第五十話 ~ シラクニア出張 ➄ ~
第五十話 ~ シラクニア出張 ➄ ~ 序章
久しぶりの好天にシラクニアの人々は都市の外に出て太陽の日差しを満喫している。
ガリアでは当たり前のような天気だがシラクニアはそうではない、冬季の間は曇天が続き北風が吹き荒れる。
春になるまでの間は家に引き籠り長い巣ごもり生活が続く、滅多にない凪の日にシラクニアの人々は寒さも忘れているかのようだ。
一面に積もった純白の雪が太陽の光を反射してまるで真夏の日差しのように感じられる。
しかし、実際の気温は-30度近い吐く息が白く煙のように上がっていく鼻の穴に呼吸をした時の水分がこびり付き凍結する。
こんな環境下でもシラクニアの人々は平気でこの一時を満喫している。
第四十九話 ~ シラクニア出張 ➄ ~
こんな寒い中で戯れる人々の姿を見て私は"若い者は元気じゃの~"と言わんばかりに背を丸め寒さに震えていた。
それを見ていたルメラは私の背後から忍び寄ると首筋に雪玉を押し付けた
「ひぃーー」
私の悲鳴が響き渡る、皆が驚いてこちらを見る
「何するんだよっ! ルメラっ!」
私はルメラに抗議の眼差しを向ける
「だらしないな~これぐらいで……」
ルメラは意地悪そうに笑うと私の傍に来る
「皆楽しそうだ……」
「ここんとこ、嫌なことばかり続いてたから、いい気分転換になるよ」
そう言うと微笑みながら雪遊びをしている子供達を見ている
私も同じように子供達を見ていると周りにトナカイがいる
「えっ……トナカイ?」
私が不思議そうにしていると
「冬季でもトナカイは日中は外に出しておくんだよ」
「日が沈むと自分で厩舎に戻っている」
ルメラはトナカイを見ながら私に説明してくれる
「外は極寒なのに、どうして外に出しておくの」
私が疑問に思った事を尋ねる
「その方がトナカイには良いんだよ」
「ずっと厩舎の中だと病気になったりストレスとかで死んじゃうのもいるんだよ」
「人間もそうだけど、トナカイのようにはいかないからな……」
「ストレスとかより寒さで凍え死ぬからな」
ルメラはそう言うと私の方を見る
「そうなんだ……」
私はルメラの話を聞きながらトナカイたちを見ていると雪の中に顔を突っ込み何かを食べているように見える
「ねえ、ルメラ、トナカイ達なにか食べてない」
私がトナカイを見て言うと
「あ~アレは、"イエローベリー"の実を食ってるんだよ」
ルメラは何故か嫌そうな顔をする
「"イエローベリー"の実って美味しいの」
私が尋ねる
「別に毒じゃないけど……不味い」
「というか……とても食えたもんじゃない」
「あれ食うぐらいならウ〇コ食った方がマシって代物」
ルメラが口を窄めるようにして言う
「なぁ、ルメラ……仮にも一国の王女がウ〇コはダメだろう」
私がルメラを見て言うとルメラは少し恥ずかしそうに頬を赤くする
すると、私の脳裏に何かが閃く……
「もしかしたら……」
私は小さな声で呟くとトナカイのいる場所へと急いで歩いていく
「えっ……マノン、どうしたんだっ!」
私の突然の行動に驚いたルメラが慌てて追いかけてくる
私はトナカイの傍まで来ると雪をかき分けて"イエローベリー"の実を探す
「あった!」
私はそう言うと、"イエローベリー"の実を指でつかみ取るパチンコ玉ほどの黄色い実だった。
私はその実を口の中に入れて噛んだ、実は潰れ果汁が口の中に広がる
「ぶへっ!」
あまりの不味さに思わず吐き出してしまった。
「これは、思ったより遥かに酷いな」
私が口を窄めて言うと
「何やってんだよ、マノン」
ルメラが呆れたように言う
「思ったより遥かに不味いね」
私が言うとルメラがため息をついて
「だから言っただろう……ウ〇……」
ルメラは途中まで言いかけると言うのを止めた
「この実、少し集めてくれないか」
私がルメラに頼むと
「えっ?……まあいいけどよ」
そう言うとルメラは足元の雪をかき分けはじめた。
一時間程で二人合わせて両手2杯分の実を集める事が出来た。
私は集めた実をズボンの両ポケットに詰め込む。
「ふぅ~手が冷たい」
私がそう言うとルメラは私の手をそっと掴むと自分の首筋に当てた。
ルメラは冷たさに少しビクッとしたが私を見て
「どう、少しは暖かいだろう」
ルメラはそう言うと自分の手を上から重ねる
暫くすると、徐々に北風が強まってくる。
「凪も、お終いかな」
ルメラがそう言うと私はルメラの首筋から手を退ける。
二人で並んで街へと帰っていくのであった。
第四十九話 ~ シラクニア出張 ➄ ~ 終わり




