第四十七話 ~ シラクニヤ出張 ➁ ~
第四十七話 ~ シラクニヤ出張➁ ~ 序章
工房へ転移した後に、シラクニヤへの旅のために装備を調える。
シラクニヤは大陸でも最極寒の地である。
また、転移ゲ-トの周辺の状況もよくわからないので必然的に重装備となる。
分厚いコ-トに靴、顔を覆いつくすような帽子……大きなリックサックの中身は全て魔道具らしい……。
「凄い格好だね」
私が爺にその重装備に呆れたかのように言う
「そんな事はない……あの地の厳しさはガリアの地等とは比べ物にならん」
「この程度の装備は当然じゃ」
そう言う爺の言葉には何故か説得力がある
「行ったことあるの……」
私が訪ねる
「勿論じゃ……大陸中を旅して歩いたことがあるからな……」
爺が何処となく懐かしそうに言う
「じゃあ、旧都キ-マの事も知っているの」
と私が興味深そうに尋ねると
「ああ、知っとるよ……かつてのシラクニヤ王国の神殿都市じゃが……」
「大規模な雪崩で滅びた都市じゃよ……今は、廃墟しか残っとらんはずじゃ」
「用意も出来たし、行くとするか」
そう言うと転移ゲ-トを発動させた……。
第四十七話 ~ シラクニヤ出張 ➁ ~
物凄い吹雪で辺り一面が真っ白だ。
伸ばした自分の手の先も見えないほどの猛吹雪、目と耳と口しか外に出ていない……
当然、目はゴ-グルで耳はイヤーマッフルで口もマスクで覆っているのに転移してほんの数分で耳はちぎれそうに痛み目は眉毛が凍り付きそうになる。
口元は凍えてガチガチ言っているのが分かる。
全身が全て魔道具での重装備だから持ち堪えているが、普通の装備だったらひとたまりもなく凍死である……
「何なのこれ凄いね……」
風に吹き飛ばされそうになり私が堪らずに爺に問いかける
「シラクニヤでは初冬によくある地吹雪じゃよ……」
「強風で積もった雪が舞い上げられて視界が失われる現象じゃ……」
「それにしても強烈じゃな……これでは身動きが取れん……」
そう言うと何やら術を発動する。
……次第に体に当たる風が弱まり、吹雪が体に当たらなくなり……徐々に体か暖かくなってくる
「何かしたの……」
私は爺に尋ねる
「体の周りに空気の壁を作ったのじゃ……」
「これで、幾分か寒さは防げるはずじゃ……」
「このまま、ここで待機じゃな……次は……」
と言うと爺は私に動かずにじっとしているように言う。
……そして、再び術を発動する……周りの雪が盛り上がり中に空洞ができる。
「早く中に入るのじゃ……」
爺が私に言うので直ぐに中に入る……狭いが内部は快適だった……
「吹雪が止むまでここで足止めじゃ……今のうちに何か食うとするか」
「すまぬが体をちょっとばかし借りるぞ」
爺が言うと私と入れ替わる。
入口を少しだけ隙間を残して閉じると腰の剣をぬきそれで天井に小さな穴をあける。
それからリュクサックを降ろすと中から小さな筒状の物を取り出す……中には何か入っている。
ランプのような筒に中に雪を入れると火をつける……暫くすると雪が解けてお湯になる、それに何やら袋に入っている物を入れて暫く煮るとおいしそうなシチュ-に化けた
雪で出来た洞窟の中に蒸気とシチュ-のいい匂いが立ち込めゴーグルが曇ってくる。
「それでは、頂くとするか」
そう言うと爺はゴーグルとマスクを外し、おいしそうにシチュ-をむさぼる。
シチュ-を全て腹に収めると、今度はリュックサックから長細い袋のようなものを取り出すとその中に入る。
「腹も肥えたし、ひと眠りするか」
そう言うと眠りに入ろうとする……長細い袋の中は凄く暖かくて私も眠くなってくる
「爺、凄く手慣れているね……感心しちゃったよ」
と私が言う間もなく爺の気配が消えていた……。
外から吹雪の音が聞こえてくるが、私もそのまま眠りについてしまった……。
「おいっ 起きろ……朝じゃぞ……吹雪も収まったようじゃ」
と爺が私を起こす声がする……爺が、長細い袋の中から出ると再び寒さが襲ってくる
「寒っ!」
余りの寒さに思わず声が出る。
入口の塞いだ雪を退けて外に出ると……そこは、一面の銀世界だった。
雲一つない青空の下で全てが雪に覆われ朝日を浴びて白く輝いている。
「ここがシラクニヤの旧都キ-マなの……綺麗だね……」
私が奇麗な光景に寒さも忘れて言うと
「そうじゃ……」
爺が小さな声で呟くように言う
「ここから、東の方角に半日ほどの所にシラクニヤの新都のスクラがあるはずじゃ」
「お前さんは不慣れじゃろうから、すまぬが暫く体を借りるぞ」
そう言うと爺は、日に向かって歩き出す。
新雪が積もっているが魔道具の靴のおかげで雪に足を取られることもなく普通に歩く事が出来る……。
「この靴、凄いね……」
私が驚いて言うと
「残念じゃが、雲の上は歩けんがな……」
そう言うと爺は少し笑ったような気がした。
そのまま、黙々と半日歩き続けると何も無い雪原に城壁のようなものが見えてくる……。
「あれがシラクニヤの新都のスクラじゃよ」
爺が遠くの城壁のような物を見て言った。
そのまま、歩いていくと巨大な城壁があり、周りに堀が巡らされている……王都ガリアのような完全な城塞都市だった。
都市への入り口がある方向に歩いていくと空堀に橋が架かり両側に見張りの塔を備えた城門が見えてくる。
周りには誰もいないようだ……城門の前まで来ると、門番の兵士に取り囲まれる
「何者だっ!」
責任者らしき兵士が言うと周りの兵士が私を取り囲むように槍を構える……。
爺は懐からメルラの手紙を門番に差し出すと……責任者らしき兵士が疑り深そうに手紙を取り手紙を確認する……責任者らしき兵士の態度が豹変する。
「しっ失礼しましたっ! 大賢者様っ!!」
と姿勢を正すと敬礼をする……周りの兵士も慌てて敬礼をする。
「遠路遥々、ご足労頂きまして誠にありがとうございます」
そう言うと手紙を使いの兵士に手渡す……使いの兵士は大急ぎで城内へ入っていった
「申し訳ございませんが、暫くの間ここでお待ち下さい」
兵士の待機所に通されるとここで暫く待つように言われた。
暫くすると、城内から何人もの付き人を連れて人が出てくる。
先頭の一人がこちらの方に向けて走りだすと後ろの人も慌てて走り出す。
そして、待機所に入ると私の顔を見ると……
「大賢者様っ……マノンっ……」
と言いながらヒラヒラの付いた服を着た子が物凄い勢いで飛びついてくる
「ルメラ……ルメラなのか……」
爺が驚いたように小さな声で言う
「そうだよっ! メルラだよっ! ホントに来てくれたんだなっ!!」
そう言うとボロボロと泣き出した……人前で泣くような子ではない子が……
「何があったんだい……詳しく話しておくれ……」
「わしに出来ることなら何でもしてあげるよ……」
爺が優しい声で言う
「病気の事は手紙の通りなんだ……」
「とにかく城内に入って病人を見てほしいんだっ」
とルメラが言うと……そこに年寄りの付き人が遅れて入っくる……
「ひっ姫様っ! はしたのうございますっ!!」
「一国の姫が大股で走るなど言語道断っ!」
「お言葉遣いも元に戻っておりまするぞっ!!」
ゼイゼイ息を切らしながらメルラにお説教をしている……それを見た爺は
「ブッ! ブワッハッハッハッ~腹が……腹の皮が捩れるっ!!」
爺は死ぬほど大笑いする……それを見たルメラが顔を真っ赤にして
「わっ笑うんじねぇ~俺だって、好きでやってんじねえんだっ!! 」
「オヤジの命令だから仕方なしにやってんだっ!!このやろーっ!!!」
更に顔を赤くして怒っている……その横から年寄りの付き人が
「姫さまっ! お言葉がはしたのうございますっ!!」
とルメラに強く説教をする……爺は笑いが止まらない
「それに……そのヒラヒラの服……まるで学芸会のお姫様役じゃ」
「げへっ! げへっ!! 笑いすぎて息が……死ぬっ!」
「……メルラっ! わしを笑い死にさせる気かっ!!」
と息も絶え絶えに笑い死にしそうに爺が言う
「ひでぇ~よ! そこまで笑わなくたっていいだろーっ!!」
少し傷ついたような表情をする……流石に爺も悪かったとみえて
「すまなんだっ……余りにも変わりすぎててつい……」
そう言うと爺も笑うのを止めてメルラに詫びる
「それでは、大賢者様こちらへどうぞ……城内へご案内申し上げます」
メルラが上品なお姫様言葉を使うと……爺の笑いの経絡秘孔を見事に突く……
爺は必死に堪える……笑ってはいけない……笑ってはいけない……
ダメだ、鼻の穴がヒクヒクする……横隔膜が痙攣している……もう……限界だ……
「ブッ! ブワッハッハッハッ~腹が……腹の皮が捩れるっ!!ヒィヒィ~」
とまた、爺は息も絶え絶えに大笑いする
「くそ~っ! もう、やってられっか! こんなことっ!!!」
そうと言うとルメラは顔を真っ赤にしてヒラヒラのレ-スの付いた手袋を外すと地面に投げつけた……。
それから、暫くメルラが暴走して年寄りの付き人は大変そうだった……
素に戻ったルメラの案内で気を取り直して、爺は城内の病人たちのもとへ行くのだった…。
第四十七話 ~ シラクニヤ出張 ➁ ~ 終わり




