第四十五話 ~ 故郷からの手紙 ~
第四十五話 ~ 故郷からの手紙 ~ 序章
マノンが王立アカデミ-で災難尽くめの春の長期休暇に入ろうとしている頃、故郷の村にマノン宛の一通の手紙が届く……
手紙を受け取ったのは、妹のイネスだったが手紙の送り主の名前に心当たりがない。仕方がないので王都の王立アカデミ-のマノンの元に転送することとした。
……この手紙をマノンが受け取るのは約二週間先のこととなる。
第四十五話 ~ 故郷からの手紙 ~
手紙が二週間かけて王都に届こうとしている頃、マノンは頭を悩ませていた。
あの"禁書事件"以来、レナとの関係がぎこちなくなってしまっているのだった。
レナに何と言っても説明すればいいのか……。
マリレーヌさんの事を話すのは、かえって状況を悪化させるような気がする、何か良い策は無いのと中庭のベンチで悩んでいると……。
「マノン~」
と私は声をかけられる、声の主はエレ-ヌだった。
「探したよ……どうしたのマノンこんな所で昼間から黄昏ちゃって……」
「そうそう、昨日の手紙、お爺さんにさっき渡してきたよ……」
「何が書いてあるのかは知らないけど、お爺さんが"心得ました"とだけ伝えておいてって言うから、マノンの事探してたんだよ……」
私を見ながら言う……
思い余った私は、エレ-ヌに"禁書事件"の事を相談することにした。
勿論、マリレーヌさんが裸でベッドの中にいたことは言っていないのだが。
「そういう事か……レナの様子が少し変なのは……」
エレ-ヌが心当たりがある様に言う
「その"禁書"はどうしたの」
エレ-ヌが聞くので
「実はまだ手元にあるんだよ……持ち主に返したいんだけど」
私が困ったように言うと
「レナのあの様子だと、完全にマノンのこと意識しちゃってるよ……」
エレ-ヌは私を見て言う、そして
「何とかしないとね……私も協力するよ……」
そう言うと行ってしまった。
私は暫く間、のんびりとしていたが宿舎に戻り、部屋で最終科目のレポ-トをまとめているとドアをノックする音がする。
ドアを開けると、管理人の人だった。
エレ-ヌが私に面会しに来ているらしいので部屋に通してもらうことにした。
暫くすると、再びドアをノックする音がする。
私がドアを開けると、そこにはエレ-ヌと一緒にレナもいた。
……態度がぎこちない……
「あれっ……レナも一緒なの」
私が驚いてエレ-ヌに聞くと
「レナと一緒に持ち主に返しに行けばいいじゃない」
「それで疑惑は晴れるんじゃない……私も付き会ってあげるよ」
エレ-ヌは私に言うが……その相手が問題なのだ……私が躊躇していると
「何、悩んでるのよ、どうせ返す相手の事考えてるんでしょ」
「レナだってそんな男同士の事情ぐらい分かってるわよ」
エレ-ヌが躊躇している私に決断を迫る
「やっぱりいいよ、後で自分で返しに行ってくるよ」
私が小さな声で言うと
「だめよマノン……」
「相手の事を思いやる心と男同士の友情は素晴らしい事だかね」
「こういうのはハッキリさせないとねっ、マノン君っ」
エレ-ヌは声高らかに熱弁する……。
私は、エレ-ヌに相談したことを心から後悔した。
その様子を見ていた、レナはここに来る前にエレ-ヌの話したある策略の事を思い出していた。
その策略と言うのは……女子を二人もつれてエッチな本を返されたらマノンは信用を失い、貸した方の男子は二度とマノンにそんなエッチな本を貸したりしなくると言うものだった。
確かに、そんな事されたら事貸した男子は恥ずかしくて仕方がないだろう……
しかし、エレ-ヌの計画は致命的な欠陥があった、相手が男子と言うに思い込みである。
エレ-ヌは渋る私を半ば強制連行するように男子寮の外に連れだすと、"禁書"を返す相手が誰なのかを問いただしにかかる。
「さて、マノン……このエッチな本は誰から借りたのかね」
そう言って手にした"禁書"をページを捲る。
中を見たエレ-ヌの顔が見る見るうちに赤くなる
「なっ何よこれっ……うわっ……すっごっ」
エレ-ヌは独り言を言いながら本に見入っている。
何人かの男子生徒が不思議そうにこちらを見ている……それを見たレナが
「エレ-ヌっ……」
周りを気にして言うと
「こっこんな過激なの……誰に借りたの」
真っ赤な顔をして再び私を男子寮の前で尋問する……私が返事に困っていると
「その本は、私の父の物です」
不意に後ろから声がする……私が慌てて後ろを振り向くとマリレーヌが立っていた
「……」
三人とも沈黙する。
「ですから、その本は、私の父の物です……と申し上げているのです」
マリレーヌが淡々と言う
「マノン……どういう事なのな~説明してくれる~」
レナが微笑んで私の方を見る……既に私の意識は昇天している、
「……それは……それは……」
私が声を震わせていると
「その本は、私の父の物で一昨日の夜にマノン君のベッドに私が忘れていった物です」
エレーヌとレナに向かっては平然と言う
「夜……ベッド……」
レナは体を震わせながら小さな声で呟くように言う。
私は、レナの横で呆けているエレ-ヌに目で救援を求めるが……
それに気付いたエレ-ヌの目は"無理無理"だと言っているのが分る。
私は、無言で目を潤ませながら"そこをなんとか"とエレ-ヌに助けを求める。
エレ-ヌは私の方を見ながら……慈悲深い目で私を見た後に合掌して目線を逸らせた……。
こいつ、やるだけやって逃げんのかっ……私は、目で抗議するがエレ-ヌは知らん顔をした。
顔を引き攣らせたレナと無表情のマリレーヌが対峙している。
二人の間に王立アカデミ-が吹き飛ぶぐらい物凄い気が満ちているの感じ取れる。
"じっ爺っ助けてっ!!!"と私は、心の中で断末魔の悲鳴を上げる
「安心せいっ」
頼もしい爺の声がする
「何か、いい術があるの」
私は、爺の自信ありげな態度に期待する
「骨は拾うてやる……」
そう言うと気配を消した
「何よそれっ! 」
私は爺に講義するが、何の応答も無かった。
先に口火を切ったのは、レナだった。
「"一昨日の夜にマノンのベッドに忘れていったって"どういう事なんでしょうか」
優しそうな声でレナがマリレーヌに問う
「そのままの意味です……私がマノン君のベッドの上に置き忘れてきただけです」
「それに……貴方が想像しているような、やましいことはしていません」
マリレ-ヌは冷静に答える
「そうじゃなくて、どうして貴方がそんな本もって夜にマノンの部屋にいるのよ」
レナは声を引き攣らせながら優しそうに言う
「それはですね……私がマノン君に夜這いをかけに行ったのです」
「あの本は、参考資料として持っていった物です」
マリレーヌが何事も無いように平然と言う
「ぶっ!!!」
私とエレ-ヌは、吹き出しそうになり……レナは、顔は呆けている
「残念なことに……」
「マノン君は全くこの手の知識がなく夜這いは失敗に終わってしまいました」
マリレーヌが残念そうに言う……
これ以上はやめて~恥ずかしいこと言わないで~と私は心の中で叫ぶ……エレ-ヌが私を蔑んだ目で見ている。
「本当に、何もなかったんだ……」
レナは呆れ返ったように言う
「何もなかったことは確かです」
「……ですが私は、マノン君の事が好きです……諦める気はありません」
マリレ-ヌは凛とした態度でレナに向かいハッキリと言う
「キャ-ッ、宣戦布告よっ!」
エレ-ヌは嬉しそうに言う……私とレナがエレ-ヌを冷たい目で見とる
「すいません……」
マリレ-ヌは小さな声で謝る……
気付けば、周りにギャラリ-が出来ている……。
流石にこれ以上の痴話喧嘩は恥ずかしいとみえてレナもマリレーヌもそれ以上は何も言わなかった。
「何なんですか……この人だかりは……」
ルシィの声が聞こえる
「あっいたいた……マノン・ルロワさん、貴方に手紙です」
ルシィが言うと私に手紙を渡す……手紙の表書きは確かに私宛てだった……
レナとマリレーヌ、エレ-ヌの三人は、手紙を気にしているようだ。
「また、新しい女からのラブレタ-だったりして」
エレ-ヌはボソッと言うと、レナとマリレーヌの目付きが厳しくなる。
「やめてよっエレ-ヌ、そんなんじゃないよっ!」
エレ-ヌに懇願するかのように言うと私は手紙の差出人の名前を見る。
「ルメラ……あっ! ゲルマニヤの子だ」
と私が思い出したかのように言うと
「メルラ……女の名前よね……」
いつの間にかレナとマリレーヌ、エレ-ヌの三人がソヒソヒ何か話し合いをしている
「誰なの、そのゲルマニヤのルメラっ……」
レナに尋問される。
レナ、マリレーヌ、エレ-ヌの三人は冷たい目で私を見ている。
何なんだよ……こいつら、さっきまで敵対してたのにいつの間にか手を結んでいる。
「村にゲルマニヤ軍が進軍してきたときにいたシラクニヤの子だよ」
「……なんだろう……」
そう言うと私は、封筒の封を切り中の手紙を広げて見る。
"助けてください……このままでは、父や大勢の人々が死んでしまいます……"
最初の文章を読んだときに、ただ事ではないなという予感がした。
第四十五話 ~ 故郷からの手紙 ~ 終わり




