗り薬でも作る方が手っ取り早いぞ」

爺が呆れたように言う


 「……」

図星を突かれ、私は何も言う事が出来なかった


 「確かに、ここの連中は風呂という物を知らんようだからのう」

 「この寒さじゃから、汗もかかんだろうしな」

 「しかし、ここの連中は冬の間は体も満足に拭かんからな……」

 「まぁ、この寒さじゃからのう……仕方ないか……」

爺が嘆くような口調で私に言う


 「この辺りに温泉とかある」

私は爺に尋ねると


 「無いの」

爺の一言に私の夢は儚く消えるのであった


 「温泉が無いのなら、薬湯でもよかろう」

爺の言葉に私は共感する


 善は急げと言わんばかりに私は、魔装服を着用し都市の外へと歩み出た。


 ……そこは、北風が吹き荒れる-30度の厳冬の世界、しかし、私は根性と欲望で薬湯に使える薬草を手に入れるのだった。


 後はルメラ話して協力してもらおう……しかし、その夜、ルメラは部屋に来なかった。

 気が付けば朝になっていた……。

 "いつもなら、呼びもしないのに来るのに……"

結局、私は徹夜する羽目になってしまったのだった……。

 そして、その次の日もルメラは来なかった、業を煮やした私はルメラに会いに行く事にした。


 スクラは都市の構造上、王宮などという物はなく用途に合わせ各区画に分かれている。

 各工房区画、倉庫区画、居住区画などである。

 王族専用区画も同じで住居を兼ねた執務室を持っている。

 あんなのでもルメラは第一王女なのでかなり広い自分専用の区画を持っている。

 当然、出入り口には警備の兵士がいて出入りを厳しくチェックしている。


 そして、当然の事ながら予めアポイントメントを取っておかないと一般の者は入れない。

 ……のだが、私はルメラに"いつでも来いよ"と言われているのでそんな事はしなくてもいいはずなのだが。


 「何者だっ!」

槍を持った警備の若い女性兵士に呼び止められる


 「あの……私は……」

私が説明しようとすると


 「怪しい奴だ」

 「そこを動くな」

そう言うと私に持っていた槍を突き付ける


 「ちょっと待って!」

 「怪しい物じゃないって」

私が必死で説明しようとしても女性兵士は聞く耳を持たない。

 "困ったな……どうしよう"

私が困っていると後ろから声がする


 「どうかなされましたか、大賢者殿」

声の主は長老のアスラクだった。


 「これはアスラク様……」

 「えっ!……大賢者殿……」

 「まさか……」

私に槍を突き付けていた女性兵士の顔から血の気が引いていくのが分かる

 「もっ申し訳ございませんでしたっ!」

 「まさか……大賢者殿とは、露知らず」

女性兵士は突き付けていた槍を投げ出すと土下座するように詫びる


 「気にしなくてもいいよ」

 「アポイントメント無しでいきなり来た私も悪いのだから」

 「すまなかったね……」

私はそう言うと女性兵士を優しいく見つめる


 「あっ、ありがとうございます」

真っ蒼だった女性兵士の顔色が今度は真っ赤になった


 その様子を見ていたアスラクは

 「こ奴、天性の女誑(おんなたら)しのようじゃ……」

 「しかし、(よこしま)な下心がまるで感じられん……」

 「本人も全く自覚が無いようじゃし……これはこれでタチが悪いの」

アスラクは頬を真っ赤に染めた女性兵士を見るとため息を吐いた。


 私はアスラクに案内されてルメラの元へと向かう。

 

 天井の高い広い廊下、緻密な彫刻を施された柱や壁、手の込んだ刺繍がされた絨毯が敷き詰められている。

 流石、王族の住居だけの事はある。


 


 一番奥の立派な扉を開けるとルメラが一人で机の上に積まれた書類の山に埋もれていた。

 思いもよらぬ光景に私の体と思考は固まるのであった。


 「なんなの、これ……」

 私は思わず声を上げてしまった。 



   第五十四話  ~ シラクニア出張 ➈ ~  終わり


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